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第28話:顛末とボクたちの未来

今日はここまでです。

 こんばんは、暁改めアイラです。

 アニスのご機嫌取りのプレゼントを買いに出たら。

 持ちきれないほどのお土産を持って帰ることになりました。

 胸糞悪い。



 蓋を開けてみれば最悪の結末だった。

 詳しいことは聞くことが出来なかったが、地下室に40を超える女性の遺体が保存の魔法をかけた状態で保管されていたらしい。

 どういった状態なのかは教えてもらえなかったが、まぁ大体ボクの予想通りだろう。


 カンナと思われる女性の遺体も発見されたそうで、その報告を受けたリウィはボクの膝の上で泣き崩れている。

 現在わかってる段階でも、カンナは年末頃には既に亡くなっていてその後暫くは忘れられていたが、娘がいたことを最近思い出し、母娘の遺体を並べてコレクションしようと思い至ったらしい、そして今日偶然にも引き取りに人をやったところだと


 恐ろしいことだボクが今日アニスのご機嫌をとる必要にかられなければ、リウィがママと間違えてアンナに飛びつかなければ、ボクがリウィを孤児院まで送ると言い出さなければ

 ボクは今ボクの膝の上で泣くこの幼い友人を永遠に失っていたかもしれないのだ。


 そして明日に退校したという報告だけを受け、それが真実になっていた可能性があるのだ。

 ボクはリウィの頭を抱きこんで一緒に泣いた。


 リウィの母は死んでしまっていたのだから、決して良かっただなんていえない

 けれどもボクはいまこの内腿が熱く濡れている感触を、リウィの体温を本当に良かったと感じるのだ。


 そして残念なことにというべきか、院長もグルであったそうだ。

 そこまで教えられてボクたちはウェルズさんによって城に送られることになった。


 いつの間にか泣きつかれてしまったリウィをアンナが抱き上げて、馬車に乗った。

 城にたどり着くと8時近くになってしまっていたけれど、アニスもアイリスもおきて待っていてくれた。


 アニスに少し文句を言われたけれど、プレゼントを渡して宥め

 アニスは眠っているリウィの赤く腫れた頬を見てやさしくなでてくれた。



 翌日ボクとリウィは学校を休んだ。

 アンナとボクとでリウィをお風呂に入れたりその後もう一度ベッドで添い寝してあげたり。

 お昼寝するアニスとリウィの背中をトントンしてあげたり。


 いままでしっかりしていたリウィがすっかり赤ちゃん返りしてしまい

 アニスがサークラに甘えて、リウィがアンナに甘えてボクは両方の間を行ったりきたり。

 半日ほどたっぷり甘えたあと、リウィが本来の知性と理性を取り戻してきた。


 そこで今朝メロウドさんから伝えられた情報をリウィにも伝える。


 嘘から出た真というべきかリウィはボクたちの親戚で、ボクたちの母ハンナとリウィの祖母に当たるカンナの母ヨアンナが姉妹であったそうで、つまりカンナさんはボクたち姉妹の従姉だった様だ。


 知らない間にまた家族を失ったらしい。

 リウィの父親を馬車で轢き殺したのもゲゼル男爵の手のもので借金の書類とやらも偽造、心の隙を突き勢いと貴族の権威とで相手を丸め込むやり口だったそうだ。


 リウィの父は孤児院出身で他に親類もないので、書類上はアンナが引き取ることになった。

 しかしアンナは現在忙しくリウィの世話をする余裕がないためリウィの身柄はボクたちと同じくディバインシャフト城の東棟に置かれることとなった。


 まだ6歳のリウィには母親の死は重たいもので、時々スンスンないているので、そういう時は気付いた誰かがお部屋にさそって一緒に眠ってあげるのが通例となった。



 3月になった。

 ボクたちは毎朝一緒に学校に行くけれど教室に少し前に変化があった。

 今まで孤児院から通っていたリウィがボクたちと通ってきているのがばれたのだけれど


 なくなったうちの母と、リウィのおばあちゃんが姉妹だったと言うとクラスのみんなは大体祝福ムードで、「やっぱり小さい子がみなしごっていうのはなんていうか寂しいからねー。」とか「そもそもちょっと似てるよね?」とか言ってリウィをなでてくれて。

 ついでの様にボクたちもなでられた、普段なら抵抗するところだけれど、みんなリウィのことを喜んでくれているので、おとなしくなでられておいた。


 カテリーンも、「ご家族が残っていて良かったですわね」と言ってリウィにお祝いと称した飴玉と小さなお花を下さった。

 普段は素直じゃない男子たちも、今回のことではからかったりせず、中には泣いて祝福するものまでいた。

 みんな良い子でボクはうれしかったけれど。

 やっぱりあの4人は底意地が悪かった。


 リウィのノートに「元孤児」と書いてみたり、わざと身体を当てて「やだ今度は私が孤児になっちゃうわ!」なんていったりして小学生みたいなからかい方をしてくるのだ。

 年齢的にはそうだけどね。

 相手にするのもバカらしいので相手にしていないし。

 クラスでカテリーンを含めて5人の立場が微妙に浮いてきているのだけれど、4人組は気付いているだろうか?


 そんな中約束の時が迫っていた。


 3月24日おじさまによびだされて、ディバインシャフト城の執務室へ行くとおじさまとおじいさまとユーリが居た。

 恭しく頭を下げてスカートの裾をそっと摘む。

 

 今日はいつものかわいい孫のアイラではなくて

 孫の嫁候補のアイラなのだ。


「単刀直入に聞こう、アイラ・ウェリントンそなたはワシの孫、ユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッドとの婚約を受け入れる意思は変わらないか?」

 エドワードおじいさまが淡々と尋ねる。


「はい、エドワード様、ボク、いえ私アイラ・ウェリントンはユーリ様との婚約を望みます。」

 ユーリがうれしそう笑ってくれてボクもうれしいよ。


「それではユークリッドよ、気持ちが変わらぬのならこのワシ、ホーリウッド侯爵の前でもう一度婚約を申し込みなさい。」

「はい」


 ユーリがボクの目の前で跪く。

 まっすぐにボクを見つめる瞳の純粋さも熱さももうよくわかっている。


「アイラよく聞いて欲しい、アレから君と一緒にいてたくさんの時間を過ごして、もっと君のことが好きになったんだ。だからもう一度言わせて欲しい、将来結婚できる年齢になったら、僕の妻になってほしい。」

 しっかりとした口調、とても7歳とは思えないね、まぁ今日から8歳なんだけど。


「不束な娘でございますが、きっとユーリ様の妻となるにふさわしいレディになります、だから待っていてください、私アイラ・ウェリントンはユーリ様の妻となることを誓います。」

 ユーリがボクの手に口付ける。


「よろしい二人の婚約はわれわれが見届けた。それでは改めて言おうかの、おめでとう2人とも、よく似合いじゃ」

 厳かな口調から普段のおじいちゃん口調になったエドワード様は早速ボクたちの頭をもみくちゃになでまわした。


「アイラが12歳になったときが楽しみだ。」

 ギリアムおじさま、もう義父様か、なんかギリの父って違う意味に聞こえるね

「お義父様、不束な娘でございますが、コレからご指導お願いいたします。」


 そういって初めて父と呼ぶとギリアム様は真っ赤になって照れていた。


「では正式に婚約したので、夏季休暇にはいって2回目の休息日に、二人の婚約披露、まぁアイラのお披露目会じゃな、開くので準備はよろしく頼むぞギリアム。」

「はい、父上」

 おじいさまから指示を受けた義父様はお部屋を出て行かれた。


 おじいさまは私の頭に再び手を置くと

「それでは今日のユーリのお誕生パーティをしようかの。」

 そういってボクを抱えたそうにしているので、両手を広げて待つとボクを抱えあげてご満悦のおじい様と、ユーリとともに食堂へ向かった。


 8歳の誕生日は別に記念でもなんでもないので、身内だけでひっそりと祝うことが多い。

 ホーリーウッド家でもそれは変わらず、今日は身内だけの簡単なパーティだ。

 といっても現在ディバインシャフト城には15歳以下のメンバーだけでもユーリ、ボク、アイリス、アニス、リウィ、サルビア、メイド枠にエッラ、ナディア、トリエラ、ノラと10人も居る。

 大変賑やかだ。


 この日もボクたちは、とても暖かく賑やかな一日を過ごしたのだった。



 2日間は別にどうということもなかったのだけれど

 3月27日にその騒ぎは耳に入った。


 学校について教室に移動している途中。

 悲鳴にも似た声がたくさん聞こえてきた。

「とうとう、ユーリ様がご婚約なさるそうよ!」

「今まで女の子とのうわさなんてまったくなかったのに!」

「本当は生まれてすぐ婚約相手は決まっていたとか何とか」

「お相手はどなたかしら、ユーリ様の横に立てる可愛い方か美人な方となるとそうそう居ると思えないけれど」


 とうとう始まったね、この状況。

 ユーリの婚約披露の手紙が近隣に領地を持つ、あるいは土地なしでホーリウッドに役職を持っている貴族に届き始めたのだ。


 授業が始まってもみんなどこかそわそわしている。

 それだけ領内の人にとってユーリの婚約は関心事だった様だ。

 将来領主になる方だしね。


 中でもカテリーンのところの4人は興奮気味、というかキレ気味だった。

「わたくし、カテリーン様こそユークリッド様にふさわしいと思っていましたのに!」

「そうです!今からでもお二人を密室にでも閉じ込めて・・・」

「やめなさい、処罰されかねないわ」

 あぁでもないこうでもないと話し合っているね。

 カテリーンは授業中よ、静かになさいとしか言ってないけれど。



 さて4月も半ばになったころ

 婚約披露までの準備期間が1ヶ月を切った。

 この頃になると作法の訓練も概ね実を結び、6歳半ばに求められる水準は満たされた。

 衣装も既に縫いあがっておりボクには薄いピンクのドレス、アイリスには薄いイエローのドレスが用意された。


 それとボクにつけるためのアクセサリを探していたおじいさまが宝物庫から、あるものを発見しボクに渡してくれた。

「アイラこれなんじゃがな、エドガーから預かっていたもので、アイラに渡す様に言われていたのだが、見つけたので持ってきた。」


 そういっておじいさまが渡してきたのは暁光だ。

 生前ボクが愛用していたメインの刀で、今扱っている払暁よりも刀身が19cm長い

 今のこの身体には少し大きいけれど、将来的にはまたそちらがメインの佩刀になりそうだ。


 コレであとは暁天だけだけれど、エドガー父さんは暁の遺体が持っていたのはこの2本だけだといっていた。

(もしかしたら、あの森に残っているかもしれないね。)

 今はつらい思い出があるからいけないけれど、いつかは探しに行きたい。


 それから、コリーナとソニアには先にボクたちが婚約したことを話させてもらった。

 班が一緒だしリウィやアイリスの態度でばれそうだからね、先に話しておいたほうが安全そうだと考えたんだけれど

 既にコリーナにはばれていた。以前の1歳上の婚約者候補の話の日の時点でユーリを怪しんでいたそうだ。


 やっぱりコリーナは洞察力がすごいんだね。

 まぁこんなところだろうか。


 本当はボクたちのドレスを作った職人が35歳元軍人のおねえで既婚者で娘も居るとか、ボクがウェルズとコリーナのいちゃいちゃデートを目撃したこととか、サークラが実は1月からギリアム様とお付き合いしていることが発覚したとか。

 

 ココでの生活は毎日本当にめまぐるしく変化していて、飽きることなんてないね。

 とうとう明日はボクとユーリ(とアイリス)の婚約披露だ。


 どんな日になるのか、どんなに楽しい時間が過ぎるのか、祝福してもらえるだろうか、それとも疎まれるだろうか。

 いろんな想像や不安と期待が交錯して、ボクはナカナカ眠れない、アイリスとユーリも同じだった様で。

 3人一緒のユーリのベッドで手を繋いで寝ることにしたのだ。


 真ん中にユーリを挟んで横並びになって手を繋いで、空いた手をアイリスと繋ぐ。

 ジンワリと両手が温かい、幸せだなぁ。


 明日がいい日になるといいな! 

少し駆け足気味に、婚約披露の前日まで進めてみました。


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