第5話:水遊び
お盆過ぎたのに暑いので水遊びしたいです
こんにちはアイラです。
今日は村の子どもたちと一緒に村近くの川へ遊びに来ています。
ウェリントンから東へ4kmほどのところの丘陵地に大きな湖があり、そこから流れる川がいくつかある。
このあたりの村々はいずれかその川を水源として暮らしている。
今日はそのうちのひとつの、最寄の川へ来ている。
そんな命綱ともいうべき川で泳いでもいいものか?とボクは思うのだけれども、子どもたちの教育を一手に引き受けるアンナやお利口さんで通った姉、サークラがよいといっているし、昨年は水が少なかったので断念したが、一昨年やその前には川遊びは敢行されていた。
(まぁすごく暑いし、良いのだろうね)
とボクは目の前に流れる川に静かに心をときめかせるのだ。
さてここでいくつか考えることがある、この世界の文明レベルは中世ヨーロッパと大差ない、そこに魔法と魔法道具と魔物の素材を用いた特殊な道具が底上げをしている。
そしてウェリントンは辺境である、村人僅か300人足らずの村を、都会とか近郊と呼ぶことは僕にはできない。
話がそれたけれど、ウェリントンには服屋なんて洒落たものはない、村人たちの中で比較的手先の器用なものがそれを担当する場合もあるけれど、基本的には必要な服は自分たちで繕うというスタイルだ。
故に水着なんてものもない、いや本当はこの世界に水着なんてものがあるかどうかもわからないけれど。
代わりといっては何だけれど男の子は短めの麻のズボンに、ボクは乙女なのでナニをとは言わないが魚に食いつかれない様にブリーフの様なぴっちりした下着を重ね着する。
女の子たちは薄手の黒い袖なしのシャツと黒いスパッツに胸と股座のあたりに厚目の布を縫い付けたものを着て泳ぐ。
今回我がウェリントン家においては、人数分の水泳着を用意されなかった。
なんのことはない、単に必要がなかっただけだ。
古着に布を当てるだけなのだから、たいした手間ではないと思うが、年頃の娘であるサークラの分はともかく、下の子3人の分は必要とされなかった。
普段から着ているスパッツのちょっと古くなったものを穿いて準備完了だ。
そもそも5歳程度の年齢では、女性らしい羞恥など持ってない子のほうが多い。
下は虫や魚が入ると困るのでぴっちりしたスパッツを穿くが、上はまだペタンと存在を主張していないため。
この世界でそもそも幼児が裸を隠す理由なんてないのだ。
まぁそういうわけで、だ。
この見渡す限りの青空と、村から少しだけ離れた位置にある緩やかながらも大きな川、そこに不自然なほど岩に囲まれて流れが弱まっている自然のプール。
元は巨岩だったのか、それとも溶岩だったのか、その岩場は底が滑らかで一枚の岩盤の様だった。
そこに川の流れの一部が入り込み、ゆっくりとよどみなく水が流れているが、速さは川の半分ほどで、深さも深いところで80cmほど。
その川沿いに荷物を集めて置いて、水に入る準備をする。
そしてそんな大自然の中ボクは、上半身裸という大変な出で立ちである。
でもよくよく考えたら、文明の発達した前世でも、海で泳ぐとき暁は上半身は裸だったな
じゃあアイラが裸でも倫理的にも常識的にもなんらおかしいところはないね。
なにせまだ5歳のお子様だし、周りにいるのもお子様ばかりだし。
「じゃあ私とアンナさんとで、リルルと荷物見ておくから、トーレスは川に入る子たちの面倒をみてね、私のほうでも目は向けておくから。キスカさんも、ちょっと泳いできたらいいですよ」
サークラはどうやら水の中には入らないつもりらしい、川沿いで足を水につけたりはするけれど、基本は川沿いに立てた拠点(簡単な日除け程度のもの)で泳いだりはできないリルルと涼んで待つ様だ。
それに対してカールとピピンが何とかサークラを川に入れようとアプローチしている。
いつの時代もどこの世界も男は惚れた女を誘うものだね。
ボクも今は女である以上そんな相手がいつか現れるのだろうか?
(カール程度の小物は嫌だな)
そんな少し失礼なことを考えながらボクは何の気なしに素手で捕まえた魚をアニスに手渡す。
「アーちゃん、こえなぁに?」
おぉアニスってばすごい、一昨年アイリスに手渡した時は大泣きして大変だったのに、小さな両手でしっかりと魚を捕まえている。
「アニス、生きてるお魚見るの初めてだっけ?」
「こえおさかにゃ?」
「そうだよー」
両手で魚をもったまま首を傾げるアニスの頭をなでながら魚だと答えると、アニスは恐ろしい行動に出る
(ガブリ)
と擬音が聞こえそうなほどしっかりと魚を口でくわえこもうとして、大きくはねた魚に驚いて取り落とした。
「アニス!お口すすいで、なんでお魚噛むの・・・・」
ボクはあわてて、拠点のサークラから水を出す魔道具を借りる。
「だっておさかなってごはんよ?すききらいだめってママいってた」
グチュグチュペしながら、アニスが平然と答える
なるほど、魚は食べ物か、だったら仕方がないなお勉強だ。
「ほら今のお魚は生きてたから。まだ食べ物じゃないんだよ」
「ふーん」
あまりなっとくしていただけてないな
「アニス今のお魚おいしかった?」
「おいしくない、くさかった。」
「それはねアニス、あのお魚がまだ食べ物じゃないからなんだ。」
「なんで?」
アニスは納得の言ってない様子で首を傾げる、その様子はいかにも子ども然としていて可愛らしい。
「お魚はお料理して、初めてごはんになるんだよ」
「よーり?」
「そう料理、うちだとお母さんがしてるよね?包丁もってトントンって」
そういって手で食材をきるまねをしてみせると、ようやく得心いった様で
「そっかぁりょーいかぁ、ママいつもやってるね?」
と、ようやく笑ってくれた。
「アニスはお利口さんだねー」
といっていつもの様に頭をなでてやると、えへへーと満面の笑みで答えてくれる。
ふわふわの金髪が指の間をすり抜けていくのがたまらなく気持ちいい
ボクは今幸せ。
「アニスもアイラもかわいいわね」
そこに声をかけてきたのはキスカだ。
去年流産してしまい長い間塞ぎこんでいたが、徐々に持ち直し最近再び妊娠
今回は子どもたちと遊ぶことで、子どもに対する憧れを持ってもらうことで、更に元気付けてほしいというサルボウからのお願いだ。
「キスカちゃん!私は?」
一人名前を呼ばれなかったアイリスが、ちょっとムっとした感じで川岸のキスカに詰め寄る
「アイリスもモチロンかわいいよ~私3人の中だと一番、アイリスみたいな子が生まれてほしいなぁ。」
そんなことをしているうちに、カールとピピンとがサークラの説得をあきらめた様だ
二人が水場に入ってくる。
カールは岩場で涼んでいるエッラの方へ、ピピンは浅瀬で水遊びしているボク、アイリス、アニス、ノラ、ソラ、ケイトの方へやってきた。
これでカールの好みはわかったね、ずばり重装甲だ
サークラは15歳にしてすでに強度D相当以上の胸部装甲を持っている。
なぜわかるかといえば、サークラと一緒にお風呂に入るからだが、前世での姉照子は17歳程度のときにDカップになったと喜んでいたが、そのころ暁は何度か風呂上りにだらしなく裸で室内をうろつく姉を目撃している。
単純にそれより大きいというだけである。
それに対してエッラはまだ13歳でありながら強度C以上と推定できる装甲を持っている。
これからもアレは強度が上がっていく、であるとすれば大変な暴力装置である。
いやね?カールが単に年上好きとかならほかにもアルンやノヴァリスもいるのに、なぜ一人で隠れて涼んでいる、エッラなのかっていうのはこれくらいしか思い当たらないのだ。
エッラはサークラに次いで家事全般がよくでき、頭もよいが控えめな女の子で、加えて
乗馬が得意だ(重要)、裸馬に乗りゆられている姿はいつ見ても美しいもので、その姿は歴戦の騎士の様に安定している。
でもカールはバカだからそこまで見てないよね、さっきから胸ばっかり見てるし、ちょっとあからさま過ぎて嫌だよね。
(男の性だからわからないではないけれど)
そしてピピンはもっと即物的だった、さっきからちょっと悪寒がするとおもっていたら、こいつボクやアイリスの胸元や股座をちらちら見ては、サークラの顔と交互に見ている。
つまりだ、想い人と面影のあるボクら双子の体をみて、想い人の幼いころを想像してお楽しみというわけだ。
(とはいえ、まだ6歳前のボクがピピンの膨らませた妄想について指摘するのは、ちょっとねぇ・・・・なんて言おうかな)
とか考えていたらピピンが
「アイラ、アイリスちょっと投げてあげようか?」
なんて言ってさらに近づいてきた、普段ならともかく今のこのエロ魔人と化したピピンに体を触られるのは断固拒否したいところであるが、アイリスがOKを出してしまった。
「やってやって」
と両手を広げてぴょんぴょんするアイリス
「ピピーンあんまり危ないことしないでよー?」
と笑いながらやんわり許可を出すサークラ
(んー逃げ道をふさがれたかな、普通の子どもは喜ぶ所だしね)
「じゃあいくぞぅ」
とピピンはアイリスを後ろから腕の下に手を回して持ち上げた、具体的には、手ブラの様に胸の辺りを掴む形でアイリスを自然のプールに投げ捨てた。
キャッキャと喜ぶアイリスに、水しぶきがかかって頭を振るアニス、ノラも楽しそうにしていて気づいていないけれどボクは気づいているよ。
(ピピンめ、今アイリスの胸を揉んでたね)
5歳の胸を揉んで何が楽しいかわからないけれど、これならボクの番のときに指摘すれば終わりでいいかな。
「よぅし、次はアイラにもやってあげるね、今度はこうだ!」
そういうとピピンはボクの目の前で屈んだかと思うと、ボクを持ち上げた。
ボクをうつぶせの向きにして、胸の下に腕を通し片手は右胸の辺りを掴んでいるそして右手は、ボクの股座のところを抱えている・・・
「ちょ、ピピンなんで、こんな体勢!?」
ボクは納得がいかずピピンを責める様な口調で叫ぶ、ピピンは気にもせず
「同じだとつまらないでしょ?」
そういって右手が動くとアイラの敏感な部位に強い刺激がある。
「ふや!?」
(抵抗したいけど、力が入らない・・・?)
そのまま勢いをつけて、水の中に放りこまれた
「ぷっは、はぁ・・はぁ・・・・」
身じろぎしたため変な姿勢で水に落ちて、ちょっと腰を痛めた気がする。
ジロリとピピンをにらむとピピンは悪びれもせずに
「どう?アイラ楽しかった?」
なんてにこやかに聞いてきたので、大きな声で言ってやった。
「ピピンはポケットに何かいれてるの?お腹に押し付けられて痛かったよ?」
と腰とお腹とを押さえながら言ってやった
その後のピピンの扱いについては口に出すのも憚られるが、おもにサークラとモーラからきついお仕置きがあったとだけ言っておこう。
その後もそれなりに楽しく水遊びをした、水に入れないリルルをオルセーが濡らした布で足を冷やしてやったり。
ケイトとノラがうっかりソラを水の中に落として泣かせたり。
カールがエッラの胸を触ってピピンと同じ末路をたどったり。
オルセーがアルンとノヴァリスのズボンをうっかりズリ下ろしたり
怒ったアルンによってオルセーが全部剥かれたりと
半日にぎやかに遊んだ。
そんな楽しい遊びも、夕方になれば気温が下がり始めるので、まだ多少日の高いうちから撤収の準備に入る。
男衆は周りを気にせずに着替えるけれど、ボクたちは年頃の乙女なのでそういうわけにはいかない
拠点の奥の岩場に幌で目隠しをつくり、その陰でみんなで着替える。
水で濡れた衣服というのが意外と曲者で、ボクもアイラの短い指ではへばり付いたスパッツを上手く脱ぐことができず、エッラが脱ぐのを手伝ってくれた。
みんな着替えの途中なので、エッラも当然のごとく全裸で、家族ではない13歳のかわいい女の子(それも年不相応に豊満な)の裸はボクには刺激が強く、顔を上げていることができず、エッラの成すがままにされてしまった。
同じ様に年少組は自分で脱ぐことができずに、ソラは姉二人に、アニスはサークラに、アイリスはノヴァリスに世話されていた。
さて、天然の川にはシャワーはないが、この世界には魔道具があるので温水を作ることができる。
桶に用意したそれで体を軽く流してから、体を拭いて最後に服を着て身支度も終わり楽しかった川に別れを告げる。
帰り道でアイリス、アニス、ソラが寝てしまい僅か20分の道とはいえ
大変な労苦になってしまった。
アイリスをアンナ、アニスをトーレス、ソラをモーラが抱っこして帰り、ボクもかなり眠たくなってしまい何とか村まで歩いたがそこからの記憶はない。
次に気が付いたらお風呂の中だった。全身がお湯の中で温かい
「あ、アイラ起きた?」
「ねえ、さん・・・?」
起きると同時に気付く、ボクお風呂の中で姉の胸元に抱きついた状態になっていた。
「あ、ごめんなさい姉さん、ボク寝てたみたいで。あれ・・・?お風呂に入ってたんだっけ?」
「アイラってば村の入り口で、魔力切れになったみたいに急に寝ちゃって、もう少しで頭打つところだったんだよ?眠いなら眠いっていってくれていいんだからね?」
あぁ、そういえばすごく疲れて、ちょっと眠かったんだっけ・・・アイリスたちが抱っこされてるのが少しだけうらやましかったけれどみんな荷物もあるし、申し訳なくってがんばって歩いたんだけど・・・そうか寝ちゃったか
「ごめんなさい、姉さん、荷物もいっぱいあったのに、お手伝いしないどころか、ボクが荷物になるなんて・・・。迷惑かけてすみませんでした。」
はぁ、アイラの子どもの体が憎い、いいところを見せようと思ってもいつも失敗ばっかりだ。
ただサークラはボクのおしりの辺りを手で支えたまま背中をもう片方の手でとんとんとしながらボクを見つめて笑う。
「アイラがどうして甘えるのを悪いことだと思ってるかはわからないけれど、お姉ちゃんはアイラが甘えてくれるとうれしいよ?」
そういいながら背中を叩いていた手が頭のほうに移る。
「アイラはいつもお利口さんで、まだ5歳なのに下の子の面倒も見れる、賢さも体力も人よりあって、最近は剣術も上手にできてるってね。すごい妹をもってお姉ちゃんは幸せ、でもそんなかわいい妹がお姉ちゃんに甘えてくれないのは寂しいのよ?」
たぶん本音なのだろう、ボクを抱きかかえるサークラは満面の笑みだ、少し恥ずかしいけれど、このまま抱かれていよう。
ボクもいつかアイリスがボクを必要としなくなったら、と思うとちょっと寂しい
「あの、お姉・・・ちゃん・・・・?」
4歳過ぎたあたりから呼んでいなかったおねえちゃんと呼んでみる。なんとなく甘えたい気持ちになったのだけれど二の句が続かない。
「なぁにアイラ。」
ボクの甘えようという意図には気付いているのだろう、ただ続きをまってくれるサークラ。
その笑顔に応えるためにボクは、そのままサークラの首に抱きついて
精一杯の大きな声でボソりと
「大好きだよ」
と伝えた。
サークラは強く抱き返してくれて、その温かさに安心したボクは再び眠りの世界へと落ちていくのだった。
明日休みなので今夜中に少しお話進めたいです




