表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/182

第67話:大水練大会3日目の終り

 こんにちは、暁改めアイラです。

 グレゴリオの魔手も退け、コロネ先輩の引越しも大体終り。

 エッラがマガレ先輩を破るという大金星を挙げて、大水練大会は全学年合同の大会なのにベスト4に既に1年生が2人混ざっている。

 これは、ひょっとしてひょっとしちゃう?

 とはいえ相手は学校最強の魔導特務兵候補今はただ二人が大きな怪我をしないように祈るばかりだ。



「それでは東から入場していただきましょう!シリル・オーガスト選手!」

 名前を呼ばれてシリル先輩が花を散らしながらフィールドに降り立つ。

 剣気が漏れ出している様だ・・・。


「シリル選手を知らないものはこの会場には居ないでしょう!当代最強の1角、来年の王国24傑に選ばれることがまことしやかにささやかれる、稀代の魔法剣士です。今日は西のシュバリエールの監督生として、未来の主君に実力を示すことができるでしょうか!?」

 シリル先輩はごくごく落ち着いた雰囲気で、 直刀を抜き放った!

 それだけで会場内に充実した剣気がピリピリと流れる。


「気合も十分のようですね!続きまして西からは、そのシリル選手の未来の主君になるかもしれないホーリーウッド侯爵家の直系、ユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッド様の登場です!!」

 名前を呼ばれた途端水に浸かるユーリ。今回は最初から水の抵抗を消している様だ。


「ユークリッド様は剣士課ですがすばらしい強化魔法をいくつもお持ちです。前の試合でもその水中移動魔法で、マグナス選手を翻弄いたしました。加えて、類稀な容姿もお持ちです、ご覧ください、あの美しい姿・・・、さぁ未来の英雄たるか!試合開始の時間です!」

 教官が手を上げて試合開始を宣言する、よく見るとさっきボクのときにいた教官とは別だ・・・そりゃあれだけ東有利な判定を続けていれば罷免されるか・・・。


 それよりも・・・加速を発動させる。

 ユーリとシリル先輩の試合では絶対に今のアイラの通常速度では見落としがでる。

(まだ自分が戦ってるんなら、加速なしでも少しはついていけそうなんだけどね。)


 先に仕掛けたのはユーリだ、シリル先輩のほうが格上だからユーリはとにかくせめて行くしかないものね、水の抵抗をまったく感じさせない動きはすごいね、あの強化魔法ボクにも教えてくれないかな。


 シリル先輩が水上歩行で待ち構えユーリは足元から高速で攻め寄っていく。

 普通は水上歩行のほうが有利なんだけれど、あれはまた違うな、あれはユーリが低すぎて戦い難いや・・・。

 水中であることを感じさせないユーリはあろうことか頭まで水に沈めた低い姿勢でソレも高速でシリル先輩の足元を狙った斬撃を繰り返す。

 正直いやらしい攻撃ではあるね。

 それにあの位置からだと・・・水着とはいえシリル先輩の太ももや股座がずっと視界に入る形になってるんじゃないかな・・・?


 そう考えるとちょっと嫉妬の様なものがこみ上げると同時に、グレゴリオと戦ったときの自分の腰の位置と、グレゴリオの目の高さを思い返す。

(あれ・・・?ひょっとして・・・)

 なんということだろうか、あろうことかボクは、ボクを性奴隷にしてやろうかとかいっていたあの好色なグレゴリオの目線の高さでずっと腰を振っていたに違いない。

 そう思うと恥ずかしさ・・・というよりは、見られていたかも知れないという気持ち悪さがこみ上げてきた。

(忘れてユーリの試合に集中しよう・・・。)


 軽い吐き気にも似ただるさを感じながら、ボクはユーリたちのほうへ視野を戻す。

 足元からの攻撃に少し苛立ったのかシリル先輩は辺りに蔦を這わせ始めた。

 あれならばユーリも自在に動くのを阻害されるだろう。

 ってあれ?一瞬で蔦を切り飛ばした・・・?

(水の中で蔦を・・・ゆれる植物を斬るだなんてかなりコツがいることだと思うけれど)

 シリル先輩も良く裁いている、がまだ先輩のウリの花剣をほとんど使っていない。

 

 と、ここでシリル先輩が動いた。

 シリル先輩は水面を蹴り跳躍すると観客席側の壁や西側校舎の塔の壁に向かって蔦を伸ばした。

 そして張りつめさせて、その上に乗った。

 ほとんど曲芸だね・・・。


 会場は盛り上がっている。

 ユーリはシリル先輩相手に水中から出るのは悪手と考えたのか、水中から魔力を込めた閃撃を飛ばしている様だ。

 たまに水面が盛り上がって、目に見えない何かがシリル先輩の方に飛んでいくのがわかる、シリル先輩はそのほとんどを回避しているが、蔦に当たるものだけは自身も閃撃を当てて打ち落としている。

 

2人はまるで迷いがない様に次から次に手を変え、対応し、淀みない技の応酬はまるで決まったステップでも踏んでいるみたいだ。

少し嫉妬、出来ればボクがユーリと踊りたかった・・・。


でもそれは難しそうだね3倍加速しているボクの主観でも2分に及ぶ水中での激戦は、スタミナに劣るユーリを追い詰めているはずだ・・・が?

ユーリの攻撃が唐突に止んだ

小技では意味がないと気付いて得意の後の先狙いに切り替えたかな?


あれ?そういえばユーリはもう現実に7分くらいは水から上がってきていないけど息できてるのかな?


息接ぎを忘れて失神とかしてないよね?

少し不安になる。

その時フィールド内に突然花が咲き乱れた。

意味が分からず実況に頼るため耳を傾ける。

ゆっくりだけどちゃんと聴こえるね。


「あーっと!これは私も初めて実物を見ました、シリル選手の魔法剣技!!花剣・豊穣大宴オータム・ハーベストだ!!この技は周囲の魔法を停止させ魔力を奪いとり、その魔力が高いほど大輪の花を咲かせる技です!加護スキル持ちでないと防ぐことができず、対魔法使いにおいて無敵に近い威力を発揮する『花剣士』シリル・オーガストの2大奥義の1つだ!」


実況ってすごいね、初めてみる技でもすぐさま説明できるなんて。


しかしシリル先輩が奥義まで出すなんて、ユーリは善戦したみたいだけど・・・?


先輩が再び水面に降り立って、ユーリがいる場所にあたりをつけて閃撃を放つ

花が水面に咲き乱れていて水の中がよく見えない

すると閃撃を放った場所に水柱が上がり水から飛び出たユーリがシリル先輩に高速で斬りかかる!!


あ、普通にシリル先輩に先に当てられた・・・。

軽く肩を直刀の峰で切られきりもみして水に落ちるユーリ


「ユーリ!!」

つい人目も憚らず叫んでしまう。

加速状態で短く叫んだだけだし、周りは熱狂しているから、はしたない娘だなんて思われてないはず


加速はもう必要ないので切るとたんに歓声も実況の声もクリアになる。

「決まりましたー!シリル選手、未来の就職志望先相手にも実力を出して勝利を掴みました!」

8分に渡る水中戦、ユーリは最後も水の抵抗を感じさせない動きだった。

先輩のオータムハーベストは発動し、ユーリの魔法力で大輪の花を咲かせていたにも関わらず・・・


つまりユーリの使っていた水の抵抗を軽減する術は、魔法枠ではない可能性が高い?

それはそれとしてユーリは肩を押さえているものの命に別状はない様だ。

シリル先輩がユーリにかけより肩に手を当てる。

治癒術らしい・・・、シリル先輩が手を放すとユーリは肩を押さえるのを止めた。

(治癒魔法まで使えるなんて!シリル先輩は万能手だね)

「本日の日程はこれで終了となります!また明日の準決勝でお会いしましょう!最後をまさに花々・・しく飾ってくれた勇者たちに拍手を!!実況は軍務課・情報専攻アルフレッド・ライターでした。」

気がつくと実況放送も終わりを告げている、ボクは急いで席を立つと人ごみを掻き分けて、ユーリが出てくるはずの出入り口に走った。



「ユーリ!」

その姿を認めた時、ボクには嬉しさが一番大きかった。

大事なユーリがケガをしたけど治る程度のもので、今そこに無事でいるのだ。


けれどユーリは苛立っていた。

今まで一度だって見たことのない余裕のない表情。

ボクを見る目が怯えているみたいでゾクリとした。

「アイラ・・・僕、負けちゃった。」


ユーリはボクの姿を認めると途端に柔らかい表情になって、もういつものかわいいユーリになっている。

「見てたよ、すっごく格好良かったよ!あのシリル先輩が!ジャン先輩にすら寸止めできた先輩が、ユーリには当てざるを得なかったんだから!・・・すごいよ」

ユーリの手を握りしめて、ボクの感動を伝える。

慰めるでも励ますわけでもなく、偽らざるボクの気持ち。

でもユーリは納得いっていない様だ。


「ダメだよ、このくらいじゃ・・・この程度じゃ、大切なモノを守れない。アイラを守れないよ・・・」

ユーリは悲しげに目を伏せる。

そんなに追い詰められることだろうか?

なぜそんなに落ち込むのか・・・・

わからないし、本当ならボクは彼を慰めるべきだったのかもしれないけれど。

弱っている彼を見ているとなぜか愛しさが込み上げた。


「ユーリ・・・」

「アイラ・・・ん・・・」

名前を呼んでから有無を言わさず口付ける。

ユーリは拒みはしなかったけれど、キスが終わると


「アイラ、慰めないでよ。」

と悲しそうな表情をした。

「慰めたつもりはないよ?ボクがしたいからしたの、ユーリがいけないんだよ?そんなに弱った顔してるから、いじめたくなっちゃうんだ。」

そういってもう一度唇をこじ開けた。


「うん・・・ありがとうアイラ、少し元気がでた。」

だから慰めたつもりはないんだけどね?

元気が出たなら良かったよウィンウィンの関係ってやつだ。

「それじゃ、帰ろっか?」

ユーリがいって腕を差し出す。

ボクはその腕に体を預けて歩きだした。


水着だからか制服の時より体温が近くて恥ずかしいかも

「アイラは・・・まあアレ相手なら勝ったよね?明日はどっちが相手?」

ユーリってば、折角ボクが水着で、二人きりだというのに・・・。

「明日はブリミール先輩という方からかな。」


「そっか、頑張ってね?東にすりよってるヤツには負けないで欲しいけど、ケガが無いのが一番だからね?」

ユーリも結構東がキライだよね。

以前に「狂い姫」の話がキライだといっていたし関係あるのかな?

「ありがとうユーリ、明日はボク頑張るからしっかり見ていてね?」

 でも心配も、応援してくれるのはうれしいから、ボクはがんばるだけだよね。


 それからみんなと合流してから、屋敷に戻った。




 屋敷に帰ると、預かったままになっていたコロネ先輩たちの荷物をあてがった2階東側の部屋に出した。


 この部屋は間取りがやや特殊で、廊下から入ってすぐに狭い部屋があり、その奥にメインの部屋があるつくりになっている。

 狭い部屋と言っても、6畳間ほどのスペースがあり人一人寝たりするには十分だ。

 本来は秘書官でも待機させて、奥で執務をとったり来客と談話する部屋だけれど。

 同じ部屋が西側にもあるので東側はコロネ先輩とフィレナの部屋とした。


 表向きは手前の秘書室がフィレナの部屋で奥がコロネ先輩の部屋だけれど、見てた感じコロネ先輩はかなりフィレナにベッタリみたいなので、たぶん一緒に寝たりすると思う。




「アイラ様!これからコロネのことはコロネって呼び捨てにしてくださいね!アイラ様はコロネの恩人で、憧れの人なんです。ユーリ様もコロネのことは呼び捨ててくださいね。」

 食後にコロネ先輩はそんなことを言い出した。


「コロネ先輩、憧れの人だなんて・・・ボクにはちょっと荷が勝ちすぎますよ。」

 実際に二人を保護してるのはホーリーウッド家だしね。

「そんなことありません!アイラ様はあの悪辣な人からコロネを守ってれたコロネの勇者様なんですよ!それに、コロネの初めてのゴニョゴニョ・・・」

 うーん最後あまりよく聞こえなかったけれど、先輩が後輩を様づけで呼び、後輩は先輩を呼び捨てというのはちょっといただけないよね。


「それならさ、お互いに呼び捨てたほうがいいんじゃない?」

 ユーリが微笑みながら告げる。

「ユーリ?」

 何でそんな先輩に味方するようなことを?


「コレからコロネ先輩・・・コロネはこの屋敷で暮らす家族になるんでしょ?年の近い親戚や家族なら、呼び捨て合っても問題ないよね?」

 む、家族か、ソレを一番大切にすることを信条にしているボクとしては異論は挟めないね。

「それなら認めざるをえません、これからよろしくコロネ」

 そういってボクが努めて自然に呼び捨てると。

「あ・・・はいよろしくです。アイラちゃん♪」

 ガクゥっとみんな力が抜ける、ココはアイラ!って言うところじゃないのかな?

「ちょっとコロネ?今のは呼び捨てるところじゃないんですか?」


 するとコロネは少し申し訳なさそうに。

「実はコロネあんまり人を呼び捨てるのになれてなくって、フィレナの事だって学校では無理やり呼び捨てたりしてましたけど、お部屋だとフィレナお姉ちゃんって呼んでますし。」

 という。

(ふむ・・・持って生まれた気質まで否定しようとは思わないし)

「それじゃあ呼びやすい様にしていいです。でも様は禁止ですからね。」


 こうしてボクたちの屋敷に新しい家族を迎えて、ぎこちなくではあるけれど、初めての裸の付き合いみんなでおふろも済ませて、今日もボクはユーリとアイリスとナディアと4人で眠りについた。

今のところ「みんなでおふろ」にユーリは含まれて居ません、ソニアとコロネが恥ずかしがるので。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ