表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/182

第138話:契りと契機

 こんばんは、アイラです。

 シャオとのふれあい方にもなれ、素直でテンションが高くいるだけで気持ちが軽くなる様な彼女は、すでにボクたちの日常に欠かせない仲間となった。

 とくにアイビスやトリエラによくなついていてそのネコの様な耳をピクピクさせて抱きついている。


 さて来週にヴェル様の国葬を控えて予定では明日にもエドワード様やアイリス、サリィやシシィたちも明日クラウディアにつく予定となっていて。

 このところユーリをほとんど独り占めしてきたボクは、しばらく遠慮しないといけないので今夜はユーリとの睦言を楽しんでいたのだけれど来客があった。


「どうぞ」

 ノックしたものの声も名前も聴かずに、ユーリは家族を招き入れた。

 今この屋敷にいるのはみんな家族みたいなもので、わざわざ名前を聞かなくても入れることに躊躇はない。


 ドアが開くとそこにいたのは神楽だった。

 神楽は最近お風呂上がりは偏向機でセットした浴衣をよく着ていて。

 今も薄紅色の浴衣にかかる神楽の黒い髪がとてもよく映えていた。

「失礼します、ユーリさん、アイラさん。」


 どこか緊張した面持ちの神楽はゆっくりとボクたちの方へ歩いてくる。

「明日からしばらくはチャンスが無さそうなのでまだ結婚もしてないですが、来ちゃいました。」

 神楽は諦めた様な少し困り顔で笑い。

 ボクはあぁ、とうとうこの時がきたのかと気持ちが落ち込むのが分かった。


(ちがう、ボクはアイラなのだからこの気持ちは・・・)

 神楽がユーリのものになるからではなく、ユーリが名実ともにボクだけのものじゃなくなるからで、これから何度もユーリと契る娘が増える度に、ボクはこのもやもやを感じるに違いないのだ。


「じゃあボクは、リリを抱っこして寝ようかな。」

 白々しいかな?とも思わないでもないけれどユーリと神楽の契りなのだから、ボクはいるべきではない、そう考えたのだけれど

「あ、アイラさん約束が違います。一緒にいてください・・・そう約束したはずです。」

 そういって神楽がボクの裾を掴む。

「えっと・・・」

 記憶の中を軽く探る。

 そんな約束もした様な?


「ユーリさんがどういった趣向がお好きかわからないので、アイラさんがご教授ください。」

 教授といわれてもボクもまだ片手で数えられる回数しか経験がないのだけれど

 そういって神楽はユーリに許可をとりつつボクと手を繋いだまま、ユーリのベッドの真ん中に乗った。

 そして・・・一瞬目を瞑ったかと思うと

「えいっ」

 神楽は自ら勢いよく浴衣の上側をはだけさせた。


「ちょっ!カグラ!?」

 ボクはとっさに瑞瑞しい肌がユーリの目に入らない様に隠す。

 隠してからしまった!と体を戻して神楽に問いかける。

「いきなりそんな風に見せるのは恥じらいが足りないよ・・・カグラ。」

 今からのことを考えれば何を戸惑うこともあるまいについ隠してしまう。

「恥ずかしくはないこともないですけれど、アイラさんはもう女の子ですし、ユーリさんも元は女の子ですし、平気・・・です。」


 神楽はそういってあっという間に浴衣を脱ぎきってしまった。

 神楽とはもう何度も一緒にお風呂に入ったし、何度も一緒に寝たりもした。

 生まれたままの姿なんて何度も見ているし、ベッドの上で並んで寝るのだって何回も経験済みだけれど、裸の神楽がベッドに、ボクの目の前にいてそれをユーリが見ていると思うと頭が熱く成る。

 これはボクのものだ!と叫びたくなる。


(でもそれは許されない、神楽の幸せがリリの弟妹を産むことだというのなら、今のボクにはそれを止めることはできない。)

「アイラ、カグラ本当にいいの?君たちはそれで本当に幸せになれるの?」

 ユーリが不思議なことをいう。

 神楽の幸せがボクの幸せ

 この世界で家族を持つことが神楽の幸せならば。

 これはボクが幸せになるための儀式でもあるのだ。

 だからボクの答えは決まっている。


「カグラの幸せのためなんだよ!」

「アイラさんの幸せのためなのです!」

 口からでたのは諦めの言葉

 神楽とボクの叫びが重なる、重なってハッとする。

 ボクと神楽の言葉は同じものだ。


「カグラ!!」

 ひしと、神楽の柔らかい肌を、抱き締める。

「なんですか!何が私の幸せのためなんですか!私はこんなにも、アキラさんのもので居たいのに、アキラさんはもう死んでアイラさんになっていて、私のことをいつまでも気にしているから!・・・私はっ・・・・む・・・」

 唇で神楽の言葉をふさぐ、そしてボクも想いを伝える。


「カグラが、ユーリの赤ちゃんを産むと言ったとき、本当は嫌だって思った、カグラが他の誰かのものになるのなんて嫌だって思った。でもボクはアイラだからそんなわがまま言う資格はないんだ。だからカグラにとっての幸せがそれなら、ボクはただのアイラとして、一緒にユーリを支えていこうと思った。そう思えると思ってたんだ。」

 ボクの言葉はひどく自分勝手で、自分の心の平穏のために、ユーリの赤ちゃんを産むといった神楽の心情を考えることをしなかったボクの言い訳だ。


「私は、アキラさんが幸せならその隣にいるだけで幸せを感じられると思ってました。ユーリさんも素敵な方です。アキラさんさえいなければ、惚れてても不思議ではないくらいの素晴らしい方です。でも私にはアキラさんがいるから、やっぱりアキラさんがいいです!アキラさんじゃないとだめです!私は!神楽はアキラさんの赤ちゃんが欲しい!!」

 そう言って今度は神楽からボクの唇を奪った。


 しばらく神楽の肌の温もりを感じていると、放って置かれたユーリがこちらによってきた。

「アイラちゃん、赤ちゃんを作りましょう?」

 なぜかリリー口調で、ボクに子どもを作ろうというユーリ。

「なんでリリー口調なの?」

 ボクが訪ねると

「私がユーリだとカグラさんが恥ずかしいですから」

 そう言ってボクと神楽の手を掴む。


「カグラさんのコノエ家の継承にはカグラさんが赤ちゃんを産むか、ホーリーウッドから養子をとるように言われていますが、その赤ちゃんを、今から作りましょう。」

 ちょっと危険な感じがするけれど大丈夫かな?

 ユーリ(リリー)の目に何か狂気染みたものすら感じる。


「ユーリは何を言いたいの?」

 ボクはわからなくて聞き返す。

 神楽も完全に考えが追い付かない状態の様だ。


「アイラちゃんが生んだ赤ちゃんをカグラさんの養子にするんです。その子はアキラさんが生んだカグラさんの子です。その子がいつか大きくなったとき、それは間違いなく二人の愛の結晶ですから。」

 それを伝えるためにわざわざリリーとして言葉を紡いだユーリは、神楽の手を握っていた左手で神楽の肉付きの薄いおなかとユーリ自身の筋肉が付いたお腹を順に撫でる。


「ひゃ!?リリーさん?」

 神楽は急にお腹を撫でられて驚いているけれど、恥ずかしいとかでは無さそうだ。

「カグラさんも私も、自分のお腹では赤ちゃんを産めませんが、それでも好きな人の赤ちゃんを育てることができる。私は最近ようやく、リリーである自分との区切りをつけることが出来て、今までももちろん可愛い娘だったんですが、どこか『ユーリが愛したアイラの子ども』として遠く見えていたアマリリスのことが前より益々かわいく思えきました。アイラちゃんから生まれる子どもは間違いなくあなた自身の愛したアキラさんの子どもです。だからリリのこともあんなに自分の娘の様に可愛がってくれるんですよね?」

 ユーリがそんな風に考えていたことにボクは気づいていなかった。


 ボクが暁の意識を持って生きていて、それでもアイラとして生きようとして来た様にユーリも時にはリリーとしての意識でボクを見たり感じて生きてきたのだろう。

 リリーにだって好きな人くらい居たのかもしれない

 

「リリーさん、いいえユーリさん、無理はしないでください、アイラさんのことを好きな今の貴方は間違いなくユーリさんです。私のためにそこまで自分のことを曲げなくていいんです。それにアイラさんが好きなユーリさんはやっぱりユーリさんなんですから。ありがとうございます。アイラさんを好きでいてくれて」

 そう言って神楽はユーリの手を取った。

 そして・・・

「それじゃカグラ、今から二人がかりでアイラを・・・」

(おや?)

「はい!ユーリさん、二人でアイラさんを可愛がりましょう!」


「え゛・・・?そうなるの!?」

 ユーリに片手を捕まれたままでいたボクは逃げ道がなかった。

 そのあとめちゃくちゃ可愛がられた。



 翌日、エドワード様やアイリスを迎えるというのに、ボクは朝にはへとへとで立つこともままならず、朝から神楽とユーリに介助されて入浴した。

 そこでまた良いように可愛がられてのぼせてしまい、結局戦中の魔法の使いすぎの疲労から体調を崩した事にしてお迎えをサボることになった。



 その後無事にヴェル様の葬儀も終わり、次期国王をサリィにするとジークが発表した。

 さらにその後ボクたちの結婚式の話になった。

 妊娠していたため、戦中のためだと言い訳してほとんど顔見せだけみたいなものだったホーリーウッドでの式の話を聞いたジークが急遽クラウディアでの結婚式典をプレゼントすると言い出したのだ。


 しかし、ホーリーウッド市でもボクとアイリスの誕生日である10月36日に再度結婚式をやる予定であったので、すでに準備が始まっていた。

 そこで一度ホーリーウッドに戻り式を挙げてから主役のボクたちと侯爵家の人間だけ神楽が運ぶことになった。

 戦中とちがうので大きな盾で、フローレンス様も十数年振りにクラウディアに入り、クラウディアでは、ユーリとボク、アイリス、クレア、アイビス、シャオ、エッラ、神楽の結婚式とシシィ、シトリンとの婚約も行われた。

 さらに、二王子と二姫の結婚式も行われて

 同時に、ラピスとヒースの結婚式を挙げることも提案されたが、まだ軍官学校に通うので止めておいた。


 普通は、一般の身分のため正妻でもなければ、式を挙げることが少ないエッラだが、今回の戦で名前が売れているため、いろんな貴族から誘いを受けない様に、式で大々的に宣伝することにした。

 神楽も同じ様な理由で、彼女はユーリとは今後も肉体関係を持たないが、独り身の女性貴族となれば迫ってくる者が出てくるかもということで側室には入ることにした。


 貴族にしたって同時に9人もお嫁さんを迎えて式を挙げるのは珍しく、さらに名だたる身分や戦果を上げた上皆美人な面々なので非常に盛り上った(一部は怨嗟や僻みの声だったが)

 さらに、戦争が始まってから何度か東からの嫌がらせ攻撃にさらされ、民に優しい皇太子と評判だったヴェル様の葬儀に心を痛めていたクラウディアの民は婚儀という明るい話題に喜び、王家から振る舞われた祝い酒かジュースを飲み騒いだ。


 そうして喜ばしいニュースで区切られたことで、彼らにとっての戦争は終わりを迎えて、王国は、連邦の新しい時代へと歩み始めたのだ。



 それから半月後エドワードおじい様やフローレンスおばあ様、ギリアム義父様、サークラやアニスがホーリーウッドに帰っても、軍官学校に備えてボクたち学生組と神楽とクレアはクラウディアに残って生活をしたが、これはボクの二度目の妊娠が確認できたことや、シシィとシトリンと一緒にクラウディア屋敷で暮らすことになったのも関係がある。

 さらに貴族家を持つためにクレアと神楽は軍官学校に籍を置くことになったが、二人はすでに政治と軍務の実務経験も有るため在学は来年度一年のみで爵位を認めてもらえる予定だ。


 結局戦死した教官の補充等で予定より少し遅れて、7月25日から授業が再開されたお陰で、ボクは7月12日に13才にして二度目の出産を終えてから僅か約2週間後、3年生に復学した。

やはり妄想と、人様に見ていただくというのは違うな、と表現の難しさを噛み締めています。

失敗したなあと思うことも多いです。

結局神楽はリリの弟妹は生まない様です

今から最初から書き直したいと思いたくなる様な部分も多いですが、やっと13才を過ぎたのでしばらく駆け足になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ