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第27話:迷子の子ども

そういえば直撃するぞするぞいってた台風がきませんでした。被害がないのはありがたいのですが、先に倒してた物干しとかベランダの荷物を戻すのがちょっと億劫です。

 こんにちは暁改めアイラです。

 自身のユーリへの恋心を認識したボクは、ユーリとの婚約を受け入れた。

 ボクやサークラからの可愛がりが不足と感じたアニスが不機嫌になってしまい、今はご機嫌とりのためのプレゼントを調達した帰りだったのだけれど。



 屋台の並ぶ通り道幅が広いので人が多い割りに歩くのには困らない。

 そんな中でアンナのおしりにぶつかってきた子どもは、ママ、ママとすすり泣きながら顔を押し付けている。

 すごく見覚えのある髪アンナやサークラ、ハンナの様に、色味は少し違うけれど、金髪にピンクが少し混じった髪。

 この子のママもきっとアンナの様にピンクブロンドの女性だったのだろう。


 でも今はそれよりも。

「リウィ・・・。」

 その迷子はリエッタ・ブラウニー、クラスで同じ班の同い年の女の子。

 いつもぼんやりマイペースだけれど、歳の割りに賢くしっかりしている子で今までないている姿など見たことが無かった。


 それが・・・・。

 今は幼い迷子の様にアンナにすがり付いて泣いている。

 リウィはボクの呼びかけにも気付かないほど取り乱した状態で暫くアンナにしがみついていたがアンナに抱き上げられて、しがみついてようやく自分を取り戻した。


「アイラと誰・・・?アイラのママ?」

 ようやくボクを認識したリウィは、すがり付いて泣いていた相手がママじゃないことに気付くと落胆というか絶望というか・・・本当に、見ている方がつらくなる様な表情を浮かべた。


 自分の今の体勢に気付いたのか、身体をよじる様にしてアンナの腕から逃れたリウィはしかし名残惜しそうに見上げたあと。

 目尻に浮かんだ涙をぬぐいながら

「ごめんなさい、ママに似ていたから。」


 そういってペコりと頭を下げるリウィに表情はない

 いつも以上に無表情で、まるでもう何もかもあきらめてしまったかの様な

(子どもがしていていい表情じゃないね)

 ともあれ、子どものボクがどうやってリウィの現状を探りうるか。


 となりのアンナをちらりと見るとリウィを見つめながら少し考え事をしている様だったが、すぐに笑顔になると、リウィをもう一度抱き上げた。


 リウィは一瞬だけ抵抗をしたが、人肌の心地よさゆえか少し緩んだ表情になった。

「ねぇリウィちゃん?どうしてママを探してたのか教えてくれない?」

 リウィは無言でアンナにの首に抱きついて、小さく首を縦に振った。


 ボクたちは露店で果汁の飲み物を購入し近くの公園のベンチに座る。

 リウィはアンナの右側に座ってその手をアンナの手に重ねて置いている。


 暫くの間無言で、ジュースを飲んでいたリウィはジュースを残り1/3ほどまで減らしたところで、ぽつぽつと話し始めた。

 内容は子どもの視野で見たものでたどたどしく、全体図は見えてこないものだったが、大まかにまとめると以下の様になる。


 ブラウニー家の家業はパンと菓子類を売る店で、子どもの目で見てもわかるほど繁盛していた。

 売れ残りなんてほとんど発生せず、あってもリウィや両親の口に収まる程度のもの。

 毎日両親に挟まれて眠り、とても幸せだったのに、去年の秋に突然父親が、馬車の事故で他界したという。

 そしてその日のうちに怖い男たちが家にやってきて、母カンナに何かの書類を見せた。

 母と引き離されて、孤児院に居れられ、母は男たちに囚われてどこかに連れて行かれた。

 その時の絶対迎えにくるからという声が耳を離れず、休みの日は母を捜して町を徘徊していたという。


「前はまいにちさがしてたの、でもいまはがっこうがあるから・・・、おはなしきいてもらえてうれしかった。」

 リウィはこれ以上は話すことがないとでもいうかの様に飲み物の残りを一気に吸い込むとベンチを降りた。


「リウィ!」

 その寂しげな後ろ姿に堪らず声をかける、かける言葉はなにも考えてなかったので、少し考えてから。

「家まで送るよ」

 といった。


 リウィが入った孤児院は、学校から徒歩7分ほどのところにある大きな孤児院だった。

 正面玄関から中に入りリウィがただいまというと、50くらいの女性が戸をあけて現れた、応接室か。

 誰か客人の応対をしていたのだろう。


「院長せんせいただいま。」

「お帰りなさいリエッタ、丁度貴方におむ・・・あらそちらは?」

 院長はボクたちの姿を認めると、リウィにたずねる

「えっと・・・」

 とリウィが説明しあぐねたので、ボクはとっさに「親戚です」と応えた。

 その瞬間の院長の驚いた表情をボクは見逃さなかったけれど院長はすぐに笑顔になって


「それでは、リエッタをお引取りに?ですが無駄足の様です、今リエッタの母親から迎えが来ています。」

 といった。

「ママ!?」

 リウィは子どもってこんなに早く走れるのかと思わせる様なスピードで応接室に走ると入り口で力なく・・・・いや見たこともない様な憎悪の表情を浮かべて立ち止まった。


 リウィはボクたちのほうに戻ってきて首を横に振った。

「さぁリエッタさん荷物はもうまとめておきましたので、このダニエルさんについていってください。お母様のところへ連れて行ってくださるそうです。」


 ダニエルと呼ばれた男はかなり厳つい大男だった。

 リウィの怯え方や、母親のことを出してくるあたり、リウィの母を連れ去った男の一人なのだろう。


「失礼ですが、親戚とはどのようなもので?われわれは聞いていませんが」

「ボクたちは最近まで南西の開拓地に住んでいたので、連絡は取れないものとして、言わなかったのでしょう。カンナさんとこちらのアンナがいとこです」

 モチロンでまかせだ。

 似ているそうだし、書類は最悪偽造できる、ココはごまかしておこう。


「二人で交易のためにきたのですが、リエッタの家の不幸を知り、出来れば引き取りたいと思って探してたんですよ。」

「そうでしたか、よかったわねぇリエッタ、こんなやさしそうな親戚がいて、でももうおかあさまのお迎えがあるのだからいらないわね?」

 院長はどうも怪しいね、こんな筋肉だるまをみてお母さん本人でも見つけた様なしゃべり方をしている。


 リウィはアンナにしがみついて無言でダニエルのほうを睨んでいる。

 アンナはそんなリウィを一撫でしつつ

「良かったら、私たちもカンナさんにお会いしていっても良いですか?迎えに来たのなら、居場所をご存知なのでしょう?」

 といった、ボクにあわせてくれる様だ。


 ダニエルは少し考えたあと値踏みする様にアンナの身体を眺めた後

「少し遅くなりますが、連絡を取らないといけない方などはいらっしゃいますか?」

 とたずねてきた。わざわざ心配する家族がいるかと聞いてくるあたり怪しさ爆発だね。


「いいえ、この子の両親は昨年無くなってますし、私もだいぶ前に死に別れていますし結婚もしていませんから。」

「ならこのまま行きましょう、外に馬車があります。」

 話が早いね助かるよ、コレでだいぶ真実に近づける、幸い今日は学校帰りじゃないのでズボンに払暁も隠し持っているし。

 こっそりと護衛も付いてきている。


「リウィ、ボクたちがついてってあげるから、呼んでるのがママじゃなかったらママが見つかるまでボクたちと一緒にくらそう?」

 そういうとリウィはコクリとうなずいてくれた。


「それではこちらへ」

 ダニエルについていき馬車に乗りボクたちは移動を開始した。



 馬車を降りるとどこかの貴族のお屋敷みたいだね。

 道中ダニエルに聞かせられた設定によれば、リウィの父がここの貴族に借金があり、今までは徐々に返していたがなくなったので督促に行き、母親を娼婦か女中にでもさせようと連れ去ったが、だんな様が気に入り継室にしたので、娘も引き取ることにしたのだそうだ。


 胡散臭いことこの上ないね。まずブラウニー家の家計はかなり潤っていた様だし、そんな借金があったとは思いにくい。

 

 馬車を降りてすぐに気配を探ってみたけれど。護衛はちゃんと付いてきているね、2人減っているのは孤児院の監視に残したか増援を呼んでいるか、あるいはその両方だろう。


 屋敷にはいるとすぐに応接間に通された。

 そこには脂ぎった40半ばくらいのデブなオッサンがいた。

 オッサンはボクたち3人を見ると第一声が

「どっちがリエッタだ?」

 だった。

 リエッタを娘として迎え入れるなら、髪の色くらい聞いてそうなものだけどね。ボクは純粋な金髪でリウィはピンク交じりだ、聞いていれば間違え様が無いはずだけれど


「するとこちらのお嬢さんはどなたかな?」

「はっカンナの親類だそうです。」

「そうかそうか、他に親類は居ないのか?」

「はい、この2人だけだそうです。」

 こいつら隠す気がないのかな?カンナと継室に迎えたはずの人を呼び捨てする家臣に、わざわざ親戚がもう居ないことを確認するおっさん、100%クロだね。


「ママは・・・ママはどこ?」

 リウィがたずねるとおっさんはいやらしく笑い。

「カンナはいまリエッタに会うために身体をきれいにしているところなんだ、リエッタも私とお風呂に入ろう、今日からパパと呼んでもよいのだよ?」

「・・・」

 リウィは不愉快そうに顔をゆがめている。


 アレから10分ほど・・・。

 話題を何度かそらしつつ時間を稼いだけれど、カンナは現れない。

 オッサンは手を代え品を代えボクたちを風呂に連れ出そうとしたり。アンナにドレスを勧めたりする。


 これはもう明らかにカンナさんはここにもう居ないか、見せられない状態だ。

 となるとこのオッサンの目論見もある程度わかるね、ボクたちのことは逃すつもりはないだろう。

「リウィ今日は一回帰ろう、明日も学校でしょ?」

 そういうとオッサンは言った。

「その必要はない、明日には院長から、退校手続きが取られるはずだ。」


(こいつ、何を考えているんだ。もう尻尾出しすぎててどれを踏めばいいかわからないけれど)

 パチン


 オッサンが指を鳴らした。

 すると後ろのドアから厳つい男たちが3人部屋に入ってきた。

 女の子3人ならコレで十分だと思ったんだろうけれど。

「そろそろ紳士的な私も焦れてきてしまってね、アンナくんを先に味見しよう、お前たちはガキ二人にアレを投与して準備させていろ後でそっちも頂く。」


(えぇーちょっと短気すぎません?)

 アレを投与って明らかにメディスンじゃないドラッグ的な薬物のはなしですよね?

 男たちは下卑た顔で近寄ってくる。

 というかボクやリウィにもそういうことする予定ってことは、このオッサンストライクゾーンがかなり広いね。

 アンナとリウィは悲鳴を上げてイスから動けないで居るけれど。

 (こんな武装していないチンピラ3人とダニエル1、オッサン1くらいならば・・・)


 ボクは現在調整できる4倍加速を使いとりあえずダニエルの脚とチンピラ3人の踵に浅く斬りつけた。


「ギャーっ」「いてえぇよぉぉぉ」

 チンピラたちは叫び声を上げてその場に倒れこむがダニエルだけはなんとか立ったままこちらを警戒する、がすぐに窓が割れて男たちが侵入してくる。

 新手ではなくホーリーウッドの黒騎隊、侯爵家の身の安全を確保するための近衛隊の最精鋭部隊であり、あのホーリーウッドに到着した日にボクたちを囲った部隊である。


「なんだ貴様らは、ここをこのゲゼル男爵の屋敷としっての狼藉か!!」

 おっさんは何かいってるけれど、突入してきたということは既に、証拠もあるのだろう。

 その場でオッサンをつかまえて床に押さえつけている。


「ゲゼル男爵、貴様をアイラ様に対する傷害未遂で拘束する。また屋敷内の検査はこれより滞りなく実施される、罪になるものは先に言っておいたほうがよいぞ?」

 そう告げた男は前に見たことがあるね、そうそう馬車の御者役をアビーさんから引き継いだ若い男性だ・・・名前はなんだったかな・・・?


「どうもアイラ様、黒騎兵のウェルズです、コリーナのお友達のアイラちゃんというのは、やはりアイラ様のことですよね?フィアンセがお世話になっています。」

 オッサンの拘束が終わったウェルズさんがこちらに歩いてきて言った。

 え?このイケメンがコリーナの婚約者?

 ウェルズさんは細マッチョなイケメンでとてもロリコンには見えないさわやかな笑顔でこちらに挨拶してきた。

 

「君がリエッタちゃんか、コリーナの言うとおりすごくかわいいね。君が無事で済んで何よりだ、アイラ様もお伺いしていた通りかなりの手練なのですね驚きました。あの様に一瞬で脚の筋だけ斬りつけるなど、近衛兵でもそうできるものはおりません見事の一言です。」

「それはどうも」

 乙女としては、ほめられて喜んでいいのかわからないけれどね。

 それはそれとして本当にロリコンじゃないよね、すごく撫でてるけど。


 ウェルズと話ながらボクたちは屋敷の中に聞こえる怒号と足音を聞き続けた。

 


いつかはアイラちゃんを世界最強女子にしたいのですが、戦闘シーン自体がまだほとんどないので難しいです。

早く13歳にしないと・・・がんばって書き進めます。

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