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第55話:大水練大会2日目予選

 おはようございます、暁改めアイラです。

 昨日の水練大会では見事2位に輝いたボクたちは、それでも悔しいと感じていたけれど。

 必要以上に自分を責めすぎているナディアを慰めいたわり、いつか未来にユーリの側室に加えることを約束した。


 そしていま早速ボクは窮地に直面している。

 朝起きたらナディアは既に起きて着替えていた。

 そして、ボクは恐ろしい事実を突きつけられた。


「おはようナディア。夕べは良く眠れた・・・?」

「おはようございますアイラ様、なんだか照れますね、噂には聞いてましたが寝ているアイラ様はあんなにも甘えん坊なのですね。」

(!?)

「サークラ様やキスカさんにお伺いしていた通りでした。」

「えっと、何をいってるのかな?ナディア」

 恐る恐る聞き返す。


「夜中気が付いたらアイラ様が私の乳房を口に含まれていて、最初はびっくりしたんですけれど、愛らしいお顔を見ているとどんどん愛しいという想いがこみ上げて参りました。」

(ギャー!!またか・・・またやったのかボクは・・・・。)

「ナディア・・・無意識のこととは言え失礼しました。以後気をつけますので、何卒誰にも言わないでいただけると・・・。」

 4つしか変わらないナディアにまでそんなことをしでかすなんて・・・。

 ボクは何がしたいのか・・・。


 さて気を取り直して、今日は大水練大会の2日目、水上戦闘の予選の日だね。

 既に選抜されている出場選手たちが300人程度いるので、その中から本戦トーナメントに出る16名を選出するための予選だ。

 各30~40人程度にわかれてフィールド内で頭の上にボールのついたカチューシャをつけて逃げ回ったり跳ね回ったりして割られない様にする。

 あるいは、自分以外のボールを割る隙をうかがうものだ。


 魔法は使ってよいが、殺傷性能の高い攻撃魔法は禁止。

 わざと怪我をさせるのも禁止で。

 各予選から2人ずつ本戦にあがることが出来る。


 ボクらのクラスからは、ボクとサーニャが参加している。

 今日は、ユーリとエッラとも戦う可能性があるんだよね・・・。


 控え室に入るとそこには見知った顔はなかった。

 ひとまず安心。

 しかし、そこにいる選手たちは皆ボクのことを知っている様だ。

「おぉー昨日のレースで2位だった攻性魔法課のちびっ子じゃないか」

「あ、マジだ。本当にちっちぇえな。」

 控え室に入ったとたんこっちに注目が集まる。


「昨日の魔法見る限り見た目じゃあ判断できないくらいかなり強いみたいだけど。大丈夫か?怖くて怯えてたりしてないか?」

 やさしい声をかけてくれるお兄さんもいれば


「おいガキがこんな大会にまざってんじゃねぇよ、勝っても悪者にされるじゃねぇか。帰ってママのミルクでも飲んでろよ!」

 感じの悪いチンピラみたいなのがいる。一応軍人を育成する学校のはずなんだけどなぁ。


「あいにくと、母は5歳のときに亡くなりましたので。」

 とりあえず丁寧に返しておく、出来るだけ寂しそうに

 周りの視線がチンピラを責める様な視線を向ける。

「チッじゃあパパのミルクでもいいじゃんよ!」

 おいおい口が悪いな、パパはミルクでないだろ?あぁホルモンの関係で出る人もいるんだっけ?


「父も同じときに・・・・。」

 ボクが寂しそうにいうとチンピラはいらだたしそうに立ち上がって・・・

「それ以上ちびっ娘に突っかかるなら教官に談判してお前を失格にしてもらうよ?カザリ」

 髪の長い、落ち着いた雰囲気のガタイのいいお兄さんが言うとカザリと呼ばれたチンピラはイスにすわって舌打ちをして。向こうをむいてしまった。


 いちおう助けてくれたらしいロンゲのお兄さんはこちらを向いて

「まぁ帰れとはいわないが、水の中だからな危ないことは確かだ、危ないとおもったらすぐ棄権する様にな。」

「はい、ありがとうございます。えっと・・・」

「ジョッシュ・アダムス、4年だ。」

 ロンゲ兄さん改めアダムス先輩はぶっきらぼうに名乗った。

「どうも、アダムス先輩、ボクはアイラ・ウェリントン、攻性魔法課の1年です。」

 ペコリと頭を下げる。


「知ってるよ、昨日アレだけの活躍をしたのだから、見てたやつはみんな目をつけてるさ。」

 彼のいうとおり周りの人間は皆こちらのほうを見ているけれど。

 水着姿でみんなに注目されてると思うと、少し恥ずかしくなってきた。


「む、みんな、ちびっ娘がちょっと恥ずかしがってる、あまりじっとみてやるのは止めてやってくれ。」

 あら紳士。

「すみません制服ならともかく、水着姿で注目されるのはちょっと恥ずかしくって・・・。体つきもまだまだ子どもですし」

「む?そんなことはないぞ、子どもが子どもらしくかわいい水着を着ているのならば、それは十分に魅力的だと思う」

 アダムス先輩はボクのことをガール扱いではあるものの、とても紳士的に接してくれている。


「だがまぁ、フィールドに立てば等しく兵士だ。手心は加えてやれぬが、まぁ怪我をしないように気をつけてな。」

 そういってアダムス先輩がドアのほうに向かうと丁度係の教官が入ってきた。


「ではBブロックの予選参加者はフィールドに移動を開始します、着いてきてくださいねー。」

 人のよさそうな教官が移動を開始すると皆後ろをついていく。


 32人を別々の入り口というか窓に近いところからフィールドに投入する。

 ボクのいるグループは女性6人男性26人1年生はボクと剣士課のオーティスがいるね。

 試合が終わったらちょっとお話してみよう。


「それでは、予選Bブロックの選抜を開始します。用意!!はじめ」

 開始の合図が出された。

 ボクは早速加速3倍を常時発動にした。

 3倍ならば2時間くらいぶっ続けでも発動できるようになったからね。

 今日の予選は常時コレで行こう。


 周りでは早速つぶしあいに行く人たちが動き始めている。

 ボクのほうには・・・あぁさっきのチンピラ君が向かってきてるね。

 撒くか、倒しておくか・・・

(変な恨みを買ってもあれだし。隠れておこう。)


 ボクは最近覚えた魔法、気配隠蔽と潜行を唱えた。

 暫くはこそこそとしよう、体力はないほうだからね。

 水の底に潜ったボクは人の少ない区画にスクリューの魔法で移動した。

 周りに他の人の気配がないか探りながら浮上すると探知と望遠の魔法と、アビリティの感知を発動させる。

 おぅおぅ減ってる減ってる。

 スクリーンに表示されている残りの人数は17人、もう半数以上が脱落したっぽいね。

 この頭の上のボールには個人を判別する魔法が含まれていて、名前を呼ばれた脱落者は速やかに退場しなければならない。

(あ、カザリ呼ばれた。・・・そろそろ行こうかな)


 ボク以外の人数が4人になったのであと3人脱落すればボクは本戦に出場できるけれど、今残っているのは・・・・?

 さっきのアダムス先輩と・・・・おぉオーティス残ってる、1年生が二人とも残ってるのってすごいんじゃない?ボクはなにもしてないけれど

 それとあっちの2人は共闘してたっぽいね。

 誰だか知らないけれど・・・・。

 近くまで行くと声が聞こえた。


「おい犬っころ!この方は東征侯の次男セルゲイ・デイビット・フォン・オケアノスだぞ!犬は犬らしく人間様に勝ちを譲ろうとはおもわんのか!」

「そうだ!俺は東征侯の名にかけて予選落ちなぞできんのだ!譲らねばお前の一族郎党を皆殺しにしてやるぞ!」

 

 2人組がオーティスを犬呼ばわりして勝ちを譲れと恫喝している。

(学校の行事程度で一族郎党皆殺しとか、ドンだけ頭すかすかなのかな?仮にソレで予選抜けてもたぶん本戦でまったく勝てないよね?)


「どうでもいいが早くしてくれんかね?君たちの話し合いが終わらんと俺はいつまでも動けん。」

 アダムス先輩はわざわざ3人の会話を待ってやっているらしい。

「お前が東の簒奪候の息子だからと言って何故俺が譲ってやらねばならん?俺は南進候の閣下の与力ぞ?」

 オーティスが苛立ちながら応えている、まぁ犬呼ばわりされてるしね。


「おい犬貴様人間様に対する敬意が足りんぞ!?おいそっちのでかぶつ!さっさとその犬っころを片付けろ!」

 セルゲイが命じるが・・・・

「いや俺も北伐候の下のモノでな、お前たちに従うつもりはないよ?」

「なんだと?まぁいい、その犬を片付ければトクベツにこのセルゲイと貴様と2人で本戦に進む栄誉をやろう!」


(さっきから身の程をわきまえてないなこいつら。)

 そんなことしなくってもほぼほぼアダムス先輩の勝ちは確定している。

 ボクは加速があるので勝てるかもわからないけれど、オーティスとアダムス先輩とでは纏っている強者の気配が違う。


「そうはいうがな、俺がオーティス君を倒した瞬間お前たち2人も失格になると思うぞ?」

「なに?どういう意味だ?」

 セルゲイではないほう、取り巻きなのかな?

 若いのにスキンヘッドな青年が身を乗り出す。


「そこにもう一人隠れているのにまだ気付かねぇのか?・・・お前らなんで軍官学校に入ったんだ?」

 オーティスがボクのほうを目線で差しながら言うと、セルゲイと取り巻きがこっちを向く。

「な!ガキがまだ隠れていたのか。卑怯ものが!お前の様なガキが俺の部下のアルバより後に残れるはずがない!」

 おぉ隠れてたのがバレた様だ。オーティスめ余計なことを。


「たかがガキ一人俺が片付けてくれる。」

 そういってよってくるセルゲイが木剣をボクに向かって振り上げたので、口に含んでいた水に加速を掛けてセルゲイのボールに向かって噴出した。

 瞬間セルゲイのボールは爆ぜ、無慈悲な退場が告げられる。


 しかしセルゲイは顔を真っ赤にして剣を振り回してボクに打ちかかってきた。

「ふざけるなガキが!!卑怯ものがぁああ」

『セルゲイ君退場してください!セルゲイ君、セルゲイ君』

 司会進行役の教官が何度か名前を呼ぶがセルゲイは知ったことかとボクに向かって木剣を振り回して。

 ボールではなくボクの体に木剣を当てようとしてきて・・・オーティスが庇ってくれた?

 

 別によけられたけれど、オーティスにはよけれなさそうに見えたのか間に入ってきて素手で木剣を受け止めてからセルゲイに頭突きをかましてオーティスのボールが割れた。

 セルゲイは少しよろけてそのまま倒れてしまった。

 オーティスはセルゲイといつの間にか片付けられていた取り巻きを担いで自らボールを外し退場して


 Bブロックの本戦出場者はアダムス先輩とボクに決定した。


 試合後、去り行くオーティスを追いかけた。

「オーティスさん!なんでですか?なんで自分から退場されたのですか?」

「おぉウェリントン殿か、俺のせいで危険な目にあわせてすまなかったな俺が言わなきゃあんなやつの視界に入らずにすんだのに・・・。」

 申し訳なさそうにするオーティス


「まさかそんな理由で?」

「いや、俺はウェリントン殿に勝てないと悟ったのだ。水底に脚も着いていないのにあの制動。とても水の中じゃ勝てない。」

 すがすがしい笑顔でオーティスは続ける


「ソレに、うちのエッテがいってたの思い出したんだ、あの双子の姉のほうには絶対逆らうなってな。」

 その瞳に迷いを感じさせるものは少しもなかった。

 彼は何かの確信をもって勝負を降りたのだ。


「またうちのエッテと仲良く遊んでやってくれよ、あぁ見えて寂しがりなんでな」

「ソレは勿論、うちのアイリスやトリエラとも仲良くしてくださってるみたいなので・・・」

 ニカっと笑ったオーティスはそのまま立ち去っていった。




オーティス君2度目の登場です。

アイラはまだ体力と筋力がないので戦闘はなるべく避ける傾向にあります。


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