第40話:塔の陥落
家にいる暇がなくなかなか話が軍官学校にたどり着きません
こんばんは、暁改めアイラです。
みなさんは我慢するのは得意でしょうか?
ボクは割りと得意です。
我ながら虎徹に対してよく我慢できたなあと、今でも自分を誉めたいくらいです。
ただ美徳である忍耐強さも、度が過ぎればただの自殺願望にしかならないのだと、今日知ったんだよ。
王様のせいで迎えた、本格的な乙女の危機だ。
「王様、最寄りのお手洗いはどちらでしょうか?いいえ、最寄りのお手洗いまでボクを運んで頂きます!」
「え・・・?」
ここから先はいかに被害を押さえるかにシフトする。
悪いけれど王様には犠牲になっていただく
「便所は塔を降りて右手側に20mほどいったところが最寄りだがなんじゃ?漏れそうなのか?」
どこぞの助平王の保身のせいだけどね!
「王様がボクのお腹を触るから一気に限界が・・・このままじゃボクは・・・。」
また涙が溢れてくる、これはアレだね、少しでも水分をだそうっていうアレだ。
(尿意のためか思考も纏まらないね)
「こ、ここでそれは不味い、掃除のメイドにまた冷たい眼でほどほどにと言われてしまう!」
またって、この人本当に王様なのかな?怪しくなってきたしジークでいいや
「ジーク様、慌てるのはいいので早くボクを運んでください、足で閉めていますが長くは持ちません!」
「なぜ今さらジーク呼びになったかわからんが心得た!」
ジークはボクをお姫様抱っこすると部屋をでようとして。
「これ腕が使えんな、肩で失礼するぞ」
え、ちょっ!圧迫感!!
王様はひょいとボクを肩に担ぎ直してドアを開けた。
確かに腕は空くだろうけど肩に担ぎ上げられたボクはお腹を圧迫された。
さらに・・・階段はやはり寒い、先ほどはスカートで歩いたため直接冷気が刺さったがいまは担がれているので幾分かマシかな、と油断したのが最悪の始まりだった。
この階段は4階分くらいあり途中に踊り場と小部屋もあるのだが
「ジーク様!もう少し優しくしてください!ボクもうっ!!」
ジークの階段の降り方は乱暴で振動に寄る波状攻撃をうけたボクの膀胱は陥落した。
「ジーク様!ボクもうダメ!!とめて!!おろして!!」
限界をこえたボクはせめて階段へ下ろす様に言うがまたここでジークは無意味に抵抗する
「まて!もうすぐじゃから、ぁぁあああ!?」
あわててボクを踊り場におろすけれどもう意味がない、ボクは解放される快感に息を漏らす
「ふぁぁぁあ!!ぁああ・・・出てる、熱いのが出ちゃってる・・・」
「うぉ!本当に熱いのぅ!?」
ボクから解放された奔流はジークの肩から、ボクのもたれ掛かった壁沿いの床まで盛大に溢れて、暦の上では春とはいえまだ寒い階段に湯気を立てた。
「うわー、あーすまなかったな・・・」
「ック、ヒグッ・・・・ひどいですよ・・・・こんな仕打ちあんまりです・・・・。」
ジークはボクの体液で濡れた服を脱ぎながら謝罪するけれど
ボクはもう許すつもりもないちょっとは痛い目みてもらおう。
「あー泣く泣くな・・・すぐに証拠隠滅はしてやるから・・・。」
「なにの証拠ですか?」
「ほらこの現場を乾かして、代えの服を用意して・・・・・な?」
問う声にジークが振り返るとノイシュさんが階段をのぼって着ていて
クズをみる眼で主人を見つめている。
情況を整理しよう
好色な王が婚約者のいる9才女児を人払いした部屋に呼び出した。
30分弱たって叫び声が聞こえ慌てて階段を上るとそこに
半裸(ただし上半身)の王と涙の浮いた虚ろな眼で泣きながら王の非道を責める少女
薄暗くて見えにくいが、踊り場は少し温度が高くなっていて、湿り気を帯びた空気と少女の匂いが立ち込めている。
少女の服はびしょ濡れで力なく座り込んでいる。
あら不思議、王様の威厳が地に墜ちた
「まったく!好色だとは思ってましたが、サリィより下の歳の子に手を出すなんて!しかも実質既婚者ですよ!!」
今現在、ジーク、フローリアン様、ヴェルガ皇太子、ノイシュさんとでフローリアン様のお部屋で話し合い中
ジークは必死に
「ち、ちがう!誤解だ!、アイラもなんとか言ってくれ!」
と弁明して、ボクに同意を求めてきている。
が、ボクは泣きじゃくるばかり
「父上いくらなんでも今回ばかりは同情の余地はありません!」
「ああ・・・ユーリになんていって謝ればいいの!」
「アイラ様、お労しい・・・」
ジークはいくらなんでも信頼され無さすぎじゃないかな
誰も疑っていないじゃないか
「じゃからワシはなにもしておらんのじゃ!さすがに45も離れた娘に手は出さぬ、なぜ信じてくれんのじゃ・・・」
ジークは半泣きになりながら無実を訴える、まあ無実と言えば無実だが、別の罪状があるからね、機密の話はできないからおとしどころははじめから決まっているんだ。
服を脱いで体をノイシュさんにふいてもらい少し落ち着いたのでそろそろネタバラシだね
フローリアン様が王殺しの汚名を被るのも嫌だし、別にジークは悪い王様というわけでもなさそうだしね、尊敬はできないけど
「・・・グズッ、ジーク様ひどいです。」
嗚咽が治まってきた感じをだしつつ話はじめると
「ア、アイラ、ワシはなにもしとらんじゃろ!?」
なんてジークが狼狽える。
「さっきまで王様呼びだったのに、愛称呼びになってるのは、名前を呼ぶ様にむりやり命じたとかなのかしら?」
冷たくいい放つフローリアン様、なかなか細かいところに気付く方だ、実際は尊敬できないと判断しての変化だけれどもね
「ボク、放してくださいってお願いしたのに、はいと言うまで放さないって言うんです」
「父上・・・・」
眼を覆い天井を仰ぐヴェルガ様
「でもはいって言ってもなかなか放してはくれなくて・・・こんなことになったので全部言っちゃいますから!」
糾弾する様にジークの眼を見る
現環境は全てボクの味方だ。
「ジーク様がお風呂を覗いてたのに気付いたからそれをフローリアン様にバラしますって言ったら、バラさないでとお腹に泣きつかれて、おしっこを我慢できなくなりました。もう9才なのにお漏らしだなんて、と思ったので放してくださいってお願いしたのに放してくれなくて、結局こんなことに・・・・」
「ん、おもらし?じゃあ、別に王様に手込めにされたりしたわけじゃないのね!?」
「ああ・・・聖母よ、御慈悲に感謝します」
「だからいったじゃろ!?ワシはなにもしとらんと!!」
やや大袈裟な表現な気もするけれど、未婚の乙女であるボクには尊厳の問題である。
十分に重大な傷痕を残したよ?
(あ、また涙でてきた・・・)
台詞や言い方タイミングはわざとだけど
涙はホンモノだ
ボクは傷付いたのだからジークにも傷付いてもらわないとね
「そもそもなんで覗くんですか?メイドと子どもしかいないんだから、堂々とご一緒されたら良いじゃないですか!」
ボクの叫びに安心していたジーク様が再び狼狽える。
「ま、まて今日はここまでにしよう!アイラは寝る時間じゃ、ノイシュ、悪いがもう一度アイラを入浴させてやってくれ、そのままユーリの前に出すのはかわいそうだ」
取り合えず火種を取り除くってことだね、さすが仮にも王様いい判断だ
「アイラ、災難でしたね。ノイシュ労ってあげて、陛下は私とヴェルからお仕置きが必要な様ですし、私は入れてあげられませんから」
その後念入りに体を洗ってもらい、子ども部屋(大きなベッドが4つおいてある客間)にいくとユーリは起きた状態でアイリスと同じベッドにいた
アイリスとシシィは安らかな寝息をたてている
4つのベッドにはそれぞれ ユーリとアイリス、サリィとシシィ、ソニアとエッラ、ナディアとトリエラと言う組み合わせでベッドを使っている。
2人寝てて残りは座ってエイラだけ立ってるね。
「おかえりアイラ(ちゃん)」
「おかえりなさいませアイラ様」
7人の美少女から一斉に名前を呼ばれるとちょっとしたハーレム王気分だね
「ただいまみんな、遅くなってごめんね?湯冷めしたからもう一度入浴することになってしまって・・・・。」
心配かけたかな?とくにユーリに。
「大丈夫だった?お祖父様になにもされなかった?」
「ええサリィ姉様、なにもなかったわけではないですが、そっちは大丈夫でした。」
心配顔から安堵顔にかわるサリィ、ジークはそんなに信用がないのだろうか?
「ところで、この部屋だと、エイラとアリーシャの寝るスペースが足りませんね?」
ダブルベッドが4つでボクはユーリの隣にアイリスと3人で寝る、エイラはソニアかナディアの所に入れるとしてもアリーシャはやや手狭になるだろう
まさかサリィ&シシィの横は無理だろうし
「私たちはメイド部屋が城内にあるので、そちらに寝ます。」
とエイラ
「アリーシャさんはいまそっちの準備してるよ」
続けてやや眠たそうなソニアが言う
「シシィは寝ちゃってますね、残念。ちっちゃい子好きなんですが」
シシィは丸くなって寝ていて、サリィがその背中をトントン叩いている。
「結構頑張ってたんですけれどね、アイラちゃんもトントンしたげようか?」
笑いながら言うサリィはお姉さんだ。
なんていっていいかわからないけれど、それは姉という特殊な生き物だ。
そしてその特別さ故にボクはサークラや照子を思い出して、その申し出を受けることにした。
ユーリに手を握られつつうける背中トントンという睡魔を呼ぶカウントダウンは、泣きつかれていたボクをものの数分で深い眠りに落とした。
結局アイラは鑑定を覚えることが出来ませんでした。
異世界転生モノには鑑定がお約束だと聞いたので出しましたが、アイラは覚えられませんでした。
ジーク様とサリィの今後の活躍に期待しています。




