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第154話:シシィとシトリン

 こんにちは、暁改めアイラです。

 行方不明になっていたことについて、ジークと通信するはずでしたが、手が空いていたのがサリィだったので、サリィとアスタリ湖攻略の相談をしました。

 戦力が少しでも欲しいところだろうに、大幅に戦力を低下させたボクたちを責めもせずに祝福してくれたサリィの優しさにはいつも救われている。



 通信室の外に出て

「そういうことだからアイラ、カグラさんを少しの間お借りするね」

 ユーリが申し訳なさそうに耳打ちしてくるのだけれど

「カグラもだけど、また君と離れるんだね、さみしいな」

 ボクは少し拗ねていた。


「アイラ、僕は少し嬉しい、君を置いて行くことは悲しいけれど、おかげでリリとリムが寂しい思いをしないですむ。」

 ユーリがボクの肩と腰に手を回す。

「それに、いつも君に頑張らせてばかりだしたまには僕に格好つけさせてよ」

「ユーリはいつも格好良いよ、このボクが惚れてしまうくらいには。」


 そうでなくては、ボクが男の子に心から惚れる訳がない、いや最初は可愛い子だなぁ、から入った恋だけれども、今は心から愛しい(ひと)だ。

 それにしてもユーリはまつ毛長いなぁ、とか考えていたらいきなりの口づけ!

 ユーリの舌が、ボクの舌を責める、最後に歯を磨いてから4時間も経ってるというのに・・・抵抗できずいい様にされてしまう。

 たった今置いていかれることに拗ねていたはずのボクなのに、解放されると自分の体温が上がっているのが分かった。


「ユ、ユーリ、するときはするって言ってよ、こんな人前でいきなりは・・・・恥ずかしい。」

 子どもの時からそうだけど、ユーリは元女の子なのに、こういう部分に恥じらいが足りない。

 すぐ横でエッラも神楽も見ていると言うのに


「ごめん、ちょっと感極まって」

 ユーリは悪びれない笑顔。

「今のが夫婦のちゅーなんですね。なんだかえっちぃ感じがしますね」

 とすぐ横から声がする。


「シトリン!?」

 ユーリの未来の嫁が壁によりかかっていた。

「シトリン、シシィを待ってるの?」

 ユーリが特に驚いた様子もなく聞くと無言の首肯。

 まさかシトリンが居るの知っててやったんじゃないよね!?


「アイラお姉様、どんな感じですか?やっぱり気持ちいいんですか?もうお腹に赤ちゃんがいるのに、さらにちゅーして大丈夫なんですかね?」

 畳み掛ける様な質問、それはあれかな?シトリンはちゅーしたら赤ちゃんが出来る学説の人なのかな?


「ボクの赤ちゃんのお部屋にはもう赤ちゃんがいるから、今ユーリとキスしても赤ちゃんは出来ないかなぁ。」

 ボクの言葉にシトリンは目を見開いているがボクは続ける。

「シトリンはユーリとキスしたいの?」

 やはりキス=妊娠学派らしいシトリンには刺激が強い質問だったかもしれない

 シトリンは真っ赤になってうつむく。


「は、はい、いいえ、興味はあります、でもまだ私子どもなので、赤ちゃんが出来たら困ります、どうやって育てたらいいかわかりません。」

 まだ見ぬ自分の赤ちゃんにどの様な不幸を想像したのか、涙目になるシトリン、母親似のクリクリした青い目が庇護欲を駆り立てる。

 それでもキスはしてみたいわけだ。


「シトリンちゃん、安心してください、キスだけでは赤ちゃんは出来ませんよ、ちゃんと体の準備が出来てからしか赤ちゃんは授かりません。」

 神楽がシトリン安心させる様に優しい声音で語りかける。

 同調してエッラもシトリンを勇気付ける様な言葉をかけている。


 エッラはともかく幼少の神楽はキスやらなんやらをやりたがる子だったから、シトリンの興味がわかるのだろう。

 キスだけでは赤ちゃんが出来ないことと、体ができていれば赤ちゃんを授かることを示すことでシトリンのキスで赤ちゃんが出来るという微笑ましい認識を壊すことなくキスしても大丈夫だと教えた様だ。


 少しあってシトリンは覚悟が出来たらしく、まっすぐにユーリを見つめて

「ユーリお兄様、私、ユーリお兄様にキスして欲しいです。」

 と、見ている方が身悶えする様な初々しさを孕みながら、キスをねだった。

「ふえぇぇぇえ!?」

 そこに丁度通信を終えたらしいシシィが扉を出てきていた。


 シシィは顔を真っ赤にして、信じられないものを見たと、目を見開いている。

「ちょっ、ちょっとキティ!けっ結婚前の乙女が、はしたないです!」

 手をばたつかせて焦るシシィ

「シシィ!?通信は終わったの?」

 シトリンのほうも顔を真っ赤にしてシシィに聞き返す。


 斯くしてシトリンのおねだりもお流れになるかと思いきや。

「シトリン・・・どうする?」

 と、ユーリは続行も視野に入れて聞き返す。

 困ったのはシトリンだ。


 一大決心の告白をいないと思っていた親友に聞かれた上にはしたないと咎められその上、未来の旦那様であるところのユーリお兄様からキスをするかしないか尋ねられているのだ!

 2桁にならない少女にはちょっと捌ききれない事態だろう。

 しかし、シシィはその聡明さからか、あるいは動揺からなのか、即答する。

「はいお兄様!お願いします!」


 答えを聞いたユーリはすぐさま動く、それはどちらかといえば男女のものではなく、家族のそれであったが、ユーリはシトリンを抱き上げてその頬に口を寄せてそっと触れる様にキスをした。

 それを見たシシィはただでさえ赤くなっている顔を茹でダコの様にして(アイラになってから茹でダコを見たことはないが)口を魚の様にパクパクさせた。


「~~っ!?」

 声にならない声が二人分その場を満たす。

 すぐに唇を放したユーリは、にこりと笑顔を浮かべて。

 シトリンを床におろして

「口同士は大人になってからね?」

 と、シトリンの唇を指で撫でた


 未だわなないているシシィとシトリンを尻目に

「シシィもほっぺにする?」

 とユーリが尋ねると、シシィはしどろもどろになりながら後ずさる。

「シ、シシィは結構です!?ユーリお兄様のことはお慕いしておりますが、子作りには早いと思うんです!」

 そんなシシィの横で、シトリンはまだ真っ赤なままで頬っぺたと唇とを手が往復しながらへたりこんでている。


「そっか、残念。」

 ユーリは軽くシシィの頭を撫でると、シトリンを再び抱き抱えた。

「いつまでも軍事区画を占拠してても申し訳ないからそろそろ行こうか?」

 ユーリが笑いながら言うと抱えられたシトリンは再び声にならない声を出して身悶えた。


 まだ8才の2人は幼い恋心を順調に育んでいて、このままでいけばきっとしかるべき年齢になる頃にはスムーズに結婚まで行けるだろうと期待できる。

 嫌がる結婚はさせたくないから、ユーリもボクたちも、シシィとシトリンの扱いには気を付けている。

 ユーリを好きになれる様に、ボクたちと家族で居ることを望んでくれる様に。


 今のユーリのキスもそんな慣らしというか、練習の一環だとは思うのだけれども、今日のは少しやりすぎの感もある。

 抱えられたシトリンは幸せそうではあるけれど、少しドキドキしすぎて心臓への負担が心配。

 シシィはシシィで断ってしまったキスに少しの未練がある様で、シトリンと言い合いしながらもチラチラとユーリの顔を見ていた。


 さてボクたちはそろそろお昼を頂いておかないと植民隊との顔合わせに差し支えるので食堂に向かおうとしたところ。

 シシィとシトリンは、今日はフローレンスお婆様とお昼を食べる約束があるそうで、サークラとキスカ、リコ、サルートとともにディバインシャフト城へと出掛けていった。


 ボクたちは再びオルセー、ノヴァリスと子どもたちと合流、ついでにアクアとマリアナも連れて食事を摂った。

 昼は食堂に義父様はおらず、代わりになのかメロウドさんがこちらの通信の結果を尋ねに来た。


 その後時間まではユーリは簡単な書類仕事をメロウドさんの指導を受けながら処理、ボクたちは子どもたちと戯れて過ごした。


 ボクたちが行方不明になっていたことで強制乳離れさせられたプリムラとサクヤは以前の様に求めてこないのでちょっと寂しい、代わりにちょっと油断するとすぐにトリエラが尻尾をしゃぶられる様になっていて、見ている方としては、中々楽しい時間を過ごせた。


「あ、そろそろ時間だね、ユーリをお迎えにいって、中庭に行こうか?」

 ボクが時間に気が付いた時、丁度トリエラの尻尾を狙う金髪幼女の姿が見えた。


「トリエラもお供イヒャッ!し、ますか・・・?」

 尻尾にしゃぶりつかれても役目を果たそうとする勤勉さを見せてくれたトリエラのメイドぶりは、もうどこに出しても恥ずかしくない、恥ずかしくはないけれどここまで大変だったなぁ・・・


「トリエラは、ここでプリムラたちの相手をお願い、中庭へはユーリとウェリントン出身者でいってくるよ。」

 サークラとキスカはボクたちに任せてくれるそうだし、ノラとアニスはクラウディアだからアイリス、エッラ、アンナ、オルセー、ノヴァリスで合計7人かな。


 アンナは候補者をつれてくる側だから中庭に居るはず、この子ども部屋にユーリ以外は居るのでユーリだけ迎えにいけばそのまま中庭に行ける。

 そう思って部屋から出ようとすると、リリが駆け寄ってくる。

「ママおんも?リリちゃんいっしょ?」

 一緒にお外に行きたいらしい、きらきらしたおめめが期待を表している、けれど


「一緒に行きたいの?お仕事だからリリに構えないし、面白くないよ?」

 そういって諭してみるものの、リリは足元を離れない。

「うーん、そうかぁ」

 リリだけつれて他はお留守番というのもちょっと可哀相だしお散歩ついでにしようか。


「リリはトリエラと、プリムラはエイラとおてて繋いでおいで、カグラはどうする?サクヤとお散歩来る?」

 サクヤは神楽の娘ということになっているのでボクの一存では決められないので神楽に尋ねると「ウェリントンの大事なので私はお留守番しときます」とのことで断られてしまった。

 マリアナもおねむだったので、お留守番。


 ユーリを拾って、西側の中庭へ向かうと、手前の廊下に差し掛かった辺りで、アンナが手を振っているのが見えた。

 となると、後ろにいる三人が植民団の代表候補たちか。

 さてアンナは、どんな人たちを紹介してくれるのか。

通信の後、恐ろしい程何も進みませんでした。

時間まで子どもたちと戯れてから中庭に向かった!

などとはしょってしまっても良かったのだろうかと、思わなくもないです。

キティはシシィがシトリンを呼ぶときのニックネームのひとつです。姉妹の様に付き合って長いのでいろいろ呼び方がある設定です。

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