第136話:連邦構想
こんにちは、アイラです。
1年2か月に及んだ戦争が、ひとまず終結しました。
サテュロス大陸における国境というものがイシュタルトードライラント間のものだけとなり、それももうじき意味のないものとなります。
幾つかの婚姻同盟と、かねてからのホーリーウッドの独立と連邦化・・・セルディオの処罰をひとまず棚上げして大陸の情勢を安定化させるための会議がクラウディアで行われている。
セルディオの処罰については意見が割れてしまったのだ。
ユーリとボクの間で・・・
オケアノス陥落後すぐにセルディオと、本当は動かしたくなかったけれどアクアとテティスもクラウディアに護送してきた。
幸い安定期に入っているため何事もなくクラウディアには着けたけれど神経を使う旅だった。
セルディオは魔封じ型牢獄にてジークが預り、アクアとテティスはホーリーウッド家のクラウディア屋敷内でひとまず預かることになった。
クラウディア城についてすぐ、ジークとユーリとボク、それからアレク様とルビー様、サフィ様にアイビス、それからドライラントの第一王子、キス族?のゴリュン・バーナード・スフィンクス殿下とでセルディオの処分を取り決める会議をおこなったのだが
アレク様とゴリュン殿下、そしてユーリは処刑派に、女性側は助命派になった。
ボクはユーリが処刑派に回ったことが信じられずかなり噛みついたし、二人の間になんとも言いがたい軋轢が生じかけていたので、ジークが声を大きくして、フローリアン様とハルベルト、リントハイム二王子が到着するまで棚上げすると言い、今は今後の運営について先に話し合っている。
内容的にはかねてよりあったイシュタルトの連邦化計画にドライラントも噛ませる様になった。
ホーリーウッドは旧ルクス帝国領の南側七割方と旧スザク領の西側3割ほど、そして王家直轄領であるザクセンフィールドを割譲されて独立、ホーリーウッド王国となる運びとなった。
大陸の、実に1/3をホーリーウッドの領土としてしまった。
北部はかねてより話し合い通りの配分でペイロードが中心となり、南部はスザク家が実質壊滅しているため戦中もギリアム様と共に内務を捌いていてその善性で有名であるスワンレイク家が主導となり、アイビスが成人するまで旧ミナカタと残りのスザク領を世話することになった。
東部についてはオケアノス市までは王家の直轄地となりオケアノス市の城主にはハルベルト王子がつくことになった。
さらにオケアノス以東の土地、旧オケアノスの12%の土地をドライラントに割譲することを申し出たところ、ドライラントは今のイシュタルトで国を名乗れるほどの規模ではないと、自ら申し出てドライラントを解体しキス族、シャ族、グ族を中心とした自治領に規模を縮小したいと申し出て、ヴェンシン派の強かった地域をイシュタルトに受け渡すと申し出たため、旧ドライラントのシャ族からスフィンクス家、ショート家、キス族からバーナード家、レトレーバ家、グ族からシウ族、アンティラ族、サテュロス族、合計七つの子爵家を造り、旧ドライラントの王家にあたる家にはトライブ侯爵家を名乗らせる様にした。
またこの会議中にわかったことがあり、トリエラの父親が30年ちょっと前に 行方を眩ましたままのレトレーバ家の元嫡男の可能性が高いことがわかった。
ゴリュン殿下(もうじき王族ではなくなるが、調印までは殿下だ)はトリエラの来歴を気に入り、家臣として誘いをかけたが「マスターがおりますので」と断ると「それは失礼なことをした」と気分を害するでもなく理解を示した。
キス族の一途な性質はわかってくれる様だ。
話が反れたが、国割りを話した後は婚姻の話になった。
男が中心となるのでそれごとに話そう。
まずゴリュン殿下にヴェル様の遺したグレゴリオを除く二人の庶子の一人エミリー14才を引き会わせて見たところ、エミリーはゴリュン19才の筋肉がお気に召したらしく好印象、ゴリュンの方はドライラント内の部族会議で認められるならば是非正室にしたいと乗り気の様であった。
エミリーはライトブラウンの髪を腰まで丁寧に伸ばしているが、癖が強いらしく先端部付近で結んでいてもなお毛先が大きく跳ねている。
体つきは普通だし顔はなんとなく垢抜けないけれど、恋をすればきれいになるタイプだと思う。
素朴で可愛い。
ハルベルトにはそもそも正妻としてキャロルがいて、娘のソフィアリーナもいるが、彼の元にゴリュン殿下の三人いる妹のうち異母妹で長女のステファン・バーナード・ホルタ(シウ族の母を持ち小さな角のあるムッチリ巨乳の美人17才)を側室として輿入れする見込みになった。
会わせてみないとわからないけれどね
次にリントハイムに次女のフェニア・バーナード・ムース(細身で大人しい性格の短いしっぽがかわいい14才)リントハイムは未婚者だと伝えたが側室でも正室でも構わないとのことだが、何となくリントの好みな気がしている。
最期にユーリだが・・・ゴリュン殿下の同母妹のシャオユウ・バーナード・スフィンクス(ボクの一年度下の12才で小柄だけども気が強い女の子でネコミミシッポ)を押し付けられた。
「ユーリ様の嫁御のアイラ様と比べると美しさも可愛げも薄い妹だ。食指が動かなければ手をつけてくれなくともよいが、私にとっては可愛い妹故、できれば幸せにしてやって欲しい。」
と言うことでとりあえずしばらくは屋敷で寝泊まりしてもらい人柄を見ることになった。
これでボク以外の政略結婚枠がクレアリグル、セシリア、アイビス、シトリン、に続いて五人目
ボクが、またはボクと一緒に居たいからと側室入りをするか、または見込んでいるのがアイリス、ナディア、エッラ、トリエラ・・・神楽と五人
ここにさらに密約のあるサリィがいる。
ユーリの体は持つのだろうか?
それからフローリアン様と王子たちも到着し顔合わせをしたがどちらの組み合わせもまんざらでは無さそうであって、最期にセルディオの話に戻った。
この三人はヴェル様を失っている。
セルディオの助命どころかテティスの処罰すら望むかも・・・と思っていたが、とんだ失礼であった様だ。
意外なことに三人ともがセルディオの助命に回った。
フローリアン様曰く、「あの人が亡くなったのは戦争の中のこと、すでに戦争は事実上終結し、あとは調印するだけ、ならばセルディオは権力を喪いまたこれから権力を持つことができないただのおっさんよ、殺しても殺さなくても私たちはなにもかも変わらないけれど、アクアさんとテティスちゃんは確実に悲しい思いをするわね、それを私は望まないわ」
強い言葉でフローリアン様が助命を願い出ると二王子もそれに従った。
セルディオはクラウディアで、アクアとテティスはホーリーウッドで預かることとなった。
ホーリーウッドというか、ユーリがだ。
全員の意見が出揃ったところでジークが裁量を下したのだ。
「それではとくに強くセルディオの処罰を望んだユーリにアクアとテティスの世話を命じる。セルディオは余が預かるが、働かざる者くうべからずの理念でゆく、此度の戦の責任は働いて果たさせるとしよう、無論権力も権限もないがたまにはアクアたちと会える様に取り計らおう。」
ジークが決めればさすがに逆らえる者もなく、セルディオたちの処罰は決まった。
国割りに、セルディオや北部で暫定的に決めていたペイルゼンの仕置きについても承認を得る。南部の人事や将来的な道筋も定まり残る細かい取り決めはジークとアレク様、ゴリュン殿下に任せるとしたうえで調印しイシュタルト、ホーリーウッド、ペイロード、スザク、ドライラント改めトライブの調印により、ここに有史以来初となるサテュロス大陸統一連邦が発足した。
加えて、来年度の夏6月より軍官学校を再開しそれに備えて在校生を呼び戻すことと、再来年からもまた新入生を受け入れることが決まった。
さしあたってシャオユウとフェニアは再来年の一年生になる予定だ。
屋敷に帰った後シャオユウに部屋を割り当ててから、ユーリはボクの部屋にやって来た。
部屋に入るとトリエラに外す様に命じるユーリ。
「なにかな?」
セルディオの処刑派に回ったことをボクはまだ少し納得していない、そりゃあ結果としてセルディオは助命されたし、アクアたちの面倒をホーリーウッドでみられる様になったけど、少しわだかまっている 。
「アイラ・・・ありがとう、僕とアクアたちのためにセルディオの助命を願い出てくれたんだよね?ありがとう」
ユーリはボクの不機嫌を別段気にした風でもなくボクの座ったベッドの隣に座る。
「ユーリは、セルディオが処刑されなくて残念だったね。」
こんな嫌な子になるつもりはなかったのだけれど、ボクの不機嫌など意に介さないユーリの態度に腹をたててついイヤミったらしい言葉が出る。
ユーリは特にイヤな顔をすることもなく事も無げに答える。
「ホーリーウッドは今回のことで一度イシュタルトから外れて、その上で連邦国となった。ホーリーウッドの代表として出席した僕たちが両手を挙げてセルディオの助命を願えば、それはイシュタルト王家に抗ったことを微塵も悪いことだと思っていないともとられかねない、だけど二人とも処刑派だとなにかあったときせっかく助命した人質を殺すかもしれない。」
「ユーリ!それは!!」
あんまりな物言いではないか
突然淡々とした口調でアクアとテティスのことを人質呼ばわりするユーリに対してつい口調が荒くなる
「聴いてよアイラ」
ユーリは握り込んだボクの手の甲にその掌をのせて優しく言い聞かせる様に言う。
「ジークと先に話し合っていたんだ。アイラがきっと助命に回るから僕は処断派に回るって、そうやって示すことでゴリュンやアレク様にも文句を言わせず、アクアとテティスもうちで面倒を見られる。君が本気で僕と言い合ってくれたからスムーズに事が運んだし、ちゃんとお互いに意見をぶつけ合う事もあると示すことも出来た。落とし所は決めてたんだよ」
つまりセルディオの処罰は出来レースだったわけだ。
連邦化するに当たって、常識的な範囲で話し合いで決めることをゴリュンに示すために争って見せたに過ぎないわけだ。
「それならはじめからボクに教えてくれてもいいじゃない」
最初からセルディオは助かるのが決まっていたと聞いてもまだ少し機嫌が収まらないでユーリの秘密主義に文句を言うと
「アイラは分かりやすいところがあるから、貴族相手に演技はできないよ?」
「むぅ・・・」
それは確かに無理だ。
何せボクは元が田舎育ちなのだから、海千山千の貴族を騙せる演技なんてできそうにない。
これ以上言い返せる事がなくなり、ボクが悔しくも無言になっていると
コンコン、と短くドアがノックされた。
現在登場した名前のある人の中で悪いことした人の生きのこりは王国内はグレゴリオとアントニオとコルティス、帝国ではエヴィアン、ガリク、ジンジャーくらいのはずですが今後本編登場の予定はないので忘れてください(死んだと書かれていませんがポピラー元男爵、ダニエル、ゲゼル元男爵は死にました。)
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キャラ名などを管理しきれておらず、ミスを多発させており申し訳ありません、現在キャラ名や家族設定やら年齢の帳尻を合わせるため表を作成中です。
表ができたら本編の方にも修正を入れる予定なのでしばらくお待ちください。