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プロローグ:朱鷺見台の一夜

以前にとあるゲーム内でお話を妄想する癖があるといったらこちらを勧められたので、とりあえず書いて見ました。あまり人様に見せられる様な文章を書いたことがないので、助言などいただけましたらと思います、見切り発車です。

書店で見かけるなろう系小説って世界系の逆だと思ってました。

 西暦2015年 天成6年春 日ノ本

九州立花藩においても特殊な立場にある都市朱鷺見台において、いやここを治める十家と呼ばれる家とそれに連なる家の者たちに衝撃が走った。

 

 十家の中でも結界の範囲を司る家柄であった各務家の御当主とその奥方様が突然の事故で亡くなり結界面が不安定になってしまったのだ。

 

 結果3年経った2018年現在に至っても朱鷺見台市では、街の至るところで小規模な空間の歪みが頻発し、さまざまな異世界の生物が紛れ込み街に被害を出していた。


 また異世界の生物が流れてくるのと同様に、朱鷺見台からも数名の行方不明者がでているし、異世界にいって戻ってきた例も数件ある。


 結界を張りなおすために各務家の長男が結界の展開を進めているが、一度崩れた結界の完全な再展開と安定化には至らずまだしばらくかかる様だ。

 

 そのため現在朱鷺見台十家では全氏族、分家や未成年に至るまで総出で、異能持ちによる異形の生物の討伐と、歪みの補正が行われている。

 この異形の討伐には十家近衛家の分家の出身である僕、近衛暁(このえあきら)も駆り出されている。


「まったく、3年近く経っても飽きもせず異形が沸いて出るな。」

 熊の様に巨大な犬に似た獣を愛刀で切り捨てながら愚痴を零すと、討伐の相方としてともに行動している朱鷺見台十家、中家家の分家筋日下部家の長男である翔が


「それでも今日は金曜だから、家に帰れば可愛い婚約者様が三つ指ついて迎えてくれるんだろう?俺は家に帰っても生意気な弟妹のお守だぜ?」

 とヘラヘラ笑いながら(といっても異形の獣を殴り殺しながらではあるが)愚痴り返す。

(その弟妹が大好きなくせに、よく言うよ)


「まぁね!」

 僕は、極々血の薄まった分家の者の中では極端に能力が高く、早くから光の弾を放つことができ、長距離は不可能であるが10m程の範囲であれば瞬間的に移動する特殊能力を持っていた。(異能力は精神力である程度いくらでも行使することができるが、転移の距離は魔力消費に依存するため、魔力の乏しい僕では10mが限界なのだ。回復はすぐだけどね。)

 更には弱めの隠形の能力も持っているため暗殺や、奇襲に向いている。

 そのため幼いころから本家筋の道場に通い武芸もいくつか仕込まれ、異能も修練で鍛えられている。


 道場でもそこそこの成績を残すことができたため、十家の本家筋の一つである桐生家の六女である神楽と僕が12歳の時に婚約、今年の僕の15歳の誕生日には元服と同時に祝言を挙げさせてもらえることになっている。


 正式に夫婦にはなるが、まだ神楽が9歳のため義務教育が終わるまでは今と同じで、週末に神楽が僕の部屋に泊まりに来る週末婚の状態が続くだろう。


 分家出身である僕の立場は強くはなく、この結婚も僕の意志とはあまり関係なく決まったものであったけれど、なにせ神楽はトビキリの美少女で、それも僕のことを大変に好いてくれているので、悪い気はしない。

 もともと仲もよかったしね。


「とりあえずこれでこのあたりは全部かな」

 人と同じくらいの大きさのクモとカニをあわせた様な異形を真っ二つにして翔に問いかける

「そうだな、とりあえず動いてる反応はないな」

 翔も6本足の鼬の様な異形の残骸を投げ捨てながら周囲に気配が残っていないことを確認した様だ。


 一応人を襲わないものは先に確保して、元の世界に戻す見込みができるまでは保護しておくことにしているが、ほとんどの異形はなれないことで興奮しているのか人に襲い掛かる、少しかわいそうであるが僕らにとっては地域の住民の方が大事であるので、討伐はやむを得ないことだった。


 生きている異形がいないことを確認すると、撤収を開始する。

 倒した異形の残骸は、それらを片付ける専門の部隊がいるので彼らに任せ僕らはそれぞれの家に戻ることにした。


 現場から20分ほど歩いて自宅に帰り着くと、時刻は夜9時を少し過ぎたところだ。

(神楽は、もうおねむだろうな・・・たぶん寝てるか起きてるのか本人にもわかってない様な状態で待ってくれてる気がする)

 あどけない婚約者のことを思い浮かべると自分でも気持ち悪いくらい頬が緩むのがわかる。

 これじゃいけないなと少し姿勢を正してから、玄関の鍵を開けた。

 「ただいま。」

 

 母親と適当に会話してから部屋へ荷物を置きに戻ると、僕の枕に顔を埋めて安らかな寝息を立てる神楽を発見した。

 左手は枕の下に、右手は体の下敷きになっている。

 痺れてはいけないなと右手を体の下から出すためにやさしく体を抱えて仰向けに直しておく。


 黒くて細い猫っ毛が指の間に擦れて少し気持ちよかった。

「ん・・ふぅ、あきらしゃ・・ん・・・」

 小さく可愛い唇が僕の名前を紡ぐ、一瞬起こしてしまったか?と身構えたが、ただの寝言の様だ。


 荷物を置いて風呂に入る支度をする。

 たくさん汗をかき、全身に砂や泥、多少の返り血がついていて気持ち悪い。

 服を全て籠に入れて、浴室に入るとまずは頭から湯をかける。

 洗面器から流れるお湯の音で世界が満たされ、それ以外の音が聞こえなくなる。


 顔を手で拭いなら、もう一回お湯をかぶろうと洗面器に湯を溜めようとするといつの間にか正面の鏡に黒い髪をした全裸の少女が映り込んでいた。

 一瞬心臓がキュってなった。

「お帰りなさい!あきらさん!!」

 満面の笑みで今にも飛び掛ってきそうな勢いで神楽が叫んで、背にしがみついて来る

「ただいま神楽、寝てたんじゃないの?」


 僕の問いかけに神楽は

「はい!あきらさんの枕のにおいを嗅いでたらいつの間にかうとうとしてしまいましたが、もっと強いあきらさんの汗のにおいで目が覚めました。」

 爛々と目を輝かせながら答える。


「あきらさんのお背中を流させていただきます!私奥さんですから!!」

 そう言う神楽は真っ裸だ、婚約から約3年たち、既に違法性もないのだけれど、幼い少女の裸というのは心臓に悪い・・・

「神楽、その、背中を・・・」

「イヤだなんていいませんよね?」

 せめてタオルを巻くなりで前を隠してもらおうとしたが、機先を制された。


「はい、お願いします。」

 好いた女に悲しそうな瞳で言われれば男としてはうなずくしかない。

 再び満面の笑みになった神楽は、うれしくて堪らないといった様子で僕の背中を流してくれる。

 微妙に物足りない様な気もするが、それでも十分に力強く、丁寧に背中を擦ってくれている。


「やっぱりあきらさんも殿方だけあって背中が大きいですよね、同い年なのに姉様たちとは違います」

 ひとしきり擦ったあとお湯で泡を流してくれてから嬉しいのが伝わってくる声色で神楽が背中に抱きついてくる。

「同い年・・・リアさんや、テノンさんと今も一緒に入ってるの?」


 リアさんは神楽の姉の一人で、姉妹の中で唯一髪の色が母親似の銀髪の娘だ。

 非常にスレンダーな美少女で炎熱系統の能力を持っている。

 同級生で十家宮国家の次期当主、宮国御影様と5歳のときから婚約していて、今年御影様の誕生日に籍を入れた。今は平日は宮国家、土曜夜から日曜朝までの間だけ桐生家に戻る生活をしているらしい

(日曜に御影様と待ち合わせデートをするためだとか睦まじいことだ)


 テノンさんは、なんていうのか難しいが、異世界人で神楽の姉だ。

 桐生家と血は繋がっていないけれど、心で、魂で結びついている姉妹だそうだ。


「そうですね、リアお姉様が妊娠中で、うちに戻ってきてくださってるので、テノン姉様か私たち下の4人の誰かと一緒に入りますね、先日はおっぱいマッサージを教えてくれました♪」

「そっか、でもリアさんの名誉もあるし、あまり他所では言わない様にね?」

 未来の義姉(同級生)の悩みなんて知りたくなかったな、リアさん細いからなぁ。

「もちろんです、あきらさんは身内だから言うんですよ。前失礼しますね」

 と自然な動きで僕の前に回りこもうとする神楽。


「そっちは自分でやるから」

 と前に回った神楽の両脇を抱えて右にそっと置く

「あぁん!あきらさんはイジワルですぅ、ちょっとくらい触ってもよいではないですかぁ」

 不服そうに拗ねる神楽、可愛いけれどこれはけじめだからね

「結婚するまではそういったことは控えるという約束だったよね?」


 現在の日ノ本では法律上の結婚できる年齢は男性も女性も15で、例外としては2年以上婚約している場合(専用の届出がある)は片方が15歳且つもう片方も10歳以上になった時点で、5年以上婚約してる場合は片方が12歳以上か両方10歳以上の場合 結婚することができる。婚約してから2年以上経過している場合は、淫らなことをしても不純なものでないとされ成人と未成年とでも違法とならないが、慣例的に結婚するまでは避けるのが一般的である。


「婚前交渉はしないと約束はしましたけど、本番以外もなしですか?慣らしておかないと、いざ初夜の時『うまくいきませんでした。』では、せっかくの思い出が台無しになってしまいます。」


「しょっ・・・やーそうはいうけどさ、別に結婚したからってすぐにそういうことしなくてもいいんだし」

 興味があるだけで言ってるわけではなく一応考えて言っている、賢い子だ。

「僕たちのペースでゆっくりやっていけばいいと思う。だから今日のところはゆっくりお風呂に浸かって、ゆったりしよう。」 


「むぅ・・・そうですか・・・そうですね、あきらさんお疲れですものね。」

「疲れてるけれど、それは関係ないよ?神楽が大切だから、ゆっくりと歩みたいんだ。」

「わかりましたから・・・早く身体を洗って一緒に湯殿に浸かりましょう。後ろからギュってして欲しいです。」

 とタオルを握り締めたまま頬を赤らめる。さっきまで本番だの、婚前交渉だのいっていた割りに初心でかわいい。


「はい、よろこんで」

 その後20分以上に渡って湯船の中で神楽といちゃいちゃした。かなりぬるめの湯だったにも関わらず少しのぼせてしまったけれど、神楽の機嫌がよくなったので万事問題なしである。

 

 その後神楽に甲斐甲斐しく給仕してもらい夕食を摂り、身支度を整えてから一緒に床についた。

 床の中でも神楽はたっぷり甘えてきたけれど、さっき一度は寝ていただけあって、すぐに眠りに落ちてしまった・・・。

 子どもの体温は温くて、抱いていると気持ちいい。僕もそれなりに疲れていたためか神楽のおしゃべりが聞こえなくなるとすぐに泥の様な眠りに落ちていくのだった。



 意識が急速に浮上する。

 なにか割れるような音がした気がした。

 パリン

 ほらやっぱり聞こえる。


 目を覚ますといつもの僕の部屋だけど、妙な気配を感じる気がする。

 少しかわいそうだけれど念のため神楽も起こしておく。

「神楽、まだ眠いかもだけどちょっとおきてほしい。」


 時計を見やると時刻はまだ2:40ほどである

 起きるには早すぎるが、ガラスの割れる様な音がしたのでなにかよからぬことがあったのかも知れない。


「んー・・・せ・・ちゃん・・・私まだねむい・・・あきらさん・・・?」

 ガバっと音がするほどの勢いで神楽が体を起こす。

「ごめんね、まだ寝てたいだろうけど念のために起きてもらった」


「どうかしましたか?まだ・・・3時前ですか・・・さすがに眠いです」

 尋ねる神楽に状況を説明する。

「僕も今目を覚ました所なのだけれど、ガラスの割れる様な音がしたんだ。よからぬことが起きてるかも知れないから、調べに行く。申し訳ないけれど強盗とかだったらよくないから、神楽も一緒に来てほしい。」


 神楽は少しだけ間を空けて答える

「わかりました、そばに置いて下さるということですね。」

 僕は首肯すると行動を開始する。


 寝巻きにしている甚平の上から外套を羽織りベッドの近くに置いてある愛刀・暁光を握り締める。小太刀・払暁と護り刀・暁天も身に付けておく

 神楽はその間に「変身」を終えている。


 神楽やその姉妹たちなど一部の戦士は僕たち剣士や、普通の魔術師の様な身支度を必要としない。

 変身と呼ばれる術を使うことで瞬間的に戦闘用の装いに着替えることが可能で、その中でも神楽は無数の戦闘用フレームを持っている特殊な戦士だ。

 今は手甲とぴっちりしたタイツ地の戦闘服だけで構成される動きを阻害しない格闘用フレーム「銀腕」を装着している。その両腕を真横に突き出した独特の変身ポーズを解きながらこちらに向き直る神楽。


 無言で合図を送りあうと僕たちは部屋を出る。

 家の中に気配が幾つかある、すべて1階の方で2階には気配がない

 この時点で少し嫌な予感はしていたのだが、それでも僕たちは進むことしかできないのだ。


 階段まで来ると1階から獣の匂いがすることに気付く、そしてすぐに何かが階段を駆け上がってくる。

「しっ!!」

 害意を感じて暁光を一閃させるとそこには青毛の犬の様なものが転げて落ちた。犬の様なというのは本当に犬に似たものに使う表現である。

 その生き物は大きさは柴犬ほどのものであったが、切り落とした頭部はライオンかと思うほど大きい、明らかにこの世の生き物とは異なる造形だ。

 毛も真っ青だしね。


「ひっ」

 神楽が短い悲鳴をあげる。

 ひとつの意味はその異形の生き物の首を躊躇なく落としたことに対するものであり。

 もうひとつはその口についた血の痕に対するものであろう。

 この異形はすでに何かを貪ったのである。

 

 異形が完全に息絶えているのを確認して

 僕は吐きそうになりながら階段を下りる

 ほんの5時間程前に食事をしたリビング、父はもう寝ていたが、母と神楽とに見守られながら少し遅めの夕食を摂った、そこも棚が倒れて椅子やテーブルが壊れている。


 このひとつ先の部屋に両親の寝室がある。

 ドアは半開きに、というか壊れて閉まらなくなっておりその先からぴちゃりぴちゃりと水気のある音が聞こえてきている。


 薄暗い部屋の中で羽根の生えた牛くらいの大きさの4足の獣と、馬の様な顔をした6本足の獣がおそらく母だったものを貪っている

 僕は頭の奥のほうに激しい痛みを感じながらも光弾を飛ばし2匹の頭部に直撃させた。


 2匹はこちらに気付くこともなく頭が弾け飛び、事切れた。家の中に異形の気配がないのを確認して念のために神楽に、今入ってきたドアのほうを警戒する様に頼む。


 神楽は悔しそうな、泣きそうな、それでも感情を押し殺した顔で「はい、です」とだけ言ってドアの外を見てくれている。

 部屋の窓は砕かれおそらくそこから異形たちは入ってきたのだとわかる。

(父さんは・・・・?)

 胸の辺りを食い千切られていた、おそらく最初に切り捨てた犬型の異形によるものだ。

 母も原型の残らないほどに食い散らかされており、それが母だと辛うじてわかるものの、見続けることはできなかった。


 神楽に誰でもいいので、と義姉さんに念話で連絡を入れてもらい、念話は繋げたままで僕と神楽とで近くの結界まで様子を見にいくことにした。

 問題を片付けないまま、家の中にいるのは気が狂いそうだったのもあるが、このあたりの結界は安定していて、この3年で異形が出てきたことなど一度もなかった。

 人為的なものを感じるのだ。

 

 両親の遺体はそのままにせざるを得なかった、一刻も早く原因を潰さねばならない。

 あたりを警戒しながら結界の基点がある公園までたどり着くと、知った顔があった。

 不自然に脱色された髪、これ見よがしに口に穴を開けて通している3つのピアス。


「あれ?なんで出来損ないが生きてんの?」

 ・・・不愉快な声だ。

「お前何を言ってる・・・?」

 思わず声に殺気が滲み出る。原因がもうわかってしまった。


「いや、てっきりお前ら死んで、優秀な神楽ちゃんだけが結界調べに来ると思ってたのに、何だよ、神楽ちゃんに助けてもらったのか?情けない面構えだな!!何にらんでるんだよ生意気だよ?」

 不愉快そうに軽い口を叩く


「お前は神楽の名前を気安く呼ぶな、不愉快だよ」

 ひとまず殺意は抑えて会話での解決を試みる。神楽が僕の右手をそっと握り締めてくれた。

「あん?なに不愉快って!こっちのせりふだっての、神楽ちゃんは俺に嫁ぐのが筋だってのに・・・お前勝手に生き残るのやめてくれない?ケーカク狂うんですけど?大体?分家のできそこないのクソの癖に、さっきからお前お前って、メウエの人間に対してちょっとエラソくね?」

「計画ってことは、うちに来た異形はお前の差し金で、ここにいるってことは、ここの結界を勝手に緩めたのか?」

 

 問いかけるとちょっとだけ愉快そうに目を細めて自慢げに言う

「あれ?意外と察しいいね?でも勝手にってのはちがうっしょ、ここの管轄今は近衛家なんだし?本家のオレがいじくっても勝手にってことにはならないっしょ?」

「管轄は近衛でもお前は当主でも次期当主でもないだろう。」


 そう、この男は近衛本家の次男、近衛虎徹。

 僕が神楽の婚約者になって以来なぜか僕に突っかかってくる。


「さっきからさ、お前お前っていいすぎじゃね?物分り悪いうえに、人の話も聞けないし、身分の上下ってものもわからないの?」

 僕の手を握ってくれていた指が離れて神楽は僕の前にでる。


「あなたのやったことでお義父様とお義母様が亡くなりました。」

 静かに神楽が伝えると虎徹はうれしそうな表情になって笑う。

「はは!あいつら死んだの?分家の人間の癖に小言ばっかりでウザかったし自業自得かな?でもほら、やっぱお前が、無能だからだよ。神楽ちゃん、そいつやっぱりやめたほうがイって、神楽ちゃん絶対不幸になるよ。」


「お前さ自分がやったことわかってるのか?結界を意図的に歪めたり、住宅地に異形を放したり、下手したら近衛自体取り潰されるぞ?」

 親の敵でも睨む様に、人を睨むお手本の様に僕の親の敵を睨む。


「いやいやそうはならないっしょ。お前出来損ないだから近衛の能力なめてるかもだけど?近衛の真髄は魔物や異形の操作だから?オレくらいになれば異形の3〜4体余裕よ?それにさ今回の犯人はお前になるんだから。分家の雑魚がちょっとイキってやらかしてもさ本家まで響かないっしょ?」

 仮に分家の暴走だと扱われたとしてもここを管理しているはずの本家がお咎めなしだとこいつ本気で言ってるのかな?ってちょっと戸惑ってしまう


 その僕の戸惑いを動揺と取ったのか、虎徹は誇らしげに語った。

「なんてーの?オレマジ冴えてっからさぁ、目障りな分家潰してさ、神楽ちゃんまでものにしちゃったら、近衛本家継げるんじゃね?だからさ神楽ちゃんもそんな出来損ないやめてさオレにしときなって。」


「これ以上私の良人を侮辱しないでください。」

 神楽が悲しそうな、虎徹を哀れむ様な目をした。

「侮辱ってなによ?事実っしょ、俺のほうが冴えててそいつは出来損ないしかも、今からそいつはこの騒動の首謀者としてこの俺に倒されるってスンポーよ?」


「残念ですがそうはなりません。ここにきてからの会話はすべてお姉さまや、あなたのお兄様の乾様に筒抜けです。」


 瞬間虎徹の表情が憎憎しげなものに変化する。

「おいクソガキ!何勝手な通信してやがる、だめじゃないかそういうのはお前の夫であるこの俺に許可を取ってからにするべきだろ」

 頭をバリバリと掻き毟りながら喚く虎徹

「私の夫を名乗れるのは暁さんだけです。何度も気持ち悪いこと言わないでください。」


「いーや違うね、そこの出来損ないを殺せば!俺がそいつや兄貴より優れていることの証明になる!そうすればまずは桐生家も娘のお前を優秀な俺によこすだろ、俺とお前の子が、血の青さってやつで、近衛を継ぐのさ!兄貴の嫁は所詮一般人だからな。お前は生意気だけど桐生家の娘だし?美人になりそうだからな、息子ができるまで何度でも孕ませてやるよ。明日からでもいい、もう始まってたらだけどな?」

「っ・・・・・!!」

 神楽は想像してしまったのか嫌悪感を露にする。


「本性が出たな、近衛虎徹・・・。」

 一歩前へ出る。

「あぁん?まだ逃げてなかったのか?俺は今からお前を殺してやるっていってんだぜ?1秒でも長く生きたいならほら、逃げろよ!!」

 こいつはまだそんなつもりでいるのか、なんで自分が僕より強いと思い込んでいられるのだろう。


「お前は今までも散々僕をけなしてくれたね、それは別にどうでもよかったから、無視してきたけれど、それがよくなかったかな神楽や乾様にまで害意を顕にするならば、貴様はもう近衛本家の虎徹でも、十家が護るべき民草でもない」

 最後にそれだけ告げると虎徹は苛立ちを隠さない顔になった。


「おいおい今なんつった?おまえ腰抜けの出来損ない野郎の癖に俺を護ってるっていったの?ちょーうけるんですけどぉ、そろそろ殺すよぃ!」

 虎徹が腕を振るうとどこかに隠れていた異形たちが数体襲いかかってきた。


 1、2、・・・獣型4体に蛇型1体それを確認した僕は光弾を5つ出現させ射出それぞれの頭部を粉砕した。

 

「おい、今何したよ?・・・なぁ!?」

 虎徹はなにが起こったのか見えていなかった様だ。所詮はその程度らしい。


「散々出来損ない出来損ないいってくれたけれど、今のが見えないのならお前の方が出来損ないだな。」

 ちょっと挑発気味に告げる

「なんだとっもう一回いってみろよ!!」

 そういってもう一度腕を振るう虎徹。

 するともう2匹獣が飛び出してきて、今度はさっきの5匹を倒した後ロープの様にくるりと張り巡らせた光のラインに自ら突っ込んで胴体が上下に別れた。


「お前僕の能力を知っているか?」

 あ?と怪訝な顔をする虎徹

「お前の能力ぅ?お前は人に見せれる様な異能はなくて、剣術と隠密性があるだけのやつだろう、・・・そうか今のもそっちのガキがやったんだな?恥ずかしくないのかよ自分の力でなにもできないくせによ!!」


「お前が今自分で言っただろう、隠密性があるんだよ僕の能力は、僕が隠して居る限りは、中級以下の魔力量の者や、修行で感性を高めていないものには見えないんだ!」

 そういって光弾を可視化する。

 とたんに虎徹の態度が変わる。


「何だよ・・・それは・・・そんなの今まで使ったところ見たことないぞ!?」

明らかに恐怖を覚えている、つまりは

「今までお前は、僕の能力が見えてすら居なかったんだな、だから俺がインチキしてるとか、能力なしと思ってたんだ。どんな気持ちだよ、今僕は腕を動かさずともお前の首を飛ばすこともできると、わかったはずだ」

 淡々と告げる、虎徹は明らかに戦意を失っている、そう考えたのが僕の油断を誘ったのか、気が付くのが遅れた。


「きゃっ!!」

 短い悲鳴が後ろから聴こえた。

 すぐに振り向くと4mはある大きな黒い狼の様な獣が神楽の銀腕に喰らいついていた。

 腕の位置からすると首を狙った牙を咄嗟に腕で庇ったのだろう。

 つい数分前に自宅で見てきた惨状を思い出し激昂する。


「虎徹ぅ!とうとう神楽にまで手を出そうとしたな!!」

 虎徹の方は向かずに狼のほうを向いたまま光弾を2つ飛ばす。

 後ろでパンと肉の弾ける音がする、ほとんど同時に

「ぎゃぁああ、俺はやってない信じてくれ、殺さないでぇ!」

 と、惨めな命請いが聴こえる。

 その間も狼に何発か光弾と刀を見舞ったがすべて回避されている。

 こいつさっきまでのと明らかに動きが違う。


「そいつはゆがみから出てきたけど・・・制御できなかったんだよぉ、どっかいったから忘れてたけどよぅ・・・」

 こいつさっき制御できるから問題ないみたいなこと言ってたくせに・・・ということはこの狼は他のどこかで被害を出してる可能性もある。



『グルルルルルゥ』

 しかもこいつはさっきから僕の攻撃をいなしながら、神楽を狙ってる節がある。もしかすると既にどこかで、神楽と同じ位の子どもを襲って味を覚えたのかもしれない・・・。

 ちらりと虎徹のほうを伺うと虎徹は右腕が肩からなくなっていて苦痛に顔を顰めていて、結構な量の血が地面に零れている。

 

 弱った無防備な餌が近くにいるにもかかわらず執拗に神楽を狙うということはやはり味を覚えているのだろう、ならば

「神楽、この異形絶対にここで仕留める!力を貸して欲しい」

 最愛の女性に声をかける。

「はい!暁さん!!」

 頼られて嬉しいのか神楽は満面の笑みで答える。

 

 しかしだ、この狼どういうわけかこっちの物理攻撃も避けるし、光弾も見えている様でむちゃくちゃ避ける。

 こちらとしても一撃まともに受ければ骨ごと噛み砕かれそうな馬鹿力である、なるだけ避けることに専念しなくてはならない。


 神楽のほうも集中して狙われるので防御に専念している、夜で目が利かないので咄嗟に対応できる格闘フレームを選んだのが、今は裏目に出ている。

「暁さん、この犬明らかに強いです!」

「わかってる。これは僕らでは倒せるかどうか・・・」

 最悪それでもいい、あと5分もしないうちに桐生家か雪村家の増援がくるだろうからだ。

 

 そんな消極的な考えを笑う様に、僕たちの敗北はすぐそこまできていた。

 それまで神楽を狙っていた狼が急転回してこちらに攻撃を向けてきた、がぎりぎり反応できる

 (加速を行ってなかったら間に合わなかったかも・・・・)

、体をぎりぎりまで倒してその牙を避けようとしたが、体が思う様に動かせなかった・・・・?


「いやぁぁああ!暁さん!!」

 神楽が叫び声をあげる。

 直後左腕と肩と腹部に激痛が走る。

「ぐぅあっ!お前・・・虎徹ぅ・・・!!」

「へっ、へへ・・・」


 戦意を失っていたはずの虎徹がいつの間にか僕の横まで来ていて、狼に意識を集中していた僕の回避を邪魔したのだ。

 その目の空ろさは既に正気ではないのだと僕に知らしめる。

 何たる失態か・・・

 狼の口は僕の左腕を咥え込み、その牙が痛みの走った部分に食い込んでいる。


 神楽が何かを叫ぶけれど、虎徹が何か喚いているけれど、今僕ができるのは・・・・

「砕け・・・光麟弾兎!」

 自由な右腕で何度も狼の胸の辺りを暁光で突き刺し、同時に光弾を何発も撃ち込む。

 普通の異形なら一発で肉が砕ける様な威力のはずだけれどこいつは抵抗力があるのか致命傷とはならない・・・。


「ぼ・・くが、これ以上神楽を護れない以上、お前をここで殺さないと・・・。」

 体に大きな振動が響く。痛みに視界は歪む。

 狼が僕を咥えたまま移動している様だ、景色がどんどん向こうに流れていく。

「光麟弾兎」

 

 神楽が追いかけてきている声がするけれど、少しずつ遠くなる。

 森の中で迷うのは危険だから、もう追いかけてこないで・・・・。

 父も母も死んでしまった、姉が一人になってしまったけれど、君が無事でいてくれさえ居れば僕は、もう十分だから・・・だから。

「光麟・・・弾・・・」 


 何回刀を突き刺しだろう・・・何回光弾をぶつけただろうやがて僕の視界からは光が消えていって。

 僕、近衛暁の世界は闇に落ちた。



プロローグと書いたからには、1回で終わらせないといけない、と思って書いた所思ったより長くなりました。

1時過ぎた夜のテンションで書いたらいけませんね。

明日の朝見たら悶えそうな気がしています。

コレはなかなか読んで頂けない気がしますね。

TSF系の異世界転生物を目指して書いてみようと思っています。


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