第65話:大水練大会本戦2回戦第1試合
※本文中で皇太子の名前をウェルズにしている部分があったので修正しました。
こんにちは、暁改めアイラです。
お昼休みも終りの時間これからいよいよ2回戦というところで、思わぬ横槍というか。
たぶんグレゴリオからの妨害だったんだと思うんだけど。
グレゴリオと一緒になってコロネ先輩をいじめていたやつらにちょっかいを掛けられたので、社会的に抹殺した。
いやたぶん抹殺した?時間がなかったから結末みてないんだよね。
ボクは最初に泣きついた名前も知らない先輩の胸に抱かれ撫で付けられながら。
「アイラちゃん大丈夫?」
「もうすぐ試合だけどがんばれそう?」
なんて優しい言葉をかけてもらったあと。
「おらぁあ立てぇ!」
「男の風上にも置けないやつめ」
「女の敵!!」
「あんな小さい子に手を出そうとして!」
「よく生きてられるわね!!」
なんてバックコーラスを聴きつつその場を後にして、グズりながら控え室まで送ってもらった。
控え室まで着くと名も知らぬ先輩は水を注いで渡してくれた。
そしてお迎えの教官が来るまで背中をやさしくさすってくれて、ちょっと騙している様で申し訳ない気分を味わいながら過ごした。
それから3分ほどでドアの外から教官に「試合もうすぐなので準備お願いします。」
といわれて立ち上がり、部屋を出る前に先輩に振り向く。
「あの、ありがとうございました。おかげ様で落ち着きました。」
「いいのよ、貴方みたいなかわいい子をたくさん撫でさせてもらったから。役得役得♪」
そういってウィンクする先輩はとても素敵な人だ。
「ボク、アイラ・ウェリントンです。」
そういえば自己紹介していなかったね。
「私はユミナ・ラズリ、2年の補助術師課よよろしく!試合応援してるから、がんばって」
にこやかに応えてくれるユミナ先輩に別れを告げ、ボクは競技場のフィールドへ戻る。
「さぁ!第2回戦がいよいよ始まろうとしております。選手の準備が出来たようですので、早速入場していただきましょう!」
実況の先輩の声が聞こえてくる、どっちからかな?
「東のコーナーから!グレゴリオ・イシュタルト殿下の入場です、1回戦では相手選手の不調により華々しい活躍は見られませんでしたたが、果たして今回はどうか!?」
向こう側からグレゴリオが水に入るのがわかった。
「続きまして西のコーナーから!!今大会最年少!ステータスの化け物!アイラ・ウェリントンちゃんの入場だぁ~!!」
相変わらずボクはちゃんなんだね?まぁ親近感があっていいけれど。
「ただいま入った情報によると、休憩時間中に女子トイレに居るところを性的暴行目的の二人組の男に襲われて、果敢にも撃退してきた模様です。見た目はかわいいが、本戦出場は伊達じゃあないぞ!」
あぁ罪状それで確定しちゃったのか、グレゴリオの弾劾には使えない感じだね。
水に入り定位置につきながら80mほど先の王族席を見ると、ヴェルガ皇太子とジークがこちらをみていて目が合うと首を縦に振っている。
(使えってことだね。)
ボクは預かっている魔法道具のスイッチを入れた。
試合開始が合図されて、ボクはスクリューの魔法を使い体を膝まで水上に押し上げて、高速での接近を開始した。加速はなしだ。途中グレゴリオが火炎弾を数発放ってきたが最短距離を行くために当たらないものは無視した。
まったくお話にならない、至近弾0か。
目の前まで迫った。
払暁だと短いので、暁光を抜き放ち右胸付近に突きつけ寸止めする。
(あ、しまった。まだ悪行も喋らせてないのに、寸止めで終わらせちゃった。)
と思ったら。
「そんな攻撃は余には当たらぬ!」
そういってグレゴリオは剣を抜き放ちボクに向かって切り上げた。
とりあえず回避。
「オーッとグレゴリオ殿下、寸止めされた様に見えたが、回避判定とのこと。教官の手も挙がっていない!」
(は?なんだいそれ・・・・?ってか今ので回避なら今日の寸止め判定勝ちはエッラの試合以外無効じゃないかな?)
「貴様アレほど、余には刃向かうな、コロネと同じ様に余に道を譲れと申し付けたのに、抗ったな?貴様の勝ちはないぞ?この試合の審判の教官は東派だからな。貴様に勝ったあとは貴様の家をつぶし、一族郎党奴隷にしてやる、貴様もコロネ同様見た目は華やかだからな、余が愛玩してやろう。」
不恰好に剣を振りながら喚くグレゴリオ、会場がシンと静まりかえっているけれど気付いているかな?。
審判の教官は明らかに焦っているけれど、実況役の生徒は事前に聞いていたのか普通に実況を続けている。
「ボクはヴェルガ皇太子から、グレゴリオ殿下の悪事を白日の下に晒す様に依頼を受けています。」
遅いグレゴリオの剣戟を交わしながら言葉をかける。
「今ならば、まだ致命的なことをされてない今ならば、謝罪をすれば軽い処罰だけで済むかもしれません。」
「処罰だと!?何者も王族を裁くことなどできぬわ!」
いや王様ならできるでしょ?
「それはそうと、アントニオとコルティスはどうした!貴様を足止めして不戦勝の予定だったのに無駄に煩わせおって」
ちょっとまって?もしかして本気で自分なら勝てるつもりで居るの?イミガワカラナイよ!!
「二人ならトイレ中に襲ってきたので、びっくりして両足を・・・・これ以上いえません。」
「貴様!よくも余の家臣を!!王家への反逆者め!!」
もうそろそろ相手するの疲れてきたよ。皇太子からの依頼だっていったのに、ボクが派逆者かい?
「付き添いますから、コロネ先輩に謝罪されませんか?」
再びグレゴリオの首に暁光を突きつけた。
そもそも水上戦闘の術を持たない君がなんで、水練大会で勝つつもりでいるの?
「うるさい!貴様は大体さっきから余を見下ろして!不敬であるぞ!!セルゲイは余を王の器だと言っておったのに、どうして貴様らは余に平伏せぬ!!」
セルゲイって17歳の大きい子どもでしょ?あんなのに持ち上げられてなんでホイホイのっちゃうのかな?ちょっと軽すぎじゃない?
見下ろしてるのだって、戦いやすい様に身長126cmくらいのボクは足元から35cmくらいを水につけたままほとんど水面にでて戦っている。
それにたいして11歳、155cm超えの恵まれた体躯の君は、胸まで水の中だもの。
もうコレだけ暴言吐けば満足だよね?
「ねぇもうボク7回くらい君に寸止めしてるけど、判定がでないよね?」
「ははは、まだわからないのか?教官を脅してるからな、余に寸止めしても判定勝ちは出来ぬし、余の体を傷つければ反逆罪で性奴隷にして、街中を全裸で歩かせてやる、無論四つんばいだ。」
好色そうに笑いながら言う、11歳・・・かわいげないな。
「わかったじゃあコレで終りね。」
ボクは次は寸止めしない。
ボクの繰り出した一撃は、剣を振り上げていたグレゴリオの手首を刎ね飛ばした。
「ぎゃああああああああああああぁぁあああああ、クソチビ絶対に・・・絶対に・・・」
水の中に広がる真紅、痛みに怨嗟を叫ぶグレゴリオ
「き、きまったぁぁぁ!!一応医療班も向かってください。胸糞悪い試合でしたが、見事勝利を飾ったのはわれらが天使、アイラちゃんだぁあぁぁぁ!って王様!?一体何を・・・っ」
え?ジーク?
ジークが王族席から飛び降りてこちらに向かってきている。
「ほれみろ!おじい様が・・・貴様を、反逆者として処罰するぞ!」
ジークは目の前にたどり着くと手を握りグレゴリオを殴りつけた。
「おじぃっゴブァ!?」
縋るグレゴリオにもう一度蹴りをくれる。
「グレゴリオ貴様さっきアイラやコロネをどうするといったか!!」
「!?」
猛るジークは自分のたぶん孫のはずのグレゴリオを睨みつける・・・ってか普通に水上歩行・・。
救護班がたどりつきグレゴリオの手首を繋げ様とするが・・・
「治療をやめよ!!」
ジークが叫び、救護班がどうしていいかわからないという表情になる。
「お、おじい様、今治療せねばグレゴリオめは一生手が・・」
「黙れい!貴様はさっき二人を性奴隷にしてさらし者にしてやるといったな?どういう意図だ?」
怒気を孕むジークの言葉にグレゴリオは竦みながらも答える。
「おじい様は英雄色を好むという言葉通り、若い頃からお盛んでした・・・ソレに倣いグレゴリオめも英雄足らんと!」
「余は和姦しかせぬわぁぁぁぁぁあ!!」
三度グレゴリオを殴りつけるジーク
「よいかグレゴリオよ、女性とはすばらしいものだ。決して男には及ぶことの出来ない世界の理を内包しておる崇高な存在だ。ソレを忘れてはならない。」
「アイラご苦労だった。あとは余の仕事だ。そなたは明日の準決勝にむけてゆっくり体を休めるといい。グレゴリオのことで胸を痛める必要もない。」
いつの間にかヴェルガ皇太子も横に来ている。
「ヴェル様・・・はい、お心遣いありがとうございます。こちらお返ししますね。」
そういって魔道具をお返しする。
受け取ったあとヴェルガ皇太子は残念そうにグレゴリオを見下ろすと、「父上・・・」と言って縋る息子に淡々と述べた。
「グレゴリオよ、貴様は王家に名を連ねながら、臣民の身を安んじることをせず横暴に振る舞い、王家の名を貶めた、ゆえにここに陛下に代わり余が裁きの沙汰を下す。大罪人グレゴリオの氏姓を剥奪し、両手を切り落とす。ただしその生涯の最低限度の暮らしは保障される。今までの悪行を恥じ、余生は静かに生きよ!」
そういってヴェルガ皇太子は自らの手でグレゴリオの残っていた左手首を切断した。
廊下を通りボクは観客席に戻る、そこかしこの観客はフィールドの王族に、さすがは公平な裁きだ!とか身内にも法を適用する為政者の鑑などという声が投げられ。
よくグレゴリオの悪行を晒してくれた。とか準決勝がんばってね。とか
そんな祝福や応援の言葉がたくさんボクに降り注ぐけれど、ボクはグレゴリオに剣を振るったときのヴェルガ皇太子の悲しそうな瞳が目に焼きついて離れなくて。
知らないうちに涙が溢れていた。
命があるだけめっけもんなグレゴリオくんなのでした。
手が切断されたので誰かにお世話してもらわないといけませんね。
今日は帰宅が遅いので、コレだけになるかもです




