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第146話:サテュロス連邦ホーリーウッド王国の家族

 こんにちは、暁改めアイラです。

 ホーリーウッドに帰ってきました。

 アニスたちはクラウディアにおいてくることになりましたが、それもあと3年のことで、来年にはアミが、再来年にはアイビスとメイドのフランが、その次にはみんな帰ってきます。

 学舎に、友に別れを告げ今は少しだけ寂しいけれど、また賑やかな生活が始まるのだと思うととても楽しみだ。


 ホーリーウッドへの帰り道特に何もなく無事に帰郷したボクたちは、城の者たちに迎えられて今エドワードおじいさまたちと談話室でお話ししている。

「よく無事に帰ってきてくれた。こういうとき普通は立派な若者になったな、とかいうものなのだがなぁ・・・ユーリたちは顔をよく見せていたからそういう感慨がないな」

 と困った様に笑うエドワードお爺様、神楽の飛行盾のお陰でクラウディアとホーリーウッドの距離が近かったからね。


「僕や他のみんなはともかく、リリたちはほんの4か月でもすごく大きくなってますよ?」

 そういってユーリはすでにフローレンスお婆様の元で可愛がられている娘たちを見つめる。

フローレンスお婆様の隣にはサークラとキスカが一緒に座っていて、リリたち四人のチビっこを可愛がっている。

 お婆様も膝に乗せたプリムラに視線をやると眩しそうに目を細めた。


「本当にずいぶん大きくなって」

 プリムラはお婆様の膝の上で味の薄いビスケットの様な菓子をよだれをまぶしながら食べている。

 わざと堅く作っていて一片で10分ほども持つものだ。

 味は薄いと言えども甘味があるのでプリムラたちもだけれどリリの好物でもある。

 リリは一枚まるごと渡されたソレを口の周りをよだれまみれにさせながらかじっている。

 時々サークラに布で口を拭われながらお気に入りの菓子をパクつくリリは気分が良さそうだ。


 一時はその成長や魔法力の高さから、生まれかわりを危惧したが、リリは普通のこどもの様で、覚悟自体はしていたボクもそう結論づけた時には安堵した。

 逆に、3歳に近づいているのに今だにおっぱいを欲しがるリリが多少不安なくらいだが、大きくなっても求められると生きているという幸せを感じてしまう程度にはボクも授乳行為に依存している。


 またリリが授乳を受けていることに刺激されてか、プリムラとサクヤ、マリアナも現在乳離れができていない。

 アクアはそもそも乳の出はよくない体質だし、神楽はそもそも(サクヤはボクの産んだ娘だから)出ないので形式的な乳房を口に含むだけの行為だけれども、子どもたちが求めるのでついつい体を許してしまう。

 

 結果として、もうプリムラたちも1歳3ヶ月だというのにボクのおっぱいの量はほとんど減っていない、自分達の母親は出ないのですぐに安心感だけを得たサクヤとマリアナが、おやつがわりにボクのおっぱいをほしがるところまでがひとつのルーチンだ。

 アクアも神楽も、子どもがボクのおっぱいを求めることを嫌がりはせず、微笑ましそうに見つめて、あげてやって欲しいという。

 少し意識がそれたが、とにかくボクたちはホーリーウッドに帰ってきた。

 

 夜になってからホーリーウッド城に家族がみんな集まりみんなで賑やかに食事と会話を楽しんで、すっかり大きくなったサルビアやガイ、ヘレンと戯れ。

 気持ちが安らぐのがわかる。


 時間を経て、クレアや神楽、エッラ、シシィ、シトリンもさることながら、ナディア、トリエラも、ユーリの寵愛を受ける予定のメイドとしておじいさま方に認められている。

 孫娘と呼んでくれる。

 みんな家族、ずっと一緒に居られるのだ。 



 ホーリーウッド到着の二日後、ボクとアイリスの15歳を祝うパーティーが行われた。

 王国となった以上、ボクたちの扱いは非常に大きく、以前の様にささやかとはいかなかった。

 ホーリーウッド市内の豪商や職位持ち貴族を中心に大量の来客、挨拶が忙しくてユーリといちゃつくこともままならない。

 夜はみんな家族と過ごすのが一般的なので、時間も昼食の時間帯にしてある。


 二時間近くたってようやく挨拶攻勢が止んできたが、まだユーリは大量の挨拶攻撃にさらされていた。

 挨拶にきた中でも主役であるボクたち双子の方へ先に来た者たちやカテリーンや、アンディ先輩、または最初の婚約パーティーの時に言葉を交わした年の近い貴族の子女なんかは良かったが、明らかに権力に媚びへつらっているタイプや、いやらしい笑顔を浮かべた連中に絡まれているユーリやシシィは少しかわいそうだ。


 小柄で痩せ気味だったボクたち双子も、15歳ともなればそれなりに大きくなった。

 身長は二人ともとうとう150センチを越えた。

 それでも小柄だが、エッラを越えたのは大きい。

 体重はボクは41キロでアイリスはボクより僅かに軽い。

 恐らくは筋肉と胸の差で、ボクは産後というのもあるが強度C並程度、アイリスはB弱程度だ。

 ただ胸の大きさで勝っていても体の円みというか女性らしさがどうもアイリスのほうが可愛い感じがする。


 単に可愛い妹を贔屓目で見てしまっている可能性もあるが、入浴時なんかに冗談で抱きついてくるアイリスの体の柔らかさは気持ちいい

 さすがにリリやプリムラの柔らかさには叶わないが、ボクのそれと比べるとはるかに柔らかい気がする。

 傍らにいるドレスアップされたアイリスに目をやると、鎖骨から胸に至るラインのなだらかで柔らかい曲線が露になっている。

(ボクにはあの柔らかい線が足りない)


 次に逆側についている神楽に目をやる。

 神楽は女性として一番、瑞々しさと肉感に溢れた年頃を迎え、ますます魅力的になっている。

 ユーリに認められてからボクと神楽は少し不思議な、愛人といえないこともないつきあい方をしているが、体に触るとそれだけで興奮してしまう。


 神楽は同性になってもなおボクを好いてくれた。

 一時は許されないことだとボクは、暁であることを捨てようとしたが、ボクは神楽の想いに甘えてしまった。


 ユーリの言うところによると、イシュタルトの貴族の娘には、お気に入りのメイドと後腐れのない恋愛関係を持つ文化もあるそうなので異端扱いはされない、とのことだが元々恋愛観に関して神楽はノーマルなので、ボクのせいで彼女の嗜好を歪めた後ろめたさがボクの胸の内側を苦しめることもある。


 神楽は体格も髪質もナディアと似ていて、よく知らない人は姉妹だと勘違いをする。

 ボクがよく、ユーリの室は皆ボクの姉妹の様なものだと発言しているのであながち間違いでもないが、両親と弟を亡くしているナディアは神楽と姉妹扱いされることに最初戸惑っていたものの今は嬉しそうにしている。

 現に今もユーリの世話をしながら、神楽を見て微笑んでいる。

 話しかけていた貴婦人が此方をみて微笑んでいるから、多分神楽かボクのことを誉められたのだろう。


 16時過ぎ程でパーティーはお開きとなった。

 ディバインシャフト城に戻ったボクたちは、こちらで留守番していたリリたちの元に向かった。

「ママ、おかえりー」

「アー♪マーマー」

 リリはやや不機嫌そうに、プリムラは満面の笑顔で寄ってくる。

 プリムラは歩くのがまだ余りおぼつかないからなのかリリのズロースをむんずと掴んでバランスをとっている。

 電車ごっこみたいで可愛い。


「リリ、プリムラ、寂しくなかった?サクちゃんも、もうすぐカグラママ来るからねー、アクアねーさん、みんなのことみててくれてありがとうございます。」

「マリアナちゃんのついでだし、楽しかった」

 リリとプリムラを魔力を使って二人とも抱き上げて愛でつつ、アクアにお礼を言うと暗に気にするなと言われた。


「トリエラも留守番ご苦労様」

「いえいえ、お役目ですし、アクア様の仰る様にリリ様たちのお相手も楽しゅうございますから」

 トリエラも笑顔でマリアナを抱いて歩み寄る。


 アクアは見た目こそ10台前半で止まったままだけれどすでに40歳を越えていて、呼び捨てはよくないということでねーさんと軽く呼ぶことにした。

 そのお陰なのか、それともセルディオと離れて暮らしているからなのか、徐々に意識が大人びてきていて、最近は赤ちゃんたちの世話も任せられる様になってきた。

 ただいまだにジョージやセルゲイの事は思い出さない。


「マンマー!」

「サクちゃん!」

 遅れていた神楽が入室するとサクヤが過剰に反応して飛び付きにいく。

 実のところは養子で、ボクが産んだ娘だけれどちゃんと神楽との間に愛着形成がなった様で少し安心している。

 ボクのこともマンマと呼ぶのが少し不安だけれど、いっそ子どもたちにはユーリの室みんなのことをママと呼ぶように躾ればいいのかな?なんて思ってしまう。



 それから子どもたちとお風呂に入ったり、寝かしつけたりしていよいよ今日のメインイベントだ。

 イベントというほどの規模はないが、ボクたちの人生に於いては大きな節目


 エイラに連れられてアイリスがボクの部屋にやって来た。

「アイラ、どうかな?私おかしくないかな?」

 ほんのりとシトラスの香りが漂う。

 白と黄色のフリフリのナイトドレス、風呂上がりの為髪はまだおろしたままで、元が白いので火照った肌の赤が目立つ。


「うん、アイリスは今日も可愛い。」

 ボクの自慢の妹、お互い髪をおろすと鏡を見た様に似ているけれど、やはり可愛さはアイリスの方が上だと思う

「ユーリは優しいし、女の子の扱い方も上手いから、思ったことはちゃんと全部ユーリに伝えるんだよ?そうしたらきっとよくしてくれるから、変に気を使ったり隠したりしない様にね?」


「う、うん、私、頑張るよ!」

 少し緊張していると分かる。

「アイリス、余り堅くならないで、そのままの君が一番可愛いよ。」

 そういってアイリスの手を握ると汗をかいていた。


「アイリス、怖いならまた今度にしても・・・」

「それはヤダ!今日がいい!」

 そうはいってもアイリスは緊張している。

「今のままだと失敗しちゃうかもしれないよ?そうしたら次はもっと怖くなっちゃうよ?」

 手を繋いだままで、アイリスの目を見ると、アイリスはボクをにらんだ。


「アイラだけ大人になってずるいよ、私だってユーリのお嫁さんなのに、私と一緒に居てよ、置いて行かないでよ。」

 アイリスの言葉に、ボクの心は妹=可愛いで染まってしまうが、今は可愛さにやられてる場合ではない。

「そうは言うけど、堅くなってたら失敗するよ?次が怖くなるよ?」


「だ、大丈夫だよ、痛かったらヒールするし」

「そういうんじゃなくてさ、その、緊張してたら幸せを全部感じられないよ、一生に一度のことだもの、全部覚えてたいでしょ?」

 少し過保護かな?なんて思いながらもボクはアイリスの緊張具合から時期尚早であると判断して、否定的なことをいってしまった。


「どうしてそういうこと言うの?そんなに私のこと信じられないの?」

 いつの間にかアイリスは泣いていた。

(泣かせるつもりはなかった!)

「ごめん、ごめんアイリス意地悪言ったつもりはないんだ。ただ、ただアイリスのことが心配で・・・ボクは!」

「だったら!」

 ボクの弁明のさなかアイリスは割って入る。


「だったら隣で見守ってよ、私のことが心配なら隣で手を握ってくれたら、それで私は何にも怖いものなんかないから」

 真っ直ぐな視線、その強い光に、ボクは是と答える他なかった。



「いらっしゃいアイリス、とアイラがいるの?」

 しばらくしてアイリスと共にユーリの部屋に着くと、ユーリは少し戸惑った。

「うん、アイラは私のことが心配でたまらないみたいだからついててもらうことにしたの」

「ア、アイリス!」

 本当のことだけど、恥ずかしい、妹離れしきれてないとおもわれるならまだいいけれど、ユーリはボクが元は男で、今も暁としての自意識もあると知っている。

(ボクが妹の行為を覗き見しようとしていると思われたりはしないだろうか?)


「あぁ、それでさっきまで緊張していたのに今は落ち着いてるんだね?優しいお姉ちゃんだね」

 そういってアイリスの頬を撫でてキスするユーリ、どうも正しく伝わった様だ。


「うん、私はお姉ちゃんが大好きな妹だからね、アイラが一緒にいたら大体のことは平気なんだ。」

 そういってアイリスはボクの頬にキスをする。

「それならさ・・・」

 するとユーリはとんでもない提案をした。



 翌朝

「やぁアイラおはよう、今年も昨年同様、穏やかな年になるといいね。」

 食堂に入ると、ギリアム義父様が穏やかに声をかけて下さるが、ボクは不機嫌である。

「おはようございます、新年おめでとうございます義父とう様」

 一応無難に返したつもりだったけれど、付き合いが長い上に駆け引きに長じた義父には通じなかった様だ。


「どうしたのかな?不機嫌そうだ。」

 ボクの顔を覗き込む義父

 丁度ボクを追うように原因の二人が入ってくる。

 三人揃っての朝風呂の後だけれど、重ねて言うがボクは不機嫌である。


「おやユーリとアイリスもおはよう、新年おめでとう。」

「おはようございます父上」

「おはようございます」

「新年おめでとうございます。」

 ユーリとアイリスのが睦まじくしているのは良いことだけれど・・・・

 多分今のボクはギリアム義父様でなくても気付く不機嫌顔であろう。


「アイラ機嫌直してよ、アイラのお陰で今の私の幸せがあるんだよ」

 そういってアイリスは自身のヘソの辺りを手でなぞる。

「アイラごめんね、僕に出来ることならなんでもするからいつものアイラに戻ってよ」

 別にボクだって君と愛を交わすのは嫌ではないさ、そうじゃなきゃ2回も産むものか。

 ただ妹の前で、醜態を晒す羽目になって、更にそのあと体の自由がきかない中目の前で、夫と妹の情事を見せつけられたボクのプライドはズタズタなんだよ!?


 まぁあれだ。

 どれだけ夫婦間のことで不満があったとしてもボクは母なのだから、子どもたちには不安を感じさせてはならない程度の責任感はある。

「ぉはよーママ」

「あーよぅ」

 ナディアとトリエラに連れられて愛し子たちが食堂に来る頃には、ボクも無理矢理機嫌を直した。

「おはよーリリ、プリムラ、今日も可愛いよー」

 思わずおでこにチューしちゃう。


「サクヤもマリアナも可愛いよー」

 こっちもでこチューしちゃおう。

 続いてエイラに連れられた少し大きい組が室内に連れてこられた。


「アイラお姉ちゃんおはよー!」

 8才のサルビアがボクに抱きついてくる。

 対向してか同い年のシシィとシトリンも駆け寄ってくる。

 みんなかわいいなぁ全く。

 ガイもヘレンもリコもサルートもみんなかわいい、みんなにチューしてあげたいけれど、さすがに手が足りないので諦めて席に着かせる


 リコ以下の子どもたちは夕べも早めに寝かしつけたけれど、ヘレンまでは夜更かししていたらしくて少し眠たそうだ。

 日ノ本で言う大晦日だったわけだし仕方ないね。



 年明け最初の食事も終わり大分手狭になったと感じる食堂の中で、食後の会話を楽しんでいると、ふと思いついた。


「義父様、いろいろいい節目ですし、ボクはお墓参りに行こうと思うんです。」

 思えば一度も墓参りをしていない、アイリスの心が癒えていなかったのが主な理由だが、ボクも母となったし、アイリスももう大人になった。

(頃合いのはずだよね?)


 そう思えたので、墓参りに行くことにした。

 こうしてボクの、15歳の1年が始まったのである。

 ということでようやく初めてのお墓参りです。

 何人で行くか迷います。


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