第98話:挙式と花火
おはようございます、暁改めアイラです。
婚約式の準備が概ね整いました。
ボクたちは来る襲撃に備えて、覚悟と配置を決め、クレアの配下だという兵士30人と共に婚約式を始めた。
荘厳だった・・・この世界のか大陸のなのか貴族のウェディング衣装は銀の糸で飾られた非常に美しいもので
もともと美少女といって差し支えないクレアがそれを身に付けれぱ、それはもう言葉にし難い美しさでボクと仲間たちは言葉を失った。
ボクに関しては、ユーリがボク以外とこういった式を挙げるのが複雑な気持ちだっただけだけれど
一方兵士たちは今朝急にクレアが婚約式をやると聞いたはずなのにその美しさに、あるいはユーリの素姓に驚く事も反発することもなく責務を果たしている、クレアは良い兵に慕われている様だ。
神楽はただ一言「姫様・・・」と呟いたきり、憧れとも寂しさともわからない表情のままで目頭を押さえていた。
可愛らしく思え、先ほどキスも既に一度していたのでよかろうと、今度はボクから神楽にキスをした。
暁のときにはキスはしたことがあったが舌を挿し入れたことはなかった気がするなと思いながら挿入し神楽の口腔内を侵す。
一瞬、驚いた神楽の抵抗があったが、すぐになくなり、神楽の方も舌を絡めてきた、ユーリがボクたちの仲を認めてくれているのがありがたい、が式の雰囲気にのまれ人前だというのを忘れていた。
「マ、マスター!?何なさってるんですか!?いけません、こんな人前で!!」
トリエラがプンスカとよってくる
「だいたいさっきから見てればなんですか!?カナリアさんとの距離が近すぎませんか!?私だってマスターにキスして頂いたことありませんのに、ズルいですよ!不公平ですぅ!!」
どうも式の最中だというのに不健全だとか、同性同士の非生産性よりもうらやましいの方が大きいみたいだ・・・
(まぁもういいかな?)
最初はまだボクは幼児だったし、精神的同性愛(男の子同士)にも肉体的同性愛(女の子同士)にも踏み切れないでいたけれど、今は少し違う。
男の子はユーリ以外に靡いたりしない、好ましい男や男友達はそれなりにいたけれどアイラの恋した男はユーリ一人だ
それでは女の子はどうか?ほとんどの女性に対して可愛いと思うことはあっても、着替えの時に半裸を見ることや男女分けされたトイレ の女の子用に入ることに抵抗感がない程度にボクは女の子になっている
それでもなお裸を見たりすると少し興奮を覚える女の子たちが少しだけいる
それがわが家のメイドたちやキスカやノラ、エイラ、サリィ、コロネといった長く家族同前の付き合いをしている子たちだ、当然トリエラまもそこに含まれている。
トリエラの顔を見つめる。
16歳になったトリエラはやや日焼けした健康的な小麦の肌に神楽やナディア同様日ノ本人並みの美しく長い黒髪を昔と変わらずツインテールにしている、頭の上にはたまにクニクニコリコリしたくなる可愛いネコミミ、全身はしなやかで細く獣人系の特長として若いうちから成長が早かったが、成長が鈍化するのも早く今は完全にナディアに身長も体つきも負けている。
スカートの後ろのしっぽ穴から出しているしっぽは毛並は耳と同じだけれどもモフモフのイヌシッポで今は毛を逆立てて屹立している。
「トリエラ」
少し語気を強めにして問いかける
「な、なんですか?マスターがいけないことしたときに嗜めるのもメイドの役割ですよ?」
ふんす!とトリエラが少し気取った顔でいう
「羨ましいですか?」
ストレートに尋ねると
トリエラは顔を真っ赤にして
「な、なにいってるんですか!私はマスターのこ・・・」
大体分かったので口を塞いでみる
とたんにトリエラの表情が蕩けきったものになり、すごく、なんというかメスの匂いとでもいうのだろうか?
淫靡な匂いがトリエラの身体から漂ってきた。
そういえばゆうべは長旅をしたのにお風呂に入れなかったし汗の匂いというのは、気持ちによってはそういう匂いに感じることもあるとコリーナが言っていた。
気持ちの持ち方ということは、コレはボクの感じかたに原因があることになるのだろう。
つまりボクはトリエラのことも恋愛の対象として見えているということなんだろうね、我ながら節操がなくて困るけれど
「マスタァ・・・こんないきなり・・・マスターが昔ダメだって言ったんじゃないですかぁ・・・」
トリエラは顔を赤くしてへたりこんだ、今襲撃されたら確実にピンチだね。
先ほどまで黙々と職務に従事していた兵士たちが何人かこちらを見て固まっている。
立て続けの同性間でのキスは真面目な兵士には衝撃が大きかったらしい
「世界って広いな・・・」
「神王様や聖王様じゃなく、聖母様を崇めるわけだぜ・・・・」
「天使と女騎士の禁断の愛、美のなんたるかを見た!」
なんて口々に感動を洩らしている
それから主役の前にキスをする者が顕れるというトラブルは有ったものの、内務卿らは現れず、恙無く式場内の進行は進み
トリエラや神楽も通常通りにもどったところで
いよいよ街に出て王国の西安侯家との講和、先帝の崩御を宣言する。
実際にはまだ前線は交戦中だろうし、停戦のための行動は許可されたものの、婚姻については完全にボクたちの独断だし
一国の姫を側室にするというトンデモなやり方だけれど、流れる血は少ないにこしたことはない
帝国民もジークもおじいさまもわかってくれるはずだ
本当ならば姫の結婚ともなれば街中を埋め尽くす様な騒ぎだったろうに今式場内は もろもろ合わせても60人ほどでとても寂しい
祝ってくれる人間が少なくとも、それでもクレアは大陸の平和を願った。
(その彼女の思いを無駄にはさせない、女の子の結婚という選択は本来その子にとっては世界平和よりも価値のあるものだ。)
だというのに・・・・
式場の門扉を開くと民衆は居らず、200m以上離れた場所まで武装した帝国兵たちが散開囲んで歩き回っていいる・・・?
民衆が多い土地だからと固まって動くもの以外を感知から除外した結果、緩く大きく囲まれて居たらしい。
(まるでこちらに感知持ちがいるのを知っていた様な囲み方だ、ソレに姫がこっちに移ってきてからまだ2時間半ほどだ。一体どうしてこんなにすぐに・・・)
裏切り者がいるとは思いたくない、恐らく敵にナニカのイレギュラーで姫の脱走がばれ、感知持ちに痛い目に遇ったことのある者が居るため、こういう囲み方になったのだろう。
仮に今感じられる式場をぐるりとめぐっている反応のうち200m以内のものがほとんど敵兵なのだとすると、2000近い兵に囲まれていることになる。
そして、民間人がいる可能性がある以上こちらは殲滅戦も出来ない、命に危機が迫ればそれもやむなしだけれど、一番嫌なのはこのままずるずると囲まれて、抵抗するタイミングすらつかめずに誰かが捕らえられることだ。
敵兵たちはこちらに槍を向けて、盾を構えて口々に「姫を返せ!」「どこのものだー!」「アレは姫御付の者たちだ!さてはクーデターか!?」
などと叫んでいる。
本当はここを出ると同時にイロイロと宣言をする予定だったが、兵士たちの声に遮られてコレでは民に声が届かない。
見える限り敵兵、見えない背後も敵兵・・・今出来ることはせめて黒幕と考えられる内務卿がこの場にいて、居場所が分かれば活路になるのに。
全員殺すわけには行かない、それに相手がまだ警戒態勢なのにこちらが臨戦態勢になるわけにも行かない。
(平和裏に解決したいというクレアの願いを・・・・!!)
少し諦めてしまおうか、ボクたちの無事のために、とりあえず武器を向けた人間を無力化しようかと考えていると。
「我が親愛なる帝国民たちよ、私の声が聞こえているでしょうか?クレアリグル・リヒト・ルクセンティアです」
拡声魔法?あぁ違うか、最初から民衆に使うために魔法道具の拡声器を持っていたんだ。
ざわついていた帝国兵たちの声が聞こえなくなり代わりにクレアの声が街に響く。
「聞こえているみたいですね、先ずは謝ります。お城から消えてごめんなさい、心配かけたかもしれませんが、私は見ての通り無事です。私は今日ここに、私クレアリグル・リヒト・ルクセンティアがイシュタルト王国、西安侯爵の嫡孫ユークリッド・カミオン・フォン・ホーリーウッドに嫁いだ事を宣言します。」
クレアが粛々と今日のメインの目的である婚姻の報告を、民衆ではない兵士たちに伝えると、再びざわめきが広がる、むしろコレは混乱か?
軍事の仮想敵であり、貿易の最大の障害であり、300年以上戦争こそないものの、休戦中扱いの隣国に自国の姫が突然嫁いだのだから。
それはやむを得ないだろう。
そして更に
「またこの場を借りて、父、皇帝陛下が既に崩御なさっていることを報告し、現在父の名の元に展開されているすべての軍事作戦を中止することを命じます。」
さらにざわめきが大きくなる、一部の立場あるもの以外は、皇帝の崩御をやはり知らなかったらしい、普通は国葬とかするはずだけれど、どうしているんだろう?
あぁこの世界には保存の魔法があるから、遺体も保存しているのかもしれない、賭けが終わり姫との婚約が決まってからの腹積もりだったのだろう。
「助けに参りましたぞ姫様!もうそのような悪辣者どもの言いなりにならなくてよいのです!」
聞き覚えのある老人の声が響く
向こうも拡声器を使っているようだ。
見覚えのある老人、ギエン内務卿だ。
「言いなり?何を言っているのですか?ギエン」
クレアは冷たい声で、内務卿に対して軽く睨む。
「ソレはこちらのせりふです、既に大勢は決しました。そのものたちの言いなりにならずとも、この忠実な帝国の臣たちが、姫様をお助けいたしますぞ!」
いいなり?助ける?なんのつもりかな?ボクたちが姫を武力で言いなりにさせてるとでもいうのだろうか?
「ギエンそのような謀り事の段は終わったのです、このものたちは私の信頼できるお友達です。これから帝国と王国は手を取り合い、助け合う時代がこようとしているのです。」
「姫様こそまだその様な夢物語を、現に戦争は始まっているのですぞ?」
そんな夢物語のためにクレアは婚姻まで駒にしたよ?爺がいつまで、でしゃばってかき乱すつもりなの?その戦争だって君たちが国境線を一方的に破ろうとしなければ起きないことだったじゃないか?
ココロの中でいちいちギエンの言うことに突っ込みを入れる。
「帝国兵に告ぎます、このものたちは、昨夜のうちから城に忍び込んでいました。私はこの隣にいる、ユークリッド様をお慕いしています。昨夜は私の寝所にお泊まり頂きました。」
お泊まり・・・そうクレアが言った途端兵士たちが呻きのような声を上げる、意味を察してしまったようだ。まぁ言葉通り止まっただけで察する様な事実はないのだけれど。
まったく、大人たちは汚れているね。
「そして彼らは一人ひとりが、このルクセンティアを一撃で破壊できる様な魔法を持っています。それをしないのは一重に、友好を望んでいるからです。今この場で誰も貴方たちを殺しに行かないのもこのものたちが、我々との友好を望んでいるからです。」
自分たちの姫が言葉を続けるほど帝国兵たちの動揺は大きくなっていくが、姫は構わず続ける。
「そもそも此度の戦は、私の不徳のために帝国家臣団の間で行き違いがあったためです。数名の部下が暴走し、戦に発展しました。そして昨日帝国は帝都まで王国の最精鋭部隊の侵入を許しましたが彼らは何もせず私の愛しい臣民たちの安眠を脅かすことしなかった。そして私とユークリッド様は両者のためには、お互いを睦みあい、尊重しあうことで、更なる高みへと登れる事を知りました」
クレアの目は嘘はついていない、そして前線に近い兵士ほどその熱気が分かる。
けれどどこかに隠れている内務卿の声が、ソレを否定し続ける。
どこか、というかぺらぺら喋るのでボクはもう感知しているんだけど、なかなかGOサインがでないのだ。
「姫様、騙されては成りません察するにそやつらはただの隠密、さしたる火力はない、兵士が皆カナリア殿のように化け物ではないのですよ!」
そろそろ怒っていいよね、クレアが何をいっても否定ばかりで説得の邪魔をするし、暁の可愛い神楽のことを言うに事欠いて化け物だと?
突然街の気温が上がった・・・と感じた人間はいただろうか?ほとんどの兵士は気温より先に目で理解したはずだ。
ボクは無言で(加速状態で小さく詠唱をして)オリジナル魔法を構築した。
熾天の光冠は可視状態の光弾、『火燕魔法』、火魔法、雷魔法を組み合わせた複合魔法で、元になる雷魔法「サンダークラウン」と火魔法「ブレイジングホイール」が中級魔法のため詠唱が必要になる。
この魔法は光弾をサンダークラウンで囲み、その周囲でブレイジングホイールを高速回転させて磁場を生み出し、そこに『火燕魔法』をばら撒くことで熱と色を拡散させる広域作用魔法の準備段階で。
攻撃に至っていない魔法では最大の派手さを持っている。
また生み出すエネルギー量が魔力消費に対して多いので、放熱しており、周囲の温度は確実に上がっている。
兵士たちが息をするのも忘れた様に、上空に浮かぶ光と炎の輪を見つめている。
この魔法はいくつかの派生魔法の元になるものだけれど今回は見た目重視で行く。
ボクはこの魔法を更に光の弾に封じ込めて目立つように、ボクの腕から200mの巨大仮想バレルを展開して掲げ、天高く射出、目標は上空1万メートルほどにした。
兵士たちはポカンとしていたが、すぐにボクという脅威を認識した。
僅か10秒ほどで目標地点に到達、エネルギーを開放した。
たぶん半径1kmほどの範囲を巻き込む爆発を起こして、熱風が広がる、熱風のまま地上には届かなかったものの、強烈な風が吹き荒れ、一気に真夏の気温になった。
上空に雲の様に巨大な炎の弾が弾ける様は見ていて自分でも恐ろしいけれど、これくらい出来るぞ?という証明のため、見た目重視の魔法を使った。
あとはこれを見て内務卿がどういう反応をみせてくれるかだけれど・・・?
ボクはちょっとキメ顔をして、どよめく帝国兵たちの方を見つめ、数秒空けて少し涼しくなってから、既にめぼしをつけていた内務卿の隣に跳躍で移動した。
帰ってからーって言ったのにこんな時間に成りました。すみませんでした。
正確に長く早く書ける様に生まれ代わりたかったです。
明日は一日休みなので、頑張れたら頑張ります。
疲れ気味なので眠かったら1回だけです。