第68話:大水練大会準決勝!
おはようございます!暁改めアイラです。
昨日はバトルにお引越しにトイレに大金星に、イロイロと大変な一日でしたが、抱き枕を抱いて寝れば大体の疲れは吹き飛ぶものです。
抱き枕はボクかユーリかアイリスかわからないけれど・・・。
目が醒めるとそこには既にメイド服に着替えたナディアの姿があった。
「おはようナディア・・・今日もはやいね。」
ユーリとアイラはまだ眠っている。
昨日のシリル先輩との試合に敗れたショックからなのか、ユーリは夕べ珍しく甘えたがりだったので、アイリスとナディアと3人がかりで散々、かわいがった。
そのおかげか今はスヤスヤと穏やかな寝息を立てている。
昨日のユーリの追い詰められ方がなんだったのかわからないけれど、そのあとのコロネへの対応の仕方を見るに、別に今すぐどうこうということはないだろうけれど、少し心配だね。
それはそれとしていつものかっこかわいいユーリもいいけど、安心しきった顔で寝息を立てるユーリもやっぱりいいよね。
まるで眠り姫の様な婚約者を、起こさないようにベッドから降りたボクは着替えるために部屋に戻った。
部屋の前にトリエラが居たので、一緒に部屋にはいる。
最近ボクがだいたいユーリの部屋で寝るので、毎朝トリエラはボクの部屋の前か中でボクが来るのを待っている。
「マスター!おはようございます。今日も良いお天気ですよ」
どれくらい待っていてくれたのだろうか、イヤな顔ひとつせずいつも笑顔でボクに仕えてくれる。
穏やかなバスタイムという不順な動機で契約した主従関係だけれど、トリエラのボクへの忠節は疑いようもない素晴らしいものだ。
気遣いやら器用さやら足りないものも多いけれど、今ではトリエラの顔を見ないと朝を迎えたという気がしないときもあるし。
尻尾と耳もたまに触っておかないと落ち着かない。
抱きしめれば甘い匂いがするし。
なでりなでり。
「キャッ♪マスター、うれしいですけれど出来れば一声かけてからにしてくださいよ。」
いきなりおなかやのどをさすっても声に♪が乗っちゃうくらいボクの事を好いてくれる。
可愛いメイドだ。
「トリエラ、いつもありがとう。」
「こちらこそですマスター、トリエラは一生マスターについてまいりますから、いつまでもやさしいマスターでいてくださいね?」
朝からトリエラとちょっと過剰なスキンシップをとったら緊張がいい感じにほぐれた。
今日も朝から水着に着替えて、学校に行く支度をする
水着といってもこの世界の水着は夏服みたいなものだし。
この時期は軍官学校生がみんな水着で学校まで通ってくるのであまり恥ずかしいとか思わなくなってしまったね。
まぁいつもよりもボディラインが透けて見えるから、制服よりは恥ずかしいけれど。
今日は準決勝からなので、一日の日程は・・・午前中準決勝2試合、お昼を挟んで決勝戦、その後明日のコンテストのための出場者発表だ。
競技場につくとみんなと別れて、ボク用の選手控え室に向かう。
控え室につくとそこには・・・
「おはよう、アイラ様。」
「おはようアイラちゃん!」
マガレ先輩とジルコニア先輩が居た。
「お、おはようございます?ココボクの控え室ですよね?」
部屋の入り口を確認する、うん昨日使ったのと同じ部屋だ。
「そう、だね」
「うん、そうだよ、昨日アイラちゃんが暴漢に襲われた事件があったでしょ?それで同じ女性同士ということで、学長から私とマーガレットさんに声がかかったんだ。今日はずっと近くにいるからよろしくね。」
それはそれは、でも先輩方をメイドの様に使うわけにもいかないよね。
「えっと、お礼は近いうちにしますね。助かります。」
ペコリと頭を下げると。
「アイラ様は、カワイイ、だから守る。」
マガレ先輩はボクの手を握りしめて、淡々と言った。
「ん、ちっちゃい。やわかい」
ほぅっとした表情でボクの手を握るマガレ先輩はもしかすると、ちいさくてかわいいもの好きなのかもしれない。
「私はアイラちゃんとは昨日で友達になれたっておもってるから、お友達を守るのに、理由なんていらないよね?」
そういって朗らかな笑みを見せるジルコニア先輩は最初から今日は眠そうではないね?
「先輩方・・・・ありがとうございます。」
ボクみたいな新参者のために、心強いね。
「ところでマーガレットさんは・・・どうしてアイラちゃんを様って呼ぶの?」
ジルコニア先輩がごもっともな疑問を提示する。
「ん・・・・アイラ様はユークリッド様のご婚約者。」
「そうですね。」
それを訊いて驚いた顔のジルコニア先輩。
「えぇー!?ユークリッド様の恋人って、サーリア姫様じゃないの!?」
そのうわさ、本当すごいね、みんな信じてるね。
ジルコニア先輩に少し説明すると、様付けで呼ばれそうになったのでやんわり断る。
ついでにマガレ先輩にも、学校に在学中はちゃんづけで呼んでもらうようにした。
・・・・・・・
時間になり教官が迎えにきて、ボクはフィールドに向かう。
西の投入口までくると実況の、昨日と同じアルフレッド先輩の声が聞こえ始めた。
「それでは選手の準備が整った様であります、早速登場していただきましょう!東のコーナーからぁ!ブリミール・イース・フォン・ガルガンチュア選手22歳、近衛戦技兵課・特務戦技兵専攻で首席です。剣術の腕は折り紙付き、昨日は水系召喚士のペリー選手と北の戦士レギナ・フォン・コランダム選手をいずれも5分程度で下しております。今日はステータスの化け物アイラちゃんを相手にどの様な戦いを見せてくれるのか!私たいへんに楽しみであります」
ブリミール先輩は灰色の髪に異様に長い剣を持った細身の男性だった。
あの長い剣でどう戦うのかちょっと楽しみだ。
さぁ次はボクだ。
「それでは登場していただきましょう、軍官学校のニューヒロイン!ステータスの化け物!金髪の幼い天使!既に王様からも個人的に依頼を受けていた謎多き美少女!アイラ・ウェリントンちゃんだぁああ!」
(まだちゃん付けなんだね?別にいいけれど)
そう思いながら水の中に身を躍らせると
『ワァァァァァァァァァァァァァァァァ』
(!?)
ちょっと引くくらいの大歓声!
(ボクものすごく人気でてるのかな?)
コレもカリスマの影響なのか、場内はボクへの応援が圧倒的に多い様だ。
正面を見やれば、水面を歩くブリミール先輩が憎憎しげにこちらを見ている。
あぁー1年のなんかに人気が負けてーとかなのかな?
(そんな怖い目で見ないでよ?普通の9歳なら泣いてるよ?)
「早速始めて頂きましょう、準決勝第一試合!開始です!!」
教官が手を上げ開始を宣言する、ボクは早速スクリューで高さをあわせ、水上歩行のブリミール先輩に対峙するが・・・
(速い!・・・でもユーリやエッラより数段遅い?)
直進してきたブリミール先輩のスピードは予想以上だったが、その剣戟は思いのほか遅かった。
剣が長いせいだろうか?
いやそれよりも・・・。
「ブリミール先輩いまのは!?」
そういうとニヤニヤと笑うブリミール。
「ほぅ、気づいたか、腕自体は悪くないようだ、だがやはりガキ、時流を見る目がなかったんだなぁ!」
そういってブリミールは更なる剣戟を繰り出す。
(コイツ・・・!?)
「先輩!殺しはご法度です!」
「事故死くらいいつあってもおかしくないさ!ちょっと熱が入ったってなぁ。」
今度は魔法までかぶせてきた、寸止めする気どころかさっきからボクの体を真っ二つに出来る様な斬撃を放ってくる。
(うん3倍加速でなら会話も成り立つ程度には喋れてるか。)
ボクは確かめたかったことを確かめたので、本気の一撃には本気の一撃で応えることにした。
ボクは水の中から後方宙返りで飛び出しつつ火燕術で30の燐片を飛ばし目くらましする。
手早く水面に降り立ち、構える。
この技には、少しでもズレがあると弱いからね。
水上歩行のほうが、いいだろう。
(7倍加速!)
とたんに先ほどまでの比ではなく時間の経過がゆっくりになる。
燐片に一瞬体勢を崩していたブリミールがこちらに向かって歩き始める、いや走ってるのか一応。
(絶影!)
以前よりもはるかに強化された絶影、加速は暁の頃は5倍までしか使ったことがない。
加えて、魔力による各種強化、素の筋力が低いので、筋力はたぶん暁と同じくらい。
でも風の魔法で空気抵抗を下げ、暁光には魔力強化を施した。
そして加速7倍による圧倒的速度を乗せた一撃は、いともたやすくブリミールの右腕を切断した。
勝負は決した、加速を解く。
「き、決まったあぁぁぁぁなんという速さ!なんという一撃か!?ブリミール選手の右腕が一瞬切断されてしまいました、救護班早く行ってください!いつの間にか水上歩行まで披露していたアイラちゃん、一体いつ覚えたのか!まさか大会中に覚えたというのか!?」
大歓声が響き渡りボクの勝利を祝福してくれている。
正面のユーリの居る辺りに手を振る。あぁいたね、きれいな金髪が目立つね。
ちらりと下を見ると。
救護の30過ぎくらいの女性教官に腕を繋いでもらっているブリミール、表情は憎憎しげなままで、剣も握ったままだ。
(でもボクの勝ちだ。)
後ろを向いてうちのクラスのみんなにも手を振る。
コロネ先輩を含むうちの課の生徒たちが、ボクの勝利を祝福してくれている。
「腕も問題なく繋がった様です、それではこの一番の勝者はアイラ・ウェリントンちゃんでした!みなさん惜しみない拍sy・・・ブリミール選手何をするんですか!?」
「キャ!」
救護の教官の短い悲鳴。
慌てて振り向くとブリミールの体から黒い獣の様なシミが滲み出ていて・・・さかさまに咥えた救護の教官の脚だけが、はみ出ていた。
すぐにそれも見えなくなる。
「ブリミール!なにを!?」
剣戟が迫る!
加速を再開したボクは紙一重でソレを避ける。
「チッすばしっこいガキだ。」
「ブリミール選手!止めてください、決着はもうついています、救護のセレナ教官はどうしたんですか!?」
実況が教官の身を案じ、ブリミールに制止を促すが、ブリミールはそれをあざ笑うかの様に、先ほどまでよりはるかに魔力の充実した攻撃を仕掛けてくる。
「まったく、あんな不味い女を食う羽目になるとは・・・まぁ魔力は十分に高かったし、イノチをささげた食材に文句はいえないよなぁ」
魔力・・・?食材・・・?
「ブリミールまさか!教官を食べたんですか!?」
刃を交えながらのボクの問いかけにさらに喜色を浮かべたブリミールは
「おいおいチビ、お前にはアレが他にどんな行為に見えたんだ?男が女を飲み込むのなんざ食事しかないだろうが、それともあれか?セックスにでもみえたか?マセガキが、そりゃあ逆だ。安心しろお前はこのあとどうやっても俺からは逃れられん、オレがグレゴリオにかけた労力を無駄にしやがって・・・まぁ貴様の魔力はかなりうまそうだからな、じっくりちょっとずつ回復させながら食わせてもらうよ。」
こいつは気が狂っているな、ボクを仮に倒せたとしても、周りには多くの観客が居て王の護衛までいる、コイツが無事に帰れるとは思えないが・・・
「お前が助かりたきゃ俺を殺すしかないぜ?でもお前みたいなガキに人が殺せるかよ!?人の命を奪うかく」
殺すしかないなら殺すよ?ボクは幸せに暮らしたいんだから。
ブリミールの首と胴体を切り離すと、その場でさっきと同じシミの様なものが大きく広がってそのまま霧散した。
そして、その場にはブリミールの死体だけでなく、上半身のない救護のセレナ教官の下半身と、部分的に欠損している大量の遺体や魔物と思われる動物の部品、それに、まだ息のある手首足首のないきれいな20歳くらいの裸の女性が2名とメイド姿の13歳くらいの女の子が残された・・・。
ボクは他は無視してとりあえず生きている女性3人を沈まない様にささえた。
(状況はわからないけれど、罠ではないと信じよう。)
「何だコレは!えっと教官方どなたでもいいので、今散らばったものの回収をお願いします。えー一旦大会の進行を中断します。状況が定まり次第放送いたしますので暫くお待ちください。アイラ選手も一旦控え室にお戻りください。」
競技場内は騒然となっていたが、ボクは女性の教官に女性たちを預けてから声に従いフィールドを後にした。
風邪が治りません、あとこの話とは別に2つ書きたいお話があるのですが、この話の投稿ペースが遅くなるのが怖くて書き出せません、実際には少しだけ書いているんですが、投稿に踏み切れませんまずはアイラを13歳に進めなければ・・・がんばります。
アイラちゃん3年半ぶりにお手手を血に染めました。




