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第92話:魔剣使いのコンフリクト

 こんにちは、暁改めアイラです。

 魔剣使いが盆地に到来しました。

 なんと談合を持ちかけられそれに乗ることにしましたが、少し雲行きが怪しいようです。


 意表を突かれたボクたちは、反応することすら出来なかった。

 コレでもしもユーリが油断しきっていたら。

 ボクは自分のあまりの能天気さを一生後悔し続けていただろう。

 不意打ちなんて卑怯な!とも思ったが、コレが談合の10合の1合目のかそれとも本当にユーリを殺す気で放った一撃なのかの判断がいまひとつつかない。


(今の一撃は・・・どこを狙っていた?)

 加速しながら思い返す

 ユーリは盾の剣(スヴェルグラム)でその攻撃を受け流せていた。

 先ほど一度打ち合ったときにこの程度は反応できると見込んでの攻撃だった可能性もある・・・致命傷にならない位置を狙った可能性もある。

(演出の可能性がある以上10合目までは手を出せない・・・。)


 コレが相手の作戦だとすればかなり卑怯な心理戦だ。

 ユーリは盾の剣をまっすぐ正面に突き出した構えで魔剣使いの剣を受け流している。

 加速を限界ギリギリの12倍で発動させたので、ほんの3秒くらいの出来事がすごく長く感じる。

(8、9・・・10・・・11、12、13・・・うん約束は反故のようだ・・・楽しようと思ったのが間違いなのかな。)


 この魔剣使いカナリア、初めはあの鎧をきてあの速さは恐ろしいと思ったものだが、剣は不得手と見える。

 動きに無駄が多いし、ぎこちない踏み込みのせいで狙いがバレバレだ。

 それでも、軍官学校で言えば一般的な年度なら近衛戦技兵課系のクラスで速さだけでも首席になれるレベルだね。

 バーなんとかさんが嘆くわけだよ、達人級の素人に負けたってことだからね。

 でもユーリならばこの程度の相手なら反応しきれる、守りに徹した彼はボクでも突破が難しいのだから。


 追加で12合ほど打ち合ったところでユーリの盾の剣がカナリアの剣を弾いた。

 ユーリが剣をカナリアの首元に突きつけて一騎打ちの決着を宣言しようとして次の瞬間にその場に居たカナリア以外の人間全員、敵側の黒騎士たちでさえもが、狼狽した。

 何かに弾かれてユーリが10m近くも飛ばされた。


 カナリアを中心に迸る魔力の奔流。

 その魔力の量はボクやエッラが一回の模擬戦で使う量を超えていると思う。

 それだけの魔力量を一瞬で放出したのだ。

 普通なら魔力切れを起こすところだが、カナリアは立っていた。

 それどころか今また魔力が噴出している。


 カナリアが自由になった腕を両側に大きく突き出したポーズになるとカナリアが着ていた重鎧が弾けとびその場でカナリアの放出した魔力の壁に当たり、おそらくは魔力の壁がそのまま異次元収納になっているのだろう吸い込まれていった。

 そして、ぴっちりしたタイツの様なスーツにゴツいとしか言い表し様のない無骨な銀の手甲、胸と腰の辺りを隠す面積の少ない装甲を身につけた、おそらくサークラと同い年くらいの黒髪の女性、カナリアの正体がそこにあった。


 先ほどまで着ていた鎧の分がすべて手甲になったのではないかと思うくらいの大きさ・・・すさまじいね。

 でもアレで一体何をするというのだろう。

 手甲の先から異次元収納を使って、剣が刃から先に出現し、持ち手が出たところで握ったカナリア、急に戦場の温度が上がった。

 手甲に握られているのは幅20cm長さ2mほどはありそうな巨大な長い剣。

 刀身は赤く歪んでみえる、赤熱した剣の熱で周りが陽炎の様になっているのだ。


 そしてその剣をカナリアは構えた。

(アレは危険すぎる!あんなものを突きつけられたら!!)

 アレがヘルワールの魔剣というやつなのだろう。

 そう呼ばれていいだけその剣は凶悪な魔力を秘めている。

 そしてソレを今ユーリに突きつけようとしている!!

 ボクは暁光を抜き、光弾を纏わせた。

 この技にも今は名前がある、強化魔法「光輝剣(シャイニングセイバー)」ソニアの斬鉄剣にも優勢が取れる数少ない武器強化術、使っているのが光弾なので対魔法障壁に強いこの技ならば、あの魔剣相手にも1回、2回なら打ち合えるはずだ。


 何よりもユーリをやらせるわけには行かない。

 カナリアはなにをそんな必死な表情をしているのか、泣きそうな顔でユーリに迫る。

 一方ユーリはまだ吹き飛ばされた直後で、体勢が整いきっていない。


「【やめてぇぇぇぇぇぇぇ!かぐらぁぁぁぁぁぁぁあ!!】」

 ボクは出来うる最速でユーリの元に駆けつけて、その業火の如き魔剣に暁光をたたきつけた。

(しかしなんだ。今の違和感はなんだ・・・?)

 重たい一撃。剣の腕よりもその魔剣の威力だ。

 だがカナリアは一度打ち合っただけで構えを解いた。

 ボクのことを信じられないという目で見ている。


「誰ですか!貴方は!!何で、何で、暁光で私を!あの人の剣でよくも私を!!それに・・・なんで私の名を・・・。」

 言いながらカナリアの目にはうっすら涙が浮かんでいる。

 その顔には覚えがある、前世で暁の両親が死んでいるのを見つけたときに、泣くのを我慢した神楽の感情を押し殺そうとする表情。

(あぁ・・・わかってしまった。なんでこんなタイミングで・・・)


 どうもボクは運が悪いらしい。強運による補正ありでこのタイミングの悪さは筋金入りだ。

 ようやくアイラとして生きていけると思った矢先のこの再会。

 敵同士、それも強敵として、再会することになるなんて。

 ボクも加速を解いて日ノ本語で語る

「【あぁ、まさか君がこちらに来ていただなんて・・・・、神楽・・・。】」


 その黒髪を、大きさこそ違うが、その「銀腕」を忘れるはずがない。

 ボクの、暁の愛した神楽が成長した姿で呆然とそこに立っていた。

「【あきらさん、なんですね・・・・?幼い、女の子なのに、あきらさんなんですね・・・?】」

 すぐに神楽は答えを出す。

「【うん、そうなんだ。信じてくれるの?ボクが暁だって・・・。】」


 神楽は涙を溜めたまま、微笑みすら浮かべて

「【黒乃姉様も転生者の方でしたから。転生には理解があるつもりです。】」

 ボクも神楽も、12年分の悲しみを、再会の喜びを、共有していると思いたい。

 この娘が愛しいって感情が溢れてくるんだ。

 ボクは昨日ユーリのモノになったっていうのに、もう神楽を抱きしめてやる資格がないのに!


 それを除いても、ようやく再会できた神楽にはたくさん伝えたい思いがある。

 暁は死んでしまったけれど、生まれ変わってイロイロあったけれど、今は幸せに暮らしていること。

 あぁでもソレよりも。


「【どうして、約束を反故にしたの?一緒にお姫様を助けてほしいんじゃなかったの?】」

 近々の話題から済ませよう。

 神楽は困った様な顔を浮かべた。

「【あの後ろの4人がそこの金髪の男の子を捕まえたら姫様に会わせてくれるっていうから・・・もう1ヶ月もお会いできてない・・・こちらにきて私を助けてくださった恩人なんです。あの人が居なければもうとっくに、奴隷商人に売られてました。言葉を覚えられたのも姫様のおかげなんです。だから・・・・】」


「【わかった・・・ソレでどうしようか?ボクと一緒にくる?】」

 どうか一緒に来るといって欲しい。 

「【あきらさんと一緒に居たいです、でも姫様は助けたいです。】」

 それならばやることは決まったね。

「【あいつらさっきから、君がボク相手に話し込んでるから苛立ってるね。全員ワルモノ?】」

「【はい、全員内務卿らに従う男たちで、私がちょっとでも従わないとすぐ姫様がどうなってもいいのか?って言ってきます、セクハラも少しされました。とっさに殴ったらそれ以上はしなくなりましたが、陰湿なイヤガラセをしてきます。】」

 ほぅ・・・神楽にセクハラ?ほぅ・・・命知らずが・・・。


「【全員を同時に殺さないといけないんだよね?】」

「【うぅ・・・そうなんですけど、私まだ殺しはちょっと踏ん切りがつかなくって】」

 申し訳なさそうにする神楽、うん仕方ないね、ボクもウェリントンのことがなければ今も人なんて斬れなかったろう。


それならボクとユーリでやろう

「(ユーリ、もう一度だけカナリアにチャンスを)」

 それだけ伝えるとユーリは小さく頷いて機会を待つ


「おいカナリアお前こんなちびガキ相手に何手抜きしてやがるんだ?」

「姫がどうなっても・・・うん?この娘まだガキだがかなりの上玉だな?5年くらい養えばかなりのものになるぞ?」

「お前またそれかよ、この間も10才のメス犬買って、結局その日のうちに壊してたじゃねぇか!」

 うん、こいつら見た目荘厳な騎士っぽいのに中身が清々しいゴミだね。

 遠慮なく殺せる!


紅炎プロミネンスよ!」

 プロミネンスは不可視状態の光弾に周囲の炎と熱を吸着させて誘導する魔法、幸い神楽の腕にはまだ魔剣が握られているから熱には困らない。

 光弾に導かれた魔剣の熱は黒騎士のうち3人の兜に入り込んだ

「グム!?」

 低い呻き声を上げて3人とも物言わぬ死体となり残りの1人は立ちあがったユーリによって兜ごと頭を粉砕されて事切れた。


 ユーリのパワーファイトはなんだか小柄な女の子にバトルアクスを装備させた様なアンバランスさがあってちょっと心がざわつく、フェチではないつもりだけど

 魔剣を持って佇む多分21歳の神楽は先ほどまでの重鎧と比べてあまりに軽装な銀腕形態、成長した神楽の美しい肢体のラインがほとんど透けて見えている

 マガレ先輩達が駆け寄ってくる


「今のは!予定通りということで大丈夫なのでしょうか?」

 展開が大分違ったのに結果は同じ、ただ魔剣使いがどうも本物っぽいことが判明してしまったので、駆け寄ってきたマガレ先輩達の表情は困惑気味

 神楽は魔剣を格納してから、ユーリに土下座している


「申し訳ありませんでした、一度は約束を反古にしておきながら・・・」

 神楽が土下座しながら謝罪をしているとユーリが途中で割り込む

 

「仕方ないです、こんな若造があの4人を確実に討つにはあれくらいする必要はあった・・・・」

 ユーリは色々と察して神楽を許し、主人たる彼が許したため、他の誰も神楽を責められなくなった

 ユーリと昨日わかりあっていて良かった目の前で堂々と話し合いができた


「えっと、こうなったってことは魔剣のお姉さんと一緒にお姫様を助けるんですよね?」

 アイリスが能天気に尋ねる

「はい、姫様は戦争を望んではいらっしゃいませんし、先帝も王国との協調路線をとり、亜人奴隷への奴隷制度も見直しが進んでいる所でした。姫様さえ自由になれば戦争は休戦に戻せるはずです」

 悲しそうに目を伏せる神楽、何か嫌な思い出でもあるのだろう。


「それで今すぐ救出に走るの?」

 マガレ先輩が神楽に尋ねると、神楽は静かに首を横にふった

「いいえ先に王国軍の司令に伝える情報があるのと、私とプラス三人位ならここから帝都まで2時間程で移動出来るので目立たない様に薄暗くなってからにしようかと」


 飛んで行くってことかな?

 神楽ならば人を乗せてとべるだろうし。

「ではその4人は回収して砦に戻りしょう」

 エッラが四人の屍体を回収していたが入りきらなかったためユーリも手伝った。


 

 アンゼルス砦に戻るとギリアム義父様、サリィ、ジル先輩、オイデ子爵が迎えてくれた。

 ひとまずの安堵と同時に魔剣使いが若い女性でしかも帝国を裏切ると言うので驚いていた


 神楽は知りうる情報と所持していた命令書や資料をギリアム義父様に渡してから、姫の身柄の安堵を条件に王国に帰順することを誓った。


 神楽については軍属ではないらしいのでひとまずは亡命者という扱いにして、魔剣使いということは伏せる事になり。

 ボクとユーリとで希望して3人で話す時間をもうけてもらった。






90話くらいかかってやっと再会させられました。

ここからどうやってハーレムルートにしたものか・・・8人とか場に居ると存在感がかき消えてしまうメイド達をもっと目立つようにしたいです

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