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第117話:抱擁するための腕

 おはようございます、暁改めアイラです。

 ヒライ基地に侵入したボクたちは、子どもたちを救出した。

 結果的には子どもたちを皆基地から脱出させて、さらにはヒライ基地を半壊させた。

 そしてボクは子どもたちの移送をユーリとエッラに任せて一足先にリリの元へ帰るのだった。



「リリ!」

 泣き声が聞こえた気がして必死になって駆け込んだ最初のギリアム様の部屋。

 下半身を露出させられたリリが大きな泣き声をあげている。

「先輩!お帰りなさいです。」

 アミがにこやかにボクを迎えてくれる。

 手は動きを止めないままで・・・。


「アミ、ありがとう」

 リリの下の世話をしてくれていた。

 ちゃんとした子育てセットがないからしばらく大変かも。


「ひとまずこれを・・・」

 そういってボクは魔綿性のオムツと寝かせるのに使える籠を差し出した。

 ダイバーラット製だとうちのリリは、あせもができる様だったので、オムツと肌着は魔綿のモノを使っている。

「あぁ良かった、替えのオムツがなかったのでギリアム様の下着を破って使おうとしてました。」

 そういってボクからオムツを受け取ったアミだけれど、既にリリのオムツの中にあるのギリアム義父様のシャツだよね。

 二度目の交換の様だ。


 ほんの1分程でオムツがつけ代わり多少気分が良くなったらしいリリは次は食欲だとばかりにボクを見つめて泣き出した。

 オムツを替えている間にボクはおっぱいをお湯で拭いて待機してたのですぐにアミからリリを受けとる。


 くわえるところの少ないボクの小さなおっぱいだけれどそれでもさらに大きくなっていてほぼ強度B、その決して大きくはないおっぱいに懸命に吸い付く幼い愛し子

 視界の端でギリアム様がなにか狼狽えているけれど授乳の方が大事。


「リリ、ごめんね、お母さんちょっとお仕事してたんだ~」

 リリは知ったことかといわんばかりにボクのおっぱいに夢中で、途中おっぱい交換のために抱き直そうとしてもなかなか口を放したがらなかった。


 逆のおっぱいに近づけるとまた懸命に吸い始める。

「えへへ・・・この吸い出される感じ、気持ちいい。」

 吸い出された分が全てしあわせに置き換わる様な快感。

 不揃いの金髪がしっとりとして頭を支えるボクの指に絡むのも、暑い夏さらに熱い子ども体温なのに鬱陶しくならない。


「ア、アイラ、その・・・アマリリスが光っていないか?」

 義父様が光るリリの可愛らしさにやられたらしい。

「可愛いですよね、おっぱいあげると光るんですよ!」

 我ながらなれるの早いかな?とも思うけれど、可愛いものは可愛いのだから仕方がない。


「ところで私の初孫のアマリリスはいつ生まれたんだ?アミに尋ねてもアイラ様から聴いてくださいの一点ばりで教えてくれないんだ。」

 アミはボクから伝えさせてくれるらしくて、義父様にはまだ伝えてないらしい。

  だったらもう少し我慢して頂こう。


「お義父さま申し訳ありません、先にユーリに報告したいのであと二時間ばかりお待ち頂けませんか?」

 そういって必殺の上目遣い。

 義父にどれだけ有功だったのかわからないが、義父は微笑みを浮かべた

「ソナタにユーリの名を持ち出されては、待っているしかなさそうだな、ところで何故帰って来るのが遅かったのだ?」

 おぉ、その説明をまだしていなかったね。


 ボクは砲兵を迎撃に出てから今までの展開をお話しした。


「アイラ、ソナタも母と成った、気持ちはわかるが危ないことは控えてくれ・・・」

 義父はボクのおっぱいをくわえたままでおねむになってしまった初孫の髪をいじる。

「すみません、いてもたっても居られなくなってしまって。」


 眠ってしばらくたつとくわえる力が弱くなったので胸元からリリを離して収納にいれていた赤ちゃんを寝かせる用の籠に寝かせてから布で胸元を拭う。


 リリは安らかに寝息を立てて、部屋の中には穏やかな空気が流れる。

「アマリリス様がご無事でいらして良かった・・・なにかあったら私は・・・」

 アミはリリが行方知れずに成ったことをまだ気にしていた様だ。


「アミ、リリのことは魔法を使える可能性を考慮しなかったボクの責任です。アミが気にすることではないですよ」

 撫でながら、リリにはなにか神憑り的な運命をボクは感じている。

 リリが予定日より早く生まれたことでボクは自然分娩が可能だった。

 もう少し大きければボクはお腹を切らなければならなかったし、光るのも不思議。

 今日は彼女が現れたことで義父がユーリたちを起こしたため、砲撃により火災を起こした建物から出ていた。


「リリはなにか運命に導かれている子どもだと感じます、この子のことを私たち風情が推し測ることなどできないのかもしれません。」

 そういってアミのことも撫でてやるとアミは嬉しそうにリリを扇ぎ始めた。

「そうですね、アマリリス様にはなにか不思議な、まるでアイラちゃん先輩に初めてお会いしたときの様な心の揺らぎを感じます。」


 なにか大袈裟なことをいっている様だけれど・・・

「お義父様、リリを無事に確保したことを、ホーリーウッドに報せたいのですが、結晶通信機はありますか?」

 あぁ、言ってから気がついた。

 この前線に通信機があるならリリ誕生の報せはとうに届いているはずだ。


「それがだね、南方にいる結晶術士の魔力の関係でスザク市までしか通信ができないんだ。」

 案の定この拠点には通信機はないらしい。

「アミはここからスザク市までどれくらいかかりますか?」

 一般兵と比べてアミはかなり早いはずだ。


「ここはミナカタのヒライ基地への攻撃に用意した拠点だと聞いています。ならば・・・そうですね7時間くらいのはずです。」

 ふむ、それは重畳だ。

 神楽達はひとまず詳しい義父様やユーリの居場所を把握するためにまずはスザク市に行く予定で到着予定は今夜の21時頃、アミの方が早くにスザクに到着できるのでそこで合流してもらい、スザクの通信機でホーリーウッドにリリの無事を報せて貰おう。

 それからアミもこの拠点まで神楽の盾で戻って来てもらえばいい。


 その内容をアミと義父様に告げると、アミは快諾してくれた。

「はい先輩!その役割必ずや果たして見せます!」

 名誉挽回の好機とばかり、アミは勇んだ。

「じゃあお昼食べたらよろしく、それと戻って来るのは明日出発でいいから、今日はスザクでゆっくりする様にカグラ達にも伝えてほしい。それで明日魔綿製オムツ布とか、リリ用の肌着やお洋服を買ってきてくれるとうれしい、備えがなかったからね。収納はカグラの空間収納でお願い。」

 カグラは勇者を持っていないけれどマジカレイドシステムの機能として魔力値依存の空間収納を持っている、時間を停めるものではないけれど荷物運びには有用だ。


(考えたらトンデモない技術だね・・・中家や桐生はなんでこんな装備を開発出来たのだろう、謎が多い)

 まぁ今考えても詮無いことだ。


 それから予定通り概ね2時間ほどでユーリたちが帰着、スザク、ホーリーウッド兵が対応に追われる中ユーリはとうとう落ち着いた空気の中で、リリとのちゃんとした対面を果たした。

 リリの誕生日や、早くなったおかげでボクはお腹を切らずに済んだ旨など伝え、治癒魔法と再生魔法の効果もあり、妊娠線もないままのお腹を見せてユーリと喜びを分かち合う・・・。


「そっか、アマリリスか・・・うん可愛い名前・・・。」

 しみじみとリリを見つめるユーリ・・・あぁやっぱり顔立ちが似てるね。

「アイラそっくりだね?」

「え?ユーリに似てるよ?」

 目元や鼻の形を見てごらんよ?


「んーん、アイラ似だよ、ほらココの口のところなんて・・・」

 まじまじと笑っている様に見えるリリの口元を見る。

「やっぱりユーリに似ていると思うけど・・・。」

 ねぇ?っとエッラやアミの方を向くとみんな笑ってる。


「お二人共に似てますよ、そもそもお二人が割りと似てらっしゃいますし。」

 アミはニコニコとして言うけれど、ボクは納得いかない。

 えぇー、ユーリのほうがちょっとキレイな顔立ちだよ。

「アイラとユーリが互いを愛おしい様に、アマリリスのことも愛おしいから、相手に似ていると思うのだよ。」

 お義父様はしたり顔で何か言ってるし。

 そういう精神論じゃなくって、顔立ちの話をしてるんだよ?


「エッラはどう思う・・・。エッラ・・・?」

 エッラは、静かにリリを見つめて頬を赤くしている。

 何か思い出しているんだろうか?

「アイラ様の・・・今だけアイラって呼ばせてもらってもいいかな?」

 エッラの眼差しのもつ優しさを見て、ボクは黙って頷いた。


「アイラとアイリスが赤ちゃんだった頃の、ウェリントンを思い出しちゃった・・・。」

 思わず目を伏せる。

 ボクは覚えていたらおかしいので覚えてない振りをするしかないけれど。

「まだトーティスやアンナが子ども枠だった頃のことですか?」

 そういってボクは少し俯く。

 ウェリントンの事を一人ならともかく、誰かと一緒に思い起こすのはさすがに堪える・・・。

 泣けてくる。


「あのアイラがもう、お母さんなんだね・・・。もうそんなに遠くなっちゃったんだね・・・。」

 エッラは泣いていた。

 あの日、ボクは見ていなかったエッラの涙。

 それが愛おしい、でもエッラには泣いていて欲しくない。

「エッラ・・・約束、リリを抱っこするんだよね。まだ首がガクガクだからしっかり支えてあげてね。」

 そういって寝たままのリリをエッラに渡す。


「うぁ・・・熱い・・・。」

 そう赤ちゃんは熱い、この熱さが命の熱さで、痛みなのだと、人をたくさん斬ってきたボクは知っている。

 戦争が始まってからあまりに多くの人を斬った。

「ね・・熱いよね。」

 その熱さが失われればそれはすなわち死を意味するもので、この命の熱さからは程遠いものであるが、斬られて死ぬとき人はこの熱さを振りまいて死ぬ・・・。


 この血の熱さが、赤ちゃんの熱さならばやっぱり赤ちゃんは純粋な命そのものだ。

 そしてその命を抱きたいと、慈しみたいと求めるこのボクの腕はやはり、命を奪う手でもある。

 ボクの手は短い期間であまりに多くの命を奪い、ボクは心を少しずつすり減らして行ったけれど、それでも一度赤ちゃんを抱けば、この手は奪うためのものではなく、命を抱くための腕だって、それが分かるのだ。


 だから、迷わずに人を殺せる様になったことに傷ついているエッラを見たボクはこの夜、ユーリとエッラを2人で抱き込んで眠りについた。

 

単に川の字になって寝ているだけです。

隣にリリも寝ています。

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