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第2話:命の語らい

もう少しの間だけ早めに投稿することを心がけます。

推敲無く文章は上手くなりませんが、勢いも大事だと思うので。

 こんにちは、暁改めアイラです。

 穏やかな毎日の中で、次第に暁としての悔いや願いも薄れていく。

 アイラとしての生活は、自分を取り囲む人々の愛情を暁が受けてはいけないと、そうボクに感じさせて、ボクはアイラとしての自分のあり方を受け入れつつあった。

 そんな日々に急激な変化が起きようとしていた。


 

 今ボクは不機嫌だ。

 朝食中に母ハンナが急に部屋を飛び出し、外で吐いていた。

 その青い顔にボクは前世の母の、血の赤を思い出して、母の死を思い泣いた。

 そんなボクをハンナ母さんは抱きすくめて、大丈夫だよと背中と頭を撫でてくれた。

 

 そんな母から告げられた一言・・・

「アイラの妹か弟がお腹の中にいるの」

(・・・へ?)


「あはははは!!アイラ!ボロ泣きして・・・・ぶはははは」

 エドガー父さんがボクを笑う、普段泣いたり大声を出したりしないボクが、母にしがみついて泣いたのがよほど面白かったのだろう。


「ほら・・目真っ赤じゃないか、わははアイラでも声出して泣くことってあるんだな、ちょっ痛い!痛いって」

 目の下を指で広げて覗きながらまだボクをからかってくるのが少しいらだったけれど、大人を力で引き剥がすのは無理なので、鳩尾に二発パンチを入れてやった。

「こらアイラ、お父さんにパンチはメッ!お父さんも、アイラをからかわないの。お母さんはアイラに心配してもらって嬉しかったよー。」

 そういってハンナ母さんがボクを撫でてくる。

 ボクはつい今しがた泣き止んだところで撫でられても、恥ずかしいばっかりだ。

 思わず手を振り払って、サークラの後ろに隠れてしまった。

 自分でも顔も目も真っ赤なのがわかってものすごく恥ずかしい。


 サークラはそんなボクが後ろにしがみ付いてきたのが、嬉しいようで味方してくれた。

「もーお父さん!アイラをからかうのやめてよ。自尊心の強い子なんだから。あんまりひどいと、私たち4人全員でお父さんのことイジメるからね?」 


 エドガー父は声を出して笑うのをやめた。まだちょっと顔は笑ってるけれど。

 さすがに少し前まで『将来はお父さんのお嫁さんになる』を素で言っていたサークラがこれほど反抗するとは思っていなかったのか少しうろたえている。

 

(・・・・というか)

 サークラを腰下から見上げるとその目線が少し見えるのだけれど

(怖っ!美少女の蔑みの視線ってこんなに怖いの・・・?)

 

「あー、そういうことならお母さんもそっちかなぁ。」

 ハンナ母さんがいそいそとこちら側に来る。

 

「ハンナ!?おま、昨夜もあんなに愛し合ったのに?」 

 子どもの前で愛し合うとかいうな、生々しい。

「ごめんなさいエドガー、あなたのことは愛しているけれど、所詮は元は他人、お腹を痛めて産んだ子どもの方が大切なの・・・。だから私はこちらに付くわ」


(なんか雲行きが怪しくない?これ離婚とかしないよね?てかこの世界に離婚ってあるのかな?そんなことよりこれボクのせい?ボクのせいで二人が・・・・)

 今までこの両親が声を出すケンカをしたところなんて見たことがない、それがこんな些細な、ボクをからかった程度のことで、ボクのプライドとか羞恥とかそんな瑣末なことで別たれてしまうのか。

 そんなのは許されない、ボクと言う異分子のせいでアイリスたちの幸せが壊れることは望まない。

 そんな風に自問している間にも、両親はケンカの様なやり取りをしている。


「あの!」

 思わず大きな声が出た。二人は何?今ちょっとケンカで急がしいのだけど?っといった感じの表情でこちらを見る。

 うーん、また泣きそう。


「ボクもう、いいから、ケンカ、やめて・・・」

 まだ涙がのどにひっかかってスムーズに話せなかったけれど、言いたいことは伝わったはず。

 アレ?二人目を合わせてニヘっと笑ってる?

 それからこちらに二人で向き直って

「アイラはやさしいね、エドガー、アイラのやさしい心に免じて今日のところはこれくらいにしておいてあげるわ。」

 ハンナが自分はまだ続けてもいいのだけれど、という雰囲気を出しながらエドガーを許す。


「ハンナの言葉に思うところはあるが今日のところは、アイラのため、子どもたちのために夫は我慢するとしよう。」

 

 あーどう見ても棒読みだこれ、ボクを担ぐのに、ケンカのふりしてたなこれは。あー、乗せられた・・・。悔しいけれどここでキれるのももっと悔しい・・・折れるか。

 そう思った瞬間。

(ダン!!)

 ドアを蹴る様な激しい音がする。


 音のほうを見やると、アイリスがテーブルを叩きながら子どもイスの上で立ち上がっていた。

(・・・?)

 

 場が静まり自分のほうに目が集まっているのを確信したのかアイリスが叫ぶ

「もー!みんあけんかしちゃらめーれしょ!!」

(アイリスさん参戦!・・・・・いやいや遅いよ?もう終わったよ?てか今までずっとこちらのケンカに関わらずモクモクとご飯食べてたよね。トーレスに手伝わせて。・・・あぁほらトーレスが苦笑いしてるじゃないか。)


 それからボクとサークラ、ハンナ母さんもご飯を食べ終わると。

 簡単な家族会議となった。

 まぁなしくずしになった妊娠の報告だ。

 

 といっても、もうボクとアイリス以外は聞いてたようだ。


「アイラはもうしっかりアイリスのお姉ちゃんをやってくれてるし、しっかり者だけど、ちょっとお転婆なところと素直じゃないところもあるから。これを機に、お淑やかなお嬢さんになってくれると嬉しいな。」

 そういって乱れてしまったボクの髪を手櫛でまとめながら、ハンナ母さんがしんみりとつぶやいた。


 お淑やか、はちょっと難しいかも、何せボクはほんの少し前まで男だったわけだし。

 

「アイリスも妹ができたらアイラみたいにしっかりしてくれるかなぁ?」

 ボクの髪をいじったままでアイリスにも要望を述べる。

 アイリスはちょっと考えるそぶりをしてから、合点がいったかのようにやる気に満ちた表情を浮かべた。

 

「アーちゃん、サーねぇちゃんになるよ!!」

 アイリスは自分のことをアーちゃんと呼ぶ、ついでにボクのこともアーちゃんと呼ぶし二人ともを指す場合もある。

 微妙に発音が違うのだけれどわかりにくい、

 

(今のは『アイリスもサークラおねえちゃんみたいにお姉さんになる』ってことかな?)

 

(いいよ、弟妹が生まれるまでの残り約半年・・・・アイリスを立派なお姉ちゃんにしてあげる。)

 そんな決意を胸に、アイラ・ウェリントン2歳8ヶ月の冬は始まったのである。


 ボクはまだ幼いアイリスに、それよりも更に幼い赤ん坊への接し方を落とし込む。

 自分たちの思い通りにならない、それも自分たちより弱い存在へどれだけ優しくなれるかがポイントだ。

(アイリスはマイペースに暴力的な部分があるから・・赤ん坊の相手をさせるの今のままじゃ怖いよね)


 さすがに3歳程度のボクが、双子の妹に訳知り顔で教育を施すわけにもいかず、夜ベッドの中でこっそりと心構えを教える日々が続いた。


 そして・・・翌年の2月

 ハンナ母さんが産気づいた。

 

 出産を迎えるにあたっても、この辺境には病院がないしお医者もいない。

 いるのは、民間療法に毛が生えた程度のの薬師と、産婆ができるおばあさんだけだ。

 

 産婆役のアマンダさんはボクやアイリス、水守の家のノラなんかも取り上げたベテランだ、トーレスが生まれたころまではまだノラのおばあさんのガーベラさんが元気だったのでその方が産婆役をしてたそうだが、ノラが生まれる半年ほど前になくなったので、アマンダさんが引き継いだそうだ。

 

 さて話が逸れたが、今ウェリントン家は出産間近のハンナ母のためにおのおのできることをやるしかないのだけれど。

 子どもにできることなんて限られている。

 

  ボクは少しは動けるので、先ほどまでトーレスとともに近くで薪集めをしていたのだが、少し薄暗くなってきたので、切り上げて帰ってきたところだ。


 そこでボクたちはあまりに残念な光景を目にしてしまった。


「あぁ・・・まだか?まだか?」

 ブツブツいいながらエドガー父さんが部屋の前をうろついている。

 

 出産なので一応男性は部屋に入らないことになっているのだけれど、ちょっと落ち着こうよ、もう5人4回目の出産立会いでしょ? 


「父さんの相手は僕がしておくから、アイラは母さんのところいってあげてよ。」

 トーレスが気を利かせてくれたようだ。

(ボクとしてはまだ半分くらい男のつもりだから、このまま待機組でもいいのだけどなぁ。)

 なんていうわけにもいかないのでおとなしく部屋に入ったのだが。


 12歳のサークラはアマンダさんの手伝いのため湯を沸かしたり、アマンダさんやハンナ母さんの汗をぬぐったりしていた。


 アイリスはハンナ母さんの手を握り閉め、「ママがんばって」と声をかけていた。

 

(うん、やることないな・・・)

 前述のとおり手伝う様なことはそこまで多くなく、それもサークラがこなしている。

 若干3歳のボクに手伝わせることなんて何も残ってないのだ。


「アイラ、お帰り。アイリスと一緒にお母さんの手、握っててあげて。」

 ボクが部屋に入ったことに気づいたサークラがボクに母の手を握る様に告げる

 そんな「仕事」を振らなくたってボクはアイリスの様にうろついて邪魔をしたりしないというのに

 

「アイラ、お帰り・・・右手が寂しいからうれしいなぁ・・・」

 母は少しだけきつそうにしている。

 右手側にはアマンダさんがいるので、ボクは邪魔にならないかどうかだけ確認して、OKが出たので母の手を握った。

 

 握ったというのは正しくなかったかもしれない、母の手に手を重ねると、逆に力強く握りしめられた。

 少し痛いくらいに握られた手は熱いし、母の脈が伝わってくる。


(あれ・・・?)

 母はずっとボクとアイリスに笑顔を向けてくれている、すごく余裕そうに見えるのに、何でこんなにも・・・手が震えているんだろう。


 産気づいてから生まれるまでは4時間くらいかかったものの。

 いざ産まれるという段になってから、ものの数分でウェリントン家の四女が、産声をあげた。

 ボクはその間ただ、声をかけるしかできなかった。

 

 ただその一瞬の熱に侵されて、生まれるということを知った。

 もう一度生まれ変わった様な気分だった。


 体を拭いて、柔らかな布で包まれた小さな女の赤ちゃんを、一瞬だけだけどサークラがボクとアイリスの間に抱かせてくれた

 自信に溢れた表情で妹を抱くアイリスと、ボクの腕の上でほにゃほにゃと泣く小さな小さなボクの妹。

 その命の熱さに、姉になったアイリスの表情に、ボクは涙を堪えることができなかった。

 

 少し前までボクは、人前で泣いてるところを見たことがない、といわれる様な子どもだったのに。

 このところは少しのことでも感極まって泣いてしまうのは、一重にこのアイラの体のせいだ。

 

 新しい妹はアニスと名付けられて、家族の愛を一身に受けて育つことになる。

 ボクも姉としての愛を持ってこの妹と付き合っていく。


  

 

1年は10ヶ月、1ヶ月は6週間、1週間は6日という設定です。

中身を濃く展開は速くする方法ってないですかね?

つくづく妄想しかしてこなかったのが悔やまれます。

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