第120話:継承2
こんにちは、暁改めアイラです。
今日はクラウディア城にきています。
それというのも、この度のスザク侯の逝去とホーリーウッドの直系アマリリスの誕生により継承権に変更がある可能性があるからだ。
でもそれ以上に気になるのは、リリがいったい何を継承しているかだけれどね。
城の内部初めての時通されたあの食堂、少し草臥れた様子のジークがボクたちを迎えてくれた。
「ユーリ、アイラ、アイビス、よぅ来たな。カグラ殿にアミ、メイド達も相変わらずの見目麗しさじゃな・・・。少し元気がでるわい・・・して、その子が件の・・・・?」
ジークはボクたちを見るなり声をかけてきた。
「ハルト様、長い間空いてしまいまして申し訳ございません」
「ボクたち結婚して、赤ちゃんも生まれました。紹介します、アマリリスです。」
ボクとユーリの愛の娘、既に超長距離の魔法での移動を一度成している、恐ろしい可能性を感じさせるオッドアイの乳飲み子。
「どれどれ、抱かせてもらってもよいかの?」
ジークはボクにリリを渡して欲しいという、別段断る理由もないしボクは手ずからでジークにリリを渡す。
脚をバタつかせながらもおとなしくジークの腕に収まるリリ。
人に抱かれてても可愛いや・・・。
「うん、ちょっと早産だったと聞いたが、順調に育ってるではないか。」
ジークは満足そうに頷いたあと。
ボクにリリを返して。
それからアイビスのほうに向き直った。
「アイビス、このたびの3人のことは・・・その残念だった。これからはソナタがスザク侯爵となるが、まだ政治のことも分からんじゃろうし、よからぬ企みをするものも恐らく出てこよう・・・そこでだ。ちょっとワシの考えを聞いてみてはくれんか?」
幼く、年相応の戦闘力しかないアイビスは確かに与しやすいと考えるものがいらぬ考えを起こしそうではある。
「はいなんでしょうか?王様。」
アイビスはもう両親と弟の死を受け入れて、強く自分の足で歩いている。
そんな彼女であれば、きっとジークの期待にも存分に応えられよう。
そう思っていた。
「アイビスは暫くホーリーウッド家のギリアムを後見人として勉強なさい、侯爵領を治めるのは、大人になってからでよい。・・・メイド達は一度退出するように。」
ジークが合図すると、城のメイドもうちの賢いメイド達も一礼し、音も立てずに部屋の外に出て行った。
カグラとアミも、自分は居るべきではないと判断したのか部屋を出た。
これで部屋の中に居るのは、ジーク、ユーリ、アイビス、ボク、リリだけだ。
「以前ユーリたちがクレアリグル姫をつれてきてから少し考えていたんだがな・・・、このたびのスザク侯の件をうけてちょっと打診してみることにした。アイビス、そなたユーリのことはどう思っておる?」
唐突にユーリへの印象を尋ねるジーク、なんだろうか?この脈絡のなさは
「えっと、大好きなアイラおねえちゃんの、大事なだんな様です。」
アイビスはボクと神楽のことが大好きだからね、自然ボクを中心にした回答になるよね。
「そうではなくユーリ個人への感想だ。」
何が言いたいんだろうか?アイビスからユーリへの感情は、ボクを介したものがメインになるはずだけれど、其れを尋ねてジークはアイビスから何を引き出したいのだろうか?
「えっと・・・そう、ですね。大好きなやさしいおにいちゃんです。」
そういって微笑みを浮かべたアイビスは両親の、弟の遺体を弔った日の彼女からは想像も出来ないほどに意識が強くなっている。
あの頃はなんていうかまだ立ち直りはしたけれど、叩けば折れそうな弱々しさがあったけれど、今は元のアイビスよりも強いくらいになっている。
「アイビス、ユーリの子どもを生んではくれないだろうか?」
(え!?ボクの前で何言ってるの?)
「ちょっジーク!?」
一言言ってやろうと思ったけれどジークに手で制される。
「アイラすまない、ずっと考えておったのだ。幸いにして、アイビスにはコレという男はおらぬという話であるし、ユーリのこともにくからず思っておるようだ。」
そりゃあ、もう1年半以上付き合いがあるし、濃い付き合いだったから嫌いってことはないだろうけれど。
「ワシは・・・余は長く考えておった、この戦争が終わったあと果たして王国は何年持つじゃろうか?と・・・王国は長く続いてきたが、長く続いてきたのは、王国の四方を常に四候家が守ってきたからだ・・・その1つが牙を剥いた以上、王国が長生きするには、もっとまとまりを持った国になるか・・・そもそも敵をなくさねばならぬと正直怯えておった・・・そんなときにユーリたちがあの姫を連れてきて、その平和への想いを聞いたワシは、それからずっと平和の道を考えておった。」
ジークは親を亡くしたアイビスへの配慮なのか、それとも自分の考えに自身があまりないのか、言い訳の様に、もしくは熱にでもうなされる様に弱弱しくつぶやいた。
そして・・・
「そうして申し訳ないが、スザク候らが死んだと報告を受けたときに今の考えに至ったのだ。すなわち、クレアリグル姫の言う婚姻による身内化、コレを我ら王国の内側でも行えば、より結束のある王国となれるのではないかとな・・・幸いホーリーウッドが早々と帝国を併呑し、その領域を獲得しスザクやペイロードとは一線を画すまでと成った、そしてユーリの元にクレアリグル姫がおり、サリィやシシィがユーリを慕っておる。」
回りくどいし、言っている内容も飛び飛びで分かり難いけれど、一応一つの結果を導こうとしているのは分かる。
「ハルト様・・・何を仰ろうというのですか・・・?」
ユーリはまだジークの考えの方向性に気付いていない様だ。
たしかに、王であるジーク自らがたどり着くには些か問題のある回答なのだ・・・。
「ユーリ、ワシはソナタが新たな国の始祖となることを考えている。そしてそのためにソナタには申し訳ないが多婚を、いや既にしているのだが、強いることになる。」
やはり婚姻を主軸にした平和路線の中央にユーリを据えようというものらしい。
そしてそれは・・・
「ジークは、自分の代でイシュタルト王国のあり方が変わってしまってもかまわない・・・と?」
ボクは本来この世界の人間でないから、その選択がどれだけ重たいかも本当は分からない、ただ王たるジークがそれでいいと、言うのであれば可能な限り協力はしようではないか。
「アイラには迷惑をかける、が正妻という立場は乱さぬ、ただソナタの夫の後宮に多くの側室が入る事を赦して欲しい」
ジークは好色王だけれど、それなりに誠実だったと聞いている。
そして彼は初めて会った日からそれなりにボクにも優しい。
「ジークが王として苦肉の決断をしたのは分かっているつもりです。責めはしません、ただ最低限選別はしますよ?変な女を家に招き入れるわけには行きませんから。それに・・・・アイビスを守るためでもありますし」
アイビスには現在父の弟である叔父のガルーダ伯爵が息子との婚姻を進めようと躍起になっている。
その婚姻はアイビスの望むものではなく、そのガルーダ伯爵のやり口もこちらから見ていて露骨なくらいに権力を嘱望してのものだ。
(あんなやつにアイビスを好きにさせるくらいなら、うちで引き取るよね。)
無論アイビス次第でもあるが。
「アイビス、ボクはアイビスがうちの妹になることを反対しませんから、アイビスの好き嫌いで決めていいです。」
アイビスを見つめてボクは言い放つ。
「私はアイラおねえちゃんと一緒に居られる様になるので嬉しいですけれど、本当にいいんですか?」
不安そうに聞き返すアイビスの声には側室になることの不安や、不満の色は出ていない、嫌がってはいないようだ。
「はい、アイビスがそれで幸せになれるならボクは喜んで迎え入れます。」
「僕もアイラが嫌がらないで、キミも嫌じゃないなら、受け入れる。」
ユーリもブレないよね、ずっとそれ言ってるけれど、君はボクがOKした子を抱くということなのだけれど、平気かい?
「其れでは、この戦争が全て終わった折にはホーリーウッド家をイシュタルト王国から除名し、新たに国家として認定する。その後ワシもサリィに国を譲り、国王の妹シシィをソナタに嫁がせて婚姻同盟の形をとろうとおもうが、いかがか?」
(まさかのシシィ!?シシィがユーリの嫁か・・・年齢さは・・・まぁ貴族だと思えばあるか・・・。)
「分かりました。僕はハルト様の思想に同調いたします。」
ユーリが頷き、ジークも満足そうに頷く
「皆ココで聞いたことは内密にな、ただユーリはこの話をエドワードへ、アイラはサリィに伝えてくれ。」
ボクはまだ少し混乱しながらも言伝を承った。
この戦争のあと、サテュロスから国境を失くすための動きが加速する、そのためにジークが王国を切り分けようとしている。
その決断が後世どう評価されるかは分からないけれど・・・
ボクたちは平和への道の模索を始めたのだ。
アマリリスのスキルやステータスまで話が届きませんでした。
遅くなった上に予定のところまで届かない・・・難産してます、ごめんなさい。