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第90話:秘め事

この話を読む前に、出来れば外伝的な方2016年10月までの投稿分は読んでいて頂けているとうれしいです。


 こんばんは、暁改めアイラです。

 東の裏切りが確定的になり、帝国の切り札か或いは騙し札の魔剣使いが盆地に向かって移動して来ているらしいと情報が入った。

 皆口に出さなかったけれども状況は多分良くない。

 ボクの、アイラの身体も命の危機を感じ取ってのことなのか少し興奮気味で、人気の少ない区画にユーリが用意してもらった個室に通されたボクは、深刻そうな顔で何か告げようとするユーリに確かな決意を感じて、でも可愛いアイラであるために気づかない振りで彼の言葉を待った。



 何分経っただろうか?

 ずっとユーリはボクを撫でたり水を飲んだりしている。

 そのまだ少年らしい細い指で耳や首筋を撫でられる度にアイラの、少女の身体がビクビクと反応して、純真な少女のままであろうとするボクの意志に反して子孫を残そう、彼を受け入れようと準備が進んでいく。

 困ったことに今のアイラの身体は彼の指に触れられるとどこもかしこも敏感で大量の情報が身体も心も彼一色に染めあげていく


 暁の時にも神楽に触れたいと思ったことは幾度となくあったけれど、それは理性と倫理観で抑え込める程度のモノだった、けれど

(これはなんだ!?お腹の中のがむず痒いというか、全身がピリピリして・・・)

 ほとんど拷問みたいだ。


 これがアイラ個人の身体の反応ではなく、受け入れる側の共通の反応だとしたらボクはとんでもない責め苦を神楽に強いていたことになる。

 神楽の事を想って手を出さなかったが、これ程に身を苛んでいたならば触る程度の事はしてやっていればよかった。


 マグナス先輩が死にアミは行方知れず。

 ボクは沢山の人を殺め、今も戦場は緊張状態だというのに 浅ましい事だとは思うけれど・・・

(とうとうユーリに抱かれる時がきたんだね)

 うっとりとこれからボクを抱く彼を見つめる。

 しかし彼の目をはまだ迷っている。

 仕方がないこういうとき男は度胸が足りないモノだとボクはよく知っている

(揺さぶり方も・・・・ね)


 ボクはベッドに寝転んで伸びをする、寝間着代りのワンピースの裾からはボクの太腿が見えているはず、下品にならない程度に彼を誘惑して彼の視線はアイラボクに釘付けに・・・・なっていなかった。

(ボク渾身の色仕掛けがっ!?)


 笑ってごまかしながら身体を起こす、ひょっとして言いあぐねているのはもっと別のことなのでは?

 そう考えてしまうととたんに恥ずかしさが身を焼く

(うぅ・・・バカじゃないのボク?)


「アイラは凄いね・・・。」

(どういう意味かな!?)

 たった今色仕掛を外して羞恥に染まっているというのに

 ユーリは慈しむ様な瞳でボクを見つめる

「ユーリ、お話ってなにかな?」

 もうそろそろボクの奇行も堪能したころだろう、ここからは手短かに行こう


「今までさ、何回も言おうと思ったことなんだけどね、いままで先伸ばし先伸ばしにしてきて・・・・・。今日魔剣使いの話を聞いたとき、本物かも知れないと思ったんだ。」

 そんなことはない、所詮伝説は伝説だ 。

 ボク自身が異世界転生なんてお伽噺を体験しておいてアレだけどね・・・。


「ユーリ、ネクレスコラプスなんてお伽噺だし、その舌の魔剣だなんて・・・」

 いうまでもないことだ・・・と言葉を紡ぐことは出来なかった。

 ユーリのボクを見つめるその眼差しはそれだけ追い詰められていた。

「生まれ代わりなんてモノがあるんだ・・・・魔剣の一本や二本あるかもしれない」

(!?)

 ボクの動揺をよそにユーリは続ける


「生まれ代わりなんて最初はまさかと思ったよ、でも勘違いだとも思えなかった。はじめから普通とは違ったんだ・・・」

 ユーリに気付かれていた?

 ボクが本当はアイラではないと・・・


「ユ、ユーリ?・・・ボクは・・・・」

 初めはアイラとして生きると決めたことへの義務感からだった・・・

 でもユーリのこと初めから好ましく思っていたけれど、ユーリが愛しいとわかって意識して、君に恋をしたのはボク自身がアイラとして育んできた偽らざるボクの感情だ。


「僕は今日魔剣使いの話を聞いて怖くなって、君を抱きたいと思ってしまった。でもその前に確かめないといけないことがある。」

 気持ちが沈む、いままで隠してきたのは別にユーリを騙すためのものではない。

「だから全部話すことにした、僕のことを憎んでくれていい、嫌いになっても良い、ただ聞いて欲しい」

 生まれ代わりのことでユーリがボクのことを嫌いになってもボクがユーリを嫌うことなんてないなのにユーリは懺悔する様に続けた。


「僕はリリー・マキュラ・フォン・オケアノス、狂い姫と貶められた東征侯の娘、その転生者」

 あれ!?

「待って!ユーリ」

 ユーリは止まらない


「僕は必ず簒奪侯を滅ぼしてアクアを救い出すと母様を失ったときに決心した。そのためには何もかもなげうつ覚悟がある!あったつもりだったけど君を巻き込みたくないって、この復讐でアイラのことを喪う様なことなんて絶対あってはならないから、だから・・・」

「ボクの!!!!!!!!」

 ユーリの叫びをかきけすように大きな声をあげる


「ボクの懺悔も聞いてよ・・・ユーリ。」

 どうもユーリのいう転生者とは彼自身のことらしい、そして彼はその負い目に、復讐にボクやアイリスを巻き込まないことがボクたちの幸せだと判断した様だ。

「謝るのはボクの方だよユーリ、ボクも君と同じ事を隠してきた」

 ユーリがボクの懺悔を聞いてくれるつもりになってくれた様なので続ける

「ボクも転生者だ。それもこの世界の人間ですらない。」


「アイラ・・・?」

 驚きにユーリの表情が固まる。

(彼が、ココまで話してくれたのだからボクもすべて話してしまおう)

「ボクはねユーリ、アイラに生まれる前はコノエアキラという人間だった。」

 ユーリは息を飲み続きを待っている。


「ボクも生まれ代わった時は信じられなかった、信じたくなかった。ボクは、暁は男で、5つ下の婚約者もいて、彼女への未練を今でも抱えてる。それでもボクはもうアイラなんだよ!君なしじゃ生きていけないよんだよだから・・・それ以上言わないで。」

 ユーリに出会って、婚約を申し込まれて

 初めは暁にとっての神楽になろうとした。

 可愛い可愛い大切な婚約者。

 守るべき女の子。


 でもユーリは暁と違って器用で、暁の様に不作法でもなくって

 乙女心というものを理解して、アイラ(ボク)を大切にしてくれた。

 それは君が元は女の子だったから出来たのかもしれないけれど。


「ユーリは、どうかな?ボクのこと、本当はスキじゃないかな?」

 そうではないはずだ、それだけではないはずだ。

 君がボクを見る瞳はちゃんと恋をしていた。

 ボクを見てくれていた。 


「好きに、決まってる・・・よ、もうリリーのときと同じくらいずっとユーリなんだよ。初めは、辛い思いをしたはずなのに、妹達を、家族を必死で守ろうとしているアイラが愛おしいな、守ってあげたいなってその程度だったけど。ずっと一緒に居て、可愛い妹みたいなのに、時々すごく頼りになって、アイラに守られてるって思うときもいっぱいあった・・・・、僕のほうこそアイラが居ないとダメなんだ。」

 顔に涙を溜めて少し上向きになるユーリ、その表情はやっぱり美少女顔で、涙がこぼれない様に泣いた顔が、たまらなく愛おしく感じる。


「だったらさよならなんて言おうとしないで、もっとボクに甘えてよ。」

 ボクは涙が落ちるのも気にせずにまっすぐ彼に向き合って言った。

 ボクは女の子だから、こぼれ落ちる涙を隠す必要なんてない。

「でも私は、狂い姫なんだよ!家を守れず、弟妹を守れず、慕ってくれる民を守れず。貶められ、辱められ、汚されつくしたんだ。気持ち悪いでしょ!?」

 ユーリが自虐的に嗤う。

 まだ涙を零さない様に少し上を向いている。

 立派に男の子だね。


「じゃあ僕はどうかな!?僕は婚約者まで居た男なのにアイラになってからは皆に守られている。戦う力は持っていたのに、ウェリントンを守れなかった。母と姉が賊に犯されているのに、身が竦んですぐに動けなくて、みすみす目の前で母を殺されたよ!情けないだろ!」

「そんなことない!そんなこと・・ない・・」

 (アイラ)が泣いているのを見ていられなくなったのかとうとうユーリが正面を向いて(アイラ)を抱きすくめた。

「ほら、やっぱりユーリは優しいし、綺麗だよ。大好きなんだ。」

 もう自分でも何を言いたいかもわからないけれど、伝えるべきことは大体伝えられたと思う。


「アイラは、やっぱりすごいね、僕のこの6年のううん、生まれてからずっと死んでからずっと抱えてきたものも、アイラにとっては・・・・」

 最期はなんていったか聞こえなかったけれど、ボクもユーリももうとっくに自分というものになっている。

 歳を取るに連れて(しがらみ)が増えた、まとわりつく立場と責任もある。

 それでも結局ボクはもうアイラ以外の何者でもないし、君もユーリだ。

 勿論過去に暁であった、リリーであったのもこれからは認め合っていける。

 そうだとすれば、これからはもっとボクたちはありのままで自分たちを見せていける。


 それから二人で日付が変わるまでおしゃべりした。

 内容は自分たちの過去のこと、ユーリがどんなに簒奪候を憎んでいて、アクアという妹を助けたいと思っているか、ボクがどれだけ神楽にあって、感謝を伝えたいと思っているかを。

 お互いのことを話し合って、すこしずつお互いの理解が進んでくると今度は怖くなってきた。


 明日には、魔剣使いが盆地の到着するだろう。

 そうしたらボクたちはどうなるのかわからない、転生者(ボクたち)という存在が何でもありだということを証明している。

 もしも魔剣使いがホンモノだったら・・・勝ち目はあるのだろうか?


 お互いに死というものを一度経験した身で、ソレが唐突に訪れることを既に知っている。

 ボクたちはそもそも婚約者の(そういう)仲で、魔剣使いという死を身近に感じて、ひどく急ぎ足な展開に忘れていた、今日自分たちを突き動かした疼きを思い出して・・・。


「アイラ・・・可愛い。」

「ユー、ん・・・ちゅ・・・ん・・」

 ユーリお得意のこちらの息継ぎを無視した迅速なキスによって一気にこじ開けられて。

 予定より2ヶ月ばかり早く契りを交わした。

 11歳と13歳なんて若すぎる気もするけれど、体はそうでも心は二人ともとっくに20台後半日ノ本的にも、イシュタルト的にも、婚約して6年たっていてこの年齢なので、社会的、倫理的背徳もない。

 ベッドは硬いし、夜景なんて真っ暗な森だし。

 予定とはだいぶ違ってしまったけれど・・・・


 体力も部屋に入ったときに灯りに注いでいた魔力も尽きた後

 ベッドに倒れこんでユーリの腕に腕を絡めてその裸の胸に手を置くとトクントクンと鼓動が伝わってくる。

 体に残る痛みが、ユーリのモノになったのだという実感をくれるけれど、それでもボクの神楽に対する未練のすべてを消化しきることは出来なかった。

 それはきっとユーリも同じ、ユーリはボクとの未来をもう一度選びなおしてくれたけれど、リリーとしての、彼女の復讐も、アクアさんの救出もきっと諦めてはいない。

 ソレがわかるから、きっと魔剣使いにだってボクたちは負けないんだ。

 そう信じる事ができた。

いろいろパターンは考えて、他に可能性も残していたのですが結局こういうルート(ユーリの前世=狂い姫)になりました。

わかりやすいのが一番ですよね。

アイラの人生でも特に大事なところなのでもっと長くても良い(狂い姫についてのアイラの理解についてとか)かと思いましたが、あっさりすることにしました。

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