第104話:停戦、そしてクラウディアへ行く前に
こんにちは、暁改めアイラです。
アンゼルスの傷病兵の治療中大きな物音に驚いて慌てて外にでたボクは帝国側から放たれる魔導砲を確認した。
アイリスと共に慌ててこれらを鎮圧したボクたちは、ユーリたちが停戦の話し合いのために向かったルルカ近くの幕舎へと急いだけれど、そこは既に血の海だった。
「アイラ、早かったね、外の砲撃音も止んだ様だけれど?」
ユーリは落着いた様子で盾の剣を異次元収納に格納した。
「ぶ、武器を持ち込んでおるとは卑怯ぞ!」
そういってエヴィアンらしきものが喚く
「先に伏兵に襲い掛からせておいて卑怯も何もないと思うけれど?エヴィアン将軍殿?」
ユーリは少し怒った様子でやはりエヴィアンだった男を睨みつける。
「その上、ギリアム様がこちらに来ているのをいいことに、外では砲撃もされていた様ですしね、初日にも似たような手を食らわされているのに、王国兵が混乱すると思いましたか?」
エッラも若干キレ気味、珍しい姿だ。
「その砲撃音も止んだところを見るに、アイラが鎮圧した様だね?」
ギリアム義父様は穏やかな表情で、クレアを抱きこんでいる、庇ったんだよね?
「今なら治療すれば兵たちも助かります、治療しても?」
ユーリがエヴィアンに尋ねる。普通逆じゃないかな?
怪我しているのは全部帝国兵みたいだし
「お願いします、助けてください・・・。我々は姫様に敵対するつもりはありません、エヴィアン将軍が姫様は拉致され利用されているのだと仰るので助けたい一心で・・・」
なんて兵たちは呻いているけれど、エヴィアンは首を縦に振らない。
「このものたちが勝手にやったことです治療も必要ない、私は誠意を持ってこの会談に臨んだ!見ての通り鎧は着ているが、剣は持っていない。」
エヴィアンは喚き散らした。
「しょ、将軍・・・・」
「そんなぁ・・・」
まぁ嘘だってバレバレだけれど、兵士たちは将軍のあまりの態度に絶望した声を漏らした。
誇りも安っぽいものだったけれど、人柄自体残念な人の様だね。
「~癒しの風よ兵たちの傷を塞ぎ安らかな眠りを~ヒールウィンド!」
返事を待たず、心優しい妹が、広範囲に作用する止血と鎮痛の魔法を唱えた。
この魔法ではケガはほとんど治らないが、出血を止め、痛みを抑えるので、とりあえず楽にはなるし、体力の低下も抑えられる。
『動ける状態』の兵士ならコレで戦力に戻るけれど、既に将軍に対し忠誠はなく、戦力差もはっきりしているため兵たちは座りなおして、武器を遠ざけた。
「な、何を勝手に治療しておるか!このものたちは私の命令を聞かず、この会談をぶちこゴワァ!!」
謎の風魔法を纏ったエッラの拳が鎧の上からの打撃にかかわらずエヴィアンの意識を奪った。
「もう会談も必要ないですよね、ここの兵たちが各部隊に停戦を伝えればよろしいでしょう?」
この事態になる前もよほど腹に据えかねる会談だったのだろう、エッラは実に清清しい表情で述べた。
「そうですね、アイリスさん、アイラさん、兵たちの治療をお願いできますか?この者たちは将軍に従っていただけの者たちです。」
そういって義父の腕の中から離れたクレアが頼むので、ボクたちは治療を開始した。
傷も新しく、出血も先に止めているので傷を埋める治療を開始した。
ユーリたちは上手く手加減できたらしく、この幕舎の中には死人は居なかった。
エヴィアンは後からたぶん処刑になるので、治療もしてやらない。
こうして20分後には幕舎内の全ての兵士24名が動き回れるまでに回復し、グリム盆地内の各部隊への伝令に走った。
「とりあえず、グリムはコレで終わりいいのかな?」
ユーリがクレアに尋ねると、クレアは安心した表情で
「そうですね、あとはギリアム様方主導のもと、ここグリムに村をつくり本格的に国境をなくす準備ですね。他の2方面の停戦が上手くいくかはうちの大臣たち任せになってしまいますが、われわれは先に国王陛下の下へ参りましょう。どれくらいかかりそうですか?」
「そぅ、だね帝都より少しだけ距離があるから、大盾のほうで12時間くらいじゃないかな?」
ユーリが応える。
そうか普通なら10日かかるあの距離が空を飛べばそんなものなのか・・・。
それでも時速45kmくらい出ている大盾でその時間かかるというなら、500km以上あるってことだけれど。
「それでは、我々は休憩してから、王都クラウディアに向かいます。ギリアム様、何卒、ルクスの民を安んじてください。」
クレアは深々と義父に頭を下げる。
「分かった、そなたはこれからユーリの側室になるのだから、もう娘の様なものだ。あまり畏まるでない、父にも私から伝えておくので陛下の許しを得たら、ホーリウッドにきなさい。」
そういって義父はクレアの肩に手を置いた。
「えっとソレじゃ、王都に向かうメンバーはとりあえずアンゼルスでお風呂でも入って、英気を養おうか、また長時間の空の旅になるし。」
ユーリが号令し、一先ずボクたちは全員でアンゼルス砦へ戻った。
大盾でアンゼルスの屋上に到着すると、義父は大いに興奮した様子
「すごいな魔剣使い殿は!この様に空を飛ぶ手段を持っておるとは、貴女の様な方が敵のままでなくて本当に良かった。」
この世界に空を飛ぶ魔法はあまり広まっておらずボクの知っている範囲で空を飛べるのはボクとエッラと神楽だけか、あとは、ジル先輩が結晶に乗って浮遊移動できるけれど・・・。
飛ぶのと代わらないLvで動き回れる人なら何人か居るんだけどね。
「えっとソレじゃあ、時間もやや押しているし、15時まで2時間半休憩でその後僕たちはクラウディアに向かうわけだけれど、誰が行くのかな?」
ユーリが尋ねる。
「姫様、ユーリさん、アイラさん、アイリスさん、私は固定ですよね目的と移動法的に」
神楽が一先ず固定の人員の名を挙げる
「それからエイラもたぶん久しぶりにママに会いたいだろうし。アミはセルゲイたちを追いかけた話を王様にしてもらいたいから一緒にきてもらおうかな。」
「はい!アイラちゃん先輩。」
アミは快活に返事をする。
「アイリス様が同行されるなら、私も参ります。」
とエッラが言う。本来エッラはアイリス付きだものね。
「私はホーリーウッド兵だから、残るよ。」
とはマガレ先輩
あとはサリィ、ジル先輩、ナディア、トリエラがどうするかだけれど、メイド二人はたぶん一緒に来るだろう。
「誰がついてくるとかは、こっちで話しておくから、アイラたちは休んでて、けが人の治療に、戦闘につかれたでしょ?カグラも先に休んでて、昼にはまた飛んでもらうから仮眠しておいたほうがいいかも。」
なんてユーリが言ってくれたのでボクたち3人は先にお風呂を頂くことにした。
「じゃあ、まだ頑張ってる皆には悪いけれど、ボクたちはお風呂入ろうか。」
「わーい」
アイリスが全身で喜びを表す
子どもみたいで可愛い。
いやぁ子どもだけども・・・このところ気を張っていてばかりだったから、アイリスの子どもらしいところを見るとほっとする。
着替えは・・・まだ十分収納の中に入っているしこのままいこうかな。
あぁそういえばメイドが居ないや。
「ソレでは、私がお二人の湯浴みのお世話をさせていただきますね。」
と神楽が名乗りを上げた。
いいのかな?神楽にしてもらって・・・っていうか神楽とお風呂!?
「カ、カグラ、いいの?大丈夫?」
今の神楽の年齢なら、ボクに裸を見られるのは恥ずかしいはずだけれど。
「これでも、帝国で長いこと姫様に御仕えしてますから、一通りのご奉仕はいたしますよ?」
とんと胸を叩いて神楽が誇らしげになる。
そういう意味じゃないんだけど・・・まぁ神楽が気にしないならいいか。
・・・というわけで、3人でお風呂に入った。
脱衣所でぽんぽんと服を脱ぎ散らかしてしまうアイリスに対して、神楽はお行儀良くたたみながら脱いでいく。
アイリスは昔はボクが生活習慣を教え込んでいたけれど、ホーリウッド以降はメイド達にまかせっきりの生活をしてたからもうちょっとお行儀良くさせないといけないかな・・・。
ボクは鎧衣を先に解いて・・・と。
元からきていた服を脱いでたたみ収納に納めた。
アイリスの分もボクの収納に納める。
それから神楽に体を洗ってもらう、確かに言うだけあって神楽の洗い方は実に堂に入ったものであった。
ものすごく女の子を洗いなれてる感じで、もしかしたらトリエラやエッラよりも上手かもしれない、太刀打ちできるのナディアくらいじゃないかな?
それにナディアのときも同じだけれど・・・こう、なんていいますかね?
体を洗ってくれる神楽の、約12年前とは比べ物にならないほど膨らんだお胸がですね?
ふにゃんふにゃん当たるんですよ・・・?
「アイラさんどうしてさっきから縮こまってるんですか?少し洗い辛いですっと次は前ですね。」
「ま、前はいいよ!自分で出来るし・・・。」
(前なんて洗ってもらったら、神楽の体を正面から見ちゃうじゃないか!)
「ふぁー、カグラちゃん体キレイだねぇ・・・おっぱいもナディアちゃんよりは大きいし」
(ナディア以上・・・だと!?)
ナディアでも最近はD~Eくらいの胸部装甲だというのに・・・それ以上だと!?
「そんな・・・こちらにはエレノアさんもいるじゃないですか?すごいですよね、エレノアさん、暴力的な体してますよね。」
確かにそこの厚いブーツを履いて153cmしかないのに(はだしだと149cm)胸部装甲強度Hはちょっとやりすぎだと思うのです。
神楽もエレノアも子どもの頃から知ってるから、あれがココまで!?と思うのは一緒なんだけれど、それでもやっぱり神楽は特別だよ、なにせ暁の初恋だもの・・・。
結局抵抗むなしく神楽に前も洗われてしまった。
シミ一つない神楽の肌はアイリスの言うとおり大変美しかった。
エレノアほどではないけれど21歳という割には身長は低く、細っこい体はまるで中学生みたいだけれど、その立派に育った胸と髪と同じ色の下生えがもうあの頃の神楽とは違うのだと知らしめる。
そんな神楽が一生懸命にボクの体を洗ってくれるのはある種の特殊なお店みたいで背徳感を感じる。
行ったことないんだけれど。
それからお返しにと二人がかりで神楽の身体を洗い、ゆっくり暖まってからボクたちはユーリの部屋げ向かった。
が・・・・。
「うわぁ・・・」
(ボクのハジメテの思い出の部屋が・・・)
なんということでしょう天井に穴が開いていて部屋の中には瓦礫が散乱しているではありませんか!?
「どうも屋上に被弾して崩れたみたいですね。修理しないとココでは今日は寝れそうにないですね。」
「すごいねー」
神楽とアイリスはぼんやりと天井の穴を見ている。
「マガレ隊の部屋に行きましょうか・・・」
ボクは気にしていない振りで部屋を提案する。
マガレ隊の部屋に着くとベッドに腰掛ける、一人一台でもいいけれど、今日はなんとなくアイリスを甘やかしたかったのでアイリスを抱いて寝ることにした。
「おいでアイリス・・・抱っこしたげる」
「わー、いいの?うれしいなぁ、アイラの抱っこ、私好きだよ」
双子だからね、お互い隣にいるのが一番落着くよね。
「ソレでは、私はお二人が寝るまで、背中でも叩かせていただきますね。」
「うわ、至れり尽くせりってやつだ・・・。アイラー私もう寝ちゃいそう・・・。グゥ」
そういってアイリスは本当に眠りについてしまった。
「ただでさえ寝つきの良いアイリスがすぐに寝ちゃったね。」
神楽に言うと
「疲れていたのでしょう」
といいながら神楽はボクを見つめてくる。
「アイラさんももうお眠りください、1時間半したら起こしますから。」
それならば・・・とボクも良く考えないままで意識を手放した。
極上の人間湯たんぽアイリスと、神楽の手によるトントンは気を抜いたボクを一瞬で眠りに落とした。
気付いたらこんな時間だったので、まだクラウディアまでいけてませんが投稿。
停戦したので例の当初の予定、当初はココまでの帝国戦で、シリルとシアが死亡、ナディアが大怪我する予定でした。
エッラがシリルの剣を使う展開とかも考えてましたが、現在の展開になりました。