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第100話:姫の企み

 こんにちは、暁改めアイラです。

 内務卿との武力衝突はクレアの策謀により回避されたらしい、ボクたちは謁見の間に座椅子を並べて座るという非常に現実離れした光景を作り出して、クレアの話を聴いている。


「それでは・・・、情報を精査したところ確かにウェリントンを襲撃した賊徒の規模と時期が山賊部隊のそれと一致し、原因が、森の減退による国境の勘違いだと判りました。」

 森の位置で国境を勘違い?そんな杜撰な国境の覚え方で・・・。

「森が少し減ったくらいでウェリントンまで来るなんて対した練度の私兵隊だったのですね」

 反吐が出る。


「その調査の際ゲイズシィから明かされるまで秘匿されていましたが、森林が僅か3、4年の間に東西30km南北25kmに渡って減退していたのです。そしてその理由は・・・」

 クレアがいいあぐねたところで神楽が言葉を継ぐ

「私が古代樹の森の神器の封印を解いたから・・・だからアイラさんの故郷が、滅んだんです、和平を望む陛下や姫様の夢が・・・」

 神楽は泣いていた。

 涙は流れていない、声もしっかりしている、それでもボクには神楽が泣いているとわかる。

 かけるべき言葉はわからないけれど


「カナリア、あれは仕方ないことです、誰も神器が地形を変えているだなんて考えていませんでした。」

 クレアが神楽をなぐさめるが 、神楽はイヤイヤ状態になってしまった。

色々と慰めの言葉をかけるけれども神楽は耳を塞ぎ首を振るばかりだ

 話が止まってしまった、仕方ないね。

 ボクもこんな状態の神楽を見てしまったら落ち着かないし

 ボクは椅子から降りると神楽のイスの後ろに立ち、肩からへその辺りまで腕で抱きしめ、様としたけれど背が低いアイラではおぶさる様にして胸の辺りを触る形になってしまった。

「ひゃ!?ア、アイラさん?」

 うん、ゴメンね?わざとじゃないんだよ?


 ただ暁の頃によくした様に後ろからぎゅっと抱きしめてやったことで神楽は落ち着いてきた。

「ねぇカナリア?ボクは君に会えてうれしいよ?」

「アイラさん?」

 ボクの呟きの意図が図りかねるのか不思議そうに振り返る。

 その目に浮かぶ不安は言葉で慰めてもきっと意味がないけどボクは神楽のそんな表情をみていたくないんだよ。


「ボクたちはその一瞬、瞬間に目の前にあるものを切り開いていくことしか出来ないけれど、それでも今があるはいままでの積み重ねなのだから、ボクは君に出会えた今を決して後悔の上に成り立ったものにしたくないんだ、反省するのも、思い返すのもいい、でも今の君に笑っていて欲しいんだ。」

 言葉はなんだっていい、ただずっと神楽の頭を抱いてなで続けた


「カナリア、アイラさん・・・大丈夫ですか?辛いなら退席してもよいですよ?」

 クレアがカナリアの心情を慮って退席を勧めるけれどボクは続きを聞きたいので無論残るし、神楽はボクを膝の上に持ち上げて抱っこしてこの場に残る意志を示した。

 少し恥ずかしいけれど神楽がこれで落ち着くならばボクは甘んじて抱っこ人形になろう


「まぁそうやってホーリーウッドと将軍領の間で少し緊張が高まっていました、そしてゲイズシィは父が病に伏せた頃から懇意のエヴィアン将軍を始め徒する諸将と結託して戦意を鼓舞し始めました。エヴィアン将軍らは代々将軍家の血統でありながら戦争がなく、一部から金食い虫扱いされる日々に辟易していたそうですぐに乗りました。」

 本当は軍は金食い虫になっているくらいが良いのだけれど、エヴィアンやその一味の安い誇りはその現状をよしとできなかった様だね


「やがて父がなくなり、彼らは私に婚姻を迫る様になり、私が婚姻するまでは父の葬儀もさせないと、武力を翳して要求してきました。そしてそこから賭けを持ち出すまでは早いものでした。我々はそれぞれはじめからエヴィアンとゲイズシィの目論見を外すために賭けに参加し、私の代理人として料理長に名前を借りました。そして今日帝都の陥落と相成り、私の勝ちとなりました。」

 仮にそうだとして、将軍らは敗北をおとなしく認めるだろうか?

「内務卿らは将軍らの反目を危惧し万が一にも彼らが敗北を認めず抵抗したときに備えての布石として将軍達よりになっていただきました後はこれらを将軍とその隊のものたちに告げて、敗戦処理ですね。」

「もしも・・・」

 ユーリが目を瞑り重々しく口を開くとすべての視線がクレアからユーリに移る


「もしも将軍達が従わなければ?もしくはエドワード閣下やジークハルト陛下が帝国を許さなければ?君達はどうするの?」

 この訳のわからない戦争でホーリーウッドやペイロードも少なくはない死傷者を出した。

 それが帝国が器にないものを将軍に据えていたせいだと言うのだ。

 あるいは、ウェリントンの家族達・・・・神楽には後悔しない様に言ったが、エヴィアンやゲイズシィの軽挙妄動を許すわけにはいかない。


「この度の戦は帝国の内患によるものですがそれだけではありません、王国の内患も影響しています。」

 あぁそういえばそうだったね、裏切り者が居たのだ。

「王国の4大侯爵の一角、東征侯爵オケアノス・・・この度の戦の王国側の仕掛け人は彼らです。」

 まぁわざわざ教えてくれなくっても、大体分かってる。

 連中が何を目的にしていたのかはいまひとつ分からないけれど、明らかに動きがおかしかった。

 この戦争中の連中の動きをまとめると、王領から預かった王国兵3000と学生を中心とする義勇兵を輜重隊や警備に充て、義勇兵に偽装した合計2500弱の東兵でツェラーとフェムスを中心に配備その一部が戦場をかく乱し、味方に大きな被害を出してくれた・・・。

 ボクたちが出陣したときにはアミがセルゲイを追って姿を消したままだった、無事だといいけれど


「つまりその内患を吐き出すための痛みとして飲み込めということかい?」

 ユーリの目線は鋭い、どちらにせよユーリはオケアノスをいつか倒すつもりでいるので、今回のことはそのキッカケになるだろうけれど、死んでいったものたちが、尊厳を冒されたものたちが多くいるのも確かなのだ。


「ペイロード家には、ヘルワール周辺をすべてお渡しします。あそこも恐らくは数年以内に利用方法のある土地になるはずですし、帝国側の町を差し出します無論領民には優しくしてくれる前提ですけれど。ソレからジークハルト陛下には帝国の3宝の一つ炎雷の剣をお預けいたします。」

 炎雷の剣、と言った瞬間帝国の3大臣の表情が驚愕に染まる。

 3宝というからには大事なものなのだろう。


「それは?」

 ユーリが訊きかえすとギエンがその疑問にすぐさま答える。

「ユークリッド様・・・炎雷の剣とは、帝国の軍権を司る国父様の剣でございます。」

 国父のって、それってもう6000年以上昔だよね?原型とどめてるのかな・・・?ってあぁこの世界には保存の魔法があるのか、いやそれでも古いけれど。


 つまるところ帝国はその軍権を王国に預けて臣従に近い状態となる。

 ソレはきっと国の指導者としては下策だろう、彼女をののしるものも居るかもしれないそれでも、ボクにっとてはこれから家族になるもののわがままなのだから、彼女の思った通りに事が運ぶと良いと、祈るのだ。


 それから、ボクたちは停戦のために各地に派遣するものを決めた。

 北方にはモール料理長とカモフ法務卿が、2500の兵と共に向かう

 南方にはもう一人都に残っていた帝国最大戦力の一人槍使いのセメトリィという者がギエンに随行するそうだ。


 帝国4騎士と呼ばれるものは帝国の単体の最大戦力で、魔法による力押しのカナリア・ローズフィールドこと神楽を現在最強としていて、その下にセメトリィ、モール料理長、先日捕虜にしたバル何とかが続くという。

 振り返って神楽に尋ねると「ほかの二人はそこそこの実力者で、バルロールさんも弱くはないのですが、素直な方なので対人戦はあまり向いてないですね。ただ人を鍛えるのは上手いです。」

 との評価だった。


 ボクとしては、ウェリントンの直接の仇・・・といえないこともない、南東の森に出兵したらしいゲイズシィ軍に対しての降伏勧告もしてみたかったが、グリム盆地で戦いが継続しているはずのホーリーウッド軍に戻り、停戦させ、一日も早くクレアをジークのところに連れて行きたいのも確かなので、アンゼルス砦経由王都への最短コースを行くことになった。


 それから少し遅めの昼食を摂り、ボクたちは行きの様に隠れていく必要もないので、行き道のメンバーにクレアを乗せて巨大飛行盾のほうで移動を開始した。

 この盾でも4時間半ほどでアンゼルスまで着くようなので夜にはアンゼルスに到達できるだろう。

 それにしても盾で飛ぶというのは不思議だ・・・・。


 巨大飛行盾の上はそれなりに広いので、ボクは神楽のリクエストで鎧衣の試着をして時間をつぶすことになった。

 神楽のリクエストは、かつての家族や友人の鎧衣になって欲しいということで。

 先ずは神楽の姉、天音義姉さんの「天衣無縫イノセントガール」コレは見た目はサマードレスとスリップの間くらいの薄手で透け感がある、しかし決して透けない不思議な感触の純白の衣装で。手も足も飾りなく素肌をさらし、右肩の肩紐のところにだけやはり純白のリボンが斜めに垂れ下がっている。

 可愛いし、天使の様な外見と自負しているアイラにはよく似合っているけれど・・・。

 この衣装の特性は「絶対防御」と「浮遊」で常に水の中に居る様に衣装はゆれており、体は自然と浮遊する、魔力の消費なしでフワフワと不思議な感覚で空中を移動できる様だ、そして絶対防御の能力はどれだけしたから覗き込んでも絶対にスカートの中が見えないという鉄壁の防御を言うらしい。

(・・・・・?)

「ねぇカグラこれ戦闘用だよね?」

 ボクの疑問に答える神楽も

「そうですけれど、天音姉様ほどの方になると、何をやっても負けないので、スカートの中の方が気になったのかもしれませんね?」

 と不思議な感想の鎧衣だった。


 なおこの盾に乗ったあとに、神楽はクレアに対して既にボクたちへ正体を明かしている事を話したため、この面子の中ではカグラと呼べる、帝国人にはカナリアで通すつもりだけれど、王国ではカグラ、と呼ばれることになりそうだ。

 その後も、リアさんの「幻炎ファントムレイジ」、テノンさんの「雷凰(サンダーバード)」、黒乃義姉さんの「欠衣エクリプス」など

 20以上の鎧衣を試着し、ユーリやアイリスは大興奮しながらボクの変身姿を楽しんでいた。


 髪型や下着まで変わるのでちょっと楽しい、衣装によっては普段着の変わりに使えるものもあるので、ズボラしたいときにはありかもしれない・・・。

 そしてさらに神楽がいうには

「このマギリンクパンツァーのありがたみを知るのはもうちょっと育った後ですね、システムの自動判定で必要だと判断されたら、変身時にブラまでつきますので、こっちの世界にはあまり出回ってないものなのでありがたいです。」

 とのこと。

 ボクが必要になるのはまだ当分先かな?


 セルゲイたちの行方や、アミの無事、北部や南部の戦線の状態も気になるけれど、先ずは目の前の問題から当たっていこう、グリム盆地は今回の主戦場の一つでもあることだし、ここの被害を上手く抑えて、オケアノスの画策する何かに備えよう。

 ボクたちに出来るのは目の前にあるものを切り開いていくことしかないのだから。

操作ミスで3000文字ばかり電子の海に消えてしまいました・・・。

明日頑張って取り戻そう・・・。

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