エピローグ?:暗い部屋の中で
こんにちは、暁改めアイラです。
悪魔の角笛の攻略・・・とは名ばかりの、名ばかりではないか、おそらくはこの山全体がダンジョンの様な構造になっていたのだ。
ノヴァリスの作ったウェリントンの様に・・・。
だとすると山道に魔物が出ないのもバフォメットさんの設定したダンジョンの構造だったのかもしれない
なにせバフォメットさんは別にヒトと敵対したかったわけではない様だったのだから。
扉から外にでたボクたちは混乱する、入り口周囲を守っていた少数の兵たちと、地響きで興奮したのか、こちらに迫り来る魔物の群れを認めた。
なぜか兵士たちも、指揮官たちも空に気を取られているので、このままでは危険だと判断したユーリは大きな声をあげた。
「聴け!7本目の魔剣の回収は完了した。しかし地響きの影響か北方向より魔物の群れが接近している、ようやく悲願を達成したというのにここで死ぬことは断じて許さん!全員通常の組み分けで魔物に対処せよ、距離のある魔物は、アイラとカグラとが対処する!」
ユーリの声にようやく魔物の接近に気づいたらしい兵たちは魔物たちのほうへ向き、セイバー部隊がその武威を振るう。
セイバーの所持する鋳造の大剣で薙ぎ払われたヤギ型の魔物が目の前を吹き飛んでいく。
その中をボクと神楽は上空に抜ける。
二人なら大盾じゃなくても飛べるので二手に分かれて、ボクは今いるこの一帯を、飛行スピードに優れる神楽はイシュタルト側のキャンプの様子を見に行くことにした。
災いを成す者に変身して上空からやや遠方の魔物に向かって射撃することを考えたがフォビドゥンバードはどちらかといえば砲撃向き、結局白花の妖精を選択し、誘導性の高い魔法を連射、即殺は不可能なものの手負いの獣を量産することに成功、普通ならかえって危ないけれど今回は矢面に立っているのがセイバー部隊なので角や牙を折っておけば致命傷は受けない。
その後2時間ほどかかって魔物が軒並み駆除され
イシュタルト側のキャンプを確認しに行っていた神楽も帰ってきた。
あちらも抜け出る魔物はなく多少けが人は出したものの大きな被害もなく収束した模様、そして・・・
「空が割れた・・・ですか?」
その後、くまなく内部を探してもバフォメットさんは見つからず。
予定よりも早い時間で攻略が完了したためボクたちは撤収準備。
その最中兵士たちから得られた証言・・・・。
何でも地響きの直後兵士たちが空を見ていたのは、極短い時間だが、空が割れていて、皆その天変地異に混乱していたとのこと、それじゃあ何で今は空が割れてないのかとか、魔力的ななにか、で雲が割れていただけでは?
なんてたずねても結局は答えなんてものも見つからないままで、それでも、ボクたちの悲願である魔剣の回収がすべて終わりあとは、アスタリ湖と砂漠と角笛の様子を見るばかりになった。
その後の調べで・・・あの時同じ時間に大陸各地で地響きが発生していたことがわかり、魔剣の力の強大さを信じさせられる事件となった。
その後アスタリ湖跡が平原となり、砂漠も徐々に緑化が進む様になった。
それぞれにアスタリウム、サハリウムという町が建設されそれなりの発展具合を見せている。
3年ほど後には、角笛も完全にただの丘陵地となり、クラウディアとレジンウッド、そしてホーリーウッドを三角形としたときの重心にあたる位置に新しい町ホルンウッドの開発が始まった。
大陸内の物理的な隔たりがほとんどなくなったのである。
ほかにもいろいろあった。
中でも大きかったのはボクが24歳の頃、セントールとの貿易が突然止まり、ダーテ帝国を名乗る国家が大小220隻の船団でマハ沖に現れてサテュロスに従属を強いてきた。
主な内容としては、魔物への自衛程度の戦力を残して軍と国を解体、年間2万人程度の奴隷と3000人の女性性奴隷の供出、資源や食料の持ち出しなどの要求だった。
当時沿岸の守備を担当していたヒースがそんなものは到底受け入れがたいと返答したところ、突如砲撃を開始、小型の揚陸艇でアシガル隊を上陸させようとしてきたためすでに水中に待機させていた新型のスクリュー魔法対応型のアクアセイバーで揚陸艇をすべて沈没、500を超えるアシガルが一瞬で海に沈んだ。
これに対して「上陸前に攻撃するとは卑怯な」などといって、ダーテ帝国は大型の装甲船を盾にして砲撃しつつの港への突撃を敢行してきたが、沿岸警備に配備されているカノンの砲撃と引き続きアクアセイバーの攻撃を受けあっけなく装甲が爆ぜ大破炎上、捕虜になるなら命は保障すると申し出たところ、捨て台詞の様に「本土から援軍をつれ、今度は皆殺しにするからな」と撤退し始めたため、止むをえずスクリュー船で追撃全艦の撃沈に成功した。
そしてその後セントールからの音信は無かった。
逆にハルピュイアとは長く交易が続いた。
ハルピュイアの種族はミナカタから奴隷を買っていたが、実際にはただ人足として雇っているつもりだったらしく、彼らの待遇は悪くなかった。
ヒトの様に器用なものが少ないのでヒトや獣人が貴重な労働力になっていて、あちらに売られた人たちはほとんどが幸せそうに働いていた。
かえってこないのは主に売られたもの同士か、一部は他種族とあちらで所帯をもって永住しているだけであったのだ。
いつの頃からだったか、ボクという子どもっぽい名乗りは王妃としていかがなものか、と名乗りをわたくしに変えた。
心の中ではボクのままだったけれど・・・。
アニスはついにホーリーウッドに帰ってこなかった。
軍官学校卒業後、シグルド、ルイーナ、ルティアをつれて冒険に出かけてそのまま失踪した。
一応出発前にホーリーウッドにはしばらくいたもののサークラもアイリスもあまり強く引きとめずにアニスを旅立たせたことを激しく後悔して、死ぬまで悔やみ続けることになった。
オルセーはあるとき「そろそろあたし、龍の巣に帰るよ、実はドラグーンから結婚を申し込まれているんだ・・・」と言って姿を消した。
神楽はホーリーウッドで暮らしながら、ボクの『跳躍』を解析することで、朱鷺見台に至る術がないかと研究を続けた。
早い段階で収納を使わずずとも魔剣を保管するための装置も作成することができた。
しかし結局世界を渡る術は得られないままで時間ばかりが過ぎ、魔導篭手に100ℓ程度の収納機能を付与することには成功したものの、それ以上の成果は上がらなかった。
アイリスはその治癒術と明るい笑顔を以って子どものための治療所を開設し、ホーリーウッド市で6歳以下の子どもの治療は無料で行う制度を作った。
また本人はミントのあと3人の娘をもうけるに至りそのいずれもが治癒術に才能があった。
クレアはカモミール以外に男の子と女の子をひとりずつ授かり、30歳になる頃にルクセンティアに戻り自ら領地を運営する様になり、カモミールが十分に領地を運営できる様になったあとはギエンの息子ギレームに補佐を任せて、50歳頃にホーリーウッドに帰ってきた。
エッラは馬の交配と繁殖に力を入れる様になり、自身はほとんど年子の様な形で3人の女の子を生んだ。
そのいずれもが小柄でかわいらしくしかし胸は大きく育ち一部の貴族から婚姻の申し込みが殺到したが、3人はいずれも平民の、それも南西側の町ウェリントンの若者と結婚した。
シャオは学校卒業後すぐに妊娠し、3つ子を産んだが、その時妊娠期間中大変な苦労をしたため、それ以上はユーリとは子どもを作らず。
トリエラともども発情期のムラムラはボクや神楽に猫の様にワシャワシャされることでごまかす様になった。
トリエラはトリエラで一度だけ双子を産んだけれど、それ以上は子どもを作らず、トリエラシャオは今もまだそれなりに若々しいのでボクの世話を焼いてくれている。
ノラやリウィ、テティス、マリアナはホーリーウッド王家に仕え続け途中で結婚や妊娠をしたが、テティスが結婚の報告をした時のユーリは、リリの時よりも興奮して泣いていたと思う。
ナディアはたった一人だけ娘をもうけて、その娘にメイド術のすべてを仕込み
エイラはメロウドさんの孫(弟のほう)の嫁となりやはり娘を一人産んでメイド術を仕込み、たまたまその二人が同い年で、さらに髪の色も白と黒でちょうどかつての二人の様に、どちらも最高峰のメイドとしてその技を研鑽しあっていった。
リリはアルタイルと結婚しその翌年から元気な女の子ばかり10年かけて6人も生んだ。
そのうちの長女リリアーナがアルマの長男ヴィクトールと婚姻した後、ホーリーウッドとイシュタルトは併合しその他の連邦所属国もすべて一つの統一国家なった。サテュロス連邦からグランディア王国へと名前を変えて
ボクとユーリはその後も仲睦まじい夫婦として国民に認知され続けて、ボクは60歳の頃にクラウディアの南西側に新たに新市街を増設した新都グランディアに移ることになった。
それから年を経るにつれてどんどん孫、曾孫、玄孫、来孫、昆孫まで生まれてボクの周りには300人では収まらないほどのボクの子孫たちがあふれることになった。
それとは逆にボクが40を超えたあたりからか、ギリアム義父様を皮切りに少しずつ亡くなっていって
とうとうボクより先にプリムラやアルマまで亡くなって。
かつてのユーリの愛を注がれた者もボク、シャオ、トリエラだけになってしまったけれど
それでもボクが筋力強化の魔法を使ってまで心臓を動かし続けているのは、あと少しで次の命が生まれるからだ。
「アイラおばあちゃんみてみて!ヴィオラおなまえかけるようになったんだよ!!」
「うんうん、よくかけてる、ママの同じ頃よりもずっと上手にかけてるよ。」
そういって、ボクにとっては孫ではない、でも孫の様にかわいい、かつてのアイリスにそっくりな4歳前の童女の頭をなでる。
「にしし!」
もう頭をなでてやるのも、ギリギリで、力が抜けそうになる。
「ねぇ、ヴィオラ・・・、イオはまだかな?」
そういって傍らの幼子に話しかけると、アイリスの来孫はちょっと考え込む様に頬に指をあてて
「んとねーえっとねー」
とつぶやき続ける。
結論は出ないみたいだ。
すると横からボクの玄孫で一番年少13歳のアイシャがヴィオラに載せていたボクの手を握ってくれた。
もう年頃だけどまだ子ども体温らしくて温かい
「アイラおばあ様、イオお姉様が産気づいてから3時間ばかり経ってますから、きっとそろそろですよ。」
「そっか・・・もうちょっとがんばろかね・・・」
残り少なくなってきた魔力を振り絞って、心臓を動かす。
筋力強化、それに体の耐久性をあげる・・・。
ベッドの周りには1歳の昆孫からまだ40台の孫まで、たくさんのかわいい子どもたちがボクの部屋で、ボクをさびしがらせない様に囲んで座っている。
ボクは何とかがんばって持たせようとしていたんだけれど、ちょっとずつ視界が暗くなっていって。
「アイ・・・・ゃん!・・きな・・んなのこが・・・!!・ば・ちゃん!・・・ゃん!」
(ん・・・聞こえてるよ?でもね・・・ごめんね・・・・?)
もう眠たくって、目を開けていられなくなって、魔法もコントロールできなくなって。
それで・・・、それで?
頭がすっきりしてきた気がする。
さっきまであんなに眠たかったのに、今は不思議と自分の心音がよく聞こえる。
自分の音ともう一つ、いや二つ?これは、新しい命だろうか?
この早鐘はボクの新しい来孫の心音なのだろうか?
いやでもどうして全身が包まれる様に温かいのか?
そういえば布団に入っていたっけ?
もしかしたらヴィオラやリラがお布団にもぐりこんできたのかもしれない・・・それくらい熱い・・・。
そして、この全身を包まれる様な感覚には覚えがある。
でも・・・それは・・
(ありえないことだ・・・。)
身じろぎしたボクの足が、さっきまで重たくって動かなかった足が壁を蹴って
壁を隔てた遠くから声が聞こえてきた。
「・ぇ・・おかあさん・・いまね・・・・!」
それはあまりにも懐かしい声で・・・
先日から申し上げていた非常に不自然な切れ方になります。
人にお話を見せることに慣れていない私の下手な表現、貧相な語彙、表しきれないキャラの感情、単純に読みにくい!話全然途中やないか!等いろいろおっしゃりたいことは思いますが一旦ここでアイラの物語は途切れます。
完結ではなく続きますのでここまでお付き合い頂けた方はぜひ続きもごらんいただけたらと思います。
本日中に新しい話の冒頭を投稿します。
2017/04/01 夕飯が闇鍋過ぎて困る
一応こちらが続きとなります。⇒http://ncode.syosetu.com/n0925dx/