表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/182

第72話:流れに任せて。

おはようございます、暁改めアイラです。

昨日までの本戦に優勝したボクはそのお祝いの席で絆を繋いだ先輩方みんなの「妹」になることになった。

 何をいってるのかボク自身よくわからないし、一夜明けて冷静になると大丈夫かなこの企画・・・と不安になったけれど。


(今さらあとには引けない・・・か)

なにせもうシリル先輩の演説中でもうすぐボクの番なのだから。

シリル先輩の応援者はユーリとボク、付き添い人はエッラ、フローネ先輩、シア先輩、マガレ先輩だ。

固めたねぇ・・・。


ユーリは西シュバリエールには所属こそしていないけれどもその首魁の様なものなので、幹部たちの応援に駆けつけている

話す内容もその立場に準じている。

次はボクだ。

ボクが台の前に立つと、ユーリの時より大きな声援が聴こえる。

いいのかな?旦那様を差し置いてこんな大歓声を頂いて。


ボクは今回9人の女性参加者とユーリの応援者に立つことになっている

これには年長の女性に懐く妹的アイラを演出し、同時にユーリという一人の男性に対する一途を表現するためだ。

 西シュバリエール幹部の応援者に必ず二人ならんで立つのだから、印象には残るだろう。

実際ユーリ以外の男になんて興味はない・・・元はユーリへの恋心にだって抵抗があったわけだしね。


4年生ではシリル先輩が1番人気の様だ。歓声の量的に2番はジャン・スパロー先輩かな?

3年生ではマガレ先輩が圧倒的に優勢だったけれど、ボクがジル先輩の応援に立つと少し空気が変わった。

ジル先輩の応援者はボクとユミナ先輩が立ち

その人柄と実際に結晶魔術と戦って見えた、強さと課題をアピールしたけれど

なんだかボクが北の参加者のアピールタイムも盗ったみたいに見えるかもと、少し不安になった


このコンテスト自体は相互に応援可能な生徒会選挙みたいに感じる。

 この人はこんなにすばらしい人だから応援してね!って参加者同士でやるのはちょっと良くわからないけれど。

3年生のアピールが終わったところで中休憩を挟む。

(本番前なのに割りへとへとだ・・・)


ここからさらにフローネ先輩、シア先輩、サリィ、コロネ、ユミナ先輩の応援を経てこれからユーリ、エッラ、本番かつトリのボクの番になる

今のところ東側もごくごく大人しいものであり、ボクも何回も出ていってるのに出る度に歓声が上がるのは、逆に不安になるくらいだ。

特にユミナ先輩の時とサリィの時は盛り上がったがさらに上をいったのがコロネの時だ。

コロネも妹系だからかな?二人で並んだとき一部女生徒からの声援がすごかった。


狙いは成功しているんだと思いたい。

1年の番になった。

まずはセルゲイからだ。

セルゲイは自分が東候の次男であることを強調し、また今年に入ってからの東シュバリエールの人口増加を実に自慢げにのたまう。

応援者には取り巻きのアルバとマイクがたった、恐らく本当はグレゴリオとブリミールの予定だったのかな?


セルゲイの演説は奮わなかった、ただでさえヘイトを集めている上に演説の内容が理想を語るでも、現在の軍制の是非を語るでも、技術革新を語るでもなく、自慢と妄想に終始した。

17歳の大貴族のボンボンは1村娘出身で14歳のマガレ先輩よりも、拙い言葉で懸命に語るコロネよりも、稚拙な言葉を並べるだけに終わったのである。

それは東の躍進を夢想する愚者の戯言に過ぎなかった。

失笑こそなかったが、ともすれば王家や三侯家への反抗、逆心ともとられかねない言葉を吐いた


 セルゲイの出番のあとすれ違いに

「人殺しが・・・」

とか言われたけど、先に仕掛けたのはそちらだしね


セルゲイもオーティスやボクに脅しをかけてきたわけだし同じ穴の狢・・・改心が見込めないのならばいつかは排除したい。


ナディアやトリエラを手込めにしようとしたりもしたし、たぶん地元ではもっとやりたい放題だったろう。


気をとり直してユーリの出番ではサリィとボクが応援者として、エッラ、ナディア、トリエラ、エイラを付き添いとした。アイリスを混ぜていないのはボクの時のインパクトのためだ。

ユーリはホーリーウッド南西の開墾地とその地にあるモンスタースポット「エントの湖畔」攻略の重要性、そこを抜けた先に海があることを挙げてホーリーウッドの展望を語った。


ボクはユーリの人となりを知っていて、彼の展望には緩やかな発展があると、ユーリの言を支持した。

サリィは従姉の立場からユーリの人柄を誉めた上で未来の侯爵として必要な判断力と実力を兼ね備えているとしてユーリを支持した。


エッラの応援は、再びボクとユーリで

今も同じホーリーウッド家の屋敷でお世話になっていることや、お互いに信頼していること、エッラの職務への姿勢と篤実さを語った。

同じ屋敷にすんでいることだって、婚約だって、別に隠していたわけではないけれど、大きな声が上がった。

主にエッラがホーリーウッドの庇護下にある件について、あの娘を欲しいと思っていた貴族家だろう。

エッラはまだ17歳と(セルゲイと同い年だが)若く小柄でほっとする可愛い顔立ちに凶悪な爆弾を2つ抱え、メイドから魔法騎士までこなす万能手だ

メイドや護衛兼側室にと誘いたいものは多かっただろう。


 そして最後はボクだ。

 ボクの応援にはユーリとアイリスがついて、付き添いには協議の末サリィ、ユミナ先輩、コロネ、フローネ先輩がついた。

 西南北中央の2年生4人がつくことで、このボクを妹に据えた協力体制があと2年は続くことのアピールで、コレはセルゲイへの牽制だ。

 学校で好き勝手できると思うなよ・・・ってことだ。


 ボクは子どもらしく将来の夢をお嫁さんになって、夫と子どもに囲まれて暮らすことです。

 と前置きした上で。あまり具体的なことは語らず、精神論的な防衛と国際協調を語り。

 それなりに支持を得られたと思う。

 

 次にボクを壇上に置いたままアイリスが一緒に登り二人で並ぶと、会場が黄色い歓声に包まれた。

 ちっちゃくてかわいい子どもが双子だと、民衆は更に喜ぶのだ。

 アイリスの喋りはボクよりもたどたどしく、完全に民衆の心をつかんだアイリスはともすればお花畑とでも揶揄されそうなおっとりした口調で、だけど実感のこもった言葉で、ボクにどれだけ助けられてきたか、ボクのことをどれだけ好きなのかを語るアイリスを嫌う人なんてこの会場にはほとんど居ない。

(ボクのかわいい妹が受け入れられて良かった。)


 そしてその次はユーリの番・・・。

「みなさん先ほど振りです、ユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッドです。」

 ユーリが挨拶するとやはり黄色い歓声が上がる。

「先ほど僕の応援にも駆けつけてくれた、このアイラ・ウェリントンはみなさんがうすうす感じ取っている通り、僕の婚約者で最愛の人です。」

 ユーリがそう言ったとたんに歓声が上がる、

 ほとんどは納得している声だけれど、一部はサリィが婚約者だと思っていた、信じられないという内容の声だ。

 でも否定的な声は聞こえないね。

 コレがボクが水練大会で名を上げる前だったらもう少しは否定的な声も混ざったかもだけれど・・・。


 まして、ボクのことをかわいがっている面々には噂のあったサリィや、北候の娘ユミナ先輩も居る、つまりコレは、大貴族の間では既に知られた話だということに映るだろう。

 かわいいユーリが、ボクのこういうところがかわいい、こういうところが強い、格好いい、と褒めちぎる。

 かわいさだけでなく、士官としての適性もなければこのコンテストは無意味だ。

 一士卒としての適性は十分に示したので、あとは指揮官としての才能だけれど、アイラにはあいにくと経験がないので、先輩方に導いて欲しいと言葉を結んだ。


 それから実況の彼が投票の説明に移ろうとしたところ。

「あー、余も少し、いいか?」

 と王様ジークが言葉を挟んだ。

 王様の言葉をさえぎれる者なんてこの国にはいないよね。


「アイラ・ウェリントンは既に、この余と孫の様に接することを許しておる一人でな。アイラは若干9歳ではあるが、既に将来を嘱望される立派な娘で、尚且つユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッドの婚約者、正妻候補でもある。そんな彼女がこの大会の直前、勇者となっていることを確認している。発表のタイミングは2年に進級する際と考えていたが、うすうす感づいておるものもおる様なのでな、この場を借りて発表させてもらう。」

 会場内がざわつく、勇者とはやはりそれなりに大きなニュースの様だ。

 しかし驚きはココで終わらなかった。


「それと、モノの次いでというわけではないがな、ユークリッド、ユーリも勇者の適性を示しておるのでここで発表させてもらう。」

 ざわざわが大きくなる。

 ボクも少し信じがたい思いだ。


 学校ではなく王国全土で数年に一人か二人と聞いていた勇者が、よりにもよって同じ頃に西に2人出現するのか。

 それは一気に西に戦力バランスが偏りそうだね。


 そうやって、予期せぬ出来事もあったものの、このコンテストは順当に男子の部1位がユーリ、女子の部1位がボク、総合1位がボクとなり、また当初の目的どおりにボクは全校の女性生徒の妹分としての地位を確立した、ただ予定と違ったのは、同時に勇者としても認知されたので、妹系勇者というよくわからない肩書きを得てしまった。

 そして、全校どこに居ても「アイラちゃーん!」なんて声をかけられたり、アイリスと一緒に居ると「抱きしめさせてください!」なんてお誘いを受ける様になった。

 よっぽど急いでなければ受ける様にしている。(男子は却下だ。)


 またユーリと一緒に歩いていると微笑ましい目で遠くから見られる様になった。

 それから半年ほどの時が過ぎて、陸上戦の大会ではボクとシリル先輩が決勝を戦い、スタミナの差でボクが敗北、魔砲を披露する大会ではボクはさほど活躍できなかったものの、リスティが準優勝を果たし、一年生の意地を見せた。

 ボクが10歳になるちょっと前にシリル先輩たち4年生が卒業したが、その際ちょっとした陰謀に巻き込まれボクたちは帰郷が遅れてしまった。

 それでボクとアイリスが10歳になったあと帰郷と相成ったが、エイラとコロネ、フィレナが一緒にホーリーウッドについてきた。


 さらにホーリーウッドでボクたちを出迎えてくれた家族たちの中に、なぜかまたお腹を大きくしているキスカが含まれていて、ギリアム様の側室となったことが知らされた。

 ガイとヘレンにおっぱいをやっているうちに、ギリアム様はそんなキスカの姿を見ているうちに、少しずつそういう雰囲気になっていて、サークラと相談の上決めた様なので、ボクたちには特に言えることもない。

 サルビアにパパが出来て、ユーリの義妹になったのはちょっと良かったと思ったけれど、もともと妹みたいにかわいがってたから変わらないね。


 コリーナの子どものウェンディも見せてもらった。

 無事コリーナの誕生日にかぶせることに成功していてちょっと驚いたけれど、強かなコリーナであればさもありなんと納得できるのが怖い。

 コリーナも次を既に宿していて、ウェルズも一度赤ちゃんを抱いたら、早すぎるなんていわなかったそうだ。


 アンナも妊娠していたし、サークラも早くも3人目が出産間近。

 カテリーンは既に係長くらいのポジションになっているらしい。


 アニスもリウィもノラも皆元気でいてくれて安心できたけれど、時間が押したせいであまり長いも出来ず、ボクたちは僅か1週間の滞在で王都にトンボ帰りすることになった。

 移動時間のほうが長い。


 それでも王都に帰りついたのは、入学式を迎える数日前で、ボクは生徒の代表の一人として恥じるところのない様に入学式にも参加した。


 後輩が出来たと思うと喜びもひとしおで、ついつい笑みがこぼれてしまう。

 これからどんな1年になるのかと、心を躍らせるボクとアイリスをユーリがいつも通り微笑みながら見ていたのだった。

 

アイラの1年目は少し巻きになってしまいました。

本当は中身もびっちり埋めた上で書く速度も維持できれば一番なんですが、毎年行事はやるのに毎年書いたらトンでもないことになりそうなので。申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ