第107話:御使い
昨夜寝る前に投稿してたつもりが、出来てませんでした。申し訳ありませんでした。
こんにちは、暁改めアイラです。
自分ではどうやって天衣無縫の能力を引き出し使いこなしたのか、わからないままにヘスクロに蔓延るオケアノス兵の殆どを斬り捨てて、追いかけてきたユーリは敵の切り札と思われた『狂剣』イオタを邪魔だといって斬り捨てた。
「マイク、アルバ!イオタの戦いに水を差したユークリッドを許すな!殺せ!!」
「はっ!」
「りょーかい」
セルゲイは側近に命令を出す。
「それにしても兵はなにをしてる!夢中になりすぎではないか?」
ああセルゲイもしかしてここ以外は無事だと思ってる?
「セルゲイ、呼んでもムダだよ、もうその建物以外に、まともに兵は残ってない」
ボクは親切だから教えてあげる。
地獄で先に逝った兵士達に不義理を責めるかもしれないからね、さすがに死後までこのセルゲイに絡まれるのは可哀想だ。
「何を言っている、俺の采配でこのヘスクロを制圧して建物に入ってからまだ2時間も経っていない、貴様が優秀なのは1年時の水練大会で戦ったこの俺が一番よく知っているがあり得ん話だ!町中に1300はいたのだぞ!?たかが3人の兵で・・・」
1年の水練大会って、ボクのうがいで敗北したくせに偉そうだね?
(ボクのこと一番知ってるのはユーリだよ)
そんな会話をボクとセルゲイが楽しんでいる間に
アルバ、マイク、他の兵達もユーリとタンバさんに討ち取られた。
「ねえセルゲイ気づいてるかな?」
ボクの問いかけの意味はセルゲイには通じない。
マイクらの死体を見てもそれが死体だと気づけない。
自分を讃える人間は死なないとでも思ってたのかな?
「おい、マイク!アルバ!これはシュバリエールのお遊びとは違う、戦争なのだぞ!遊ぶ間はない、何をやっている!」
セルゲイはまだ、なにも理解せず何者にもなれないまま
「さあセルゲイ、もはや君一人だ、守る盾はもういない。」
ユーリは冷たくいい放つ
ようやく警鐘がなり始めたのかセルゲイは渋面を浮かべる。
「所詮は頼りになるのはこの腕ひとつかよ!?」
ことここに及んで初めてセルゲイは腰に佩いた剣を抜き放とうとした。
遅すぎるけどね。
「君は、今まで何をしてきた?セルゲイ」
ユーリが盾の剣をセルゲイの、剣を抜こうとしたその腕に突き付けている。
「貴様、まだ俺は構えてないだろう!卑怯者め!貴族として恥ずかしくないのか!」
今までもずっとそうだったけれどこいつはなんでこんなに都合の良い頭をしているんだろう。
これは決闘ではないし、そもそも権力を嵩に着て今までどれだけ人を踏みつけて来たのか・・・
ところがユーリは剣を降ろし後ろに数歩下がった。
「そこまで言うなら構えていいよ?元は同じ侯爵家の者として最期の情け・・・」
ユーリが十分に距離をとると、セルゲイは剣を抜いた。
名品ではあるけれど、見た目重視で脆い作り、あれでは盾の剣を受けたら折れてしまうだろうね。
「何が情けだ!何が同じ侯爵家だ!見下しやがって!その重い剣で俺の剣戟かわせるものか!!」
殆ど抜くと同時に、セルゲイはユーリに斬りかかった、ユーリはまだ構えて居なかったけれど・・・
「一般の兵士よりは速いといえば速い、でもとても軍官学生とは思えない遅い攻撃だ」
ユーリは簡単に受けて見せる。
「ふざけるな、お前見たいなガキが俺の覇道を遮るなどと!」
セルゲイはもう一度剣を構えユーリに打ち掛かろうとするが、軽く腕を斬りつけられて剣を取り落とした。
腕を抑えて苦しむセルゲイに再びユーリが盾の剣を突きつける。
「終わりだよセルゲイ、君が奪ってきたすべての物がこれで救われるとは思わないけれど・・・何か言い残すことはあるかな。」
ユーリは何を期待したのだろうか?最期の言葉をセルゲイに求めたけれど・・・
「おかしいだろ!俺はオケアノスだぞ!俺がなぜこんな目にあわねばならん!?こんな勝手が赦されるものか!俺は!俺は!セルゲ・・・・!!」
言葉は最期まで紡がれなかった。
「おかしてきた罪の報いだ・・・同じ侯爵家の者として僕が裁こう。せめて君が、悔いてくれたならば・・・」
最期までセルゲイは己の行いの悪に気付けなかった。
「ユーリ・・・」
泣いているのかい?
ボクたちは反逆者たちを討っただけだけれども、君にとっては甥、辛いだろうけれど。
まずはこのまちの解放からだ。
傷付いた町人のためにできることをしよう
アイリスたちも呼んでケガ人の治療をしないとね。
ユーリの腕に腕を絡める
ボクもまだ力が入らないけれど、君に寄り添うことができる
恐ろしく冷たい彼の腕に、ボクの温もりが少しでも分けてあげられるのが、ボクはうれしい。
傷付いてる君の隣にいられる事すらも、ボクには幸せなんだよ?
赤ちゃんを世話していた教会と町中で子どもやけが人の世話をしていたオケアノス兵は、全部で70ほどいた。
町人を虐げていない彼らは任務と言える範囲内でのみ忠実に働いただけだとしてそのまま王国軍に帰順させた。
復興のための人手としては少ないが彼らには戦後まではこの町に駐屯してもらう事になった。
オケアノスに戻す訳にも行かないしね。
女性たちを一番大きなお風呂のある宿屋にアミが誘導して、身体を清めさせるのをボクとエッラとで担当したのだけれど、その間中、女性たちから祈りを捧げられた。
今だ落ち込んだ表情で浴室に入ってきた女たちが、まるで神王か聖母でも崇める様に熱心に手を組んで祈りを捧げ始めるのだ。
「御使い様・・・」
「御使い様、我らをお救いくださり感謝致します。」
「愚かなわたくしたちをお導き下さい・・・」
「殺された弟を聖母様の元へお連れください・・・」
「御使い様の神々しいお姿を忘れません」
そういってお風呂場に現れる女性が皆汚れたままなのも、全裸なのもきにしないで膝を折る度に、ボクは何を思えばよいのだろうか?
「皆さん、何を言ってるのかわかりません、ボクはただの学生兵です。皆さんを助けはしましたが、その・・・いろいろなものを失わせてしまいました。」
そんな御使いと呼ばれる様な神がかりであれば、セルゲイたちに寄るの大量殺戮を許しはしない
それに御使いと呼ばれるのには一つ見過ごせない点もある。
御使いは神話にでてくる類の神の使いのことであるが、聖母が生み出した存在の一つであり
美しい容姿と長い寿命を持つが、自分たちで子孫を残すことが出来ず繁栄しなかった種族のことだという。
現在も繁殖ではなく死した者の魂から生み出されて、数を保っているといわれている。
不思議なことに超加速状態で、彼女らの目にはボクは映っていなかったはずだけれど、彼女らは皆光り輝くボクの姿を見ているらしい。
その姿の美しさが、御使いを想像させたそうだ。
(美しいといわれるのは悪い気はしないが、子孫を残せないのは困るよ?)
否定しても否定しても御使い様と呼ばれるのでそのうちボクは否定するのをやめた。
町中の死体の整理、けが人の治療、ボクたちができる範囲の片付けを終え町を出るころには日付も変わっていたけれど
ボクは魔力が残り少ないまま、ユーリも何か抜け落ちた様になっていた。
それでもボクたちの任務は大事なものなので、この深夜の時間帯にもかかわらずボクたちは出発する。
タンバさんは、ここからペイロードへ向かうのでお別れした。
神楽とユーリは仮眠していたので、二人は起きたまま、ボクたちは盾の上で寝る予定だ。
「カグラ、ゴメンね?移動を任せてしまってばかりで。」
帝国行きからこっち長距離の移動は神楽の盾に任せっぱなしになっている。
「いいえ、効率的ですから。」
神楽はボクの謝罪を気に留めた風でもなく笑う。
「確かに効率的ですよね、全員で空を飛んで移動だなんて、ちょっと考えられないです。」
神話好きな常識人ナディアが神楽の言い分を肯定しつつ少し存在を否定する。
この世界で飛行できる存在自体が貴重だものね。
朱鷺見台では結構飛べる人は居たけれど、日ノ本にはどれくらいいたのかな?
まず日ノ本で魔法を使える人どころか魔法や陰陽術、それ以外の異能力は一般にはファンタジー扱いだったし、ほとんど居なかったろうと思う。
朱鷺見台が特殊だったのだ。
「でもでもマスターやエッラさんも一人でなら飛べますよね?」
トリエラが何かに対抗してボクとエッラを持ち上げる、けれど
「私はこの盾みたいに長時間安定してなんて飛べないですから。移動ではなく戦う手段ですね」
エッラは鎧の手入れをしているままで応える。
「ボクもコレ使える様になっておいたほうが便利だよね?」
そういって神楽のほうを向いて暁天を構えるけれど。
あれ?鎧衣システムの中に神楽が盾を召喚するときにつけている、白いブレザーに下はスパッツっぽい鎧衣がない。
「あれ、カグラ、その鎧衣なんて名前?見つからないんだけど」
尋ねるとすぐに神楽は応えてくれる
「あぁアイラさん、これは、この盾もですが、魔導鎧衣ではなくて魔導鎧装システムの一部です。」
と笑いながら応え、さらに説明をしてくれた。
どうも神楽が言うにはパンツァーと異なりフォルトは実質神楽専用のシステムで、盾以外にも巨大な剣や甲冑も存在していて、膨大な魔力を用いて魔力で物質を生成することが出来る神楽にあわせて調整した偏向機のシステムらしい、無論4つ子専用機の機能全てを搭載した暁天には装備されているけれど、恐らく扱うのは難しいとの事だった。
ためしに魔導鎧装システムを起動させてみたけれどうん、うんともすんとも言わないのは、魔力切れだからなのか、それとも適性がないのか・・・・。
「魔力切れかな?起動すらしないや・・・」
そうボクがつぶやいたら、全員が思い出したかの様にこちらをみた。
「アイラ、魔力枯渇してるのならゆっくり休んでね、膝貸そうか?」
「アイラ、いきなりおいてくなんて約束が違うよ!!」
「アイラ様はもう少し御自愛なさるべきです」
「マスターすっごいキレイでしたね!」
「アイラ様に何かあったらサークラ様やアニス様になんて報告すればいいんですか!無茶しないでください」
「・・・・・」
「アイラちゃん先輩は本当に・・・すごい人です。」
「王国の勇者とやらはあそこまでのことが出来るものなのですか?」
「アイラさんがいきなり激しく光り輝いて、目の前から消えていってしまって、私、生きた心地がしませんでした。」
一人だけ落ち着いた様子、あるいは感情を意図的に押し込んでいるのか、神楽がつぶやく
光り輝いて?変身光なら包まれる様にぼんやり光ったあとすぐに変身してしまうはずだけれども?
「いつもの変身の光りかたではなくって、なんだかマスターそのものが光になっていたみたいで、すごく神々しかったです。」
トリエラは尻尾ふりふり、耳ピコピコとさせつつ上機嫌そうにこちらに擦り寄ってくる。
「上からみていてもアイラ様の仰るジャンプと加速がいつもの数倍すさまじくて、私には、アイラ様が何人もいらっしゃる様に見えておりました。」
「あ、エッラあのアイラの動き目で終えてたの?僕は無理だったよ?」
そういってユーリは膝に乗せたボクのおでこをさする。
そういえばボクとエッラはお風呂でお世話をしたついでに入浴してきたし、アミとアイリス、トリエラ、クレアも途中でお風呂に来たからお風呂済みだけれど。
ユーリはセルゲイ戦のあと、精神的疲労からか泥のように寝ていたからお風呂入ってなかったんだったね?
いま結構それなりに、大切な話をしていると思うのだけれど、君の匂いが気になって集中できないかも・・・。
(たぶん暁のときにこの匂いを嗅いだら、汗臭いって思ってたんだろうけれど、なんていうのかな、なんていうか・・・うん)
スーッ
思わずユーリの身体に顔を押し付けて匂いをかいでしまった。
「落ち着くーねむぃー。」
「アイラまだみんなの話は・・・・うんいいやお疲れ様、ゆっくりお休み。」
ユーリは収納から毛布を取り出してボクにかけてくれた。
「あ、ずるい、私もユーリのお膝で、ぬくぬくする。」
アイリスがボクにかけられた毛布の中に入ってきて逆側の膝を占領してボクに抱きついた。
「じゃあ私はアイラ様をなでてる。」
エッラがボクの背中をなで始める、優しくて落ち着く。
そのあとユーリの両側にクレアとナディアが座りトリエラはボクの足元、楽しそうに見えたのかエイラとアミもアイリスに寄り添う。
ちょっとうらやましくなったのか神楽もこちらに寄ってきてみんなで密集した形になった。
すごく温かくって中心はちょっと酸素が薄い気もしたけれど・・・
「ねぇ、ユーリ、すっごいハーレムだね?」
「あぁうん、男僕一人だね」
そういって困った顔をするユーリ、元が女の子だからそんなに女の子に囲まれてもうれしくないかな?
ボクは男に囲まれるより、女の子に囲まれたほうがうれしいので、ユーリは逆なのかも・・・?
「みんな、君のこと好きなんだからね、早く元気になってね。」
君はボクにいつも通り優しくしてくれてるんだけど、元気がないのは分かっちゃうんだよ
たとえ今は血が繋がってなくっても甥を斬った彼の心はどれほど、傷ついただろうか。
ボク一人では君の身体を温めきることは出来なかったけれど、9人がかりならきっと君だってあったかくなるよね?
そういう風に最初から意図してたわけではなかったけれど、いろいろ考えてもいたけれどソレはこんなおしくらまんじゅうではなくて、セルゲイの前でも言ったとおりボクの身体でも抱かせて、復讐に冷えるユーリの心を繋ぎとめておければ、ボクの無力感も癒せて一石二鳥って思ってたんだけれど。
今のこの温もりなら、繋ぎとめるまでもなく君の心の温度をとどめておけるよね。
(んー眠いからかな?)
考えが纏まらないや。
もうボクもこの心地よい温もりに身を委ねて寝てしまおう、明日は家族たちと会えるのだから、いつものおませでお利口さんなアイラで会いたいよね。
前書きの通り、投稿ボタンを押す前にブラウザ閉じてしまっていた様です。
眠いと思考は定まりません、支離滅裂な事を言ったり考えたり、ちょっと即物的になったり。欲求に忠実になったり(睡眠欲)・・・しているので、アイラも良くわからない思考に嵌っています。
最終的にユーリは両膝を開いて股の間にアイラとアイリスを膝枕、全体を囲む様にして周囲を固められてしまいました。
ホーリーウッド市までたぶん10時間以上、アイラが起きるまでは8時間くらいでしょうか?トイレとかどうするのでしょうね・・・。
そういえばアイラはいつの間にか膀胱が強くなってますね、長いこと天敵(尿意)に追い詰められてない気がします。