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第151話:魔王とドラゴン

 こんにちは、暁改めアイラです。

 思い返せば一瞬の夢の様だった。

 かつて失った暮らしが、永遠に損なわれた団欒が、幻といえどもそれにボクたちが気付くまで、それは真実と変わらない感動をボクたちに与えた。

 それらが幻だったと知って、何故、なんのために、という疑問もあるけれど、今はオルセーの言葉の方がはるかに重たいものだった。


「ノヴァリスが、魔王?」

 今、何秒経っただろうか?

 幻術が解けた影響なのか、時間の感覚がいまひとつはっきりしない。

 そんな中なんとか絞り出した言葉は、オルセーの言葉をなぞっただけのものだった。


「そうだよ、ノヴァリスは魔王、ドラゴニュートになったあたしにはハッキリと分かるんだよ」

 そもそもドラゴニュートがいまひとつ分からないが、ドラグーンとは違うのか? 


「よしよし、アイラには、順番に教えてあげるね。」

 そういってオルセーはかつてとほとんど変わらない様に見える明るい笑顔を浮かべて語り出した。


「まずはドラグーンについて、ドラグーンはこの世界に聖母様が現れる前から住んでいた知的生物のひとつで六聖の一人である龍王様も、ドラグーンだよ。あたしもお会いしたけれどお優しい方だった。」

 龍王っていうのは創世神話の登場人物で、仮に実在するならば優に1万年を越える長命ということになるが?


「待って、オルセー、目の前の貴方がいて、そのいうことを疑うわけではないけれど、その龍王様は本当に本物?騙されてるんじゃないの?」

 エッラが、オルセーが対面したという龍王という存在について疑う。

「そもそも僕はオルセーさんとは初対面だけれど、本当にご本人なの?」

 ユーリがオルセーの真偽を気にしている

 ボクも信じられないけれど・・・

「このオルセーはオルセーだよ・・・、ナタリィがドラグーンということを知っている以上、最低でもナタリィの関係者だろうし悪意があるならボクたちが正気を失っている間にいくらでも殺せた。」

「その口振りだと、アイラはナタリィがドラグーンだって知ってたんだね」

 アイリスは複雑そうな表情、まずアイリスはどの程度ナタリィたちのことを覚えているのか不明だが・・・治癒魔法を教わったのは覚えているのだろうか?


「別にアイラたちに危害をくわえたくて幻術をかけたわけじゃないんだよ?元は誰もウェリントンに立ち入らせないための術だったの、迷惑かけてごめんね。」

 ノヴァリスが申し訳なさそうにうつむく。


「ノヴァリス・・・」

 ノヴァリスはもっと能天気な娘だった。

 その姿はかつてのノヴァリスそのもので、ウェリントン最後の日に教会でアルンと勉強していた時とほとんど変わらない。

 けれども今の彼女の言葉は能天気さや気楽さはなく、重さを感じられる。


「いいよ、いまはこうやって話せてるし、普通の人がノヴァリスのウェリントンに迷い混まない為の幻術だったんでしょ?それよりもいまはオルセーの話を聞きたい。」

 ボクの言葉に話の腰を折ってしまったと、エッラが申し訳なさそうに一歩下がる。


「じゃあ続きからね、ドラグーンたちは聖母様達以前からの存在だから神々の祝福を受けていない、故に祝福後の世界では力に制限を受けてしまう。それでは不都合があろうと協力者である龍王様に聖母様が分け与えられたのが、祝福された魂をドラゴニュートとして転生させる秘術・・・って言われたんだけどあたしにはよく分からなかった!本当はなんか色々教えてもらったんだけどさ、あたしに分かったのはドラゴニュートは祝福を持たないドラグーンの卵に祝福された魂をいれて産み出すものってことくらいかな?」

 うん、ドラゴニュートについてはさっき聞いた内容と変わらないね、祝福どうこうくらいか、あとは・・・


「また神話の話?」

 アイリスは神話の話よりもオルセー自身の話を聞きたいみたいだ。

 オルセーの体に腕を回してまとわりついている。

「それで、どうしてノヴァリスさんが魔王だと?」

 ユーリが路線を修正してくれる。

 たしかに今の本題はそこだ。

 そもそも魔王とはなんだろうか?


「あぁ、うん、そうだったね?龍王様とドラグーンたちは聖母様たちの協力者で魔王と鍵の観測がお役目らしいの、だからノヴァリスが魔王でノヴァリスの持ってる斧が鍵だということは見たら分かった。ただそれだけなんだよ」

「ええ・・・っと?」

 ほとんど情報が増えてない、どうもオルセーには説明役が向いていないか、しっかりと情報を把握していない様だ。


「オルセーいくつか尋ねさせて?」

 順序立てての説明が出来ないならば質問して引き出せるか試そう、無理なら知らないか忘れているということだろう。

「いいよ分かることならなんでも答えるよ?」

 かつて何度も元気を分けてくれた笑顔、それをふたたび見ることができたのはあまりにも大きな幸せ、後でたくさん可愛がろう。


「魔王って何?」

 ボクたちが知っている魔王はバフォメットくらい、その伝説に語られる殺戮のイメージと目の前のノヴァリスはあまりにイメージが合わない。

 ボクの質問に少し考え込んだオルセーは、すぐに顔をあげて答える。


「魔王は、亜人たちを導くべき王、ただしこの場合の亜人とは、既存の種族ではなく、魔王の手により新しく発生するモノを指す・・・だったかな?」

 どうもよく意味は解らずただ教えられた通りに説明している感じ。


「鍵というのは?」

「鍵は、魔王が発生するに相応しい環境を整える為の装置で、同時に暗黒大陸を開く為の鍵だって言ってた。」

 ある程度は覚えているが、ほとんどは聞いただけの様だ。


「今のノヴァリスはどういう状態?」

「植物系亜人の魔王、多分エントに種を植え付けられたあと鍵が近くに有ったから何らかの理由で魔王になった。」

 何らかの理由?

「鍵の作用ではないの?」

「ごめんね、あたしも魔王の生まれ方とかよくわからないんだ。」

 頭を抱えたくなる。

 オルセーは情報源としては作用してくれないらしい。


「ナタリィたち、或いはその龍の島とは連絡はとれないの?」

 オルセーがダメならば元締めに聞ければなにか分かるかも知れない。

「あたし翼がないからさ、島には戻れないし、ナタリィたちは今頃セントール大陸を回ってると思うよ?」

 つまり連絡はとれないと?

 それに翼が必要って・・・?

「龍の島は空の上にあるの?」


「うん、どこかの空の上にあるよ、場所は、今2月だからハルピュイア大陸の南側くらいかな?」

 移動するのか!?島が飛ぶだとかは神話の存在ならあり得る・・・と思うことにする。

「ありがとう、とりあえず連絡は出来ないとよく分かった。それで、いま聞き捨てならないことを聞いたけれども、今、いつだって?」

「いつって?なにが?」

 質問の意図が汲み取ってもらえない


「今日は何月何日?」

「2月36日」

「「え゛?」」

 ノヴァリスとオルセー以外のみんなの声がハモる・・・2週間くらいしかたっていないつもりであったのだ・・・・

「「えぇぇぇぇぇえ!?」」


「どしたのアイラ急に大声だして・・・」

「ねぇオルセーボクたち家に連絡もとらないで2ヶ月近くも行方不明になってる訳なんだけど?」

 これはヤバイ、仮にも貴族と王族だ、かなり騒ぎになってる可能性がある・・・


「あぁだからなのかな?何回かウェリントン周辺を探ってる兵士たちがいて、害意は感じなかったから回れ右してもらってたんだけど」

 ノヴァリスがオズオズと報告する。


「ていうか、そんなに経ってるの?」

「急いで帰らないと、ただ何て言おうか?」

 ウェリントンまでたどり着けた兵士すらいないということだし。


「ダンジョン攻略してたっていうのは?」

 オルセーが事も無げに言う。

「ダンジョンってこの辺りにダンジョン何てないよね?それになんでお墓参りに来たハズなのにダンジョン攻略しないといけないのさ?」

 オルセーはやっぱりアホの子のオルセーだ。

 それがたまらなくうれしいが、状況はよろしくない。


「いやダンジョンだよ?このウェリントン、できかけのダンジョンだけど。」

「うん?」

 また意味のわからないことを・・・


「鍵をもって帰れば、信頼されるかな?」

 ノヴァリスもここがダンジョンという認識なのか?

「あたしが龍形態見せたらもっと信頼されるかも?」

「龍になれるの?」


「うん、なろっか?あ、ここはお墓だから後で広場の方でやるね、ただ今は、私たちのせいで遅れちゃったお墓参りから・・・かな?」

「あ・・・そうだね、ご挨拶してからにしよう。」

 難しいことは後で考えよう。


「神楽、リリもういいよ!お墓参りしよう。」

 お散歩継続してくれていた二人を呼び戻してお墓参りを開始する。

 ボクたちウェリントン組にとっては家族たちの、ユーリとリリにとっては見たこともないボクの家族の、そして神楽にとっては・・・


「ここにあの方・・・が眠っているんですね。」

「うん」

「やっと手を合わせられました。」

「ボクも、君をここへ連れてこられて良かった。」

 肩を寄せあい自分の墓に手を合わせる。

 短い間だったけれどもまた次はいつでもこられるからと、帰り支度を急ぐことにした。


 広場で見せてもらったオルセーの龍化はかつてのナタリィを思い出させるモノだった。

 頭からお尻まで5メートルほどの四つ足の龍、背中と肩の間から前方向に向かって巨大な角が二本生え、6メートルほどある尻尾の先はユーリの盾の剣の様な頑丈なプレートになっていて圧倒的なパワーを感じさせる。


 その、圧倒的偉容にフィーやゼファーもこうなのかと訪ねると

「あたしはまだ若い個体だから成長中、ただ私は龍王様直系のナタリィの初卵からドラゴニュートになったから、すごく強いんだって」

 にこにこ笑いながら語るオルセー、本当ならもう一度オルリールやテオロにその笑顔を見せられるハズだったのに・・・


「じゃあそろそろいきましょうか?」

 神楽が飛行盾を用意する。

 遅れすぎてるからまず無事を報告しないと・・・

「ここから東の湖にキャンプができてるよ、多分アイラ達を探してる。まずはそこにいったらいいよ」


「神楽、オルセーの言う通りに・・・」

「はい!」

 その後空を飛ぶ術に興奮するオルセーを抑えるのに四苦八苦しつつキャンプに向かうのであった。

 

 オルセーが覚えていないせいであまり情報は得られませんでした。

 いつかナタリィが出てくればその辺りの話もしてくれるはずです。


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