第113話:光る子ども
おはようございます、暁改めアイラです。
赤ちゃんを産んでから2週間経ち、若さと治癒魔法の効果か体調の戻ったボクは、アイビスやカグラと共に、スザク領へと遠征を開始しようとしていた。
ところがさぁいざ出発しようかというところで焦りの色を浮かべたアミの待ったの声がかかった。
「アイラちゃん先輩!大変です!アマリリス様が!!」
アミの声には、明らかに不安があった。
「リリがどうかしたの!?ケガでもした!?」
自分の娘のことだ気にならないわけがない、ましてや、城の中に居るはずなのに泣き声を聴いたのだから・・・。
「いえ・・・そうじゃなくって・・・あの・・・その・・・・!」
明らかにいつものアミの様子とは違う、本当に致命的な何かがあったのだろうか?
「アミ、落ち着きなさい、貴方は冷静なアイラちゃんの側近でしょう?」
見送りに着ていたサリィが、アミを落ち着かせようと頭を抱く。
「ひ・・・め様・・・」
大きく目を見開いたアミがサリィの胸に顔を埋めてほぅ・・っと息を吐く。
「落ち着いた?」
ボクが尋ねるとアミはこちらに向き直って。
「はい、あの、申し訳ありません、目を離したつもりもないですしずっと横に居たのですが、急に泣き出したと思ったら。光りだして・・・・。」
あぁリリはよく光るからね、どういうことかいまひとつ分からないけれど、エル族の様に精霊の祝福でも得ているのだろう。
「アミ、リリが光るのはよくあることです、慌てなくっても良いですよ?」
とはいえアミも何度か授乳中に光るリリのことはみているはずだ。
「いえそうではなくって、光がいつもより激しくって、一瞬目を瞑ってしまって、そしたらすぐ声が聴超えなくなって・・・光も収まっていましたが、部屋のどこにも居ないんです」
(リリが!?)
「えっ!?ちょっとまって、居ないって?リリが?」
「はい、アマリリス様がです!」
いみがわからない、ボクが側に居ないから?ボクがリリを置いて、ユーリのところに向かおうとしたからバチが当たったの?
(ボクだって迷ったんだよ?悩んだんだよ?リリの成長を一瞬だって見逃したくないって。)
「アミさん、アマリリス様はまだ首もすわっていない赤ちゃんです、それが自分でどこかに行ったりするものでしょうか?」
常識人のフィレナが常識の範囲で発言する。
「リリは光ってたんですよね?特殊な魔法の力を何か持っているのかもしれません」
とにかくだ・・・城の中を探す・・・?
それで居なかったら・・・?
「みんな、ボクはリリを探してきます。アイリスは知ってるよね?ボクアイリスのところなら狙って転移できる魔法があるの、アレならきっとリリを追いきれる・・。」
アイリスがあぁ!っと目を見開く
「そうだね!アイラのその魔法のおかげで今私無事なんだもんね!」
そういって安心した様に笑ってくれるアイリスはやっぱり可愛い妹だからか、まだリリの無事を確認できたわけでもないのにボクの心は安心感を得た。
「ただ皆に先に行っておくとこの魔法は、魔力を消費して移動するのだけれど、消費する量は距離に比例して大きくなるから、だから、リリの居場所によってはもしかしたら一日では戻ってこれないかもしれない。
なのでボクを除いた4人には予定通りスザク領に進んで欲しい。それで、連絡手段があれば連絡するから、スザクかホーリーウッドに連絡を入れれば両方に伝わるよね?」
だからボクはちょっと行くよ・・・。
「他に何もなければボクはもう行くけれど、何かあるかな?」
だれも反対する言葉は言わないでただ応援してくれる。
「ごめんなさい・・・先輩・・私が、もっとちゃんとしてれば・・・。」
アミだけが、自分をまだ責めていた・・・
「アミ・・・うん、一緒に行こうか!」
「ふぇ!?」
そういって焦るアミの手を握りボクは・・・。
「行ってきます!!みんな、遅くなるかもだけれど、心配しないでね?」
そういって跳躍を開始する、狙いは可愛いかわいいボクのリリ、今までアイリスに対してしか対象指定の転移は成功した事がないけれど、娘のリリになら飛べるってボクは信じてるよ。
跳躍特有の視界の暗転が終わるとそこは建物の中だった。
目の前のイスに腰掛けた男性が首も座っていないグズる赤ちゃんをどうしたものか・・・という混乱した表情で横抱きしていた。
男性といって濁したけれど、ギリアム義父様だ。
「お義父様・・・?」
義父は今はスザクの前線の8km手前に駐留していたはずだ。
「アイラ・・・?こ、コレは違うんだ!?突然目の前に現れて・・・。」
義父はその腕の中にリリを抱きかかえており、えらく慌てている・・・
っと、軽い立ちくらみ。
「先輩、しっかり・・・。」
むちゃくちゃな距離をアミ込みで跳躍してきたからか、魔力枯渇に近い状態になっているみたいだ。
「アイラ・・キミはまだ出産予定日くらいのはずだ!ま、まさかこの子が・・・?」
そういってギリアム義父はアマリリスを恐る恐ると言った風に覗き込む、まだ生後12日の新生児。
城の中から出したくなかったから、見送りにも同行させずに部屋の中に残してきたのだけれど。
結果的にこんなところまでどうやってかリリは飛んできてしまった。
「はぁ・・・すみません、その子が急に転移してしまったらしくって、慌てて追いかけてきたんです・・・。」
うちの子がまさかこんな長距離跳躍を成し遂げてしまうなんて・・・。
「そ、そうか・・・この子が自分でやったのか?」
そういって首を傾げる義父に、ボクは明確な答えを出せないで居る。
「はい、たぶん。ボクが出かけることに不安を覚えて自然にしてしまったんだと思います・・・。それでなんでお義父様のところに来たかは分かりませんが、たぶんユーリの近くに来たかったのではないでしょうか?」
そういっているとドアがノックされた。
「ユークリッドです、司令お呼びでしょうか?」
ドキっとした!1ヶ月以上あってなかったユーリの声だ。
どうしよう、盾の上で「変身」するつもりだったからおしゃれしてない!
夏場なので汗をかいてもいい様に普通のうすいシャツだけだ・・・。
アミに至ってはメイド服だし
「あぁユーリ、目を瞑って入りなさい。」
え?目を瞑って・・・?あぁ、その間に変身しなさいってことか!
(さすがはお義父様、嫁への気遣いが出来ている。)
ボクは急いで鎧衣を選ぶ・・・。
見た目涼しげなサマードレスとかがいいなぁ、でも天衣無縫は禁止されちゃったし・・・
前回魔力枯渇状態まで行ってしまったので、現在ボクはユーリと神楽から天衣無縫の使用を禁止されている、まぁ禁止されなくっても力の引き出し方が分からないんだけれども。
変身したことのある衣装から手早く「白花の妖精(ブライドウィング)」を選び、羽は閉じた状態で変身した。
義父は少し驚いた風だったけれど、すぐに気持ちを持ち直して、目を瞑って入室したユーリとエッラに仰々しく声をかけた
「ユーリに、引き合わせたいものがいてな・・・、目を開けなさい。」
ユーリが目を開くとそこには、純白の衣装を身につけたボクとメイド姿のアミ、そして謎の赤ん坊、謎ってことはないか、ユーリならすぐ気付くよね。
「アイラ!?」
明らかに驚いている、それはそうか今まだ彼の中ではボクは出産した情報が伝わったかどうかも定かじゃない、其れなのにこの戦地にボクがいるのだから・・・。
「アイラ様、出産は終わられたのですか・・・!?それではそちらのあかちゃんが・・・」
エッラは目を細めてボクのかわいいリリを見つめる。
ボクは佇まいを直しながら応えた。
「うんユーリ、エッラ紹介するね、ボクたちの赤ちゃん、アマリリスだよ、どうも魔法が使えちゃうみたいで、ココまで一人で着ちゃったみたいなんだ。それで慌てて追っかけてきたんだけど・・・。」
というとユーリは驚愕の表情を浮かべて
「それってアイラの跳躍魔法をもってるってこと?しかもこんな距離をってことはたぶんお父様を目指して飛んできたってことだよね?」
たぶんそうなんだろうけれど・・・。
「一度も会ったことのない私の元にか?この子は一体なにを・・・」
お義父様がそうつぶやいている途中屋外でドーン、ドーンと着弾の音が聞こえた。
驚いた様子のユーリとエッラが慌てて室外に出る
「アミ、お義父様と一緒にリリをみてて!リリ、ボクもう遠くには行かないから、おとなしくココで待っててね?」
そういってボクは外に出る。
ユーリとエッラに続いて外に出ると・・・すぐ近くにある建屋が燃え盛る炎に包まれていた。
「これは・・・」
「あのまま寝てたら危なかったかも知れませんね」
そういいながら水の魔法で消火をし始めるエッラ
「アマリリスのことで命を救われた・・・か、早く抱っこしに行きたいけれど・・・」
「はい、先ずは奇襲を排除ですね!」
なんだかユーリとの連携がすごく良いね?
話ながらどんどん火は消され、追加の砲撃をユーリが魔力で斬撃を飛ばして撃ち落とす。
「アイラ、君が来てくれてすごく助かる。魔力が戻ってるなら、砲兵を排除して欲しい、いつもの嫌がらせ攻撃だと思うからこのあと白兵隊がくるんだ。それを相手している間に砲兵が逃げて、明日またくる。」
毎日そんな過激なモーニングコールは遠慮願いたいな。
「わかったよ、ボクの赤ちゃんのためにもそいつらは全部排除だ!」
魔力は残念ながら結構限界に近いけれど、加速と光弾でも大体はやれるしね。
それでも念のために閉じていた羽を起動して、魔法障壁と物理障壁を念のためにプリセットする。
ボクは3倍加速状態で暁光を構え、砲撃の飛んできている方向に走る。途中に何発か着弾があり、多分ミナカタの兵と思われる兵隊が下級攻性魔法を発射しながら陣に接近していて、王国兵が対応している
魔法の使える白兵ってこんな風に投げ捨てて使うものじゃないはずだけれども・・・
(かわいいリリのために死んでもらう!)
砲撃を飛ばしているとおぼしき者の所に向かうために走る、砲撃の角度や精度からすれば恐らくおよそ1km先に見えている岩場が砲撃地点かな、まだ砲撃し始めて15秒ほどだけれど、すでに追加の砲撃はないから撤収し始めてるかもね。
15秒程で12発発射されたからたぶん砲は4門か6門くらいかな
道中苦戦してる所のミナカタ兵を何人か無力化しながら走ると900mほどだったが岩場につく
その裏側でに馬で牽引した魔導砲台2台となにやら馬車が1台逃げようとしていた。
「そこの砲兵隊!とまってください!止まらなければ斬ります!!」
声をかけるも馬車は走り出した。
(まぁ、呼ばれて止まるくらい聞きわけが良ければ、初めから戦争なんて仕掛けないか・・・一先ず左手の牽引砲の騎手を隻腕にして動きを止めよう。)
追い抜きつつ一閃する。
「があぁぁぁぁぁ!?」
突然片腕を失った兵士はのたうち回りながら落馬する騎手を失っても馬は止まらず走り続けているので荷車を切り離してやると、馬はバランスを崩して転倒してしまった。
「あー、わざわざ荷車だけ切ったのに!?」
馬には可哀想なことをした・・・足が折れてるし、王国軍が引き取るとしよう。
(あと2つは?)
3倍加速状態で15秒分まってみたけど馬を制動する様子は見られないね
2人目はどうせ同じなら最初から荷車を切り離す・・・と、おや?騎手が上手いのか馬を操作して転倒させなかった。
仕方がないので後方から首をはねた、お義父様より少し上ぐらいの年齢のおじさん
(あなたにも子や孫がいるのかな?)
でもこれも戦争だから、ボクも油断したら死ぬのだから仕方がないよね
(あとひとつか ・・・)
ボクの力は見ただろう?ならば今度こそは・・・
「止まってください!捕虜になれば命は保証します!」
馭者は若い男、フローネ先輩たちと年が近そうだ、多分18ぐらいかな?
この世界の一般的な男性ならばリコやサルートくらいの年頃の子がいるくらいだ。
(・・・止まってくれ!)
男は怖じ気づいてくれたのか馬車馬に制動をかけ始めた。
止まるのを待って、警戒はとかないまま声をかける。
「よく止まってくれました。貴方に聖母の祝福があります様に祈ります・・・名前と所属は?」
ボクの問いかけに男はおとなしく応える
「オリバー・・・オリバー・カイナス・クローバー、ミナカタ協商、ハリエ共和国第三砲兵小隊原動機管理兵です。」
その目に浮かぶ色合いは安堵?
「君たちは3人で一組?他の砲兵は先に逃げたの?」
あの短時間での砲撃の密度的に砲兵が5~6人は必要なはずだが
「いや・・・砲兵はその2人だけだ・・・。だめだ!」
突然叫んだ男、オリバーは突然王国側に走り出し・・・・!?
(っ!間にあえ!!)
加速したボクはオリバーの前に立ち、オリバーに、その後ろの馬車に向かって放たれた魔法を光弾を纏わせた暁光で打ち払う。
結構威力のある魔法だった。
一定量のダメージが予測されるときに自動発動する様にしていた魔法障壁が反応している。
おかげで背後の馬車とオリバーにも被害はなかった。
最初に腕を切った砲兵がまだついている方の腕で魔法を放った様だけれど、馬車を壊すつもりだったみたいだね。
何か知られたくない機構でも積んでいるのだろうか?
とりあえずもう片腕も切断して、ついでに頭に一撃見舞って意識を刈り取っておく。
「オリバーさんといいましたね?その馬車には何が?お味方が壊そうとしたのに何故庇ったのですか?軍事機密が入っているのでしょう?」
オリバーは死ぬ覚悟で馬車を庇ったらしく冷や汗をかいてその場でへたり込んでいる・・・。
でも喋ってくれないと、次に進めない。
「オリバーさん、今のうちに情報を話してくれれば貴方の扱いはボクの裁量で多少良いものに出来ます。ぜひ話してください。」
そういってあどけない子どもの様に首を傾げてみる。
オリバーは少し怯えているけれど、ボクの言葉には耳を傾けてくれた。
「あ、あぁ・・・この中には、子どもが、部品扱いされて閉じ込められている。」
子ども・・・?部品・・・?
「どういうことですか?もっと分かりやすく言ってください!」
「なら・・・見たほうが早い!これが砲兵が少人数で弾幕を張れるカラクリだ!」
オリバーは嘆く様に馬車の後部のドアを開いた。
すると中には何本かのチューブ状の器具と、培養槽の様な筒状の入れ物に一人ずつ閉じ込められた子どもたちが、8人並べられており、いずれもうっすらと光を放っていた・・・・。
アマリリスは周りに蛍が飛んでいる様な光りかたと、○陽拳みたいな輝きかたをします。
見つけた子どもたちは、蓄光素材的な光方をイメージしてます。
アイラを無理やり南部戦線に移動させました。
御都合主義、無理やりでごめんなさい、ミナカタ協商のみなさんごめんなさい・・・。
なろうさんに登録してみて、お話を書き始めて、3ヶ月が経過しました。なんとか書き続けられてますが、読んでくださる方が居るというのはモチベーションが揚がるものなのですね。
感謝してます!
当初想定していた部分にはまだ到達できていませんが、完結まで頑張って続けていきたいとおもいますのでできれば温かめに見守っていただければと思います。