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第102話:戦地の休息

 こんばんは、暁改めアイラです。

 無事帝国との講和の準備を取り付け、クレアを連れてアンゼルスに引き返したボクたちは、束の間の安らぎを求めて、寝室に入った。

 のだけれども・・・。


 夫婦間の営みを見せて欲しいといいニコニコと手を合わせて微笑むクレア。

 ユーリもボクも言葉が出ないままで長い沈黙が部屋を支配した。

 それからどれくらいたったのか、神楽が顔を真っ赤にしながらクレアの肩に手を置きながら

「ひ、姫様!一体何を言い出すんですかぁ!はしたないですし、そういったことは、その・・・・二人だけのものですよ!」

 神楽は顔を真っ赤にしながらクレアをゆする。

 しかしクレアは平気な顔


「それは普通の若者であればそうでしょうけれど、私はルクセンティア、ユークリッドさんとアイラさんはホーリーウッドの継子を産まなければなりませんから、ちゃんと義務を果たしているかメイドが付いて確認するものでしょう?」

(ふぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?見られながら!?)

「そ、そうなの!?」

 ユーリの顔を見る。


「ん・・・まぁそういう家もあるよね?皆が皆ボクやアイラみたいに相愛の結婚できるわけではないからね、ボクたちは最初から前提が違うんだよ。」

 ユーリは少し困った様な表情で、頬をかく。


 長い髪を後ろで簡単に束ねただけのシンプルな髪型。

 13歳になって成長期を迎えてもまだソプラノの声と、可愛い寄りの外見をしていて、前世が女性だった為かアイラに着せる服の趣味も可愛いものが多い。

 そしてそんな彼の見せる表情がボクは好きだ。

 神楽の前でユーリに見惚れたり、ユーリの前で神楽を愛おしいと感じると、少し二人に申し訳ない気持ちになってしまうけれど、なかなか制御できるものでもない。

(あぁ、困った顔も可愛いよね・・・ユーリは)

 よし、ユーリをみてたら落ち着いた。


「クレア、ボクたちはその、義務とか関係なく睦みあっているので、監視の人に見られたままといったことは必要ないんです、なので、ナディアたちの前では多少いちゃくことはあっても、その・・・夫婦の秘事は見せられません・・・恥ずかしいですし、そもそもボクとユーリはまだ結婚はしてないわけですし。それに神楽だって、いきなりボクとユーリのいちゃいちゃなんて見せられても困るでしょうし・・・ね?」

 神楽は元々暁の婚約者だったのだから、そのボクが他の誰かといちゃつくのや、ましてや子どもを生むところなんて見たいはずがないのに、それでも神楽は覚悟をもってボクと一緒にいることを選んでくれたのがうれしかった。

 それだけに暁が神楽にしてやれなかったことを必要以上に見せ付けてしまうのは、出来れば遠慮したい。


「むむ・・・それでは、今日はされないということですか?あぁーあーせっかく美少女の様な美少年と美少女がいちゃいちゃしてるところを見学できると思いましたのに・・・残念。」

 クレアは興味を失ったみたいに、ベッドに倒れこんだ。

 それか10秒ほどで寝てしまっていたのは寝た振りではなかったと思いたい。


「それでどうしよっか?このベッドはそれなりに大きいし、ユーリとボクとクレアは眠ることが出来るけれど、ナディアとカグラは隣の部屋に戻る?」

 隣の部屋といっても結構離れているけれど。

「いいえ、私はこちらのソファで御一緒させていただきたいと思います。」

 とナディアはベッドから離れた側のソファを示した。

「じゃあ私はそっちのソファで。」

 神楽はベッドに近いほうのソファになった。


 立て続けの長距離移動になれない偏向機の多用、ボクもへとへとだったのか、横になってから僅か数分でボクは意識を手放した。




 朝目を覚ますと最初に飛び込んできたのは、ボクの顔を覗き込んで微笑む神楽の笑顔だった。

「・・・・おはよう、カグラ。」

「起こしてしまいましたか?あまりにもアイラさんの寝顔が可愛かったもので・・・すみません」

 他は誰もまだ起きていない様だ。

 赤くなっている神楽がかわいいので軽く頭をなでてやる。

 すると何がおかしいのか神楽がクスクスと笑い出した。

「どうしたの?カグラ。」

「いえ・・・手はちっちゃいし、見た目は可愛い女の子なのに、なでなで一つとっても、暁さんなんだなぁってなんだか幸せです、ずっと遇えなかったのに今こうして一緒にいるのが夢見たいで」


 カグラは、ボクを追いかけたせいで、見知らぬ世界に12年もいたのだ。

 彼女の苦労に、愛にボクは報いてはいない。

「カグラが望むなら、ボクはアイラとしての全てを失っても君の側に居ようと思う、ボクはユーリを愛しているけれど、カグラのことが今も大好きなんだ。」

 ボクは言葉を口に出しながらすこしずつ涙が出てくるのを止められなかった。

 するとカグラはボクの頬を両手ではさんで

「そんなこと言わないでください、私はアイラさんを縛り付けたりしたくないです、でも私のお願いを聞いてくださるのなら・・・・、アイラさんに赤ちゃんが出来たら、私にも抱かせてくださいね。」

 そういってにっこりと笑った。



 さて今日の午前中はちょっと2組に分かれることに

 ユーリ、クレア、神楽、マガレ先輩、エッラ、アミは帝国軍との停戦交渉組、グリムの前線にはエヴィアン将軍が居るらしいけれど、おとなしく従うだろうか?

 そしてボクとアイリス、サリィ、トリエラ、エイラ、ナディア、ジル先輩はぜんぜん手が回っていない傷病兵の治療に回ることになった。

 少しでも治癒魔法の心得があれば、もっといえば解毒魔法や浄血魔法があるだけでも助けになるそうだ。


 ボクはせっかく偏向機があるので治療に適した鎧衣に変身することにした。

 普段のボクならば治癒は下級まで、解毒と浄血も下級に行くかどうかだけれど、鎧衣の力を借りれば治癒術自体は下級までだけれど、効果を高める事が出来る。

 選んだ鎧衣は「月の献身サーヴァント」テノンさんが雷凰以外に使用していた鎧衣で。

 外見は・・・メイド?それもスカートが短かったり、妙にフリルが多かったり下着も妙にフリルとリボンの多いドロワーズで、なんというか非常にマニアックなつくりだけれど、色は基本の白と黒。

 黒霞の娼婦の時の例があるので、神楽に用途を聞くと

「休日にテノン姉様が、リア姉様のお世話を焼くときに使っていた鎧衣です、支援っぽいもの全てを高めてくれるので使いやすいですよ。」

 とのことだった。


 さて、ケガ人を中心に休ませているアンゼルス後方の幕舎のほうへきたけれど・・・・。

 うん確かにひどいねこれは

 現場には看護の人や医者、治癒術士が走り回っているけれど、けが人が多い。多すぎる。

「アイラ、早く手伝おう!」

 心優しい我が天使いもうとがやる気に満ちている。


 それからボクたちはサリィ、エイラ、ジル先輩は解毒と浄血を

 ボクとトリエラは軽い怪我の治療。

 アイリスは重傷者を中心に治療を行った。

 ボクもメイド姿だし、皆年若い女の子なので面倒ごとが起こることも懸念していたけれど、サリィが一緒にいたおかげか、ボクたちに狼藉を働くものもおらず。

 兵士たちは皆無事重篤な状態を抜けた。


 ボクとナディアは所詮は専門ではないので治癒魔法といっても軽いケガしか直せないけれども、重篤なものをアイリスが次々軽度のケガに変えていきそれをボクたちが治すので、かなり楽をさせてもらった。

 心優しいアイリスは血や傷を見るたびに、小さく悲鳴を上げながらも、ついに最後の重症者をも治癒してしまった。

「ありがとうございます、サーリア様、お陰様でかなりの人数が命の危機を脱しました。」

アンゼルスに配備されていた治癒術士が申し訳なさそうな笑顔で礼をのべる。

「いえ、私はほとんど何も出来ませんでした。ほとんどはこのホーリーウッドの治癒術士でユークリッド様の奥方のアイラちゃんとアイリスちゃんの功績です」


「おぉ!このお二人が、ユークリッド様の噂の双子姫様でしたか!」

 そういって治癒術士はボクたちに向き直って頭を下げた。

「ユークリッド様は良い嫁御を持ったのですな。これほどの治癒術士はスザクにもそうはおりますまい、アイリス様の上級治癒もさることながら、アイラ様の治癒術も到底下級治癒術とは思えない治癒速度と精度でした。それになんといっても可愛らしい。」


 ボクは鎧衣というブーストをしているから術の構築と魔力効率が高い。

「専門の方に誉めていただいて光栄です。またホーリーウッドの民はボクにとっても家族の様なものです、間に合わなかった者たちには申し訳ないことをしました。」

 ボクたちが来たときすでに亡くなっていたものや手遅れの者もいた。

 アイリスは助けが間に合わないまま死んだ兵士の手を握り、涙を堪えて50人以上の重症者を治療したのだ「力不足でごめんなさい、助けられなくてゴメンなさい」なんて辛そうな顔する必要はないのに・・・なぜアイリスはそこまで追い詰められているのか姉のボクにもわからないくらいだったけれど


「アイリス・・・そんなに自分を責めないで、ボクたちはできる限りのことはやりました。」

 今アイリスは、死んだ兵士、恐らくは腹部裂傷により内蔵を傷つけられて死んだ者、ボクたちが朝ここにきた地点で冷たくなっていた者の手をアイリスは握りしめて涙を流している。

「そうです!アイリス様の治癒術で救われた者はこんなにおります、ですから間に合わなかった者のことはどうぞ笑って、見送ってください。あなた様の様な若く可愛らしい乙女の涙を見れば亡くなった兵が未練に思いいつまでも彷徨うことになります、ですから、どうか・・・」

 治癒術士たちもアイリスのことを慰めてくれる、治癒術が優れているとはいえアイリスの様な感じ方の敏感な娘をこんな地獄に連れてくるべきではなかったのかもしれない。


「アイリス、ホーリーウッドに帰る?ボクなら君ひとりくらいなら1日でホーリーウッドまで連れていけるよ?」

 そういったとたん・・・

「いやぁ!」

 アイリスが短く叫んだ、そして


「アイラと一緒にいるの!離れないよ、私にはアイラしか意味がないの!アイラとじゃなきや・・・置いてかないでよ・・・ふぐっうぅ・・・ウァァァァァ・・・・」

 ひとしきり叫んだ後でボクの胸にしがみついてアイリスは慟哭した。

「アイリスごめん、置いていくつもりじゃなくて、ただ少し気分を変えた方が良いかと思ったんだ。ごめん・・・」

 泣き出したアイリスに、泣かせてしまった妹にボクは謝ることしかできない。


 数分たってアイリスは泣き止んで、まだ少し鼻をすすってるし、泣いて腫れた顔はとてもユーリには見せられないものだけれどそれでも弱々しくアイリスは微笑んで言った。

「ごめんねアイラ、ちょっと弱気になってたみたい、もう大丈夫だから、もう泣き虫はいないから・・・だから、ずっと一緒にいさせてね?」

「ボクはアイリスのお姉ちゃんなんだよ?ずぅっといっしょ・・・だよ。」

 多分人死にをたくさん見すぎて感情が昂り過ぎたんだよね?

 だからボクと一緒に抱きしめ合っていれば、自然に治るよね・・・

 驚いてサリィたちもみんないつの間にかボクとアイリスを囲む様にしていた。

 取り敢えず大丈夫そうだと目配せしていると・・・・


(ドゴーン!!!)


 と、大地を揺らす様な轟音が砦に響いた。



先にタイトルを付けて書いたんですが、そんなに休息できてませんね?

他者もそろそろ更新したいのですが、なかなか字数が書けなくて進みません、でもなんとか15日辺りには更新しようと思います。


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