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第147話:墓参り

 こんにちは、暁改めアイラです。

 現在ボクたちは神楽の飛行盾でウェリントン近くに向かっています。

 始まりは5日前の1月1日、朝食中に想い至っただけのことで、ボクもアイリスも無事にユーリと結ばれ、学校も卒業したので、なんとなく行ける気がしたのだ。

 

「アイラ、大丈夫そうなのかい?」

 義父様は心配した顔でボクに尋ねる。

「大丈夫、とは?」


「君たちは、その幼かったとは言え辛い思いをした。思い出して動けなくなったりしないか?」

 トラウマ的なモノをギリアム様は心配して下さっているらしい。

「いつまでも親不孝出来ませんから」

 ボクも親になったから、リリが10年も挨拶に来なかったらと思うと寂しいから。



 それから新年で挨拶が続くので3日程度は城にいる様に言われて、その間に行く人行かない人をたずねた。

 結果、実はサークラやキスカはすでにお墓参り済みと言うことがわかった。


「ごめんねアイラ、私たちは実はもうアイラたちがクラウディアに行った年にお墓参りしてるの」

 と申し訳なさそうに言うのはサークラ

「私がギリアム様の側室になるときにね、サルボウに挨拶したいっていって、アンナさんとアニスとノラ、サルビアも連れてね。」


「それでは今回止めておく、と?」

 お墓参りは何度行っても良いと思うけれど

「警備の人たちがいっぱい必要だし、年始の挨拶もまだあるしね、それに・・・前回はアニスの様子がおかしくなって、やっぱり辛い思いをさせてしまったかなって、私もその・・・ね?辛い思い出があるし、お父さんたちには申し訳ないけれど、辛いのよ」

 そういってサークラは表情を曇らせた。


 親不孝だとは言えない、今が満ち足りているほど、彼処の思い出は刺さる。

「それに貴方たちだけなら、カグラさんに飛ばして貰えば早ければ一晩で帰ってこられるでしょ?私たちが行くとどうしても護衛なんかを増やさないといけないし、帰りたくなってもなかなか帰れないし」


 メイドたちもついてきたがったけれど、かわいいメイドたちにウェリントンの惨事を知って欲しいとは思わなかった。

 ボクはトリエラとナディアに3日間の休みを出し。

 エイラには1日の休みと留守中のプリムラ、サクヤの面倒を頼んだ。


 今盾の上にいるのは、ユーリとボクとアイリス、リリ、神楽、エッラの6名だ。

 日程は2泊3日、収納に試作テントとは名ばかりのコンテナハウスを仕込んで来ているので安全に寝泊まりが可能だ。

 二時間半程で目的地周辺についた。


 うっかり通りすぎない様に目印にしていた湖に降りる。

「綺麗な湖ですね、夏に泳いだら気持ち良さそうです。」

 神楽は目の前にある湖と川に目を輝かす。

「ここから西へ向かうとウェリントンの跡地です。エドワード様のお話では、新たに入植は行われず、民家が少しとお墓が残っているだけみたいですね」

 と、エッラが説明する。


 辺境な上に、エントの棲息する森に近いため入植希望者が集まらなかったらしい、ボクも村人が殺害されて滅びた村落跡地にすんでみないかと言われても遠慮したいと思うし仕方ないね。


 少し歩くと、実際にボクたちが泳いで遊んだあの水場が見えてきた。

「うわー、すごいねここ、ここだけ水がゆっくりになってるんだね」

 アイリスは覚えていないのか、無邪気にはしゃぐ

 相変わらずプールみたいになっていて目隠しになる岩場も底の滑らかな一枚岩の溜まり場め記憶の中の物とほとんど差がないけれど。


 ここでオルセーがリルルの足を濡らしてあげていた。

 ここでノラとケイトがソラを泣かせてしまっていた。

 ここで、ここで、ここで・・・・

「ここで遊んだ回数なんて、数えるほどしかないのに・・・」


 視界がぼやけた。

 まるで度のあっていないメガネをかけた様に、前が見えない。

「アイラ泣いてるの?」

「アイラは覚えてるんだね」

 アイリスは泣き出したボクの姿に動揺し

 お姉ちゃんモードになったエッラがかつてそうしていた様にボクの頭を撫でる。


「覚えてるよ、覚えてる。」

 気分を持ち直さないと、まだまだこんなものではないし、ボクはあまり泣かないことで知られているのに、こんなじゃあ威厳を保てない。


「ユーリ、残念だね、エッラの胸を最初にさわった男はユーリじゃあないみたいだよ?」

 確かカールが冗談の様に手を出していた。

 思い出しつつ言うと、エッラが顔を真っ赤にする

「そんなのまで覚えてるの!?私が今まで忘れていた位なのに」

「あとエッラが、ボクの着替えも手伝ってくれたよね、あのとき少し恥ずかしかったんだよ?」


 村へ向かい歩き出す。

 アイリスは覚えていないみたいだけれど、ボクは昨日歩いたかの様に鮮烈に思い出す。

 エッラは割りとはっきり覚えているけれど時々悲しそうな目をするだけで何も語らなかった。


 村へ向かう道は荒れていて、アイリスが時々足をとられている。

 リリはピクニック気分なのか、先日ボクが馬車の中で口ずさんでいた歌を鼻唄している。

 ボクとユーリの間でぶら下がったりしながらで上機嫌だ。


「ママー、あっちいきたい。」

「ママー、リリちゃんのどかわいた。」

 時々要望を言うので応えてやりながら、ウェリントンへと歩みを進める。


「あれ?道が・・・」

 そろそろ村が見えてくる辺りで急に道がよくなった。

 草も引かれているし、石も脇に避けられている。

 人は住んでいないハズだけれど、もしかしたら賊でも根城にしているのだろうか?


 ユーリとエッラと無言で頷き合い、警戒を強める。

「アイラさん、空気中の魔力も変わりました。」

 神楽が警戒感を露にして耳打ちをしてくる。

 アイリスがリリを抱き込む様にして庇ってくれる。


 こんな僻地に何がある?

 ここらであったことと言えば、ウェリントンの事件と、戦争最初の頃のゲイズシィ将軍らが、何者かに全滅させられていたくらい。

 その後の調査でも特に怪しいところはなく、ただベナムスワンプの縮小が確認された位だったか?

 帝国兵の全滅も普通に大事件だが、毒性のある植物を薪に使って、集団幻覚かなにかで同士討ちをした可能性とかで片付けられたハズだ。


 バサッ

 なにかが地面に落ちた音がする。

 振り向くとリリとアイリスが地面に横たわっていた。

「っ!?」

 声にならない叫びが喉から漏れる。


(何が!?何が!?)

 慌てて駆け寄り頬を叩いて声をかける、息はしているが反応がない?

「アイリス!リリ!」

 いったい何が?そう考えるボクを笑う様に

 ガランッ

 続けて後ろから音がする、恐る恐る振り向くと、他の三人共が倒れていた。

「なにさ?何が!?」


 敵襲?毒?わからない・・・なんで?

 敵襲なら誰かが気付く、毒ならボクよりエッラの方が耐性が高い。

 ユーリ、エッラよりもボクが耐えられるのは・・・精神汚染?

 集団幻覚による同士討ち、その言葉が頭のなかをよぎる


 視界がぼやける、そういえばウェリントンまであと5分も歩かない、なんとかそこまでみんなを・・・

 薄れていく意識の中、妙に能天気な声が聞こえた

「あれ?お客さん?それとも敵かな?」


 サクサクと足音を立てたそいつは、ボクのすぐ横まで・・・

急に意識を失った6人、勇者があっという間に無力化されてしまいました。

短くて墓参りまでとどきませんでした。

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