第118話:前線崩壊
おはようございます、暁改め、アイラです。
子ども達も無事にこちらの拠点に届き、今日にもスザク市近くの難民保護用の町へ護送される模様。
アミもきっと神楽達と合流出来たと信じている。
朝、目が醒めると目の前にふたつの大きい膨らみがある。
ドンッ!!
とか効果音がしそうだ。
(あぁエッラが寝坊したわけじゃなくて単にボクが早く起きただけみたいだね)
まだ時刻は4時前の様だ。
ボクたち3人はベッドを無理やり2つくっ付けただけのダブルベッド
となりのソファの上におかれたかごの中のリリは起きていて口をもにゃもにゃしている。
ボクが寝てる間の世話はエッラがしてくれた様だね、ボクは夜2度おっぱいのために起きたけれど、そのときよりオムツが減っている。
今はお腹減っていると言うほどではないけれど、多分見せたら飲むくらいかな。
リリを抱っこして様子を見ると、うん少し欲しがってるね
「お母さんとお散歩しようか。」
外へはまだ連れ出さないけれど、部屋の外へ出て、建物内を軽く歩く。
5分程歩くと本格的に欲しがり始めたので部屋に戻り袖がなく脇の緩いワンピースの腕側からめくり、軽くお湯で拭いてからリリに含ませる。
リリとよろしくやっているとベッドで寝ていたはずのエッラと目があった。
「あぁエッラ、起こしちゃった?」
エッラは目を細めて、ボクの授乳を見つめている。
「そうしていると、神話の様な神々しさがありますね、アマリリス様光ってますし。」
「あんまり見つめられると照れちゃうよ。」
少し白んだ空の光がカーテンから透けていて、部屋の中はぼんやりとだけれど見通せる程度、そんな中うっすらと光を纏うリリはたしかに神秘的だとは思うけれどね。
「アイラ様、私がもしもいつか子どもを作る様な事があったら、その時はアイラ様が名付け親になってくれますか?」
エッラは子どもの時は大きかったけれど弱気で今は小柄で堂々と振る舞える子だけれど、本質は多分気弱なエッラだ、そんな彼女を任せられるのは彼女を守れる人じゃあないと。
「いいけど、エッラの相手はエッラを守れる様な強い男性だけだよ?」
そういって冗談めかしていうと、エッラもまた笑いながら
「困りました、私より強い男性をメロウドさんとユーリ様しか存じ上げません。」
と返した。
メロウドさんは好ましい人だけれど妻帯者だしいかんせん歳上に過ぎる。
ユーリはボクの旦那さんだ・・・でも既にアイリスとクレアという側室もいるし・・・エッラが側室になるのなら・・・うん別に嫌気はしないな。
「エッラが嫌じゃないなら、エッラもユーリの側室になる?」
ついに言ってしまった。
今までも何度か考えたこと、大事な仲間達がみんなユーリの側室に成れば、ボクたちはずっと一緒に暮らしていけるんじゃないかという、ボクのワガママ
エッラは少し紅くした顔で尋ね返す。
「そんな、私なんかが・・・ご冗談ですよね?私はみなさんみたいなよい生まれではないですし」
今なら冗談だと、戻ることもできるけれどボクはそうは言わなかった。
「エッラがそれでも幸せになれるのならば、ボクはエッラも一緒にユーリを支えて行けたらと思う。エッラはどうかな?側室は嫌かな?」
ボクと違い生粋の女の子のエッラは婚姻に対するスタンスが異なるかも知れない。
ボクは前世の日ノ本でも、こちらでも貴族や武家の本家筋が側室を持ったり政略結婚をしたりするのは普通の認識なので、それが不幸を呼び込まない限りは認める事ができる。
でも女の子にとっては結婚は特別なものだと思うから、ボクはもしかすると嫌な話しを持ちかけているのかも知れない。
「いえ、そうではない、そうではないんです。ただ私は何もかもを失い、まただれかを家族と呼べるなんて、想像していなくって。いいのかなって、私なんかサークラみたいな美人じゃないし、ナディアやトリエラみたいにスタイルがよい訳でもない、ちょっと腕っぷしが強くて、胸がデカいくらいが取り柄のちびですよ?」
その2つがちょっとで済まないレベルだけどね?
それに・・・
「何度も言っていることだけれど、ウェリントンの全員をボクは家族だって思ってる。だからそんな風に自分なんかなんて言わないで?」
ボクはどんなに辛くても最後には自分で立ち上がるキミのことが大好きだよ?
いつの間にかまた眠りに落ちつつあるリリを籠に戻しタオルをかけながら。
「エッラはボクの誇り、ボクの大好きなお姉ちゃん」
そういってしまえばうわん、やっぱりしっくり来る。
するとやっぱりいつの間にかユーリが起きていて
「僕もエッラのことが、大好きだよ?」
そういってベッドの上で身体を起こしていたエッラを後ろから抱き締めた。
腰回りに腕を回されたことで胸が持ち上げられその存在感を遥かに増す
(圧倒的じゃないか!?)
「ユーリ様!?」
ユーリがボクとアイリスそれとナディア以外にここまで密着するのは珍しい、思わずエッラも驚きの声をあげた。
「ユーリは、エッラが嫌がらなければ貰ってくれる?しあわせにしてあげられる?」
「アイラが望むなら僕は受け入れられる、エッラはどうかな?今嫌かな?」
ユーリの問いかけに紅潮したエッラは小さく呻くように答える。
「・・・な・・・です」
ボソボソとした声で呟いた後でエッラは顔をあげてはっきりと言った。
「私をユーリ様の側室にしてください!胸くらいしか取り柄もないし性格も明るくないですが、ユーリ様をお慕いしています!」
一瞬のしじま、沈黙を破るのはいつも小さな子どもの声・・・
「ンギヤァァァァア、ァァァァァァア!!」
突然の大きな声に驚いたのかも知れない、あまり大泣きはしないリリが大号泣してしまった。
「わぁ!すみませんアイラ様!私が泣き止ませます、どうかお座りになってください!」
リリを抱こうとしたボクをエッラが止める、止めて自分がリリを抱きに来る。
せっかくだから任せてみよう。
エッラはリリを抱く椅子に座りリリを膝に横たえて頭を支えるとその圧倒的な部位がリリの目の前に・・・リリは途端に泣き止んで、自由に動かない手を賢明に動かす。
エッラのおっぱいには届かないままで手がおっぱいをもとめてリリの胸元でニギニギと動く。
女の子とはいえ、哺乳類の本能には勝てなかった様だ。
リリもまた、エッラのおっぱいという巨大な山の虜囚となったのである。
それから2時間ばかりユーリとエッラとたまにリリと、軽くいちゃいちゃしながら。
ベッドの上でだらだらと過ごして、さてそろそろちゃんとおきようか?と思い始めたころだったか。
ドンドンとドアがノックされて、ギリアム様からの迎えの兵がボクたちを、ユーリを呼ぶ
「ユークリッド様!ユークリッド様!一大事です!」
ボクたちにとって大きな節目となる出来事、エッラがユーリの側室になることを決めた日
この戦争の趨勢を決める上での一局地戦であったが、南部ミナカタとの戦争における大事件が起きた。
ナライ要塞とヒライ基地が降伏の使者を送ってきた。
コレはミナカタ協商が誇る中央要塞線の一角が陥落したことを意味し、コレにより、長く膠着していた南部戦線は大きく崩れることとなる。
それから2週間経った
「まさかね、エッラに剣を投げつけてきたあのおじさんがナライ要塞のクロト将軍だとは・・・」
エッラがヒライ基地を襲撃していたときに現れたあの赤い鎧のおじさんが、ミナカタ最強の17将軍の第3位のクロト将軍だったという。
その将軍が迎撃に単騎ででて行き、一突きで倒されたことで、ナライ要塞は降伏へと動いたらしい。
だが降伏した程度で捕虜に対して不当な扱いをしたモノたちを赦すはずもなく。
調査の上順に処断されていった。
合流したアイビスの鼓舞でスザク兵は奮い起ち、神楽やアミ、エッラやボクの機動力を持って連携をとり、残った要塞や拠点を挟撃か強襲で潰し続け、その電撃的展開によってその他の要塞も降伏が相次ぎ。
この2週間で、戦線を膠着させていた30の基地と要塞からなるミナカタが誇る中央要塞線は完全に崩壊、ミナカタ協商はその支配地域を、開戦前の4割ほどまで減らすこととなった。
残りの17将軍も軒並み討たれ残るは序列1位のノギリ・コーカス将軍だけとなった。
既に戦局は戦の体を成さず一方的な蹂躙戦に移行し始めていた。
要塞防衛と嫌がらせ攻撃による戦線の膠着と、外大陸から得た技術で圧倒的優位に立ったと思っていたミナカタ南部は、それが所詮は北部に対する優位だとはわかっていなかった。
なまじ複数の国家を残していたばかりにお互いに相手が強くなりすぎない様に足を引っ張り合い、ミナカタ全体の国力の底上げは阻害されていた。
王国の様に優秀な軍人を育てる機関もなく、ペイルゼンの様に国全体の利益のために商売をせず、自分の国に利益を得ようとした結果、つねに自分たちの中にも争いの火種があり国としてのまとまりがなかった。
ミナカタにははじめからスザクを攻め落とせる様な力も持っていなかったということだ。
欲と目先の利益に踊る国民性は度しがたいモノで、占領した旧ミナカタ領民(そういう連中は自分は○○国民だと五月蝿かったが)
にも処断対象が多く出た。
避難したミナカタ領民に対する加虐や搾取や人身売買が横行していた為だ。
まぁそれはそれとして・・・だ。
各要塞を攻めるために分散していた対南部戦力が、戦線が南端に移るにつれ狭くなることで集まり始めると、蹂躙戦はますます一方的なモノとなり、7月3日、ミナカタ協商は開戦一年を待たず、領土の半分を条件とした降伏を申し出た。
この半分というのは、既に王国の支配下となった領域の1/3を返せと言っている様なモノであり、それてなくても卑怯な開戦、奇襲(王都にのみ宣戦布告し前線たるスザクには布告無しで攻め入った)を許すことはせず。
7月12日ミナカタはその歴史を閉ざす事となった。
戦争を主導した豪商も王族も皆殺し、ただし事前に調査し開戦に同調しなかったモノは身分と一部利権を剥奪して、代わりに能力次第で公職に着けることとした。
また王族や豪商の若い子どもやその母は基本的には王国が保護することとした。
ミナカタの国民性的に置いておくとせっかく助命しても民衆から殺害される可能性があったからだ。
帝国に続き協商も王国の管理下に落ち、対王国包囲網は完全に瓦解した。
もっとアイラとリリ、ユーリとリリをいちゃこらさせたいです。
次回はちょっと前に放置したユーリの能力についてにしようと思います。