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第59話:大水練大会本戦1回戦第1試合

おはようございます、暁改めアイラです。

大水練大会も3日目、本戦が始まろうとしています。

なんと一戦目からの出番です。



正面80mほどの場所にいるジルコニア先輩は、華奢だけれど、ボクと違い水深よりも身長が高い。

本来ならこれは大きな差だけれどボクにはスクリューの魔法があるしあまり関係ないね


彼女は何事かを実況放送らしいことをしている学生を見ながら呟いているが、内容は定かではない。


そして司会役の教官が手をあげて、1回戦第一試合の始まりが宣言された。

同時に3倍加速を発動すると、全てがゆっくり見える様になる

水上歩行も飛行も一般に秘伝クラスの魔法らしいなので使い控えていく予定だ


ひとまずスクリューの魔法で体を浮かし顔は水から出しているけれど

ジルコニア先輩は・・・?その場で4つのクリスタルを射出している


アリエスからジルコニア先輩の戦術については話を聞くことができている。

結晶魔法はクリスタルを射出するが自動遊撃型や操作型、その場所にとどまる浮遊型などがあり

その役割も通信、遠隔射撃、索敵など多岐にわたる。

ジルコニア先輩は2年の頃にはすでにその道の専門魔法使いとして優れた適性を持っていたという。


(アリエスの話では、ジルコニア先輩の操れるクリスタルの数は2年の頭では4つ、終わりには12になっていたという)


つまり・・・いまは15以上の操作と設置型・浮遊・自動含めれば20〜30の結晶を操れると考えよう

となれば・・・・

あの場で水の中に設置や遊撃を配置しているかもしれない。

 目視だけでなく感知も最大にしておこう。


 今回は1発クリーンヒットを出せば終わる方式なので、生命力の低さはデメリットにならないはずだ。

 なので即決を目指して行こうと思う。

 すなわち

(加速状態から結晶の隙間をかいくぐり一気に距離を詰めて、寸止めで終わらせる。)


 

 ボクの戦法は基本これになるだろう。

 この世界には今のところボク以外に見当たらない「加速」は圧倒的なアドバンテージだ。

 この世界の加速系魔法やスキルは今のところユーリが使っていたクイックとまだ見たことのないヘイストしか知らない。

 クイックは加速2倍相当の魔法で、ヘイストは体の動きを倍速にする魔法だ。

 クイックはともかくヘイストは扱いが難しいだろう。

 ボクがウェリントンのあの夜に3人目に負けたのは、思考加速と身体加速の速度差が一番の要因だった。


 覚悟を決めたボクは3倍加速のまま、スクリューをフル稼働する。

 瞬間的に先輩とボクの間の距離が縮まり、その眠たげなお顔が良く見える様になった 

 そしてその胸元を狙って一撃を・・・・

(笑ってる!?)

 魔力弾を2発放ちボクは慌てて左に旋回する。


 旋回しつつ体を捩り、先輩の方にすぐさま向き直ると。

 僅かに遅れて、先輩の前の水面が爆発し5つの水柱をあげた。

(水面に見えにくい色の水晶が浮かしてあった。あぶなく一発負けするところだったね。)


「へぇ・・・今のに気付いちゃうんだ。」

 加速しているので少々変な聞こえ方だけれど、彼女がなんと言っているかはわかる。

「あの速さで突っ込んできたら、普通よけられないよ?」

 眠たそうな目のままで言う先輩、それでもさっきよりは興味の色があるか。


 こっちが加速状態のまま喋ると、相手にはひどい早口に聞こえてしまうし、ちょっと愛想悪いかもだけど、無言で次を繰り出す。

(次は・・・風衝刃(エアブレイド)!)


 風衝刃は雪村流の剣術技、閃衝刃せんしょうはをこちらの風魔法と融合させたボクのオリジナル魔法剣技だ、名前は刃とついているけれど、閃衝刃は遠距離にある鳴子を鳴らしたりだとかスイッチを押すための技であり、切断力はない。

 風衝刃もブレイドなんていっているけれど、完全なブラフで発声して魔法を使う場合に相手を警戒させるためのもので、実際には魔力を帯びた風を送ることで障害物の場所を感知したり、振動や接触で発動するタイプの罠なんかを先に発動させるための技だ。

 ドボーン、バシャーン!先輩の周りで水柱や爆発が起こる。

 

 先輩の周りには既に8個ほどの結晶が仕掛けられていたらしい。

 早いし、威力も死にはしないまでも、骨くらい簡単に砕けそうだ。


(こわいこわい・・・そして。)

 風衝刃を警戒した先輩は既に12mほどの距離をとっていてそこから次の結晶を配置しようとしている。


 加速状態のボクに対してコレだけの準備をするのだからコレはかなり早い。

 把握と反応が高いという話だったけれど、コレは想定外の早さだ。

 もしかしたらクイックを使えるのかもしれない。

 準備時間がかかる大規模な魔法を使う人がクイックを努力で覚えられるなら、絶対覚えるだろうしね。


 先輩に対して再び距離を詰めようとするけれど今度は最初に飛ばしていた4つの結晶が光学魔法ビームを放ってくる。

 威力は低そうだけれど・・・!

 ボクは魔力を通した払暁ですべてのビーム を斬り払う。

(いけないね、速攻するつもりが、機先を制されている。)


 そう考えたつかの間先輩は更に大きな魔力反応を見せた。

「コレはどうかな!?烈光晶撃(クリスタレイザー)!!」

 叫んだ先輩は正面に配置した結晶に魔力光を当てるとそこから分散した魔力光が浮遊しているいくつかの結晶に反射した。

 そしてボクを7つの方向から取り囲む様に、ほぼ同時にビームが迫ってきた。

 水上ではよける方向が限られると判断したボクは水の中に潜り高速での潜水移動を開始した。


 上空からはボク狙いのビームが数発発射されるけれど、すべてよけることが出来ている。

 水中から風の矢を飛ばして結晶を破壊しながら先輩との距離を詰める。

 攻撃が少しぬるくなった、先輩がなにか大技を撃とうとしている気がする。

 

 自ら再び浮上すると、先輩は案の定複数の結晶からの同時射撃を試みていた。

拡散光晶撃スプラッシュレイザー!」

 これはある意味チャンス!先輩が、18個の結晶から同時に拡散したビームを放ってきた。

 ややタメのある一撃、これを回避すれば次はないはずだ。

(いや、ここはひとつ最善を尽くそうか)


 加速を瞬間的に最高値まで上げる、現在は身体加速7倍、思考加速11倍程度が限界だ。

 思考はなんとでもなるのだけれど、身体加速7倍は幼いアイラの体への負担が大きすぎて2秒くらいしか出来ないけれど。

 逆を言えばそのおかげで、瞬間的に最高速度を発動しても、体が思考を上回ってしまうことがなくなった。

 超加速したボクの体はビームがボクのいたところにたどり着くよりはるかに前に先輩の背面に回りこみ、その背中に刃を突きつけた。

 すぐに加速を解除する。

 

 とたんに加速酔いとでも言うべきか、時間の流れの急速な変化に少し気持ち悪くなる。

「おぉーっと、これはすさまじい速さだ!!あまたの光線に取り囲まれて、なすすべないように思われたアイラちゃん、一瞬にしてジルコニアさんの背面に周り刃を突きつけた!コレは致命傷扱いでしょう!」


 いままでジルコニア先輩に意識を集中していたためほとんど聞き取れなかった実況の学生の声が聞こえる。

 ジルコニア先輩は信じられないという表情でこちらを振り向きながら。

 声を震わせて言った。

「すっごい!貴方今のどうやったの?今のだけじゃない最初から最後まで、貴方すごく速かった。私何も見えなかったよ!!」

 試合前まで眠たげだったジルコニア先輩はもういない。


「正直1年生の相手なんて・・・って思ってたけど間違いだったわ、貴方は1年とか9歳とか関係ない、優勝候補だと思うの。握手して!」

 勢いよくまくし立てるジルコニア先輩の表情は興奮気味、負けて悔しいというよりは、新しい可能性を見つけた学者の様だ。


 正直女の子との握手くらいなら何も抵抗はないので受け入れる。

「先輩こそアレだけの大規模な魔法を何回も撃ってきて驚きました。」

 実際加速なしだったら対応できないほどの構築の早さと射撃の速さと正確性だった。


「えぇ!あの速さと精密生、多重機動による空間支配こそが、結晶魔法の最大の強みだよ!負けた私が言っても説得力ないかもだけれどね・・・。」

 そんなことはない、かなり驚かされた。

「そんなことは、ボクは近接よりなので何とか勝てましたが、普通の魔法使いではもっと泥沼化していたと思います。」

「ふふ、それでも貴方、負ける気持ちなんてなさそうね。でもいいわ、悔しいけれど私貴方のファンになっちゃった。私は魔砲兵課の研究棟に小さな部屋貰ってるから、興味があったらいつでも遊びにきてね!今軍務課と共同で結晶魔法技術を応用した、遠距離での双方向通信や、映像による情報収集の研究をしてるのだけれど行き詰ってて、貴方といたらいい刺激がもらえそう!」


 そういう先進技術の研究って隠さないといけないんじゃないの?

「両者の間で握手が交わされました、お互いにいい勝負が出来た様でなによりです。ソレでは1回戦第一試合はアイラちゃんの一本勝ち、試合時間は3分17秒でした!なかなかのスピード決着でした!わたくし早くもアイラちゃんのファンなってしまいそうです。」


 会場内は加速をといてからずっと騒がしい歓声が響いていたけれど、勝利が宣言されたことにより更に騒がしさがました。

 なんとなくジルコニア先輩ともコネクションが出来たし、先輩は北派らしいけれど比較的年齢も近いし、温厚そうな頼れる先輩っぽいから、お知り合いになって損はなさそうだ。

(おまけにけっこうかわいいしね・・・みつあみにした青い髪がおとなしい雰囲気と良く似合っている、眼鏡とか似合いそうだ。)


 ボクはジルコニア先輩と一緒に退場した。

 仲良くなれそうな先輩だ。

 話し方も速すぎず、見た目は子どものボクにあわせてくれている様だし、派閥の違いというのも、王国のどこをよりよくしたいか愛着があるかの違いなので、本来なら敵対関係ではないのだから、お互いを高めあえるならその関係はとても健全だ。

 今のキナ臭い雰囲気にしたのが東の派閥というかセルゲイとグレゴリオらしいので、ボクたちがこうやって一緒にいることには何も問題はない。


 こうしてボクの本戦一回戦は何人かのボクのファンと、結晶魔法の俊英ジルコニア・ナハト先輩とのコネクションと、獲るものの多い戦いだった。

 風衝刃もある程度有用だってわかったしね。


 もう午前中は観客席に座っていていいということなので、ボクはいそいそと攻性魔法課の観客席に戻り、クラスメイトたちからの熱烈な歓迎|(背中をバン)と「がんばれよ」とか「すっごく速かったね!」なんて賛辞や応援を受けた。

 少しだけひりひりしたけれど、今日のところはおとなしく受けておいた。



戦闘シーンって難しいですね、アイラは加速してるので喋るとなんか相手は聞こえ辛そうですし。

そもそも水の上の戦闘なので、スピード感がありすぎてもおかしいですし。

なおジルコニア先輩は水中移動用の結晶を足元に置いて移動していました。

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