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第105話:強襲作戦

 こんにちは、暁改めアイラです。

 帝国との停戦を報告しに言ったら、北の王国と南の協商連合からの布告があったと伝えられた。

 さらに昨夜仕掛けてきていた軍勢も簒奪侯の軍勢だった様だ。

 昨日のうちに装備を回収し調べさせたそうだ。


「今王都には超長距離通信可能な、高位結晶魔法使いがおらぬ、そなたらに西への伝令を頼みたい。」

 ジークは昼になってからボクたちを呼びつけて言った。

 つまりまだ東側の山林に4000ほどの敵兵が潜んでいて、早ければ後1日ほどで北西からセルゲイの2000も到着する事が予想される。

 これだけの数が潜んでいては城は空には出来ないため南部北部への増援を西に頼みたいということらしい。


「南部北部への伝令は如何為さるのですか?」

 ユーリが不足している伝令について尋ねると

「それらは王国が誇る三隠密が担当する。すでにナガトがドライセンに向かって、使者として向かっているが、ペイロードにはタンバ、スザクにはハンゾウを向かわせる予定だ。」

 以前アミの父にあったときにも少し気にかかったけれど3つ並べられると違和感しかないね。


「トノ、その3名のコードネームはいつから世襲されているのですか?」

 思わず口を挟む。

 慣れない呼称に首を傾げながらもジークはボクに優しい声で応える

「トノ・・・?まぁよい、これらは初代イシュタルト王キリエ・イシュタルトが奴隷出身の名前のない側室に付けた名前でな、彼の王は女性であったが、男の様に振るまい、たくさんの女性を侍らせ自分は決して夫を持たず、剣により身を立てて国を建てるも継子がおらなんだではと思われたが、彼の王が魔王バフォメット討伐に成功した折、聖母の顕現により両性具有となり4人の室との子を現在の4侯爵に、奴隷出身の3人の室との子を3隠密に、そして自身は聖母の加護により父親のおらぬ王子を授かり、最初の妻との間にできた娘とで今のイシュタルト家の礎になったわけじゃが・・・すまん話がそれたな」

 ボクから聞いたのに余りに荒唐無稽な話が出てきて絶句してしまった。


 ボクはその話聞いたことないけどこんなとこで話していい内容なのかな?

 国の始祖が両性具有の王とか、国を継いだ二代目が近親姦だとか・・・むしろ6000年以上昔の国作りの神話としてはありなのかな

 そして・・・いつか鑑定について聞いた時にも思っだけれどもそんな時代に日ノ本人が多分転生してきていたということになるね、それもそんなに昔のことなのに、少なくとも室町後期より後の人間がだ。

 つまりこれは転生前後の時間は必ずしも連続していないということかな?

(しかし、伊賀の三上忍なんてマニアックな・・・)

 織田家による伊達仕置きで名を上げた北条家家臣の小太郎ならともかく、どうして伊賀衆なんてマイナーどころを・・・


「まぁそういうわけだ。それと重要な貴族の子女を西に預ける様にする、この度の戦は国始まって以来の規模になる、なにせほぼ大陸すべてが戦場だからな」

 その時謁見の間に士卒が入ってきた。


「陛下!」

「なんだ!?謁見中だぞ!」

 不機嫌そうになるジーク


「クラウディア東より、オケアノス兵2500襲来、また北西70kmほどの地点にオケアノスの旗を掲げる1500の軍勢がヘス丘陵の辺りを移動中だと哨戒兵から連絡が!!」

 東側は昨日の逃げた連中、北西はセルゲイたちか

「陛下、僕たちが西に行く前に両方に一撃加えて行きますか?」

 長期戦になる・・・損耗は少しでも避けたいよね、ならば絶対たる個の我々が一撃加えて怯ませることは非常に有効だろう。


「頼めるか、ユーリ。」

「はい!」

 ユーリは間髪いれずに応える。

 それを聞いたジークはボクの方に向き直り。

「まだ幼く、心優しいそなたにこの様な戦働きばかりさせて申し訳無く思っている。が、王国に現在いる32人の認定勇者でも、アイラの火力、忠誠はズバ抜けている・・・、この恩には必ずや報いよう。」

 本当に申し訳無さそうに、そして情けないと自身を責める様な表情でジークが、自ら玉座を降りてボクに頭を下げた。


「ジ、陛下が畏まるなんてらしくないです。もっと偉そうに命令すればいいのですよ?」

 仮にもボクは臣下なのだから

 王が頭を下げるなんてあってはならない。

「そうか・・・、西安侯爵家ユークリッドの妻アイラよ!」

 感慨深そうに目を瞑り数秒後、迷いのない目でボクを見下ろした陛下は、堂々たる態度ボクを呼んだ。

「ハッ!」

 だからボクも相応しい態度で命を待つ


「その方らは現行の部隊のままで西安侯爵家の伝令、出立の際は東側より出でて敵主力砲兵隊にたいして一撃して離脱、その後クラナ平原北西、ヘス丘陵付近にいる敵将セルゲイ率いる部隊を撃破せよ、幸い引き連れている部隊は東出身者で固めた偽義勇兵だ、まず威嚇砲撃し降伏勧告、その後はセルゲイを討伐後もう一度降伏勧告、従わなければ殲滅して構わん・・・、そなたらはただ我王家の為に武を振るい、決して力に溺れるなかれ。」

 優しいね陛下は、元々女の子には優しい方だったけれど、王国の安寧平和の為に力を振るうので、大量殺戮の汚名は王家が受けてくださるらしい・・・ならば。

「はい、アイラ・ウェリントン・フォン・ホーリーウッド、王国の家族のため、王命により、王国の敵を除きます!!」

 さぁ、行こう、大陸から戦をなくす為の戦いに・・・




 昨夜十分に休息をとったボクたちは意気揚々と飛行盾に乗り、離陸した。

 王城の上から飛び立つ盾は横4m縦7m程もある馬鹿げた大きさだけれど11人も乗ると手狭に感じる。

 行き道に同行した10人にペイロードに向かう予定のタンバ・モモチが同行する事になった。

「やや、これは確かに早うございますな、我がモモチの家はスクチという特殊な移動術を伝承しておりますがそれでも平均すればこの半分程のスピードに及びませぬ、人間は疲れますからな」

 タンバさんは、人の良さそうなふつうのおじさんだった見た目はね、それでもボクたちには彼が生粋の仕事人でメロウドさん同様の強大な単体戦力なのだと分かる。


「我ら三隠密はいずれも認定勇者ですからな、職に勇者こそありませんが、我らはユニークジョブを持っておりまする。」

 どうも表情を読まれた様だ油断ならない方だね。

「それでどうするのですかな?降りて戦いまするか?」

 タンバさんは強いけれど、魔法は得意ではないのだろう。


「このままアイラが砲撃します、後で相手にする北西の部隊は接近しますが、この部隊は既に王都に仕掛けているので、問答無用です、アイラ・・・また嫌な役をさせるけれど・・・・。」

 ユーリが心配そうにボクの頬をなでる。

「そんな顔しないでよユーリ、陛下が、ボクと君を夫婦と認めてくれたでしょ?君が守るべきものがあるのなら、ソレはボクにとっても守るべきものなんだから、ボクにも戦わせて・・・。」

 眼下には再びクラウディアに攻め寄せる軍勢、昨夜の教訓を生かしてか散開していてところどころに魔導砲を持った小隊が進軍し、城壁に砲撃を放つ。

 昨日と違うのは、ボクたちが居るのが城を挟んで逆側でないこと、近いし夜じゃないので明かりを焚いていなくっても姿が見えることだ。


「神楽、高さは400mくらいでいいよ、真上じゃあそんなに攻撃届かないだろうし。」

 一応この辺りの平原は穀倉地帯で王国の主要な食料生産地、ところどころに小さな建屋の集まりがあり、そこから農業に従事するものたちも居る、あまり広範囲を焼き払いたくはないね。

 うん・・・精密射撃かな。

「変身!」

 昨夜と同じ「災いを成す者」の鎧衣に変身した。

「ほぅ・・・驚きましたな・・・。本当に衣装が変わるのですな、ソレに、纏う戦士の雰囲気も変わりました。」


 コレは観測して射撃するための鎧衣装だからね、使う魔法も精密射撃用に調整するけれど。

 呪文を詠唱し、「熾天の光冠」を用意したボクは「光条」の魔法を用意する。

 すると、うんシューティングゲームでマルチロックしている様に、標的とみなした人影にマーカーが自動で表示されていく、爆発力はない状態で調整しているので、狙った部位を正確に貫通する様に打ち抜く非常にえげつない射撃が出来るはずだ。

 コレもこちらが飛んでいて、相手が物理バレルでは角度がつけられず、仮想バレルでは飛距離が足りないため一方的に攻撃できるからだ。

 この程度の高さならレイの減衰もほとんどないだろうけれど普通の魔砲使いには十分に一方的な高さだ。


(もしかしたらあの中には、一度すれ違った人や、ボクたちが学ぶ学び舎にかつて居た事がある人が居るかもしれない・・・それでも)

「攻撃開始、目標、これから一発でもクラウディアに攻撃をしようとする標的。」

 マーカーをつけた範囲で条件に合致したものから順に自動でマーカーが消えていく。

 今ボクの視界にあるマーカーは、彼らの命そのものだ。

 自動制御された光と炎の輪は少しずつその怒りを吐き出していく、限界まで加速された熱は攻撃をしようとしたものがその魔法を放つより前にその脳天を穿つ、せめて苦しむことのない様に送ってやる。


 半数くらい倒れた辺りだろうか、条件に気付いたらしい兵士たちが退却を始める。

 昨日今日と散々一方的な射撃を喰らってるから明日からは仕掛けてこないといいけれど。

 一方的な虐殺みたいになってしまっていて、気分はよくない。

 全力をだしてやりきっても軍官学校の試合の様な清清しさがない。

 人の命を奪いすぎてる。

 ボクの心情を察してか誰も何も言わないまま、10分ほどが過ぎて・・・

 東兵もすっかり逃げ去った後で、ボクたちは北東へ移動を開始した。



「ユーリ、暫く手、握ってていいかな?」

 グリムでも結構な数の命を奪っていたはずだけれど、ほんの数分で1000以上の顔も見えない兵士の頭蓋をことごとく穿ち、死体を平原にうち捨ててきたことが、ボクの精神を予想以上にすり減らしている。

 体温が失われていく様な感覚に震える。

 恐ろしいことに、人を殺めることよりも、ボクが人を殺めることでアイラが、ユーリやアイリスたちとかけ離れたものになっていく気がするのが怖い。

「アイラ、手だけといわずに僕の胸も膝もアイラのものだ存分に甘えて欲しい。」

 そういって、ユーリが座り膝をぽんぽんと叩く、言葉に甘えて膝枕をしてもらうと、ユーリが右手を握ってくれた。

「あ、私も!」

 そういってアイリスがボクの左手を握ってくれる

 その温かみがボクを少しは二人の側に戻してくれる。


 できることならセルゲイ隊には降参して欲しい。

 ソレならば武器を壊し、捕虜にすれば良いのだから。

 セルゲイのことは決して好きにはなれない、あの傲慢さや選民的思想はどこか虎徹を思い出す。

 別に思い出す必要もないのに


 それにしてもユーリの膝は柔らかいね?

 結構鍛えてるはずなのに、筋肉が付き難い体質なのかな?お揃いだね!

 こうかはばつぐんだ!アイラはすごくいやされた!


 それから1時間半ほど経ってクラウディアから65km程度はなれた地点に差し掛かったとき、少し離れた丘陵の手前側に小さな町が見えた。大きさはたぶん1km四方の町

 人口は3千人は行かないだろう。

 真上に差し掛かった時、その町にオケアノスの旗がいくつも立っているのに気付いた。

 名前は知らない町だ。

 ここに町があったこと自体ボクは知らなかった。

 でも、セルゲイが町を押さえたならやるであろう事をボクは知っている。


 アイツは薄汚れたやつだ、獣の様に欲望に忠実なやつだ、ナディアやトリエラを汚そうとしたやつだ。

「アレはヘスクロの町ですな、交易するなら通ることになる位置にあるので、人口は多くないですがそれなりに栄えたのどかな町でしたが、あの様子では・・・。」

 タンバさんが何かをつぶやいている、そんなことは聞きたくない。

 あの町はウェリントンだ。

 ただのどかに、日々を喜び、励み、悲しみ、笑い、ただただ過ごしていくはずだった日常を・・・。


 抑えきれなくなったボクは気付いたら盾から飛び降りていて。

 全身に風を受けながら、身体が光に包まれていくのを感じていた。


唐突に伊賀忍の名前を揃えてみました。

お気づきの方が多いと思われますが、異世界転移、転生ものと銘打ちながら、暁や神楽の出身世界は私たちの知る日本とは違う歴史を持つ日ノ本という国が存在する異世界です。

が割と適当に決めているので、突っ込みは御容赦いただければと思います。

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