表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/182

第115話:勇者襲来1

 おはようございます、暁改めアイラです。

 敵の砲兵を無力化したら予想外に胸くそ悪いシステムを、稼働させていた。

 一人の母として、一人の学生兵士として度しがたい行為に憤ったボクは捕まえたミナカタ兵のオリバーとともに敵前線基地へのカウンターを決意した。



「貴方とボクとで奇襲をかける!」

 そのボクの決意の言葉にオリバーはボクの正気を疑った様だ。


「ムリですよ!何人兵士がいると思ってるんですか!?貴方の強さは確かに異常だと思いますが、仮にも最前線の基地です。俺が出てきたヒライ基地に3000、後方のナライ要塞に8000の兵士が詰めてます、一人なんて無謀です!」

 オリバーは捲し立てる様に矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。


「うん、確かに全部を斬るのは難しいでしょうが、ボクを子ども達の所につれていってください、そこからまっすぐ帰り道を作ります。それならば貴方が先導してボクが食い止めればいいのです、子ども達はひと所に居るのですか?」

 ボクのことばに彼は首肯く

「ヒライ基地の子ども達はいちばん北東側の棟に密集させられてます。その・・・出撃の手間を減らすために」

  うん、好都合だ。

 日頃の行いの賜物だろう。

 さらに、都合の良いことは続く。


「アイラ!」

「アイラ様!」

 恐らく基地の敵は片付いたのであろう、ユーリとエッラが追い付いてきた。

 これで戦力も足りるだろう、何せ勇者3人分だ。


「ユーリ、エッラ、頼みがあるんだ。」

 再会を喜びたいところだけれどもう一仕事してからにしよう




 ボクはオリバーからきいた内容を話し、子ども達と、捕虜の救出について話した。

「なるほど、アイラの気持ちはわかる、僕も、その子達を助けたい。でもそれなら急がないといけない。」


 もうそろそろ馬車を動かさないとね、遅くなりすぎるとなんでおまえ無事なの?ってなるから

「では、私は城壁外で待機して、馬車が基地に入ってから10分後に西側の城壁に強襲、その後牽制しつつ離脱して東側に向かうのですね?」

 自分の任務を確認するエッラ、嫌な顔ひとつせず危険な陽動役を受けてくれる。


「僕とアイラとで内部に潜入して捕虜を解放・護衛しつつ城の外へか・・・危険な作戦ではあるけれど・・・・」

 そう、危険でも・・・子ども達を助けたい。

「それと、後方のナライ要塞に年頃の女性達が、その・・・囚われています」

 濁されてもわかる今までも幾度となく見てきたこと、悪辣な雄が掠めた女を犯し辱しめるのは本能の様なものだ。

 それでも許せないものは許せないけれどね。


「今回は子ども達を優先します、目標はヒライ基地の子ども達と捕虜の解放です。ナライ要塞の捕虜達については夕方に交渉します」

 傲慢に成ったボクでも、一度に二つの拠点は落とせない。

 ならばここでは力を見せつけて、交渉しやすくしよう。


「これを再び使う機会が来ようとは・・・」

 ボクは「黒霞の娼婦」に変身した。

 これならほとんど魔力消費なしに有用な隠形術の強化、利用ができる。

 ユーリとボクの存在を見えにくくして馬車には必死に逃げてきた風を装ってもらう。

「ちょっ今服が変わりましたよね!?ていうか貴方の様な若い女の子がそんな格好いけないですよ!」


「黒霞の娼婦」は元が夜這衣装のため、大変セクシャルな格好、ボクはまだ12才なうえ、見た目は小柄な10才くらいなので大変不釣り合いだ。

「ボクはこう見えて経産婦なので、あまり子ども扱いされるとすねますよ?」

 実質捕虜に成ったからか、ボクに恐怖したからか途中から敬語になってると言うのにいつまでも子ども扱いは失礼だよね?

 それだけ彼が子ども好きな優しい人なのかも知れないけれど。


「経産って・・・!まだ11、2才くらいですよね!?乱暴されたんですか?王国も軍部は子どもの扱いがヒドイのですか!?」

 おや、あらぬ嫌疑をかけられてしまったか・・・確かに王国に子どもが保護されてもひどい扱いをされるなら意味がないよね、多少照れるけれどその誤解はボクが自ら解かなくてはなるまい

「いいえ?ボクは結婚していますので、大好きな良人との間の愛し愛されで生れた愛し子ですよ?あと12才は正解です」

 オリバーも300日を目前にした戦に心荒んで居るのだろう、仕方ないから懇切丁寧に教えてあげよう。

 初見で年齢を当てられたのは少し嬉しいしね。


「さぁ行こうかオリバー、僕は奥さんからの頼まれごとに弱いんだ、君が男を見せれば、君の王国での身分を保証してあげるよ」

 ユーリがさりげなくボクの良人アピールをする、ご無沙汰振りだしキスのひとつくらいいいかな!


「ありがとうユーリ、優しい良人をもってボクはしあわせ者だね」

 感謝の標として頬に接吻する。

「アイラ、嬉しい。」

 ユーリの笑顔は相変わらず花を咲かせた様だね。

 おかげで気力も満ち満ちた

「さぁ!もうちょっとしたらリリにおっぱいあげないとだし、早いとこ終わらせよっか!」

 ボクの宣言にエッラは静かに首肯き

 オリバーはただただ慌てるばかりであった

 


 砲兵を岩場に隠してから出発した

 ヒライ基地の北東側から馬車はよろめきながら接近した

「ヒライ基地が見えてきました。みなさんいいですか?あの北東の塔のある建物に捕虜たちがいます、陽動は逆側の青い旗の塔からお願いします。どうか、どうかミナカタがこれ以上誇れぬ祖国になる前に・・・」

 ボクたちは無言でうなずきあって、エッラは姿勢を低くして馬車から離れた。


 基地の入口までつくと、守備兵が壁の上から声をかけてきた。

「おいクローバー管理兵!さっきイガラ砲兵長の馬だけが帰ってきたが!エコーズ砲兵とイガラ砲兵長はどうした!?」

 意地の悪そうな声だね

「砲兵長は亡くなられた!エコーズ殿はわからないが後ろで敵と交戦状態に入っていた!」

 そういってオリバーは逃げてきた風に伝える


「クソが!砲兵長殿を庇って死ね、政治に負けた負け犬のハリエ人のために何故カニエ人の砲兵長が死なねばならん!」

 悪態をつく守備兵にオリバーが答える。

「砲兵長が身を犠牲にしてまで、貴重な原動機を守られたのだ!」


「クソ、言うじゃあないか・・・まぁいい、さっさとガキどもを小屋に戻せ!!」

「了解」

 門が開け放たれ、ボクたちと子どもたちを乗せた馬車が基地内に入る。


 それから北東方向の例の建物のほうへ進み、3分ほどで馬車は停止した。

「よし、子どもたちを起こすぞ。」

「了解!」

 オリバーと男が2人入ってきて8人の子どもの入った装置を開けて、起こし始める。

 隠形は正常に動作しているようだ、男2人がボクたちに気付く様子はない。


 オリバーと一人は軽くゆすり起こしているがもう一人はやや乱暴かな?

 音が聞こえるほど頬を叩いて起こしている。

 起こされた子どもたちは優しく優しく起こしていた一人に馬車の外へ連れ出された。

 子どもたちが居なくなると同時に、

「おい、もうちょっと丁寧にしたらどうなんだ、この子達は生きてるんだぞ!?」

 オリバーが食って掛かる

「だからどうしたよ?どうせその内死ぬ、ちょっとケガするぐらいなんだっていうんだ?」

 それと・・・と男は一旦言葉を溜めた。


「敗北したハリエ人のオリバーくんがカニエ人のソリタ様にため口で意見とかやめてほしいよね!?」

 そういって男、ソリタはオリバーを殴りつけた。

「がっ!ソリタ!お前にだって子どもが居るんだろう?同じ用な扱いを受けたら、なんて思わないのか?」

「あぁん?そうはならないだろ?ミナカタが戦に負けるなんてありえない、ちょっと押し返されたが、開戦時は一挙にスザク領に30kmも食い込んだんだぞ?負けるわけがないだろ」

 むしろ開戦と同時の奇襲によってそれだけ押してたのに、戦争が始まって260日ほどでヒライ、ナライまで防衛線を押し上げられているのは、どう考えても負け戦なのではないだろうか?


「それと、こいつらは俺達カニエ人をはじめとするミナカタの南部人と違って家畜なんだよ、うちのラビシャと一緒にするんじゃねぇよ!戦争後は奴隷牧場で「生産」される様になって、原動機の燃料や奴隷として、エル大陸に出荷されるンだよ。だったら変に希望持たせずにやるほうがやさしいだろうっと!」

 そういってソリタはもう一回殴りつけた。


「よくあることなんですか?」

 ソリタも去ったあと、オリバーは軽く原動機の清掃をしてから子どもたちが向かったほうの建屋に向かいつつ途上で尋ねた。

「はい、まぁ・・・」

 オリバーは変なところを見せましたと謝りそれからは無言で道案内をした。


 子どもたちの居る環境は劣悪だった・・・・。

 3畳ほどの・・・独居房なのだろうと思われる部屋の中に4人ずつ曜日を2つと時間帯を書かれた部屋に閉じ込められている。

 それがこの場に30房ほど、男の子が中心だ。


 それから2階に上がると、比較的可愛らしい容姿をしていると思われる少女を中心に恐らくは年齢ごとに8部屋ほどに子どもが分けられて入っていて、暑い季節だというのに身体を寄せ合って震えている。

 もうどれだけの期間こんなところで閉じ込められていたのだろう。

「ここには12歳までの子しかいません、13歳以上で見た目の良い子は、ナライ要塞に連れて行かれました。」

 連れていたかれた子達はやはり兵たちの欲望のはけ口にされているのだろう・・・。

「最悪ですね・・・。とりあえずこの子たちに説明しましょう。」

 オリバーが言うにはココに配属されている兵は通常の兵務の減免なく子どもたちの世話をする様な、まともな人しか居ないらしいので、ボクは突然に姿を現す。


 兵も子どもたちも気付いたものから、ボクとユーリの存在にざわめく

「みなさん、王国の勇者の方たちが、ここの子どもたちを助けに来てくださいました。」

 オリバーがそういってボクたちを紹介するけれど、それは皆信じられないよね、ボクたち見た目若すぎるし


「今も突然現れた様に感じたけれど、本当に勇者ですごい魔法や技が使えるのですか?」

 しかし、兵たちは信じてくれている。

「こんなに可愛らしい方たちなのに、クロト将軍とかわらない力をお持ちということですか?」

 たしか王国の認定勇者とミナカタの17将軍は確か同じくらいの実力と喧伝されている、けれど王国の鑑定のような能力がないのであれば、恐らくは単純に実力がある程度あって、金があればなれるものだとボクは睨んでいる。

 そうじゃなきゃ勇者相当のユニーク「剣影」を持っているメロウドさんはともかく、異名持ちで近年の豊作の年とはいえ学校を卒業したばかりのマガレ先輩やシリル先輩に複数討たれる様なものが同等とは思えない。

「クロト将軍は、17将軍の一人でナライ要塞の司令官です。剣術魔術共に優れていて17将軍でも3番手だといわれていますが、好色で女性をいたぶる趣味があるそうです。」

 小声でオリバーが教えてくれる。


「みなさんがすんなりと受け入れてくれてうれしい、この場に居るもので、王国に亡命することを希望するものは居ますか?今ならば、捕虜ではなく亡命者として受け入れることができます、勿論ミナカタに残ってもいいですが、恐らく次の機会はないですそれから・・・」

 全てを言い終わる前に、兵士たちがみなこちらに寄ってきた。

「われわれは今のやり方を良しとするミナカタにはおられません、心が壊れそうです。」

「もう何人も子どもたちが死にましたが、連中はゴミと同じように魔法で無造作に焼いてしまいました。」

「連中は、王国の子どもだから我々の子どもとは違うから、無駄な処理費用をかけられないといっていますが、ここの子たちのなかには、既に敗れたハリエやソミノの子どもたちも含まれて居ます。」


「オリバー!?」

 思わず振り返る、オリバーはやるせない表情でたたずんでいて。

「俺にも15になる結婚を控えた妹がいましたが、たぶんもうナライ基地で慰みモノにされているか、死んでいます。義弟になるはずだった男も、王国戦でなくなりました。捨石にされて・・・。やつらは、他国人を奴隷貿易の材料にしようとする、ミナカタ南部の貿易国家軍の施策に反対する北部人のことが邪魔になったのです。」

 それで自分たちの仲間のはずの民族までこんなあつかい・・・?

 怒りがこみ上げてくる。

「オリバー下の子達にも今から助けるから、先に鍵だけ開けてきてあげて・・・。」


「皆さん、あと1分とたたず、基地の逆側へ王国から攻撃を仕掛けます、その間に、皆さんと私たち2人とで子どもたちを壁の外に逃がします。そのあとは王国のほうへ向かいます。協力してくださるみなさんは、歩くのが難しい子を運ぶのを手伝ってください。」

 兵士は12名、オリバーと合わせて13名下にも兵士は数名居たけれど・・・。


 ずどーん!!っと大きな音がして、建物が下からゆれた。


「うわぁ、じ、地震か!?」

「ち、ちがう、さっき勇者様がいっていた王国の攻撃だ。」

「きっかり10分さすがエッラだね」

 慌てる兵たちをヨソにユーリは落ち着いたものだ。


「それじゃあ、説明不足も甚だしいけれど、救出作戦を開始しようか!」

 


お付き合いで久しぶりにお酒を飲んでみたのですが、少し飲んだだけで酔っ払ってしまいました。

更新が遅くなり申し訳ありませんでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ