第18話:ホーリーウッドの2つの城
すみません今日は1本しか用意できませんでした。
短い上に説明回です。
こんばんは、暁改めアイラです。
時刻は夕刻6時過ぎそろそろ晩餐のためにホーリーウッド城へ向かう時間です。
ボクたちは大型の馬車に乗り、一路ホーリーウッド城へ向かい出発した。
いやーしかしこの街は大きいね、まずひとつの市内に城が二つある時点で何かおかしいし。
街の中心付近を南北に大きな川が貫いている。
この川を中心にして、広がった街なのだろう。
この街の住人が3人も乗っているのだ、誰かなにか知ってるかな?
「ホーリーウッドにはどうしてお城が二つもあるのですか?」
気になったので聞いてみた。
「アイラ様、ご自身がコレからお住まいになる土地の歴史を知ろうとする素晴らしい姿勢です。」
ナディアがニコニコ顔でほめてくれる。
「それでは僭越ながら私ナディアが簡単に説明させていただきますね。」
ナディア以外のみんなが拍手する。ボクも・・・ぺちぺち、いい音でないな。
「ここホーリーウッド市は今から約450年ほど前にホーリーウッド侯爵領の城塞都市ウェストウッドとフィオナ族の都市国家であったディバインシャフト、それから獣人族の隠れ里だったカリオペの3つの集落が合体してできました。」
「獣人の町があったのですか?」
それにしては今のホーリーウッドには獣人がほとんど見えないけれど。
「左様でございます、不思議そうな顔をしておいでですね。サテュロス大陸西部にはほとんど獣人がいないのに・・・と」
ナディアがボクの思案顔に満足いったのか、ニコニコとしたままで説明を続ける。
「お隣の、ルクス帝国はご存知ですよね?」
モチロンだとも、父母と兄や、大事な村人を殺した連中の出身国だ、国が関与してようがしていまいが、そこだけは確定している。
「アチラでは獣人族に対する、食人が一部の人間の間で横行しています。」
「純血主義者というやつですか」
「はい、よくご存知です、無論そういう人ばかりではないですし、ほとんどの獣人は誰かの所有物ということが多いので、勝手にさらったり殺したりすれば、窃盗や器物損壊という扱いで処罰されます。」
こともなげな顔で日ノ本人形の様なおかっぱの少女の口から語られるおぞましい風習と信じられない言葉、誘拐殺人ではなく窃盗損壊だと?
チラとトリエラのほうを見ると
「そうらしいですよ?少なくとも帝国では、獣人は所有物扱いだそうです。」
悲しそうなトリエラをみてから、ナディアが続ける
「それでその頃にはもう獣人たちは、国として抵抗できなくなってきていました。それをかばっていたのがディバインシャフトです、フィオナ族は見た目はわれわれ人類と大差ないですが、100%の確率で強めの魔力を持ち、念話と呼ばれる能力によって、言葉の通じない種族とも心を通わせるやさしい種族でしたが、カリオペを庇ったことで時のルクス皇帝ナイア・メルト・ルクセンティアによって魔獣宣告というものが行われ、帝国の純血主義者の食人の対象とされました。そこで当時中立の関係にあったホーリーウッド侯爵と取引をして、都市国家ディバインシャフトを移譲し、当時開拓が始まったばかりだったホーリーウッド領南端のレジンの森に獣人たちと共に移動しました。以来現在に至るまで、ホーリーウッドの属国の様な形ですが共生関係を保っています。」
今の言い方だとそれ以前は国として帝国と立ち会えていたみたいだね?
「かつてはこのあたりは獣人の国があったということですか?」
「このあたりというかサテュロス大陸自体がそもそも、ほとんど全域サテュロス族の国だったそうからね、バフォメット事件で崩壊するまでは大陸でもっとも栄えていたのは獣人の国だったと聞きます。それももう6000年は昔のことらしいですが」
途方もない数字にも驚いたけれどまた知らない単語が出てきたね。
「バフォメット事件ってなんです?」
「あくまでも神話の話としてお聞きください。サテュロス族がまだこの大陸の覇者として君臨していたときに、王族の姫が一匹の魔獣に襲われました。魔獣は衛兵たちによってすぐに処分されましたが、その後姫は懐胎、当時の堕胎の方法は母体を著しく痛めつけることだったため姫に対しては行えず、仕方なく姫はそのまま出産することになりました。」
「無理やりに運動とかして、流産とかはできなかったのでしょうか?」
キスカがたずねる。
「それが出来たならしてたでしょうね・・・たぶん強い生命力を持っていたのでしょう、結果生まれたのがかの魔神バフォメットですし。」
「サテュロスの特徴である逆関節の脚に毛深い下半身とヤギの様な角、悪魔の翼と強靭なミノタウロスの上半身を持つ凶悪な魔神は僅か3日で当時の王都を壊滅し更に各地を蹂躙それを当時小国だった、ルクス王国王と我らがイシュタルト王、そして大陸最東の今はなきヴェンシン王国の王らが自ら剣を持って討伐しました。」
「そして、イシュタルトは二度と獣人や人類が魔獣との間に子どもが出来ない様に護る国家に、ルクス王国は帝国となり、獣人が二度と魔獣と交わることの内容に管理し、ヴェンシンは獣人を他大陸に遠ざけました。」
トリエラが投げやりな感じに続ける、そんな神話Lvの話のために今も自分たちの同胞が帝国で虐げられているというのだから、苛立ちもするだろう。
「そもそもサテュロスは獣人の楽園で、暗黒大陸が壁に囲まれるまでは、人類は居なかったといいますしね、ホーリーウッド城に着きましたね、だいぶ横道にそれてしまいましたが、ホーリーウッド市に城が二つあるのは、河をはさんで対峙していた二つの街が一つになったからなのですよアイラ様。」
「ありがとうナディア、気になることはまだ多いけど、勉強になりました。」
「いいえお役に立てて光栄です。」
神話の話をするのが好きなのか、ナディアの頬はほんのり赤くなっていた。
10歳だというのにちょっと色気すら感じるね。
ユーリにエスコートされて馬車を降りると、ボクたちはホーリーウッド城へ降り立った。
馬車を使ったために回り道をしたけれど、これって徒歩で来るのと時間同じくらいじゃないかな?
今日は飲み会だったけど明日はがんばります。




