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第23話:Happy Life、Happy Girl

今のホーリーウッド在住のうちにアイラに幸せ成分を注入しておこうと思います。

こんにちは、暁改めアイラです

学校生活が始まりました。

これからどんな友だちができ

どんな毎日があるのか・・・

お勉強についていけるかな?

なんて不安に刈られたのも最初だけ・・・



「あーん授業退屈ー」

ボクのすぐ後ろでだらけきっているのは

あの二人のリーダーの片割れ

ソニア・ハープナは8才でノラと同じ年度生まれ

オレンジに近い赤茶の髪を短めに切っただけの髪型は女の子としてどうなのかな?

人任せのボクにとやかく言えることではないが


ソニアの家は代々冶金と鍛冶をする家だそうで、娘のソニアでは跡を継げないため婿を取らせるつもりで、最低限の技術を教えてきたが、昨年生まれた弟が家を継ぐ様になった、そのため手に別職をつけるためにまずは基礎学校にきたそうだ。


「そうはいっても仕方ないじゃない?初級クラスだもの」

もう一方のコリーナ・フェブラリは高級旅館の娘で、刃物や鍋の購入や手入れをハープナの店で注文していて幼い頃からの知り合いらしい

コリーナは9才ギリギリの入学だが高級旅館の娘らしく一般教養を皆つける前に、旅館の娘の所作をみにつけていたそうだ


色素の薄いライトブラウンの髪を前はパッツン後ろは腰まで伸ばしているが、長いのに手が行き届いている


「リウィはいちばん年下だからもっとむつかしいと思ってた」

とはボクたちより3ヶ月だけ月齢が上のリウィ

リウィはどうも孤児院の子らしいね

聞きづらいことなので詳しくは聞いていないけれど


基礎学校初級の授業は恐ろしく簡単な内容だった。

字の読みかたからスタート、数字も実際にリンゴなどを使い数を体感で認識させるところからだった。

農民や貧困層の子なども含んでいるからこれがスタートラインなのかな?

この王国における識字率はまだ3割を下回っていて、それでもホーリーウッド領は農村が多い割りに識字率は高いそうだ。


字の読み書きと同時にきれいな字の書き方についても教えているのでまだマシだけれど

少なくともうちの班では全員字も数字もOKでアイリスとリウィが多少字がヘタなくらいだった。


そのためボクたちの班は既に試験の勉強に手をつけている


下級の認定試験の筆記の内容は算数と王国語のみでまだたいしたことはない

あとは面接だけど会話が成立するかくらいしか見られないらしいので、作法さえ守れば通るそうだ


毎日9時30分頃に学校に来ては、国語、算数と1時間のお昼休みの後に 運動か作法の実技授業を受けて家に帰るだけだけれど、それでも楽しみもある。


お昼休みにほとんどの生徒は外に食べにいくけれど、うちの班は孤児院のリウィが給食だ。

一人で食べさせるのはさびしいのでほとんどの日、ボクたちはお弁当を持ってきている。

お弁当といっても、毎日時間にまだあたたかい食事をサークラとエッラに運んでもらっているのだけどね

先生に聞いたところ家が近いなら自宅で食べたり自宅から届けてもらったりも問題ないということでこの形式となった


リウィは給食の、ソニアとコリーナは自宅から持ち込んだパンを主食にボクたちが用意したおかずを食べる


リウィは育ち盛りなのでよく食べる、そのちまちました食べ方は小動物みたいでかわいいが、ボクとアイリスをあわせた分くらい食べるのにその体の小ささはなんなんだろうね?

 見ていて飽きないし、かわいいからお得感があるけれどね


もうひとつの楽しみは寄り道だ。

帰り道に屋台での買い食いや、公園で大道芸人や弾き語りの吟遊詩人を冷やかすのは、前世では出来なかった経験だ。


(買い食いはともかく大道芸や吟遊詩人なんていなかったしね)


そして今日もリウィをアイリスと挟み込んで公園のベンチに座る

リウィはこの公園に寄り道するといつも屋台の蒸しケーキを見つめるのだ・・・懐かしそうに


どうして孤児院に入ったかはわからないけれど

思い出があるのかもしれない



学校に通い初めて二度目の休みの日

今日は1月24日

今日はウェリントンから出てきて一番嬉しい日となる予定・・・・


出産予定日が近いキスカはこのところエッラと共に寝ていたのだが

早朝のうちに産気付いたらしい


ボクが起きた時には城内はすでにてんやわんやしていた

まだ18才のキスカはもちろん初産、この世界の初産の年齢としてはやや遅いくらいらしいけれど体力的に余裕はない


ただウェリントンでの出産とは違い

ちゃんと専業の産婆さん(貴族御用達)と治癒術士がいるため危険は少ない


それでも痛みは変わらないためキスカの様子は痛々しいものだった

 脂汗が額ににじみ、うめき声が部屋の外まで響いていた

ふと思いだして、許可をもらい部屋にはいる、キスカは分娩台の役割をもつ頑丈な台にのせられて股を開いていた


ボクは産婆がいない方につき手を握る

キスカは一瞬驚いた顔をしたがボクの手を握りしめていきむ


少し手は痛いのだけど、さっきまでより握り込む力は弱くなった様に見える


途中ユーリが入って良いか聞いてきたが男子はダメだと言われて残念そうな声が聞こえた。

代わりにエッラがアニスとアイリスをつれてきて

 3人がボクとキスカの手の上から手をかぶせて

「キスカ(さん)がんば(って)れ!!」と4人で声をかけた。


 それから更に30分ほどで、ボクらにとって待望の、ウェリントン最後の赤ちゃんが生まれた。



 生まれた赤ちゃんは健康そのもので、多少時間はかかったものの母子ともに万全

 初乳を与えられた赤ちゃんはそのまま「浄化」と「祝福」かけたお湯で身体を清めてから

 キスカのとなりに寝かされた。


 赤ちゃんを産み、初乳を与えたあと一時意識を失っていたキスカだったが目覚めると、まず赤ちゃんを探し、横に居ることがわかると目を細め、笑顔になって、泣いた。


「あぁ私の、私たちの赤ちゃんだよ。サルボウ・・・・・。今度こそ無事に生まれてきてくれたんだよ・・・、サルボウは何でここに居ないのかな?」

 涙を流すキスカは、しかし赤ちゃんには笑顔を向け続けていた。


「サルボウが悔しくなるくらい、私がこの子を独り占めして可愛がるんだから、あんたの番は100年ばかり待ってなさい・・・バカ」

 キスカはまだだるそうにしながら、赤ちゃんを撫でて、そこにあわてた様子のノラがやってきた。


「キスカ赤ちゃんは!?男の子?女の子?てかキスカは大丈夫!?」

 ノラがココまで早口でしゃべるのは貴重だね


 ノラの目の前には、赤ちゃんを撫でてご機嫌のアニスとキスカの横で二度寝を始めたアイリス、キスカに白湯を飲ませているエッラとアニスに赤ちゃんをなでさせるためにアニスをがんばって抱えているボクが見えているはずだ。


「良かった、二人とも無事なんだ、で・・・どっち?」 

 部屋の中の様子をみてある程度は察するノラ、ノラは本当は洞察力のある賢い子だから当然だね。


「元気な女の子だよ、もう名前も決まってるんですよね?キスカさん」

 とエッラが知った顔をしてキスカにたずねる。


「えぇ、サルボウの名前をちょっと捩ってね、サルビアなんてどうかなって。」


 その後眠ってしまったキスカの部屋をでて、みんなで主役不在のささやかなお祝いをした。

 ボクたちはもう、ウェリントンはもう減っていくばかりになってしまった。

 そうした寂寥感を感じていたら、ユーリが手を繋いでくれた。


 こういうときのユーリはイケメンだね、顔は可愛いけれど、女の子(ボク)がどうして欲しいか良くわかっている。

「赤ちゃん可愛かったね、しわしわで・・・弱弱しくて。」

「うん」

「アイラも僕も昔はあんなふうだったんだね。」

「うん」


 とりとめの無い会話、つながれたままの右手と、やさしい声の安心感。

 ふっとユーリのほうを向いた瞬間に、唇を奪われた。

 押し込まれる舌の感触、普段なら抵抗したかもしれないけれど、このときはその温かさが懐かしくって、オルセーよりもっと前、なんとなく神楽とのそれを思い出していた。

 婚約者(まだ候補)だからだろうか?

 

 ねぇユーリ?君はどうしてそんなに簡単にボクの心を開いていけるのかな?

 ボクたちまだであって1ヶ月くらいだよ?

 舌はちょっと早いよ?オルセーといいこっちの世界の子どもはみんなそうなの?


「かわいいアイラ、僕はね?今の君よりは女心が分かるんだよ」

「ユーリ?」

「僕はアイラよりおにいちゃんだからね。」

 そういって笑うユーリに頭を撫でられて、もう一回だけキスされた。



 キスカの娘、サルビアの誕生後の夕方、あのフローレンスおばあさまがわざわざお城をでてディバインシャフト城までやってきた。

 フローレンス様自らサルビアを抱きあげてご満悦の様子で

「アイラたちがコレくらいのときに抱いてあげたかったわ。」

 と少し悔しそうな顔をして言った。


 それからキスカのほうを向き

「このディバインシャフト城で生まれた以上このサルビアも私たちの親戚の子どもみたいなものよね、困ったことがあればいつでもいいなさい、相談にのります。」

 とお言葉を下さった。

 キスカは恐縮していたけれど、サルビアの誕生を祝福してくれるのはやはり母としてうれしいようで、難度も頭を下げていた。

 そうか、キスカは既に母か、となると・・・おっといけないせっかく最近は淑女らしい所作が身についてきているというのに(願望)、また乳離れしていないとか言われるところだった。


 それにしてもこんな幸せな日々がずっと続くといいのにね。

 そんなことを考えたのが良くなかったのか、なかなか平穏というのは訪れないものなのだ。

ちょっとまとまりが悪いですが、いつかは意味のある話になります、なるはずです。

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