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第93話:魔法少女アイラ

 こんにちは、暁改めアイラです。

 帝国と王国最大の激戦地となる見込み出あった、グリム盆地での会戦は、魔剣使いの退場により再びの膠着状態に陥った

 ボクたちは夕刻からの電撃戦に備えて各々3時間ほどの休息を取ることになったが・・・


 今ボクは大変に気不味い状態にある。

 暁の婚約者の神楽とアイラの婚約者のユーリの両方が同じ室内で座っている。

 ユーリはいつもの通り落ち着いたものだけど、神楽のほうは・・・目が潤んでいて今にも泣き出してしまいそうだ。

(この状態の神楽にユーリを紹介するのって大丈夫なのかな?)


 でも嘘をつく訳にも行かない・・・覚悟を決めて

「ユーリ、紹介するね。こちらアキラの婚約者のカグラです」

 ペコリと頭を下げる神楽は魔剣使いと呼ばれた時と比べてあまりに子どもっぽい


 次、は・・・

「カグラ、こちらホーリーウッド侯爵の嫡孫でアイラの婚約者のユークリッド、ユーリだよ」


「そしてボクが、ボクこそがかつてのカグラの婚約者のアキラで今はユーリの婚約者のアイラだ・・・・。」

 ボクがアイラでユーリの婚約者だと言うと、仕方ないという諦めの表情を浮かべる神楽。

 どうしてそんなに穏やかでいられるのかな・・・ボクの裏切りを謗らないのだろうか?


「アキラさんに・・・二度と会えないと思ってました。あの日あの夜、あの黒い獣にくわえられて消えた暁さんを追いかけて私も気付いたら見知らぬ森のなかに居ました。」

 生まれ代わって親の庇護の下にあったボクと違い9才で単身異世界へ、どれほど心細い事だろうか・・・


「人さらいにあっても、大切なものを盗られそうになっても誰も助けてくれなくて、自分で身を守らないといけなかった。たまたま善良なお役人の目に留り、たまたま姫様に出会えてようやく、この世界での基板ができました。」


「でもその頃にはアキラさんを見失って数ヵ月経って、手持ちのおやつもなくなって、もうダメかな?諦めてしまおうかな?って何回も考えてその度に姫様が励ましてくださいました。アキラさんが亡くなってしまったのは残念ですけれど、アイラさんは私のことをカグラとして扱ってくださいますよね?側に居させて下さいますよね?」

 神楽のすがる様な視線はあの日と何も変わらない、愛しい、可愛い。

 でも今ボクは暁ではない。

 ユーリの婚約者のアイラにカグラを抱きしめる資格はあるのだろうか?

 


 ユーリのほうを見ると首を縦に振った、ボクの好きにしていいということらしい

 神楽の方は目に涙を溜めてアイラを見つめている

 ボクは短く息を吐いてから立ちあがり座っている神楽の頭を抱きしめた

「アキラさん・・・」

 目から涙を溢れさせて神楽が感慨深げに呟く。


「ボクはもう君を抱きしめる資格もないのかも知れない、何もかも変わってしまった。こんな小さな身体では、君を抱きあげることも出来ない、それに・・・・今のボクはユーリの婚約者なんだ。」


「はい、それは仕方ないことです。今のアキラさんはアイラさんなんですから。」

 噛みしめる様な言葉には迷いはない様に聞こえる

「ただワガママが許されるならばやっぱり私のことをお側において欲しいです。12年間ずっとアキラさんとのことを思い続けて来たんです。私はもうアキラさんと夫婦にはなれないけれど、大好きなんです!一緒に居たいんです・・・」

 表情には迷いはないがその声は切実だった。


 ユーリに目をやるとユーリは特に気にしない様子で微笑み

「僕に出来ることがあるなら何でも協力するよ、今のボクにとってのアイラの様な存在だったんだよね。せっかく生まれ代わっても出会えたんだから大切にして欲しい。ただその・・・カグラさんは平気?これから戦争が終わって平和になってから、数年以内にはアイラにはボクの子どもを産むことになると思う、その、生まれ代わりとはいえ貴女の大切な人が知らない男の胤で孕むのを見ることになる。それを見ても平気?」


 ユーリが言っていることは確かな事実だ。

 サリィとの協定もあるし、ホーリーウッドの世継ぎは必要だ。

 神楽は少し考えてから言った。

「私はまだ貴方がどんな人かもわかりませんが、アイラさんが選んだ殿方ですから、きっと素敵な方に決まってます。なのできっと平気です。私をお二人の側に居させて下さい。」

 ユーリは静かに首を縦振った


 それから少しの間他愛ないおしゃべりをしたあと


「アイラさんはもうお分かりでしょうが、今日は魔導鎧衣マギリンクパンツァー)での飛行で移動を行います。私一人では3人くらいしか最高速では運べないので、アイラさんにも手伝っていただきたいです。」

 !?

「ちょっと待って、ボクは独力じゃ人を抱えて長距離飛べないし、マギリンクパンツァーなんて使えないよ?」

 マギリンクパンツァーは朱鷺見台の一部の戦士が用いていた、特殊な武装システム

 魔力偏向機マジカレイドシステム)の共通付随機能だ。

 神楽たち4つ子や、朱鷺見台の魔法少女/魔法使い系と呼ばれる戦士たちの「変身」はこれを用いたものだ。

 中でも魔力は多いのに魔力操作が苦手な神楽達4つ子の為に桐生家、中家家、矢沢家とで開発した4つ子専用の機体は4機とも同じものだが本人達の能力適正性によって違う能力を利用しているということだったか?

「そもそもマジカレイドシステムが手元にない。」


「ウフフ・・・暁さんは魔力が低かったので扱えませんでしたが、今のアイラさんなら十分魔力がありますから、この!暁天があれば、アイラさんも魔法少女になれちゃいます!」

 そういって神楽が取り出したのはボクの、暁の守り刀として天音義姉さんに用意していただいた短刀の暁天だ。


 いつの間にか暁は持っていなかった様だがどうも神楽が拾っていたらしい、が

「ちょっと待って、これもマジカレイドシステムだったの!?」

 問いかけるボクに自慢げな笑みを浮かべた神楽は実に楽しそうに答える。

「はい!しかも私たち4つ子と同じ特別仕様で当時の魔法少女と魔法使いのデータがすべて搭載されています!といいますか、私達のより後に作られたので性能は上です!・・・・多分」


 ボクは暁天を受けとると鞘から抜いて見る・・・

「きれいな剣だね?」

 ユーリが興味深げに暁天を見つめている。

「カグラのお姉さんがくれたんだ、御守りにって。」

 まさか偏向機だとは思わなかったけれど

「後は暁天がアイラさんをアキラさんだと認めれば使えるのですが、ダメでしょうか?」

「アキラのとき認証とかされてたのかな?」

 全く覚えがないけれど


「ためしに起動してみてはいかがですか?」

「やり方知らないんだけど?」

 まず暁天が偏向機だって知らなかったし。

 神楽は誇らしげに胸を張り

「それでは初期仕様だと思うので私に続いてお願い致します。【近衛暁の名において命ずる、目覚めよ暁天!】」

 日ノ本語か、それはそうだ、これは日ノ本の遺産なのだから。


「【近衛暁の名において命ずる、目覚めよ暁天!】」

 神楽に従ってワードを唱えると暁天が淡い光を放ち始めた。

 神楽は目をを輝かせ、ユーリは驚いた顔をしている。

 何秒かすると頭のなかに暁天の使い方がするすると入ってきた。


「システムの使い方が頭に入ってきたならば認証は成功ですが、いかがですか?」

 ニコニコと成功を疑っていない目で神楽がボクの顔を覗きこむ。

 ボクも笑顔でこたえる

「うん、使い方はわかった後はやってみるだけかな。」

 そこまで言ったところで神楽が抱きついてきた

 どうしたのかな?


「やっぱり、やっぱりアキラさんなんですね、私の愛した人、寂しかったです、心細かったんですよ、一人は嫌でした、一緒が良かった・・・」

 小さなアイラに抱きついて子どもの様に泣きじゃくる神楽はまるでまだあの日のままの様で・・・ボクはその頬を指で拭ってやりながら、吸い込まれる様にキスをした。


「ごめんねカグラを一人で残して、『僕』だけ死んでしまって・・・今度こそ一緒に居よう、ずっと一緒に暮らそう。」

 さっきは神楽だけに覚悟を決めさせてしまったけれど、今度はボクの番だ。

「ボクはユーリと結婚しちゃうけど、カグラはずっとボクと一緒のベッドで寝ようね。勿論お嫁さんとしての努めは果たさないとだから、寂しい思いもさせるけれど・・・」

「いいです、その代わり赤ちゃんが生まれたら私がいっぱい可愛がるんですからね。」

 そういって神楽は泣き笑い。

 更にボクたちは3人で使える時間ギリギリまでユーリの秘密まで含めておしゃべりした。


 夕刻、軽い食事をとってからボクたちはアンゼルス砦の南側の空き地に集まった。

 目立たない様にここからボクたちは出撃する。

 初めは神楽が連れて行ける3人と飛んでいけるボクとエッラくらいになると思ったけれど。

 マギリンクフォルトは装備できなかったボクも、人を2人運べそうなので預かりもの扱いは可哀想だけれど、エイラを拠点に残すことにして

 ボクは星と太陽をモチーフにした、濃紺の地に金の装飾を施した魔法少女姿の腕でユーリとアイリスを抱えて。

 神楽は三角形の魔力で空を飛ぶ巨大な盾に自分とナディア、トリエラ、マガレ先輩を乗せて。

 エッラは独力で飛行し神楽の盾の後ろを掴んで飛ぶ。


 ボクが皆の前で「変身」してみせた所歓声が上がった。

 神楽に言われるままにマギリンクパンツァーを用い飛行に向いているらしい鎧衣を選んで「変身」したが、魔力による膜が全身を包んで僅か1秒足らずで変身は終わってしまった。

 ボクも驚いたけれど、周りはもっと驚いていた。


 ボクは朱鷺見台で、魔法少女型と呼ばれる戦士たちも見ていたけれど、皆は「変身」なんて見た事がないのだから、驚くのも無理はない。

 ボクが「変身」したのは「黒の金の突撃騎馬兵(ダークホーススター)」という鎧衣で、頭は二股になった先端に星のついた如何にも魔女っぽい帽子に、少しゴスロリっぽいデザインのレザーベルト付きワンピース、いずれも濃紺地だけれど飾り紐や星やカフスボタンが金の縁取りの様になっていて豪華な感じ。

 他に肘までの手袋と大きなマント、黒と紫の縞模様のソックス、深いカットの入ったロングブーツと、ずいぶんとファンシーかつマニアックな格好に見えるけれど、11歳のアイラには似合っていると信じたい。


 アイリスも「アイラ可愛い!ずるい!」って興奮気味に見ていたしね。

 コレで飛んだら下からズロースが丸見えになるのだけれど、というかワンピースが短いから裾からズロース見えてるんだけれど、一体どこ向けの露出なのか・・・・。

 これってどうなの?と神楽にたずねると

「可愛いからありだとおもいます!」

 と良くわからない太鼓判を押されてしまった。


 なにはともあれ日が暮れつつあるグリム盆地の空を、連なる3つの飛翔体が時速60kmほどのスピードで、西へと飛び立った。

魔剣の説明について神楽にさせるのを忘れていました。

またタイミングの良いときに補完します。

変身すると下着から変わっています。

これでこれから戦争中で拠点に帰れなくってもアイラを着替えさせることが出来る様になりました。

一度魔力に分解して、再構成しているということにすればきっと汚れも落ちているはず・・・・。

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