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幕間5:裏切りの証明

 おはようございます、暁改めアイラです。

 グリム盆地の戦いは停止し、その前後の顛末を報告するためにジークの元へ向かう。

 任務は伝令で、気楽な空の旅だった。

 結局いつものユーリ、アイリス、ナディア、エッラ、エイラ、トリエラ、神楽、クレア、にアミを足して、ボクを含めて10人で王都に向かった、サリィはシシィたちを残しているホーリーウッドに戻るそうだ。


 仮眠から起きた後、予定通りにアンゼルスを出発し概ね予定通り11時間半ほどかけ日付の変わった深夜3時頃。

 クラウディア上空にたどり着いたボクたちは、まだこの地を離れて1ヶ月も経っていないという事を思い出すのに少しの時間を必要とした。

「どうして・・・クラウディアに火の手が上がってるんだ!」

 ユーリが焦った表情を浮かべて叫ぶ。

 盆地での奇襲からまだ4・・・5日目か、然るに今眼前の王都に上がっている火の手は一体何なのか・・・?


 クラウディアは1辺約20kmという異様ともいえる威容を誇る巨大な城塞都市だ。

 その東側の城壁沿いに火の手が上がり、民草が逃げ惑っている。

「見たところ火が上がってるのは、東側だけだね?」

 ボクは見たままの情報を口に出す。

 口に出すことで落ち着こうとする。


 東側の城壁に攻め寄せている小規模な軍勢が見えた。

 小規模と言ってもグリムの動員に比べたらのことで4000~5000くらいは居る様に見える。

 魔導砲が定期的に火を噴いてクラウディアの外壁に辺り火柱を上げている。

 城壁側からはまばらに魔法の火が軍勢に向かって放たれているのが小さく見える。


 コレは明確に王都への攻撃なのだから、どこの軍とか、目的とかは二の次でいいよね。

「とりあえず、無力化しようか。」

 そういってボクはまだ上空700mくらいの空の上から眼下の敵対勢力に対する攻撃を提案した。

「頼める?」

 ユーリはそういって頷く、だんな様の許可は得たのでボクは長距離精密射撃の準備に入る。

 前回の森と違って今回は視界も良いし流星2、3発でいいかな。間違えてクラウディアに着弾させないようにしないとね・・・あれ?意外と難しいかも。目標は内外クラウディアを挟んで20km以上離れてるし・・・目測で狙いを定めるけれど・・・・。


「あぁ、カグラもうちょっと近寄って、いまひとつ距離が分からないんだ。」

 そういって神楽に移動を頼むと神楽は

「だったら砲撃用の鎧衣に変身されればいかがですか?その間に少しは近づいておきますが、システムの補正の有無は命中精度に直結しますよ?」

 そう勧められたので、鎧衣を探す。

 あぁこの辺りでいいかな、目的のものを見つけたボクは、盾の上で「変身」をする

 身体が魔力によりうっすらと発光して変身が始まり、全身の装いが1秒足らずで変わる。


災いを成す者フォビドゥン・バード」白と青のツートンカラーの鼓笛隊の様な衣装で縁取りは金色、ボクの変身にしてはめずらしく下は腿までの長さのパンツになっている、頭の上には背の高い帽子を被っていて、内部に観測の魔法陣が組み込まれている様だ。

 うん、ためしに流星を準備すると視界になんていうんだろう飛行機を操るゲームみたいなメーター?計測器の様なモノがうつる着弾予想地点もそこまでの軌道も自動で計算されて視界に映る。

 信用していいのだろうね・・・?


 ボクは軌道に建物や城壁が入らない様に気をつけつつ軍勢の中央付近を狙って・・・ロングソードを流星として射出した。

 流星の放つ光の軌跡は、システムが予測した軌道線をなぞる様に飛んで行き半径10m程度の火柱を上げた。

 グリムでも対岸めがけて魔法を放ったりもしたけれど、その5倍以上は距離がある、その分高所からの狙い撃ちをしているのだけれど、対軍勢攻撃ではこの飛行盾からの攻撃はかなり卑怯な気がする。

 無抵抗で100人といわず死んでしまった。こちらの攻撃に怖気付いたのか残っていた兵たちは射撃を止め灯りを消して退却して行った。


「あれ、退却していくけど一旦放置でいいかな?」

 森に逃げられるとさすがにこの高さから狙撃は無理だよね。

「とりあえず目的はハルト様との謁見だし、アレだけ逃散されては追いかけるのは骨だ、今なら襲撃の直後だからたぶん起きてる、この時間なら予定もないだろうし、このまま城に向かおう。ついでにアイリスとアミにベッドを貸してもらおう。」

 仮眠をとっていたとはいえ深夜3時、アイリスとアミは既に夢の世界、ボクも眠いし、ずっと盾を飛ばしていた神楽も眠たいだろう。

 早く寝たいけれど、せっかく急いできたのだから伝言は早く済ませたいよね。


 ボクは「黒霞の娼婦」に変身しなおして盾に隠形術をかける。

 盾でこのまま内クラウディアに入るつもりなのだ。

 街の門はしまってる時間だしね。


 人の目を盗んで大盾で城の前まで到達したボクたちは、アイリスたちを起こして通常の学生鎧に戻してから城門の兵に話しかける。

 襲撃の直後だからか、こんな時間帯なのに城の中は慌しい空気が漂っている。

 思えばボクは歩いて城門に来るのはじめてなのだけれど、大きい門だね、高さが5mくらいある。

 この時間だとその隣に通用門という勝手口みたいなところから出入りする様だけれど、ユーリが城兵に話しかける。


「ユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッドだ。急ぎジークハルト陛下か、ヴェルガ殿下にお取次ぎ頂きたい、事態は分かっているつもりだ。」

 そういうと兵は少々お待ちください、と言って何かを伝声管で話してから。

「お通りください。」

 と通用門を開けてくれた。


 それからいつもジークと会う、アイラの黒歴史の塔ではなく通常の謁見の間に通された。

 少し待つと正装したジークがやってきた。

 政治官を数名引き連れている。

 ボクたちは頭を下げてしてジークが玉座に座るのを待った。

 

「ユーリ、アイラ良く来てくれた。」

「御無沙汰しております、陛下」

 ユーリがハルト様ではなく陛下と呼んだ、コレはつまりいつものノリではいけないということだろう。 


「こんな時間に来たのだ、今の襲撃のことだろう。いや・・・ソレよりも今そなたらはアンゼルスに居るのではなかったか?」

 訝しむジークにユーリとボクとで事の顛末を説明する。

 かくかくしかじか


「なんと、もう帝国とは停戦したのか・・・。確かにそこにいるクレアリグル姫は11年前に会ったときの面影があるが。」

 そういってジークはクレアのほうを見る、するとすぐに神楽のほうにも目をやり

「そなたも見た覚えがあるぞ、なんという名前だったかは忘れたが、特殊なスキル持ちの姫の付き人だったじゃろ?」

 神楽は驚いた顔でジークハルトのほうをみた。


「私の様なもののことまで覚えていらっしゃるなんて・・・。」

 たぶんジークのことだから、特殊スキルを鑑定して印象に残ったんだろうけれど、それでもそんなに以前に出会った外国の姫の御付の女の子を覚えてるなんてすごいね。

「あぁ・・いや・・・」

 バツの悪そうな顔をするジーク、もしかしてアレかい?将来いい女になりそうだなーとかそういう方向の覚え方だったのかい・・・?10歳前後の女の子にその覚え方してたならボクはジークのこと軽蔑するよ?


「そなたの黒髪が印象的での・・・」

 それくらいならよしとしよう、言いよどんだのは鑑定でスキルを見た事を隠そうとして理由を探したんだよね?ボクは分かってたよ?


「そなたらの迅速な行動のおかげで、最悪の事態は避けられた様だ。無論クレアリグル姫がユーリの側室になることと帝国領の分割統治については認める、あとあと内容は決めよう。」

 ジークは大きく息を吐く。

 最悪の事態を避けた?オケアノスが裏切って、帝国と開戦、それなりに被害もでてしまったよ?

 あとは東への仕置きが残っているよね

「最悪の事態を避けたとはどういうことでしょうか?」

 ユーリがみなの意見を代表して尋ねる。


「アミの報告の通り、簒奪候は裏切っておる、それは皆ももう判っておろうが・・・先ほど宣戦布告してきた。」

「!?」

 その場に居た仲間に動揺が走る

 やはりそうかとも思うけれど

 早いな・・・まだセルゲイも帰還していないだろうに。

 でもまぁコレでユーリが東を討伐しアクアさんを奪還する名目が出来たはずだ。

「さらに悪いことにな、最初から帝国の侵攻開始日なども決まっていたらしい・・・」

 つまりあの日の砲撃も示し合わせていたということだろう。

 裏切っていたのだからソレは予想できた。

 最悪とは・・・?


「この布告文には連名があってな、調査の結果偽造でないことは確認済みだが・・・北のペイルゼン王国、南のミナカタ協商その双方の名が入っている。」

 ソレってつまり、初めから、帝国、北の王国、南の協商、簒奪候4方向から段階的に攻め入ってくる算段をしていたということか?

 最悪というのは西の帝国に兵員を裂かれたままで残り3方向からの攻撃が始まることだったか・・・。

 簒奪候って何をするにも先ず裏切ることからなんだね・・・。

「それでは、王国はどうするのですか?」

 ユーリの質問は続く。


「幸いそなたらの活躍で最悪は避けられた、そして、帝国領の生産力が王国の体力を底上げしてくれる。幸い帝国領は他の国とは面しておらん、戦火に巻き込まれることなく、兵糧の生産が続けられるだろう。この布告文には要求も書いてあってな、サリィをオケアノスに嫁がせること、オケアノス以外の無能な侯爵家を取り潰すこと、そのつぶした侯爵家の領地の半分をルクス、ペイルゼン、ミナカタに割譲することを飲めば停戦に応じるとある。まぁ今の時点でルクスがこちらに回っているのでこの条件は反故じゃな。」


 いずれにせよ、簒奪候がどうしようもなく裏切り者で、卑怯者だというのがわかった。

 これから一切の躊躇なく簒奪候をつぶすことが出来る。

 ユーリが唇を噛む・・・

「陛下、簒奪候は討伐するとして、アクア様はどうなりますか?」

「可能なら保護する、アレは3歳から自由を奪われているからなあの者に責任はなかろうよ。」

 ソレを訊いて少し安心した顔になったユーリ。

 それからボクたちはジークに労いの言葉を貰い

 積もる話は明日にしよう、と、部屋を4部屋充てられて、休むことになった。


 停戦の報告に来たはずなのに・・・また戦争が始まるのかな・・・。

 不安が胸の中で大きくなる、帝国はクレアが平和を望んでいて、配下もソレを望んだため何事もなく終わったけれど、これからの戦はどうなるのだろうか・・・?

 ただ殺すだけならボクらでも出来るけれど、それでいつか本当にこの大陸は平和になるのだろうか?

 いつもならユーリやアイリスと手を繋いでいればすぐ眠たくなるのに、この日は中々寝付けなかった。

明日はもしかしたら更新が出来ないかもしれません

北と南の国名、今まで出してなかったはずです・・よね?

後で見返しますが今はコレが国名ということで間違っていたらこちらにあわせていく予定です。

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