第12話:ホーリーウッド市
今朝 幕間1をビ修正したのですが修正し損ねがありますので帰宅後修正予定です、この投稿も携帯投稿になりますので誤字脱字の修正は帰宅後となる予定です
エドガーやトーレス、ハンナの描写が控えめなのはアイラの親兄弟だからです、エドガもトーレスも凄絶な戦いを感じさせる死に樣でしたが、アイラは直視出来ませんでした。
※17/3/17 エドガーとエドワードの年の差表現を親子ほどもに修正しました。
こんばんは、アイラです。
ウェリントンを出て馬車で20時間ほどかけてボクたちはホーリーウッド市へ到着した。
ほとんど休憩も取らずにギリギリ、夜にこんな距離を3時間ほどで駆けて、一日足らずで戻ってきたエッラの行動力と馬術には、感服するね。
実際には、エッラが救援を要請したのは、夜警隊の
簡易宿舎のある砦だそうだがそこでもホーリーウッドまでの2/3を超えた辺りだ。
時間はギリギリ本日といったところ、辺りは暗くなっているが、なんとかたどり着けた
今夜は首都防衛隊の夜勤宿舎にお世話になる予定となっている
「いやー予定通りなんですが、今日中にホーリーウッドに戻れてよかった」
ミーシャおじさんがにこやかにいう
馬車の前を単騎で先導していたアビーさんが西門の前でこちらに向き直る
「みなさん、門で荷物のチェックなどあるので一度馬車からおりていただけますか?
まあ仮にも地方の最大都市なのだそれくらいのチェックは必要だろう、たとえ防衛隊の隊列だろうと
しかしだ
「すみませんミーシャさん、アニスとアイリスが寝ているのですが・・・」
「ああ寝ている子どもをわざわざ起こしたりはいいよ、抱いておくか、荷物と離して置いて」
サークラはすこし考えてアイリスはねっころがしたままで
アニスをだっこした
門兵が4人で馬車や馬具をチェックする
馬車のチェックは中を軽く覗き込んだくらいで終わったが
門番から簡単な伝達があった
「馬車のままで西広場から北へ向い3番広場で待機する様にと指示がありました」
「3番広場で待機ですか?宿舎なら5番が最寄りですが」
ミーシャおじさんが怪訝そうにたずねる
「はい、中尉ととくに信のおけるもの1名とで、3番広場まで馬車を護衛し、残りは賊の護送をお願いします」
「了解しました」
すこし気になる所もあるが指示通りにボクたち生存組とミーシャさんとアビーさんとで3番広場まで移動することにした
3番広場は教会と学校のある地域で、夕方以降は出歩く人は少ないらしい
店も学生向きの食堂や雑貨店が中心ですでにほとんどの店が眠っている。
それでもウェリントンは田舎だったため街灯すらなくきちんとした店自体が貴重でノラとエッラがきらきらした眼で広場に見入っていた
「すごいねお店がいくつもある」
ノラは密かに町への憧れがあったらしく楽しそうだ、いい傾向だね
さて広場に待機して3分ほどしたところで妙な空気になっている
黒い服の集団が10人ほどで馬車を囲んでいる
ミーシャさんは少し警戒している、緊張感が伝わるけれど、危険な感じはしない
サークラが確認のために馬車からおりる樣なので
ボクも念のために一緒に降りた、払暁は携えたままだ
サークラを見たとたんに黒服の一人が1歩前にでた
「サークラ・ウェリントン様と妹君樣でいらっしゃいますか?」
「はい」
サークラが緊張気味に肯定する。名前が割れている以上否定する意味は薄いだろう
「我が主人からお迎えにあがる様に言われて参りました。」
迎えという言葉に咄嗟に半年ほど前のエドガーとの会話を思い出した。
「主人とはオズワルドさんでしょうか?」
ボクが尋ねると黒服のおじいさんはにんまりと笑い
「その通りでございます、アイラ御嬢様。」
さっきは妹君だったのがアイラ御嬢様になっている、オズワルドという名前を知っているのがアイラだと解っているのだ
エドガーはこの迎えに乗れば悪いことにならないといっていた。
ならば乗ってみよう
「姉さん、父さんの知り合いの様です」
サークラがかがみこんでボクの肩に手を置いてささやく
「アイラ、お父さんから聞いているのね?」
「はい、父さんに何かあって迎えがきたならば怪しまず頼る様にと」
「そう、アイラが聞いているのなら安心ね、わかりました、お招きに感謝いたしますただ・・・」
サークラは立ち上がりながら凛とした声でハキハキと話し始めたがすぐに言い淀んだ
「私たちはエドガー・ウェリントンの娘4人とそれ以外の生存者が4人おります・・・出来れば今離ればなれというのは・・・・」
そうだ今やボクたちはウェリントンという家族の8人だけの生き残りで、オズワルド氏にとっては旧知の娘たちと赤の他人である
並の商家程度では8人も食い扶持が増えるのは大きな負担で、しかもその中に男手はない。
「ああ・・・その様なことはお気になさらずとも良いのです」
遣いの男はニンマリと人好きのする笑顔で心配はないといった
「我が主人からは、50人までならなにも考えずに招いてよい100人に届いたら少し方策を考えよと仰せつかっております」
100人と言うのは恐らくはこの遣いの男のユーモアなのだろう
「ありがとうございます、お世話になります」
「ところで、良い馬車も用意させておりますが、乗り替えますか?」
「いいえ可能なら今の馬車のままで。」
サークラが即断する、ウェリントンの匂いが残ってるからね
「かしこまりました、ウェルズ!」
「はっ!」
黒服の一人が馬車に近づき、アビーから手綱を譲り渡された
おかしいな、アビーさんもミーシャおじさんもまだ緊張している、ほとんど喋らない
なにを警戒しているのだろうか・・・?
その後10分ほどかけてゆっくりと移動し、ボクたちはオズワルド氏の館と思われる敷地に到着した・・・が、
「これは・・・」
サークラたち年長組は言葉を失っている
「うわぁー!」
いつのまにか起きていたアイリスとアニスは眼を輝かせている
「領主様の城館といった風情ですね・・・?」
ボクもすこし引き気味だ。
「御嬢様方・・・こちらへどうぞ」
使いの男がボクたちを城館の内部へ案内する
そして城館の内部まで入ったところでようやく使いの男はここがどこか明かした
「ディバインシャフト城へようこそおいで下さいました。私は当城館の執事メロウド・ボーキュパインでございます。ここまで名乗りもせずご案内いたしました非礼をお詫び申し上げます
そして男・・・メロウドが所属と場所をあきらかにすると同時に背後の大扉が開き60才過ぎくらいにみえるおじいさんと20代半ばほどの男性が現れた
若い方はどことなく父エドガーともよく似ている
そして彼らが部屋に入ってくると同時に
ミーシャおじさんもアビーさんも跪いた
そしてさらに一人おじいさんの後ろから金髪の美少女、ではなく美少年が現れた年ごろはノラとボクの間くらいか?この時間はさぞや眠かろう、不機嫌そうだ。ボクたちは馬車で寝てたからね、もう少しは平気だよ?
「よくぞ無事にたどり着いた、ここをそなたらの第二の家と思い、ゆるり過ごしてほしい」
若い男性の方が落ち着いた声音で語る
田舎者のボクたちウェリントン組はどの様な礼をとるのが正しいのか判らないが
品行方正で通った姉のサークラすら狼狽えているので次女のボクがしっかりしなくては
普通は最敬礼か平伏するのだろうがやり方を知らないし、アビーさんたちの樣に跪くのもボクは本日膝丈スカートに普通の無地のパンツである為、万が一見苦しい物を見せると申し訳ない気持ちにさせるかも知れない
仕方なく舞踏会でも誘う様な裾を持つ形式の挨拶をしてから口上を述べた
「この度は行き場のない私たち避難民を受け入れて下さり感謝いたします。わたくしは村長エドガー・ウェリントンの二女アイラと申します、田舎娘故、閣下のご尊顔を拝しましても、ご尊名を存じあげません。失礼に当たるかもしれませんが、父の遺言にあったオズワルド様でいらっしゃいますか?」
長く語ってしまいそれも失礼になるかも、と考えたがとくに悪い印象は与えていない様だ、男性はおじいさんと目配せしたあと 「私はギリアム・ホーリーウッド子爵、こちらにおわす方は我が父エドワード・ホーリーウッド侯爵、西安侯であらせられる
もしやと思ったが・・・
ここホーリーウッド地方の大領主、王国の四方に君臨する王国にたった4人の侯爵樣ご本人樣ではないか父が秘密にするわけだよ、たいしたコネだ。
「内密にしてほしいことだが、そなたの父エドガー・ウェリントンが遺した言葉にあるオズワルド氏とはこちらのホーリーウッド侯爵のことだよ」
とギリアム樣がエドワード樣を示す
「礼儀が解らずともなるべく丁寧にしようという気持ちが伝わる良い口上であった」
いま紹介を受けたばかりの侯爵様が語り始める
「が、そなたらエドガーの娘はワシに対してはただの老人として扱い振る舞うことを許そう、あまり堅くならぬ様に・・・」
寛大な言葉を頂いたがどういうことだろうか?
エドワード侯爵はメロウドさんとギリアムさんと視線を交わしたあと
「これはここにいる者たちは口外をしないと信じて話すが、エドガー・ウェリントンはワシの異母弟に当たる者である」
(!?)
誰一人言葉を話せる者はいなかった
今目の前にいる男性はホーリーウッド侯爵・・・王国に4人しかいない侯爵であり、王権に対して拒否権まで持つ権力者なのだ
父が、あるいは村長がその様な者の弟と聞いては言葉が出るはずもない・・・
誰も声を出せないままだが、エドワード様は続けておっしゃる
「先代のホーリーウッド侯、ワシの父だが、長男のワシと歳の近い同腹の男子が3人おってな、早いうちにワシを世継ぎと決めたはよかったが、弟たちに権力を持たせ過ぎ、増長した配下たちの暴走を止めきれなくなった。長い間弟たちをワシの代わりに次期侯爵の椅子に座らせようと争い続けて、しまいには父によって弟たち共々処分された。」
どこの世界でも権力争いはあるものだ、日ノ本に置いても1621年の織田家中の骨肉の争い(茶会の変)は聴くに堪えないものだった・・・
「ワシと父は協議し唯一残った弟を小さな村の村長として簡単な政治を学ばせいつかワシの元へ戻す為に手放した、とは言ってもワシとエドガーは親子ほども離れていたためワシではなくギリアムの右腕となってもらうつもりでいたのだがな・・・」
そこまで話すと段々声が寂しそうなものになり、ギリアム様が言葉を繋いだ
「ウェリントンの運営も軌道に乗り始め、納める作物の質、量も安定していた、次の種蒔きまでまって叔父上を呼び戻すつもりであったのが、まさかこの様なことになろうとは・・・・」
悔恨の表情を浮かべるギリアム様、ふたたびエドワード様が語り始めた。
「過ぎたことをいっても仕方ない、ただのぅ、エドガーは弟であったが、ワシの初恋の女の息子でもあった。」
「わしはエドガーを自分の息子の様に感じることも多かった、歳も歳であったしな、エドガーを失ったことは今のホーリーウッド家にとってあまりに痛い、機をみてギリアムとサークラか、ユーリと下の娘たちとで婚姻させエドガーを一族衆に呼び戻す算段もあった。報せを受けた時は気が気ではなかった、今ホーリーウッド家一門といえるのははここホーリーウッドにいる4人と王家に嫁いだ娘のリアンだけじゃからな最悪王家からリアンの子か孫を降家させねば濃い血脈を保てぬのではないかとも考えた。しかしそなたらが生きていた」
言葉から家の存続の為に僕らを必要としたのかとも少し邪推したが
エドワード様の瞳はそれ以外の悔やみや苦しみ、喜びも湛えていた
「先程もいったがなそなたらのことはこのユーリと同じ孫の様に扱う、そなたらもワシのことは祖父の様に思ってほしいそれと・・・」
少しだけいい澱む、なにか頼みがある様だ
「特にアイラ、そなたはこのユーリと仲良くしてほしい、外の者らにユーリには懇意の乙女がおると見せる必要があるのだ・・・なぜかユーリは女性に対して審美眼が厳しくてのう・・・」
そういいながら少年を撫でるエドワード樣
何となく察した、女性に厳しいらしいユーリは少女と見紛う様な可愛らしい美少年で髪も少し長めなため、ソッチの噂もあるのだろう
おそらく今まで仲の良い女の友達もいなかったのかな
しかしなぜボクなのだろう?
「ませておっても顔芸腹芸は苦手な様だの、子どもらしい部分もあって安心した。何故自分なのか?と顔に出ておるぞ」
「あの、エドワード様わたくしは・・・」
そこまでいいかけた所でエドワード様が少し寂しそうな眼でこちらを見ているのが分かった
「おじいさま、どうしてボクなのでしょうか?女性に興味があることを外に示すなら、サークラ姉様やエッラの方が、美人ですし女性的です、ボクではただの親戚の娘と映るのでは?」
祖父の様に扱うとエドワード様は途端ににこやかになった
「アイラは察しが良いのう、エドガーの言う通りかなりの器量だ、本当ならばユーリと婚約でもしてくれれば家は安泰、血の濃さも保てるしで嬉しいのじゃがな、サークラは年が少し離れておるし、そなたら以外は婚約者に迎えようとすれば反対するものが出る、みんな侯爵家に嫁をだしたいからな、じゃが体力の落ちているホーリーウッド家で強い外戚を迎えれば東征候の二の舞じゃ、そしてワシにはどちらもかわいい孫じゃ、無理強いはしとうない、ならば今の幼いうちから取り合えず婚約者候補として仲良くさせてうまくいきそうなら・・・と考えたのだ」
「婚約?ボクがですか?」
とユーリの方を見ると目があった。ユーリはキョトンとした表情でこちらをみていて、おそらく意味を理解してはいない
それに対してボクは婚約の意味を知っている、その先に待つ未来もわかる
ただあまりにボクらは幼くてその未来はボクが、神楽が失った可能性でもあって、ボクはどんな表情を浮かべたのだろうか
「村に好きな男の子でもおったか?爺の願いで悲しい顔をさせてしまったようだ」
「あれ?」
あわててほほをさわると涙が伝っていた
「いえ、父母もなくなったばかりなのに婚約なんて明るい話で、少しびっくりしたみたいです」
軽く笑ってごまかす。
「ああ・・・すまなかったな、こう言った話を急ぎ過ぎるのは貴族の悪い癖じゃな」
本当はボクがなにか隠したのは分かっているのだろう、けれど子どものボクに気を使ってくれた様だ
「おじいさま、ボクはユーリ樣のことをまだよく存じあげませんが、これからは従兄妹として姉妹共々仲良くさせて頂きます、もちろんおじいさまやギリアム様とも仲良くさせていただきたいです。これからよろしくお願いします」
子どもらしくぺこりとお辞儀して挨拶を終える
「次に、他のウェリントンの生存者についてだが、メロウド!」
「は!エドワード様に代わり私メロウドが説明させて頂きます、この度ウェリントンの生存者4名をホーリーウッド家で保護させていただきます。アンナ殿は子どもに勉学を教えていたそうなので、教員かシスターを目指されると良いでしょう。ノラさんはまだ子どもですのでアイラ樣方と同様こちらで学校の手配をいたします。 学費はこちらで持ちますが、日に1時間半程度メイド見習いをしていただきます。といっても御嬢様方のお付きです、他のメイドたちな様な仕事はあまり必要ありません、エレノアさんとキスカさんにはいったんノラさんと同様メイド見習いをして頂きたいと思いますがいかがでしょうか?」
「アイラちゃんたちの話相手ということでしょうか?」
おずおずとエッラが発言する
「さようですな、それとここにいる身内の中では今まで通りに接して頂いて構いません、が対外的な場ではメイドらしい態度で御嬢様方に仕えてください、生活基盤が作れたなら、止めていただいても続けていただいても結構です、キスカさんは出産を終えるまでは自由に過ごされてください」
「はい畏まりました。」「ありがとうございます」
エッラが少しだけ堅い態度になり、キスカはメイドさんが持ってきたイスに座ったままでお辞儀をする。
「あなたがたは田舎の娘と思えないほどには整った顔立ちをしておりますから、少し作法を覚えれば御嬢様方に仕えるに相応しい佇まいとなるでしょう、エドワード様方も期待しております。」
「ありがとうございますメロウドさん、侯爵閣下に一言御礼申し上げても宜しいでしょうか?
メロウドさんがエドワード様の方を窺うとエドワード様は頷き返す
「お聞き届け下さるそうです。」
「ありがとうございます、閣下、私エレノア・ラベンダー・ノアは閣下の寛大な配慮に感謝致します、よく学び必ずや閣下のご恩に見合う者となります。」
エッラの宣誓にエドワード様は満足そうに頷いた
また夜に更新します
それと一度過去掲載分のルビ振りなどを行う予定です。




