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第127話:英雄

 こんにちは、暁改めアイラです。

 ペイルゼン領で、現在平和裏に王国の占領地となり前線指令部となっていたカナイマ市がペイルゼン兵の襲撃を受けていた。

 ペイルゼン兵は建物を少し破壊、すでにそのアシガルという兵装の圧倒的な力で、カナイマの北半分を制圧しつつあった。

 到着したばかりのボクたちと敵アシガル部隊長エイム氏はカナイマ市と兵士たちへの被害を抑えるため、一騎討ちを行うことになった。



「エイムさん、一騎討ちに乗ってくれてありがとうございます。」

 カナイマから出てすぐ西側、森が見える平原で、恐らく延焼避けのために間に人工的に作られた感じのする池がある。

 一騎討ちの場についてすぐにユーリはまず礼をのべた。


「いや、こちらこそカナイマを余り破壊したくなかったのでな、渡りに船という奴だよ、それにお互い命をとるつもりはないのだろう?甘いかもしれんがそんな戦争のほうが、戦後も仲良くできそうではないか?」

 もう戦後の事を考えている?一指揮官が?

 死なせない方が良さそうだね?なんかお偉いさんとツテとかありそうだ。

「エイムさん、今治癒術士を呼び出してるので、少し待ってくださいね!」

 ボクは上空の神楽たちに合図の光を送って、みんなは2分程で降りてきた。


「アイラさん参りましたが、どんな状況ですか?これは。」

 そういって神楽も他のみんなも周りを見る。

 そうだよね?いきなり「空を飛んできたのか!?」「イシュタルトはあんな魔法道具を開発したのか!?」「メイドがいっぱい!?」なんてざわつくごつい鎧を着けた兵士たちに囲まれたら怖いよね。

「あーだうー」

 なんていって神楽に抱かれたリリは、隣に立つナディアのおっぱいを触わろうとしててごきげんだけどさ


「赤子!?戦災孤児か・・・?」

 ボクたちの誰かの子どもという選択肢はないらしい。

「あ、いいえ、うちの子ですよ。ボクがおかーさんで」

 までで止めると空気を読んでユーリが続ける

「僕がおとーさんです」

 そういって微笑む。


 赤茶鎧の兵隊たちがざわつく。

 微笑むとユーリは美人が際立つからね

「その若さで子どもがいるのにも驚いたが、何故戦場に赤子連れなのか尋ねて良いものかな?」

 うん、赤ちゃんを戦場つれ回してはあちらこちらへ渡るのはやはり客観的に良くないよね。

 ユーリと頷きあう。


「この赤ちゃんが魔法が使えてですね、ボクと彼が居ないと跳んで行っちゃうんですよ?」

 我ながら何を言ってるのかという感じ

「飛ぶ?その赤子は既に飛行魔法が使えるのか!?」

 明らかに驚いているねでも違うのですよ

 ザワツク兵士たちには悪いけどね?


「ええと、飛行魔法ではなくてですね・・・ウーン、見せますね。ボクを見てください。」

 十分に視線が集まったのがわかる。

 ボクは視線を引き付けたままカナイマ側にいる兵士たちの中へ、そう言えばさっき倒した兵士そのままだね。

 拾ってこよう、捕虜にしたのに殺されたり逃げられたりしたら感じ悪いしね。


 兵士たちの中から跳躍で最初に降り立った場所へ移動した。

 倒れたまま一人放置されている兵士のもとへ。

 まださっきと変わらないところにいたね、なんかかわいそうだ。

「えっとさっきのガキです。誰にも運んでもらえなかったんですね?」

 そういって声をかけると

「な、ガキ扱いしたこと根にもってやっぱり殺しに来たのか!?た、隊長!隊長!助けてください!!」

 そういって騒ぎ出した。


「殺すならさっき倒した時に止めを刺してますから、ただ置いてきぼりでかわいそうだなってのと、せっかく捕虜にしたのに殺されたり逃げられたりは面白くないから、拾いにきただけですよ」

 そういって背中に触り彼も跳躍する仲間にして、今度はエイム氏の近くに跳躍する。


 暗転が終わると目の前に黒鎧の背中、いい具合に後ろに回れた様だ。

「エイムさん、この人どこに置いときますか?」

 何の気なしに声をかけただけだったが、エイムさんは尋常ではないほどに狼狽した。


「うひろ!?」

 噛んだね。

 部下たちの前だというのに申し訳ない。

「隊長!来てくれたんですね!助けてくださいこのガキに殺される!!」

「後ろに回り込んだのか!?それにフリッツは先程の広場に置いてきたのに、どうやってその細腕で運んだ!?兵士たちが少女が消えたと騒ぎ始めてまだ十数秒しかたっていないというのに!!」

 明らかに驚いているね

 フリッツは軽く無視されていてかわいそうだけど、やさしいトリエラが空気を読まずに治癒術をかけによってくる。

 呼ばれたのは彼の治癒が目的だと思ったかな?

 まだ一騎討ちとか伝えてないしね

 これでボクの力はわかっただろう・・・あれ?なんか目的が変わった気がする?


「・・・あ、これが跳躍です。物理的隔たりを無視して移動する術ですね、多少制約もありますがリリはこれを受け継いで居るんです。」

 そういうと兵たちは軽くザワツク程度であったが、エイムさんは絶望的な声をあげている。

 どうしたのかな?


「なんたる!なんたることか!これでは我々ペイルゼンは道化ではないか!?」

 地面を叩き始めるエイムさん、近くに横たわるフリッツはまだケガが治ってないので振動に悲鳴をあげている。

「いてぇよぉ!殺すなら一思いに殺りやがれ!隊長!かならず仇をとってください!!」


 暫く地面を殴っていたエイムさんはやがて落着きを取り戻した。

「一騎討ちは、取り止めだ・・・我々中隊はイシュタルト軍に降伏する、部下たちの命を保証してほしい・・・」


 おや?意外な申し出だね?

 ちょっと都合よくて不安になるよ?

 敵とはいえ、兵たちも不安がってるよ?


「どう言うことでしょうか?僕との一騎討ちとアイラ、妻の強さに関係があるでしょうか?」

 ユーリが!ユーリが妻だって!何だかジーンとするね?

 対外的な相手との会話は少ないからだいたいいつもアイラと呼ばれる、稀にホーリーウッドまで言われるのも照れるけれど、妻と呼ばれるのはこんなにも感極まる物だったとは・・・


(おっと・・・ついつい気持ちがそれてしまった)

「我々ペイルゼンの最強戦力と私との間の戦力差はそう大きなものではない・・・私が反応できない程の移動手段と、複製品とはいえアシガル装備を一撃で無力化できる様な存在が!こんな少女がいるというのに今私が無事なのは、イシュタルト側あるいはこの少女の気まぐれか同情によるものだ。」

「隊長・・・?なにいってるんですか隊長!隊長の、ホンモノのアシガル装備ならば!」

 治療は始まっている様だけれど、フリッツ君がなにかいい始めた。

(せっかくいい感じにまとまり始めたのに・・・)


「いいや、もう無理だ。我々はいつでも暗殺される可能性すらある、そんな中王や王族という弱点を抱えた我等ペイルゼンがまだ継戦中なのは、暗殺して混乱の中国を簒奪するのではなく、もっと安定した統治を目指しているということだろう・・・帝国や、恐らくミナカタでも、イシュタルトは民を安んじているという。問題なければ目的を教えてくれないか?」

 別に問題はないよね?笑われるかもしれないけれど

 ユーリに目くばせする


「そうですね、僕たちホーリーウッドとイシュタルト王家とルクセンティアの共通の目的は人種も、民族の区別もない、国境もない、そんなサテュロス大陸です」

 どうだろう!うちの旦那様ちょっと誇らしげに、それでいて夢に溢れた表情である。

 これを笑う奴はいまい


「プハハお前なにいってんだよギャー!!」

 フリッツとか言う阿呆がなにかいいかけていたので軽く光弾を当てておく。


「そうだ、その魔法も恐ろしい・・・こちらの実験では複製アシガル装備でも、魔法ダメージを中級魔法までならほとんど無効化できていたのだ、それがいとも簡単に倒されしかも無詠唱だ。」

 光弾が通るのは多分この世界のものではないからだろう。

 だとしたらあの装備には魔封じ的な効果があるのかな?

 それか強い抵抗・・・


「やはり私は投降するほかない様だ。」

 言いながら、エイム氏はフルフェイスのヘルムを外す・・・すると意外と若い24,5歳くらいの男性が顔を出した。

 しかもイケメンだ。

(落ち着いてるし声が渋めだから40くらいを想像してたけれど・・・)

 雰囲気もあるしもしかすると貴族の次男とかか?


「いままで顔を隠していて申し訳ない、私はアイムザット・コルネス・ペイルゼン、現ペイルゼン王の第二王子です。若き英雄夫婦に降伏いたします。」

 剣とヘルムを地面に置きエイム氏、アイムザット王子は、ゆっくりと膝をついた。



最近は休みの日にお出かけする元気がありません、趣味の妄想しながらのお散歩が・・・

更新もペースが落ちているのに1話当りの文字数も少なくて申し訳ありません。

早くリリを喃語でも喋れる様な年齢にしたいです・・・


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