第62話:大水練大会本戦1回戦観戦3
こんにちは、暁改めアイラです。
今思えばもっと速く気付けたのかもしれない。
このトーナメントのマッチングを設定したのは、おそらく東に肩入れしているやつなのだろうと
なにせ出てきた6組目もまた西対西だったのだから・・・
「えー北のコーナーより、シア・ウィングロード選手の入場だぁ、西シュバリエールの才媛フローネ・リーネン・フォン・ザクセンフィールド様の付き人でその敏捷な動きがウリのシア選手ですが魔法力も一定量あり、水上でどのような動きを見せてくれるか非常に楽しみであります。生命355魔法72意思127筋力22器用31敏捷75反応61把握36抵抗27バランスの取れた回避系のステータスだが、やや耐久面に不安があるかぁ!?」
入場したシア先輩は相変わらずのスレンダーで、男装とかさせたら似合いそうだね、キリリとした目も良い感じだ。
武器はトンファーの棍部分に刃が、ひじの方向の先端にフックの付いた形状をした特殊なものを両腕につけている。
「続きまして、南のコーナーから入りますわ、皆さんご存知、『銃姫』マーガレット・カーマイン様だぁぁぁぁ!メイン武器は火精の石弓でありながら水上でも圧倒的な制圧力を誇る銃姫は敏捷性に優れたシア選手とどのようにたたかうのかぁ!!」
マガレ先輩は長い真紅の髪を水に浮かべながらゆっくりと定位置につこうとしている。
相変わらずのムスっとしたジト目だけれど、たぶん戦意には満ち溢れている、たぶん・・・
「彼女の3年進級時のステータスは生命450魔法165意思201筋力18器用102敏捷72反応69把握82抵抗25とまさに近接魔砲兵の鑑といえるステータスだぁ14歳でありながら既に一線級の実力者でもある彼女を止められる選手は果たしているのでしょうかぁ!!」
両者が定位置に付いた。
西の精鋭同士の戦いだけれど、コレはちょっと決まりきっているかな?
ステータス的にも相性的にもマガレ先輩の圧倒的優位だ。
二人とも敏捷性が一番のウリだけれど、こと水上戦に関して言えば、跳躍することで身軽になるシア先輩と、狙い撃ちして近づけさせないことが出来るマガレ先輩では相性がつんでいる。
試合開始の合図があり、両者同時に仕掛けるかと思いきや。
シア先輩だけが一気に距離をつめマガレ先輩は一歩も動かなかった。
そしてそのまま・・・
「しょ、勝者!マーガレット・カーマイン選手!!なんということでしょうか、マーガレット選手一歩も動くことなく試合を決めてしまったぁ、時間は僅か7秒です。」
シア先輩の両腕のブレードを水の中から出した先端に短剣をつけただけの火精の石弓|(いしゆみとは言うが実際は魔法銃だ)で両方受け止めもう片方の手に握った火精の石弓をシア先輩の胸に突きつけている。
「しかしシア選手も長期戦は不利と考えたのかすさまじい思い切りを見せてくれました、敗れてはしまったものの恐ろしい速さでした!来年は対人戦闘経験も積み更にすばらしい戦闘を見せてくれることでしょう!」
動きが少しおかしかった気がしないでもないけれど。
なんだろう・・この違和感は、それでも場内は盛り上がっている、本当はもっと動くところを見たかっただろうけれど、一瞬の勝負というのも、観客は盛り上がれるものだよね。
そして続く第7試合のカードでボクはこの大会はやはり東有利に組まれたものだと確信する。
「第7試合、の選手の準備が出来た様です。それでは南コーナーから、南シュバリエール監督生!現在の学校の最強戦士の1柱4年魔法戦技課、教導兵専攻、『飛剣士』ジャン・スパロー選手!!ジャン選手は現在21歳、学校生活最後の大水練大会で何をみせてくれるのか!!ステータスは生命1610魔法91意思273筋力86器用78敏捷71反応76把握80抵抗50生命力から抵抗値まですべてが高水準!魔法力以外のすべてのステータスが学校でのトップ10位に入っている数値です。更に筋力は堂々の1位!圧巻、圧巻のステータスです。今大会の優勝候補の2大巨頭です。」
ジャン先輩は髪の毛に赤いメッシュの入った黒髪の男性で、その短く逆だった毛と、後ろだけ伸ばした髪が印象的だ。
両手にショートソードを持っていて、二刀流スタイルらしいね。
あと、当然のように水面を歩いている。
「そして、誰が仕組んだ悪戯か!西コーナーから入りますは、西シュバリエール監督生!現在の学校最強戦士の1柱、4年魔法戦技課、魔導特務兵専攻『花剣士』シリル・オーガスト選手!!シリル選手は先日誕生日を迎えて19歳異様に細く頑丈な細剣を使い、傷つけた場所から植物を生やすという特殊な剣術の使い手だ!ステータスは生命980魔法162意思296筋力42器用77敏捷77反応77把握77抵抗98後半のステータスがどうやってあわせたのか77の揃い踏み、驚異的なのは抵抗98、ほとんどの魔術的妨害や毒や麻痺などが通りません。この2名がなぜか本戦1回戦で当たるという奇跡!実質決勝戦といえるのではないでしょうか!」
シリル先輩、相変わらず紫のふわふわしたミディアムの髪が印象的だ、ふわふわというとおり濡れていない、当然の様に水上歩行だね。
手に持った武器は直刀だね、こちらの世界では珍しい片刃の剣だ
両者が指定の位置に付き試合開始が待たれる、そして・・・教官が手を上げた瞬間両者がぶれた。
慌てて加速3倍を発動する。
せっかく学校の最高峰の動きだ。一瞬だって動きを逃すものか・・・。
3倍加速でも今のアイラだとぎりぎり付いていけるかどうかの動きだね、アレってクイック使ってるのかな?
アレでクイックすら使ってないっていうのなら人間を止めてるね。
あれと加速なしで打ち合えるのなんて、朱鷺見台でも、天音義姉さん、黒乃義姉さん、神奈様、昂夜様、リアさん、テノンさん、位じゃないだろうか・・・・結構いるね。
こっちの知人だとクイックや加速ありきなら、ボクやユーリでも打ち合えはする、勝てるかはわからないけれど。
それにしても2本の剣をつかうジャン先輩に対して、シリル先輩は一本であるにもかかわらず同じ回数の打ち合いを出来ている。
左右の打ち込みに対して片方で対応しきっているというのはそれだけ早いということだ。
そしてシリル先輩とジャン先輩が打ち合うたびにその場に植物の蔓が発生している・・・?
かれこれ70合ほど打ち合ったけれど、まだ時間的には試合開始から20秒ほどの様だ。
そしてジャン先輩は一度距離をとった、バックステップ2回で40mははなれたよね?
そして追いすがろうとするシリル先輩に対して両方の剣を交差させて何か魔法剣技を放とうとしている。
「飛剣・十字燕!!」
X字の形で飛んでいく風の刃、ボクの風衝刃と異なりあれは斬るための技だ。
範囲もかなり広い、縦横に2mくらいずつカバーしている、広いフィールドだから避けれるけれど、狭い通路なんかじゃ避けられないね。
でも前述の通りの理由でシリル先輩はらくらくと避けてしまう、しかしそれでもジャン先輩の目的は達成された。
ジャン先輩は腰から4本のダガーを取り出して投擲したが、その4本のダガーはまるで意思をもったかの様にシリル先輩に向かって飛んでいく。
そして一度はじき返してもまた方向を変えて戻ってくる。
そうか・・・これが『飛剣』の由来か。
魔法力を使って剣を操作して飛翔させる。
同じ様な術を使う人は朱鷺見台にいたね。
リアさんの『煉獄技・白天破剣陣』
昂夜様の『六魂技』全般、つばささんの『七天罰刀』なんかがコレと同じ部類になるか・・・とすると対応方法はやはり。
考えていると丁度シリル先輩が対応をするところだった。
シリル先輩は大きな魔力をこめて水面を直刀でなでると水中から巨大な蔦が生え、飛んできた剣を絡め取ってしまった。
がこの程度であきらめるジャン先輩ではないその隙を突いて2本の剣をはさみの様にしてシリル先輩に迫っている。
しかしその刃はシリル先輩には届かず1本の直刀で両方の剣を斜めに受け押さえられてしまった。
そしてシリル先輩のターンにチェンジした様だ。
シリル先輩が直刀を振るうたび、花が、蔦が周囲に撒き散らされていくそしてそれはやがて飛剣と同じ様に浮遊し、ジャン先輩に迫り始める。
ジャン先輩の腕に花びらがかすり、切り傷を作った。
そこでシリル先輩もジャン先輩も動きを止め、ボクも慌てて加速を切った。
瞬間
「決まったぁ!?すごい、何があったのかまったくわかりませんでした。ただお二人が戦ったであろう場所に点々と花や蔦が散っています。試合開始から僅か50秒ほどの決着!勝者はシリル選手でした!」
遅れて響き渡る大歓声。
二人は良い勝負だったという様に手を握り合っている。
そしてこの二人の試合が終わったということは次は待ちに待った婚約者の試合だ。
しかし不安もある、相手があのマグナス先輩ということだ。
ユーリ無事に済めばいいけれど。
東びいきに組んでいるから年少で1年のユーリとマグナス先輩を当てたんだろうけれど。
仕組んだやつはきっと後悔するだろう、ユーリこそは今この場で戦ったシリル先輩やジャン先輩に匹敵する疾さを持っているのだから。
今日はココまでおやすみなさい。
水練大会終わらなくってゴメンナサイでした。あと2日くらいかかりそうですね。




