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第126話:北部戦線

 こんにちは、暁改めアイラです。

 神楽が王国貴族になりました。

 コノエの家名を後世に伝えることができる様になり、神楽は嬉しそうですが、ボクは内心複雑。

 コノエの家名を残すならウチから養子をとるか、神楽が子どもを生まなければならない。

 縁を考えるならボクかクレアが産んだ子どもを養子に出すことになるのかな?

 神楽が知らない人の子を身籠るなんて想像もしたくないからね


 あれから一週間経ち昨日の朝ジークや軍部の人からペイロードの戦況を聞いたボクたちはひとまず、リリもつれたままでの移動をすることにした。

 いつリリが転移するかわからないならボクが近くにいた方が安全だと結論付けされたためだ。


「まったく~リリってば困り者だなぁ」

 なんて口では文句を言うけれど、お陰で戦争中でも親子三人で居られるのだから、戦地に赤子連れでいく後ろめたさよりも娘と良人と居られる喜びが勝ってしまう。

 それがバレてるのか怒られておでこをコツンとされているのに小さなリリは満面の笑顔。


「怒られてるのに、リリご機嫌だね・・・アイラもか」

 呆れた様に笑うけれど、ユーリも娘を抱っこして上機嫌だからひとのこと言えないよ?

「アイラさんもユーリさんもこの1年で随分大人びましたよね?」

 ボクはお母さんになって、身長も138まで伸びた。


(あとは胸がなあ・・・)

 授乳期間で結構腫れているはずなのに強度B止まりなのは少し怖い。

 もしかして一生大きくならないの?

 なんて不安になる。

 ユーリのほうはこのところグイグイ伸びているしね。


 さて現在ボクたちは、ペイルゼンとの前線司令部になっているはずの旧ペイルゼン領カナイマ市に飛んできていた。

 しかし、街の様子がおかしい。

「確かもう三ヶ月程も前線は膠着していて、カナイマから北20km程が前線、って話しだったよね?」

 ユーリが困惑気味に眼下の街並を確認する。


 平和裏に占領されたカナイマは美しい街並を維持したままで王国に下ったという話であったが、街並は今北側で所々から火の手が上がっている状態だった。

「昨日から今までの間になにかあったということでしょうか?」

 今丁度攻められているのはちょっとできすぎだと思うけれど


「僕とアイラとエッラが降下する。他は空中で待機。交戦中の味方を支援し可能ならペイルゼンの兵らを駆逐する。」

 ユーリが珍しく好戦的な指示を出した。

 今のはつまり必要そうなら街中の敵を殲滅し可能そうなら本隊から全て潰滅させるということだよね?


「それでは露払いはエッラめが致しますので、アイラ様、ユーリ様はゆっくりと降りてきてください。」

 言うが早いか、エッラはいつもの通りに風を纏い盾から飛び降りていく。


「リリ、お母さんお仕事してくるから、お利口で待っててね。」

 起きているリリのおでこに短くキスをしてから、降下したエッラを見る

 エッラは長スカートのメイド服に籠手、胸当、脚甲を着けたいつもの装いに、突撃槍と凧型盾を構えてすでに100mばかり降下している。

 エッラを追いかけてボクとユーリも降下する。


「ボクが呼ぶまで降りてこないでね。」

 空の上はほぼ安全だ。

 ワイバーンでも迷いこまない限り、神楽の盾を落とせるモノは多分居ない。

 だから安心して任せていける。


 先に降りたエッラは既に敵兵と槍を交えていた。

 が、様子がおかしい

 エッラが槍を受けられているのがまずおかしい、エッラの剛槍は城壁をも砕く、それが受け止められている。

 そして、相手のいでたち・・・どこかで見たのに似ている。


「アイラ、あの鎧似てるね・・?」

 ユーリがポソリと呟く、似てるのはわかるんだけれど思い出せない。

「なんだたったっけ?見覚えはあるんだけど」


 赤茶色の大きな全身鎧、肉厚の大剣・・・

「ほらグリムで、カグラを監視していた・・・」

 ギエン内務卿の元部下でエヴィアンやゲイズシィ側に付いていたなんとかって大臣の四人組の黒鎧か・・・いたね、確かに似てるかも?

 でもこの赤茶色見渡す限りそこかしこにいる。

 見える範囲に30はいるか?

 もしこいつら全部がエッラの攻撃を受け止めるだけのパワーがあるなら大変に厄介だけれど、まさかね・・・?


「なんだこの女!馬鹿力だぞ!!ぐぼぁ!」

 競り合っていたペイルゼン兵は盾による殴打を受けて吹き飛ばされる。

 見たところパワーファイターでスピードはそうでもないか?


 ボクも近くで王国兵に斬りかかっていた鎧の剣を魔力強化した暁光で受ける。

(重い!)


「大丈夫ですか?」

 これは一般兵には荷が重い!魔法強化がなけりゃ受けられたものじゃない

「・・・・天使様?」

 庇いに入った兵は剣を構えるでも逃げるでもなく呆けた様子でボクを見つめる。


「邪魔くさいからさっさと逃げて!」

 鎧に通常の魔力強化をした払暁で一撃加えるが表面に少し痕がのこる位のダメージしか入らない。

 その間に一応王国兵は逃げ出してくれた。

「この!ガキがぁ!!」

 鎧の男が剣を振り上げるけれどやはり遅い、いやこの重量級の鎧でこれだけ動ける時点でヤバそうだけれど。

 脇が空いたので後ろに回り込む


「コウリンダンウ!!」

 大きい相手との近接にはやはりこれだろう

 そう思い生前から使いなれた技を使う。

 ゴシャ!っと鎧がひしゃげる音がして、鎧の兵は前のめりに倒れる。

 貫通こそしていないが、十分な衝撃が伝わった様だ。

 鎧ごと背骨がいっているっぽいので治癒しなければもう立てないだろう。


(密着の光麟弾兎で貫通しないなんて・・・)

 かなり頑丈でしかも柔らかさもある、その上で軽いか、重さを感じさせない動きができるカラクリがあるということだ。

 さすがにこの鎧を着けた兵士たちの中身が全て南方や帝国の将軍クラスとは考えたくない。


「ギャァァァァッ!!技術課の奴ら何が完全複製だ!何が無敵の鎧だ!普通にやられるじゃねぇか!いてえよ!隊長!助けてください!歩けません!逃げられません!」

 ボクの様な少女にまでやられたことで敵兵たちに動揺が走る


「おい!ヤバいんじゃないか!?」

「一撃で仕留められたぞ!!」


 エッラとユーリと合流しつつボクは叫ぶ。

「無抵抗の者は殺しませんその倒れている彼も捕虜としての扱いは保証します!投降してください。」

 ボクはやはり殺さずに済むならそれがいい、ミナカタでも数十人は命を奪うことになったけれど、4千人程は投降させている。


 そんなボクの願いはまだ叶えられないらしい。

 パン!と短い音がして空に向かって小さな火の玉が飛び、それから赤色の煙を出しながら落ちてくる。

 

 どうも一人だけ黒い鎧を着けた者がなにか合図を出した様で続々と鎧たちが集まってきた。

(一人だけ色と形が違う・・・分かりやすく隊長かな?)

「僕としては投降するための集合だと思いたいな。」

 諦め顔で苦笑するユーリ、その顔は全然そうなると思っていないよね。

 そして案の定。


「イシュタルト王国の誇る勇者殿だろうと思われるが、これだけの数のアシガル部隊を相手にはできまい!!」

 視界には確かに200程の赤茶鎧の兵隊が集まっているが聞き捨てならない事を言ったね?


「今アシガル部隊と言いましたがそれはこの鎧を着けた兵たちのことですか?」

 まさかとは思うけれどナガトさんやタンバさんの例もある、ないとは言い切れない


「知らなかったか、では貴殿らの強さに敬意を表して応えよう、さようであるまぁこれらの鎧こそがアシガル鎧・・・・の複製品だが、私のこの黒鎧は正真正銘本物のアシガル装備よ」

 そんなフルフェイスフルメイルの足軽がいるか!!

 とツッコミたいところだけれど。

 ペイルゼンの技術ではないということかな?


 時間稼ぎはこれらを生産していたからだとして・・・

「隊長さんのお名前は?」

 とりあえず一騎討ちでも挑んで見よう。

「ペイルゼン第三アシガル試験中隊隊長、黒剣のエイムである!」

 知らない人だ。

 まずペイルゼン自体が何年も軍備なんてまともにしてなかったから開戦からすぐに押し込まれてそれから交渉のためにずっと前線が膠着してたのに、それがこのアシガル部隊編成の為だったとしたら少しずるい気もするけれど、まぁとにかく有名な指揮官や将軍はいないのだ。


「ではエイムさん、この部隊に貴方よりも強い人はいないのですか?」

 答えてくれるかな?

「然様、私がこの部隊で最強、またペイルゼンでも五本の指にはいると自負しておる!」


「ではボクと一騎討ちしてみませんか?今のまま戦ってはどちらが勝ってもこの町並みをもっと破壊してしまいますから。町の外の平原で!」

「(アイラ、さすがに危険じゃない?未知の装備だよ?)」

「(そうですよ!アイラ様が負けるとは思いませんがケガでもされたら!)」

 あわててユーリたちがささやく

 けれどもう言っちゃったしね?


「ふん数で勝る我らがまさか一騎打ちに応じるとでも?まぁいいだろう!街を壊したくないというのは我らも思っておった!」

 言ってみるものだ、応じてくれた。

「それではこちらが負けたら勇者のボクが捕虜になります。捕虜の扱いは・・・ちゃんとしてくれますよね?」

 ミナカタの捕虜の扱いはひどいものだったけれど、仮にも正規軍な上開戦まで公式な国交もあったのだから、ちゃんと捕虜を人間として扱ってくれると信じてるよ?


「うむ、いくら戦士といえど、一度投降すれば一人の子ども、最低限の扱いは約束しよう、我らからはそうだな、私が捕虜となろうが、こちらからもう一つ条件をつけさせてくれ」

 条件?なんだろね?


「なんでしょうか?」

 ボクの確認にエイム氏はフルフェイスの表情が読めないままで応えた。

「一騎打ちの相手はお嬢さんでなく、そっちの彼だ。私は聖母と女性を崇拝している。お嬢さんの様な女性でさらに子どもを攻撃は出来ない。」

 む、喋り方はちょっとアレだけど、意外と紳士的だね?

 でもボクが一騎打ちを言い出したのに・・・。

「ボ・・・」

「いいですよ!僕が受けます。」

 断ろうと思ったら先にユーリに返答されてしまった。


「(ちょっと・・・ユーリ!?)」

「(アイラだってさっき同じ思いを僕にさせたんだよ?それに、僕だってホーリーウッドの、貴族の責任を果たさなければ・・・・。)」

 そういってエイム氏のほうを見るユーリの顔は男らしい。

(またときめかされてしまった。)

「(分かったけど、危ないって思ったら横槍というか、カバーだけ入るからね?)」

 そういって許可を出すとユーリはちょっと笑って


「それではエイムさん行きましょうか。」

 エイム氏と鎧の兵たちを誘い、ボクの手を引いて西側の門へ移動し始めた。

 そういえばまだカナイマ市のペイロード側の指揮官にあってもないのに勝手に一騎打ち挑んじゃったけど大丈夫かな?


ここ数日生きてはいますがちょっと目が死んでるねといわれます。

更新遅れ気味で申し訳ありません、神楽の話の内容のほうも書き進んではいますので近いうちに投降する予定です。

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