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第6話:亀島

アイラは5才8ヶ月現在身長105cm約14kgです

双子の為か小柄です


 こんにちは暁改めアイラです

イルタマ(ジャガイモに似た植物)の収穫も終わり

ウェリントンでは寒冷季に入る前の最後のイベントの準備が進んでいます。

 芋と日持ちのしない食物をごった煮してみんなでわいわい食べるだけのシンプルなお祭りですが、コレが終わるともう来年の春までなにもお祭りがないので、みんな楽しみにしています。



 子どもたちは自分たちでできる手伝いをしていて

まだ小さな子ども扱いのボクやアイリス アニス、ソラの世話を体が少し弱いリルル、狩りの役に立たないオルセー、狩りに参加しないノラとケイトに任せて、他のほとんどの子どもは薪拾いや野うさぎ狩り。

サークラやエッラは干し肉作りなど保存食づくりやその日の食事作りの手伝いに勤しんでいた


教会のいつもの部屋で勉強の時間アイリスとボクは向かい合って

リルルとオルセーは隣り合って机について勉強していて

ノラとケイトは2人アニスとソラの近くで本を読んでいる。

部屋の中は静かなものだが、ときどき「・・・こほこほっ」とリルルの咳が聞こえる。


リルルは体が弱い子で

ときどき熱を出して苦しい思いをしているし、たとえば夏の川遊びの時などは一緒にはしゃぐことも出来ず悔しい思いをすることが多いが、持ち前の健気さと柔和な笑みで周りを和やかにしてくれる子だ


「あーだめだー、あきてきたー!!」

一方のオルセーは元気だがアホ可愛い女の子で、リルルと仲が良い、狩りについていかなかったので

今日はリルルについている日なのだろう

 

 仮に、ついていくと言っても騒いで邪魔になるので置いていかれることの方が多いのだが

ともあれ彼女が飽きたといった以上もう勉強タイムは終わりだろう

自習開始から12分ほど・・・まあよく持った方だ


「ねーねーリルルー!なにして遊ぼーかー?」

 と早くも遊びモード、しかもリルルも当然付き合う前提の様だ

「ごめんねオルセーちゃん、このページまでやりたいからもう少し待っててね」

 残念ながら振られたオルセーは次にこちらにくる


「ねーえ!アイラ、アイリス、外で影踏みでもしない?」

 すっかりお姉さんになったアイリスは真面目な良い子でボクはアイリスに勉強を教えているところだ、残念だが・・・・

「わたしもう少しおべんきょうー」

「ごめんねオルセー、ボク今アイリスに算術を教えないとだから」


「ちぇー、双子はマジメだなー」

「暇ならアニスたちを構ってあげてよ」

アニスたちは低い柵におおわれたスペースで ケイトに読書の片手間に遊ばれている

「むーチビたちは相手してもいいけどつまらないからなるべく早くねー?」


10分後


「アハハハハハハハ!ケイト!ソラにイヤってされてやんの!おっかしーアハハハハ!!」

「・・・オルセーうっさい」

「痛っ!つねることないじゃん!!」

「人を笑っていいのは、報復を覚悟したものだけ」


オルセーがたまにうざいのはわかるから仕方がないけど小さい子どもの前で暴力は良くないな、ていうかオルセー超涙目なんだけどそんなに強くつねったのだろうか

「ケイト、オルセーがうざいのはわかるけどアニスの前でケンカはやめて欲しいな」

あれ?伏せるところを間違えたかな?


「ガーン!」

オルセーは口でガーンとか言ってるし平気か、涙目だけど

すると本を読んでいたノラがオルセーを慰める様に肩をトントンたたいてやっている

ノラは優しい娘である、オルセーも潤んだ瞳でノラの方をみている、まるで天使でも見つけた様だ。

しかしながら悲しい現実がすぐにオルセーを責める


「オルセーが鬱陶しいのは仕方がないけど、ソラがオルセー以外でも叩いて解決する様な子になっては困るわ。もう少し離れてやってくれない」

「ノラまで!?」

憐れオルセーは孤軍である、しかしそんな情況でもめげないオルセーはアホの子かわいい


「よし仕方ないから一足先に外に出てるね!みんなもやること終わったら外で遊ぼー」

と、元気に出ていってしまった。


 さらに15分後

 とりあえず今日の分は終わったので

 ボク、アイリス、アニス、リルルにケイトはオルセーを追いかけて外で遊ぶことにした。

 なおノラはソラと一緒にお留守番である。


 教会の庭に出て中庭を見回すが中庭にオルセーの姿はない

「オルセー?」

 ケイトが犬でも呼ぶ様な投げやりさでオルセーを呼ぶ

 続けてリルルが

「オルセーちゃーん、もう遊べるよー」

 と声をかけるが反応がない

 なにか胸騒ぎがする


「オルセー!!」

 ボクは大きな声でオルセーの名前を呼ぶと森の方からオルセーの声が聞こえた気がする

「オルセー!」

「きこえてるよー」


 返事が聞こえてから1分ほどたってオルセーが姿を見せたが様子がおかしい

「オルセーちゃん!肩から血が!!」

リルルが悲鳴にも似た声をあげる


「んーちょっと引っかけたみたいでさ・・・アンナに手当てして貰ってくるね」

ケガが痛いのかオルセーは元気がない

余り深いキズでは無さそうだけれど肩と膝から血が出ている。

「私、付き添おうか?」

と、仲の良いリルルがオルセーに肩を貸してやって

 教会分の土地で農作業中のシスターアンナのところへ連れていった


 ボクたちは外で走って遊ぶという空気でもなくなったので

オルセーが元気になれる様に花の輪を作るのだった


その後手当てをすませたオルセーとリルルが戻ってきたので、中庭でノラとソラも交えて日向ぼっこをした。

オルセーは楽しそうにしていたがなにか無理をしている風で・・・・

オルセーの様子が気になったボクは念のためどこで肩をひっかけたかを尋ね調べてみることにした。


田舎での代わり映えの少ない生活に笑いという心の栄養剤をくれるアホの子オルセー

いつもなら捻挫くらいなら平然としているのに。

不安を覚えたボクは原因を探ることにして2日後の朝トーレスと共に森に入った。


「兄さんも狩りでお疲れでしょうに、お付き合い頂いて申し訳ありません」

「いや、いいよ、オルセーが元気ないのは確かに落ち着かないし。そろそろこの当たりの道も枝とか切らないとだしね」


オルセーは翌日になっても元気にはならなかった

傷口からバイ菌でも入ったのか朝から熱を出していて、普段元気な彼女が仲良しのリルルに心配かけまいと笑顔を作っているのを見るのは少し痛々しかった。


「オルセーの具合はかなり悪い様でした、もしかしたら魔物化した植物や、動物の毒を受けたのかもしれません」

「毒、というのは言い過ぎかも知れないが、この森の奥にはエントもいるからな。道まで出てきていたら・・・」

エントというのは樹人に似た植物の魔物で枯れ木の様な見た目の陰湿な魔物だ。

なるほど、オルセーのかかった症状は、宿り木型や苗床型のエントの症状に似ている。

精気を損ない徐々に弱り、やがては・・・ オルセーのそんな姿は見たくないので一刻も早く原因を掴みたい

まずはエントの可能性を潰そう・・・。


 オルセーが言っていたあまり奥地ではないウサギとカメがとれる区画にきた

村からはゆっくり歩いて3分もかからない位置で強い魔物もほとんど寄り付かず安全な森である、普段であればだが


「・・・兄さん。」

「いるね。」

短く言葉を交わす、ボクたちの視界はまだなにも見つけてはいない

けれど確かに死を呼ぶ気配を感じているのだ。

周りに注意を向けながら少しずつ進む、ボクも兄も武器を手にとりなが

《ドギャッバキバキバキィー》

「ひっ・・・」

 周りに気をやっていたが突然の大きな音に小さく悲鳴をあげてしまった・・・女の子みたいに

一瞬トーレスが良いものを見たとばかりににやけ顔を浮かべる。ジロとにらむと気を取り直した様で緊張した面持ちに戻る。


「今の・・・カメ島の方だね」

ボクは払暁を、トーレスは鉄剣を握り、音のした方へ近づいてみることにした。


カメ島は名前の通りカメがたくさんいる島で森の中にいくつかある湧水ポイントの特に集中している場所が湖になっていて

その東の岸に近いところの小さな島にたくさんのカメが日干ししているのだが


 様子を探るとカメはほとんど逃げてしまったのか島は寂しい感じだが

 その手前にエントがいた様だ

 いた様だというのはすでに生き絶えていているからである

 どうやら先程の破砕音はこのエントの出したものらしい

 そして今しがたこのエントに音を出させたものがその場で気配を探っているのか木々を見やっている

 そいつは木の1本に狙いを定めると尻尾で1撃・・・

《バキャン》と音を立ててその木は折れたが、その後になってもがき出し10秒ほどで動かなくなった。

どうやらその木もエントだった様だ。

その後もしばらく周りを見渡していたそいつの前では逃げることもできず

ボクたちは息を潜め続けていた

そしてその鳶色の眼がボクたちを捉えるまで5秒もかからなかった

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」

突然奇声をあげたトーレスが、ボクから離れていく。

村とは逆の方向・・・これはボクを逃がそうとしているのか!?

ボクとしてはそんな犠牲は望まない、そんな犠牲の上に生き残ってもボクは後悔に苛まれて生きていくことになる、だからボクは戦う覚悟を決めた。


 たとえ相手が全長9mはあろう龍であろうともだ。

 こちらにきてから図鑑(かなり高価らしい)でワイバーンの図は見たことがあるが

 せいぜい縦3m弱翼を広げても幅6mあるくらいらしいが、眼の前のそれは 翼を広げれば14〜5mはありそうだ

 龍は別にトーレスを追いかけることはせず観察するにとどめている。

 だとしても先程の攻撃の鋭さを見る限り油断はできない

 すると竜がなにやら光を放ち始めた、魔法攻撃ができるのかも知れない・・・。


 もはや、一刻の猶予もなかった。

 ボクは払暁に気を込め構え、生まれ変わってから今まで使うことのなかった北条流の奥義の一つ

「加速」を解放した

 幼いアイラの体では負担が大きい為控えてきたが、瞬間的に竜に打ちかかる。

《キン!》

 それまでこちらを向いてすらいなかった竜が尻尾で刀身を受け流す。

(受け流す!?)

 竜は見ていなかったはずのボクの一撃に反応したばかりか

 受けるでも力で弾くでもなく受け流してみせた。

 (偶然か・・・?)

「アイラ!なんで逃げてくれなかった。お前だけでも逃げてくれれば犬死にならなかったのに!!」

 トーレスは逃げるのをやめて剣を構えた

 二人がかりで打ちかかるとやつは防ぐばかりでたまに光を放つが、すぐに打ちかかると光は収まる

 どうも溜めの必要な技の様だ

「アイラ!どうもやつは2人相手はなれてない様だ、二人で隙をみて逃げよう、生き残るぞ」

 トーレスも気がついた様だ

「はい!兄さん!!」

 しかし妙だな、先程エントを葬った尻尾の一撃でもボクらを簡単に殺せる。

(こいつはなぜあの光る技にこだわるのだろうか・・・? まあいい、今は目の前の脅威を討つ!!)

 相手が何度目かの光を放った刹那必殺の一撃を放つ

 加速量は足りていないが、今のアイラにできる最速最大の一撃

(絶影!!)

 瞬間的に3倍程の加速状態になり全ての音も景色も置き去りにして 代わりに速度も体重も全てを乗せた斬撃を龍の頭部に目掛けて・・・光沢のあるピンクブロンドが視界をよぎる

 慌てて腕を止めようとするが間に合わない・・・

 目の前に、龍とボクの間に、最愛の妹(アニス)が割って入った


《ズブッ》

 肉に刃が食い込む嫌な感覚・・・朱鷺見台で何度も経験してきた生き物を斬る感覚を6年振りに味わう。

 違うか、生まれてから6年弱はじめて味わう。

 結果から言えばボクの放った一撃は大切な妹を傷つけることはなかった

 刃を受けようとしたのか龍が繰り出した右腕がボクの一撃により半ばまで切断されている・・・

 この一撃でも完全な切断に至らないなんて・・・いや今はそれよりも

「何でここにいるの!?」

「アニス!!」

トーレスが慌ててアニスを保護するために走り

 ボクはこの機に龍の腕を切断しようと走る

「おねーちゃんだめぇ」

 アニスが舌足らずながらも制止の声を出す

 ビタリと動きを止めると

 一瞬間があってから再び竜が光を放ち始める

 万一に備えて警戒する、もう加速もできないのでどっちにしろ間に合わない。

 アニスは龍の前でこちらに向かって両腕を拡げている


「アニスーあんまりはなれないでよーはぐれたらおねえちゃん泣いちゃうよー?」

 村の方角からアイリスが走ってくる、お前が泣くんかい!などとは断じて言ってはいけない、泣いちゃうから。

 いけない、一瞬龍から目を離してしまった

 振り向くとソコに龍は居らず、かわりに紫の頭髪に鳶色の瞳をしたかわいい女の子が右腕を押さえてたっていた。

 年頃は11才位だろうか

 右腕は酷い重傷でもう少し深ければ骨は完全に切断されていただろう

「ふぅ助かりましたね」


 一瞬警戒するが、同時に自分がこの子の腕をを半ばまで切断したのだと理解した。

「竜化していると声帯の関係で言葉が話せないので・・・心が通うほど仲が良ければ、念話も可能なのですが」

 自分のしでかしたことに怯えるボクに気づいているのかいないのか

 女の子はぐいぐいよってきて

 アニスの頭に手を置いた

「助かりました、ありがとう」

「おねぇさんこそありがとう、おねぇちゃんたちを傷つけないでくれて」

 ボクも兄も情況についていけないしアイリスはこのお姉さんケガしてる!と慌てている

「私はナタリィ、ナタリィ・デンドロビウム、ドラグーンです」

ナタリィと名乗る少女はケガをしていることを信じさせない微笑みを浮かべた


アイラは暁として生まれもった光弾や火遁術、跳躍術などのは現在使うことができませんが

暁として身に付けた剣術や隠形、武術といった技術は現在も扱うことが出来ます

ただし体が未熟な分弱く、反動もあります

エントと龍が出てきました


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