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第144話:実験

 こんにちは、暁改めアイラです。

 4年生になって3ヶ月半が経ちました。

 すでにサリィの懐妊は国民に知れ渡り、ジークが前もって女王をたてるにあたり、サリィは結婚せず子どものみもうけることを宣言していなければ騒ぎになっていたかもしれないが、民衆は単にめでたいこととして姫の懐妊を受け入れた。


 ここまでに、軍官学校では、量産型セイバーやその亜種の開発に、ユーリやエッラ用の武器の開発。

 また兵士用のセイバー以外にも軍官学校の卒業生など独自の戦闘スタイルをした人のスタイルを崩さずに運用できる魔法装備の開発など結果を残し続ける神楽たちに勲章が授与された。


 アニスとシグルドの仲も順調に発展し、週末に武器屋や最寄りの訓練場でデートする二人が目撃されている。

 何とも色気のないことで困ったものだけれど、色街や宿屋に出入りしてても困るからいいことかな。


 さて今日は水練が始まる前の最後の休日、今日は学校内には、教官と関係者しか入れないことになっている。

 そしてボクたちは闘技場の中心で向かい合っている。


「神楽、今日は何を試すの?」

 目の前にいる大切な人に今日の試験の内容を尋ねる。

「はい、今日はまずアイラさんが私の魔力物質偏向機(マジカレイドマテリアルシステム)魔導鎧装(マギリンクフォルト)、カナちゃんの魔力組成偏向機(マジカレイドスターシステム)とナッちゃんの魔力精霊偏向機(マジカレイドエレメントシステム)を利用できるかを試験します。その後は順に新型の籠手と砲兵用鎧を実験します。」

 鎧装は以前に試した時にはダメだったが、ちゃんと神楽に指導を受けながらならやれるかもしれないということらしい。

 他は神楽の姉妹の使っていた機能と新技術、セイバータイプを発展させた装備の実験だ。


「まずは私が、比較的必要な魔力の低いフォルトを出してみますから真似てみてくださいね。」

 闘技場内には、ホーリーウッド家の関係者しかいない、神楽とボクの装備の力を隠す為に人払いしてある。


「わかった。」

 ボクが同意すると神楽は眼を瞑って魔力を放出しはじめた。

 この世界の物ではない魔法陣が浮かび、魔力が神楽の身体にからみついていく。

 魔力が徐々に光を増して、神楽の姿は見えなくなった。

 そして・・・


「これが・・・カグラの真の力?」

 ユーリが呟いて、その威容を仰ぎ見る。

 銀に輝く大鎧はホロ装備の二倍以上ある。

 6メートルほどの高さ、遠くからなら細身に見えるけれど腕の太さはボクの胴二人分位はある。

「ほとんどロボットだね?大きいし、機械的だ。」

 こどもの頃にやっていたロボット物のアニメの様な格好よさがある。

 それと、放出されてる魔力量が異常だ。


「これは(みつ)という魔導鎧装、そのツクヨミモードです。」

 三でツクヨミといことは、あとはアマテラスとスサノオがあるんだろうか?

 左腕にいつぞやアイリスを乗せて運んだ飛行盾があるだけで武装は積んでいない様に見える。

 頭部はやや丸みを帯びた形状で額に丸いプレートがついている。

 全体的に無駄な飾りは少なく胸に赤い石がはまっているくらいか


「本当は砲撃用なんですが、今日は本体部分のみです。これがだせなければ、フォルト自体アイラさんに向いていないということになると思います。」

 同じものを暁天のに探して起動を試みるが、鎧を形作ってはくれなかった。

「うん、どうもダメみたい、やっぱりカグラ自身の魔力形質が必要なんだと思う。」

  前回と同様に神楽の能力はボクが扱えるものではないらしい、手にチリチリする感覚があるだけでロボットは喚べなかった。

 盾だけでも使えたら便利なのだけれどね。

 

「仕方がありませんね、それでは次のシステムを試しましょう。」

 素早く切り替えた神楽は、三と呼んだ鎧装を解除して運動服姿になる。

 ボクも意識を切り替えるけれど周りがそうはいかなかった。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!?今の大きいのは私の知らないセイバーの試作機?それにしては大き過ぎない!?」

 ラピスが興奮気味に待ったをかける。

「ラピスちゃん、今のはマギリンクフォルトという、私の魔力で産み出した人造神です。私の出身地方の主神クラスの存在を模倣して造り上げたものですね。」

 笑って言う神楽だが、少し汗をかいている。

 呼んだだけでも魔力を結構消耗する様だ。

 

「魔剣使いなんて呼ばれるわけだね、あれは恐ろしい存在だと、戦わずともわかった。」

 ユーリはユーリでなにか納得するものがあったらしい。

「ですが移動に使っていた大きな盾と似た魔力の出方の様でしたね?」

 エッラとエイラは感覚で同じものだと理解した様だ。


「すごいね、カグラさんあんなに大きな鎧をつけても動けるんだね。」

 アイリスとトリエラはそもそも鎧と区別がついていないが、神楽=すごいで済んでいる様だ。


「はい、飛行盾はフォルトの一部ですから、エッラさんは鋭いですね。」

 神楽はにこやかに答える。

 神楽はエッラと特に仲が良い、エッラは側室となった今もホーリーウッド家中では半分以上メイドの心構えでいる様で、他の側室やボクに対して少し引いた立場を取っているけれど、神楽がユーリとは形だけの結婚だと気付いているみたいで、友人として付き合えている。

 年が近いというのももちろんあるんだろうけれど、エッラとアイリス、カグラとクレアが丁度同じ様な騎士と姫みたいな護る立場にあることも、通じ合える要因なのかも?

「人払いしている時間もそう長くはないのですよね?そろそろ次のシステムを試してもよいでしょうか?」


 次に神楽が示したのは彼方ちゃんの使っていたマジカレイドスターシステム。

 話を聴くとこれもとんでもない代物だ。

 これは、星に見立てた半透明の珠に他人の特殊魔法や属性魔法を封じ込めた魔法珠と属性珠を偏向機にセットし、専用の魔法武器にセットすることであらゆる装備の形に変化させる武具珠を用いて、本人に適性の全くない魔法や属性を無理矢理使える様にして、それに合わせて獲物も代えることが可能なシステム

 問題点としては、性能を100パーセント生かすには彼方ちゃんの持つ魔法武器である自在剣(フリーソード)という剣型の装備が必要らしいのと、そもそも珠の用意ができない

 システムはボクにも起動ができたが足りない物が多くて使い物に成りそうになかった。


 最期に神楽はマジカレイドエレメントシステムの説明を始めた。

 これは刹那ちゃんが使っていたらしいシステムで、使い魔や精霊と契約することで属性傾向を変えたり、それらの思考力を借りて並列詠唱を可能とするものらしいけれど、まず使い魔とか精霊が周りにいないので諦めた。

 有用そうではあるので、そのうち使い魔や精霊と契約出来そうなら覚えておこうという程度。

(今度サーニャやオーティスに精霊と友達になる方法でも聞いておこう。)


 暁天の使っていない機能の確認も済んで、次は新型の装備の確認、ボクとユーリは魔導籠手という新型装備。

 これはセイバー開発で培った魔方陣を用いた技術で籠手に魔力シールドの発生と魔力弾の射撃を出来る機能、そして籠手自体に物理的盾としての機能を持たせたものだ。

 熟練した戦士の戦闘スタイルをなるべく崩さず、いざというときに役に立つ装備として開発したそうだ。


「使ってみた感じ、魔力消費は普通にシールドを張るのと2~3パーセント増し、早さはかなり早いね、十分使えると思う。」

 ユーリは好評価

「ボクは暁天がやってくれるから要らないかな、念のためひとつもらっておくけれど」

 神楽がエッラ含め3人にそのまま持ち帰って良いと言うのでありがたく貰うことにした。


 最期に新型の鎧の実験。

「アイリス、アイビス、ラピスも無理はしない様にね」

 戦士としての適正が特に低い三人に試して貰う。

「武装の実験は後にするので、一先ず身体の重さと動き難さ、魔力消費の確認をお願いします」

 神楽は実験の進行役でヒースは記録係二人は目の前の鎧に向かって声をかける。


 ラピスが装備しているのが、セイバーの純粋発展機で、より大型化した試製ギガントセイバー、サイズはホロと同じ3メートルほどでセイバーと同じ様に槍か剣と盾を用意してある。

 可動域やパワーはセイバーやホロとは比べ物にならないほどだという。

 アイビスが装備しているのが機動性能を上げたライトニングセイバー、こちらは通常のセイバーと同じ程度の大きさの鎧の背面にブースターを増設し主に突破力を高めたものだが、扱いが難しく両脚についた補助ブースターの操作も慣れが必要な様だ。


 そして、アイリスが装備しているのが新型のカノン。

 大きさはセイバーより一回り大きい程度で両肩に砲がついている射撃用の鎧だ。

 胴のところにシールド発生装置、背面に魔力タンクを設置している。

 また開発中であるが、携行用の魔力ライフルを装備させる予定で、ライフルの先に焔鉄製のダガーを装着することも計画している。

 今は3人とも闘技場内でかけっこしてるだけだけれど・・・


「ひゃあぁぁぁぁぁ!止まらないです!!」

 うっかりブースターを起動させたアイビスが壁に激突したり

「きゃっ!いきなり向き変えないで!?」

「おわ!?」

 アイビスが横切ったので慌てて横にそれたラピスにアイリスが追突してラピスが転倒したりと、それなりに大惨事だった。

幸い強度と安全性に問題はない様で中の3人はケガひとつなかった。

(普段の3人ならばさぞ和む光景だったのだろうけれど・・・)

 巨大な鎧やロボットみたいなのが内股気味に尻餅をついている光景というのはなかなか違和感のすごいものだった



 実験終了後、片付けてから闘技場に水を張り屋敷に帰った。

 明日からは水練が始まる、すでに屋敷メンバーは今年の水着も購入済みで準備は万端だけれど今年は少し寂しい、ボクとユーリとエッラは大水練大会に出場しないことを決めている。

 代わりにボクとエッラとでエキシビションマッチ的なことをするのと、生徒会選挙をするので多分恐ろしく忙しくなる。


 早めに休もうと思い、帰ってからすぐにせっかくの休みなのに一緒にいてやれなかったリリを抱いてナディアにプリムラを抱いてもらって、トリエラとお風呂に入ることにした。


 リリの身体を素手で洗っていると

「ママ、かいかい」

 かわいい声で切なくつぶやく愛娘。

 リリは最近言葉がちゃんと文章になる様になってきた。

 あと一月半ほどで2才、娘の成長は早いものだ。

「どこがかゆいのー?かいちゃダメだよ?」

 そういって訊ねると、おへその左下の辺りを小さな手でさわって示す。

「ここね、かいかい」


「そっかぁ、見せてごらん?」

 見てみるとおへそのすぐ左の辺りに蚊に刺された痕がある。

 憎き蚊め、かわいいリリの血を吸うだなんて忌ま忌ましい。

「よーし、リリ、ママが痒いのなくしてあげるからよーく見てねー、かゆいのかゆいの、とんでけー」

 前世のちょっとアレンジをしたおまじないを唱えつつ実際には浄化と解毒と治療の魔法をかける。


「ギャハハハハハハハ!」

 おどけてみせたのがツボにはまったみたいでリリは小さなお口を大きく開けて笑う。

「どう?かゆいのは治った?」

 訊ねるとリリはぽっこりしたお腹をさわってみてから

「なったー」

 言えてないけどリリは嬉しそうに笑う。

「良かったねー」

 と頭を撫でているとすぐにプシーという音が聞こえる。


 見るとリリが立ったまま粗相している。

「こら、リリはもう赤ちゃんじゃないんだから、お風呂ではおしっこしないんだよ?お行儀が悪いんだから」

 軽く叱る、小さい頃にはなかなか耐えられず出ちゃうのも今のボクにはわかるけれど、理解できるのと躾はまた別の話である。


「ママ、・・んなさい」

 嬉しそうだった顔が一転して泣きそうな顔になる。

「いいけど、はい、モーンして」

 おしりなんかを拭いてやるときの、頭を下げてお尻を付き出したポーズをさせて、今汚したばかりの部分を指とぬるま湯とで洗ってやる。

「かゆくない?そう、じゃあお湯に浸かろうか。」


 湯槽に座ったボクの膝の間にリリは立ってお風呂に入る。

 ちょっと水深を浅くしてるので丁度リリの肩の辺りにお湯が来る。

 リリはお風呂はかなり好きらしく、結構長く浸かる。

 が、今日は少しそわそわしている。


「どうしたの?」

 かわいい娘がゆっくり出来る様に協力するよ?

「リリ、マンマ」

 訊ねるとリリはすぐにこちらに抱きついてきた。

 どうもおっぱいが欲しい様だ。

「プリムラのだから、ちょっとだよ?」

 愛娘に甘えられれば、おっぱいくらい差し出す

 許可をだすとすぐにリリはボクのおっぱいにむしゃぶりついた。


「おいしい?」

 コクコクと喉を動かすリリはその行為に夢中となっていて、満足するまで無言でボクの胸に顔を埋めていた。

 娘とお風呂というのは少し疲れるけれどすごく癒される。


(ちょっと前までアニスもこんなだったなぁ)

 いつかリリも恋人をつれてきて

『ママ、リリこの人と結婚するから』なんて言われる日がくると想像するとちょっともやもやするけれど、今はこの愛娘のためボクの出来ることをすべてやろう。

 そう心の中で誓った。

後書きを書くのに30分かかりました。

おやすみなさい

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