第11話:夜明け
朝の分として書いたものがパソコンのブルーバックとともに電気の海へ消えたので携帯投稿です。誤字脱字などは帰宅後訂正します
こんばんは、暁改めアイラです。
冬になり、非常時の備蓄をしている中
ウェリントンが何者かの襲撃を受けました。
寝起きであったためよくはわからないけれど、状況は非常に悪いと思われた。
村に火が放たれているのだ、ボクらの敗北だといっていい。
さらにはボクの家も襲撃を受けた。
そしてボクは姉だけでも救うために、怒りに任せて払暁を振るったが、反撃に合い意識を失った。
う・・・・?
意識が浮上する。
「・・・・?」
薄暗い部屋の中にいる。
「サークラは!?」
まだ視界ははっきりとはしないけれど、回りを見渡すとどうもココは地下空洞らしい。
そしてボクが枕にしていたのがサークラだった。
狭い部屋の中にはやや生臭い性臭がするが、体を清める時間もなくここに逃げ込んだのだろう。
ついでにおしっこの臭いも立ち込めている。
これはボクだね・・・
パジャマのパンツがびちょびちょだし、おねしょではないと信じたい。
状況を確認しないと、今ココには4姉妹が隠れている。
あれからどれくらいの時間がたったのかは不明だけれど。
(状況は確かめておきたいよね)
ボクは3人を起こさないように注意して、地下室を出た。
気配を探る・・・家の中に地下室の3人以外の気配はない。
子ども部屋まで上がると夕べとおそらく何一つ変わっていない。
母の亡骸と賊3人の死体が転がっている。
2つは首なし1つは後ろから剣で刺されてるね、背中側には腰の上辺りに剣が刺さってるのに前側では胸の辺りまで切り裂かれている。
サークラを助けるつもりが、サークラに救われた様だ。
「ありがとう、サークラ・・・お姉ちゃん」
夕べは理解が追いついていなかったけれど、今なら夕べの状況がよくわかるね。
母の死と姉の命の危機を認識した時、これまで一度たりとて発現しなかった光の弾が2つ右手に宿った
暁の能力だったはずのそれがボクの手にある理由はわからないけれど、使い方はわかるのだからいまはこれを使うのが正解のハズだ
そう考えてすぐさま1発を射出、その時一番自由に動ける状態にあった巨漢を狙った。
同時に残った弾を払暁に纏わせてサークラに腰を打ち付けている男に狙いを定めて、怒りのままに加速を行って切りかかったのだけど、これがよくなかった
体の加速が思考の加速より上になったせいで狙いを定めた男の首は落とせたがその次への対応をミスした。
サークラの体の影からつき出された右足を回避できず、脇と胸の間に一撃受けた。
体重の軽いアイラはそのまま壁まで弾き飛んで・・・・
うん、血と尿の跡があるね
そうだ服を着替えたいな。
でもその前にハンナ母さんの遺体だけでもきれいにして置こう
「母さんを・・・また、守れなかった・・・。ゴメンね・・・」
シャツを一枚ダメにして母の体を拭く
拭き終わったら上から毛布を掛けた。
本当はベッドに載せてあげたいけど、ボクじゃあ持ち上げられない、でもアイリスたちに今の母さんは見せられないしね。
もう一度気配を探る。
(うん、大丈夫かな?)
手早く服を脱いだボクは急いで体を拭く、部屋に水差し代わりに結露のひしゃくがあってよかった。
問題はこの部屋に下着類がないことだ。
アニスのならばあるが、小さい。
ボクとアイリスの下着は脱衣場に常備してあるが、ノーパンで家の中を駆け巡る度胸はない。
いまが非常事態だとしてもね・・・ここは家なんだ。
よし、泳ぐのに使ったのと同じ長めのスパッツを直穿きしよう。
決めたら即行動がボクの本来のスタイル
夕べはそれが出来なかった為の後悔もあった
スパッツを穿いたのは良いが体の線が見えて恥ずかしいね、上からうすい黄色のスカートを穿いたら
スパッツが裾からチョンと覗く感じになった
肌寒いため上は長袖の白のブラウスを選んだ。
身仕度を整えたボクは家の中を確認した。
玄関でトーレスが死んでいるのを見つけた、近くに2人見知らない人間が死んでいたのでトーレスは善戦したのだろう。
悔しいね、トーレスと一緒に戦えば家の中は守れたかも知れない
トーレスの憎々しげに睨み付けたまぶたを閉じてやる。
他に家の中はなにもなかった
ボクは食堂にうつると
窓から広場の方を確認する。
「空の感じからしてまだ午前5時くらいかな?」
広場に人がたくさんいる様だ・・・ 部屋の中に転がっている様な不揃いの格好の者が数名が縛られており、ホーリーウッド首都防衛隊の隊服を着た者が20名ばかり見えた
遠いのでよく聞こえないが生き残りを探している様だ
恐らく本当に首都防衛隊で、救援にきたのだろう。
(少し早すぎる気がしないでもないが)
ウェリントンは僻地だ、早馬で飛ばしに飛ばして、駿馬を殺しても3時間ちょっとかかる
夕べボクたちが寝たのが8時頃、ボクたちが起きて戦ったのが1時頃
今が5時くらいだとして装備をつけた防衛隊がたどり着くのが可能なのだろうか?
ボクは一度地下室に戻る、サークラの着替えを持って地下に戻ると涙目になっているサークラがいて
「アイラ!どこに言ってたのよ!?あなたまで死んだんじゃないかって、助けられたのも夢なんじゃないかって!うぅ・・・」
と強く抱きすくめられた
「ごめんなさい・・・ホーリーウッド首都防衛隊が救援に着ていますら姉さんは服を着替えててください、ボクは先に接触してきます」
「大丈夫なの?本当に助けに着た人達なの?」
サークラは不安そうに言う
「ボクも少しだけ疑いましたが、たぶん大丈夫そうです、もしも怪しかったら逃げますので、ボクが戻るまではここにいて下さい、一人ならたぶん逃げられるので」
「わかったわ・・・。」
サークラは狭い室内で着替え始めた
ボクはもうアイリスとアニスにキスしてから一度外にでると
窓から飛び出し、一度森に隠れてから広場に向かった
「ホーリーウッドからの救援ですか!?少し早い気がしますが」
大きめな声をあげると
「おぉ!女の子がいるぞ!!」「やっと生存者が・・・」と声が聞こえた
それほどまでに絶望的な状況なのか・・・「なぜこんなに早く防衛隊の方たちが?」
疑問は早めに解決したい、身の安全のために
すると指揮官らしい男が1歩前にでる、つい警戒してしまい刀を構えてしまった
俄に周囲の兵隊が身構えるが指揮官が手で制する
「すまない、私はホーリーウッド防衛隊第三夜警部隊の隊長ミヒャエル・デルフィニウム中尉だ、我々がここにいるのは、昨夜ウェリントンのエレノアという紫髪の少女から通報を受けたためだ、力及ばずこの様な事態になり申し訳ない限りだが、一人でも多く身元を明らかにするため、あなたの協力を仰ぎたい」
こんな子ども相手に真摯な態度である、信用できそうだ。ボクはスカートの裾を掴み恭しく挨拶する、払暁があるので片手になったが、多目にみて欲しい
「失礼致しました、私はウェリントンのエドガー・ウェリントンのニ女、アイラ・ウェリントン、5才です、速やかな救援に感謝致します」
あれ間違ったことは言ってないけど、聞かれてもいないのに年齢を自己紹介に含めると途端に幼く感じるかも?いや5才は幼いのだけれど
おう と歓声があがる
「領主のエドガー殿のご息女か」
「道理で躾が行き届いている」
「5才ながら気品と誇りを感じさせる」
所々でボクを誉める声が聞こえる。少し誉め過ぎだけど
「アイラ殿、我々は村で生き残っている人々を保護し、ホーリーウッドに連れて帰るつもりです」
「はい」
「しかし、我々は生きている人が村人か賊かの区別がつきません。なのでアイラ殿にお手伝い頂きたいのです」
生存者の首実験ということか
「賊はどうするのですか?」
「無力化して連れ帰ります、取調べの上斬首となると思われます」
「わかりました、ただ生存者だけでなく、死体の身元確認も私が致します」
ボクは誰がどうなったのか判らないまま終わるのは嫌だからそう申し出たのだが
「ああ・・・いや・・・」
とデルフィニウム中尉が言い淀んだ
「大丈夫ですよデルフィニウム中尉、昨夜母さんが私の見ている前で犯され殺されました。それよりきついものはもうないでしょう?それに誰が亡くなり誰が行方不明なのかはっきりさせた方がよいはずです」
「わかりました・・・助かります。」
沈痛な面持ちでそれでもボクの申し出を受けた中尉はいい人で賢明だと思う。
「中尉さん、私はあまり堅苦しいのが好きでないですので、よかったらそろそろ子ども扱いしてくださっても構いませんよ?」
中尉は少しだけ逡巡してそれから少しだけ困った顔で
「それじゃあ案内をしてもらえるかな?アイラちゃん」
と笑った。
「うん、よろしくねミーシャおじさん」
子どもらしくフランクにできたのではないだろうか
「案内する前にまずは兵隊さんを2人か3人借りられますか? 出来れば女性がいた方がいいのですが
借りた兵隊を伴い自宅に戻り内部の安全を再度確認した
ついでに賊の死体を窓から外に放り捨てて母と兄の遺体をそれぞれ最寄りのベッドに寝かせた
兄もきれいにしてやりたいけどそれは後回しにした
次に地下室の姉妹を呼び出し兵隊さん3人を監視につけて入浴させることにした
3人の兵隊さんの中に唯一の女性がいたので安心できたのかサークラは妹二人を連れてお風呂に向かった
その間に3人の兵隊に終わったらウェリントン家の備蓄食糧を持って広場に出てくる様に伝えてボクは先に広場に戻った。
「お待たせしました。ミーシャおじさん」
「いや、ほんの10分ほどだよ。それでは辛い役目だが、お願いする」
「はい」
いまから村人約300人の状況を把握しなければならない、といってもすでにサークラ アイリス アニス ボクとホーリーウッドにいるらしいエッラの生存と母ハンナと兄トーレス、広場に遺体のあったカルロスとマーティンの死は確認済だ
結論から言えばウェリントンは一夜で壊滅した。
最終的に公式の生存者はボクたち四姉妹とエッラ、ノラ、アンナ、キスカだけとなった
アンナは母ハンナの従妹に当たる女性で村の教会でシスターをしていたのだが
教会の懺悔室の中で神父様に匿われて生き延びていたボクたちの唯一の大人の親戚ということになるので頼りにしたい所だが、今回のことで大分参っている。
エッラはミーシャおじさんの言った通り昨夜のうちに早馬として走ったため無事だったが彼女の一家は全滅してしまった
ノラは生き残った中ではもっとも辛い目にあったと思う
ノラはぼくらと同じ様に隠し部屋で生き延びていたが、姉モーラの機転で一人だけで隠し部屋に匿われた・・・理由が、子ども部屋に女の子用の服や装飾があり、さらにベビーベッドがあったため子どもが女の子と赤子がいて然るべきだというものだ
たしかにいるハズの子どもがいなければ賊は家中を探して3人とも殺害されていた目算が高い
けれど結果としてノラは姉モーラが3時間に渡り犯され続けて殺され、弟ソラは犯され過ぎて反応が鈍くなったモーラへのダメ押しの様に酷い殺され方をして、右腕がちぎられ、頭は砕かれていた。
モーラの方はさんざん犯されたあげく少しずつ体を傷つけられて失血死していた
下手人はいま広場に囚われている賊の中におりノラに会わせるわけにいかずノラはボクの家でお風呂にいれてから寝かしつけた
ボクの家は姉妹の寝室と玄関付近以外はほとんど無事だったため、一時的に生存組の避難所になった。
夕方にはエッラも戻ってきたが、村に入りすぐにあまりの惨状に失神してしまい
次に目覚めた時サークラに抱きついて大号泣したそうだ
ほとんどの男性が無慈悲に斬殺されるか、頭を割られて死んでいた。
女性は若ければ犯され老人なら惨たらしく殺されていた
子どもたちは・・・・
出産を控えていたキスカは初恋のトーティスと夫のサルボウを失って自失となっているが、赤ちゃんの為にも生き残って欲しい
カールは抵抗したのだろう、顔面にさんざん殴られたあとがあり悔しさが滲む表情に声が出なかった
ピピンはまだ少年といった体つきだったためか弄ばれ服を脱がされ恐らくはかなり辛い拷問の上で色々切除されていたようだ、遺体の顔しか見せてもらえなかった
リルルは目立つ外傷こそなく綺麗なものだったが、元々体が弱い方だった上に最近はオルセーのことで心身が弱っていたので、耐えられなかったのだろう。冷たくなっていた
ケイトは口の中に男の一物をくわえ込んだまま背中を斬られて死んでいた、近くには一物のない賊の死体があったためそいつのだろう、死ぬ前に一矢報いた・・・ということだろうか?
ノヴァリスとアルンは村の中で見つからなかった。
全員の遺体をきれいにしてやるには手も技術も足りず
サークラとエッラと兵隊の方たちとで清拭だけした
その間にボクと数人の兵隊でまだ見つかっていない人の遺体を探し
最終的にウェリントンの死者は272名行方不明者3名 賊は死亡26名捕縛8名確認された逃亡者は2名となった(おそらくもう少しいる)
なお防衛隊は負傷者2名だそうだ
賊たちはおそらくは隣接する帝国の山賊部隊と呼ばれるならず者集団で
彼らは不法移民者や不法滞在者を対象に私掠を許可されて山賊行為を行うがわれわれウェリントンを帝国の領地で無断開墾している者との勘違いから仕掛けてきたと思われる
というのが取調の結果のミーシャおじさんたちの推理だ
がいつでも切れる様に山賊部隊を使っているので帝国には知らぬ存ぜぬでしらをきられる模様である。
翌日は森の遺体を探し埋葬するに当たって棺桶が足りなかったため兵隊の人達と焼けていない家を解体し簡易的な棺を作って数を工面した、森林での捜索中に血のついた女の子の服が発見され、出血量から二人とも魔物に食われたものと判断された。
父エドガーの死体も森と村の間の辺りで倒れていた。周りの賊や村人の死体の数からおそらくはココが一番の激戦区だったろう。
父の全身は傷だらけだった。
全ての遺体に棺を用意できたのは夜になってのことで、さらには埋葬と簡易的な葬儀を行うために翌日の昼までかかった
そうして3日目の朝、ボクらはウェリントンを離れホーリーウッドに向かって移動を開始した、ウェリントンは開村から20年で滅んだ。
殺害される予定だったキスカが生き残りました・・・・キスカが今後の話に絡む予定にしていなかったので、あとあと私の予定した話しと齟齬が生まれるかもしれません