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23:決戦

レールガンから打ち出された超高速の銃弾が楯にしたビルに風穴を開け、二発目の照準が合うよりも前に【黒刃金】は一気に距離を詰め近距離で真っ黒な専用ライフルの引き金を引く。咄嗟に【蒼鬼】も後退して回避したが、数発当たったのか装甲にわずかながら傷がついた。

「当ててくる?なぜ!?」

今まで二度、最初は自動遠隔操縦システムで、二度目は直接戦って。そしてどちらも圧倒出来たと志和は自負している。確かに二度目の時、ギリギリでレールガンの残弾が尽き完全にとどめを刺せなかったせいで今こんなことになっているのも事実だが、それでも二回ともこちらが圧倒したという事実は変えようがない。

大型重量二脚機に関する知識、経験。どちらも戦闘能力の差を決める重要なファクターであり、間違っても気合や根性でそれがひっくり返ることなどない。確かに機体性能差は【黒刃金】の方がわずかに上回っている。以前応急処置の手伝いの名目で調べた時にある程度のスペックは把握しておいた。冗談のように高出力なブースタに一撃必殺のヒートソード。どちらも高度なAIが動かすことを前提にした、間違っても初心者がまともに動かすことなど出来ないはずの機体のはず。なのに、なぜわずかばかりとは言えこの【蒼鬼】を自分の手足の様に操るこの僕の動きについてきている!?

ロックオンのアラートが鳴り響く中、志和は奥歯を噛みしめながらディスプレイを操作して武装を切り替える。志和が押したスイッチに連動して【蒼鬼】の腰の装甲から浮遊機雷がばら撒かれ、ちょうど追いつきかけていた【黒刃金】がギリギリで気づいてパイルアンカーで急停止する。

「邪魔だ!」

左腕のシールドガンで弾をばらまき浮遊機雷を爆破していく。しかしその爆炎に紛れて一瞬青白い光が見えた。咄嗟にシールドガンで防御するが、狙いは本体ではなく右腕の専用ライフルだった。打ち抜かれ、慌ててパージすると同時にライフルの弾倉に残っていた弾丸が誘爆して【黒刃金】がわずかにぐらつく。

「それみろ!こんな簡単にライフルを手放させられる初心者に僕が負けるはずないだろ!」

これがたとえ重量二脚機同士の戦いでなくとも、剣と銃ではリーチや殺傷能力に大きな差がある。確かにどちらも相手を確実に倒すにはそれなりの経験と腕が必要になってくるが、それでも剣で相手を切り殺すのと銃で相手を打ち抜くのとでは難易度の差は歴然であり、そして重量二脚機同士の戦いにおいて言えば強烈な殴打や電撃などの付加攻撃によって内部機構に甚大な打撃を与えられるものを除いて運用価値を失っている近接武器と、距離を取りながら的確に相手の装甲をぶち抜ける遠距離武器では火を見るよりも明らかに遠距離武器の方が戦力的に有利になる。たとえそれが一太刀で敵機の装甲を溶断できるヒートソードを装備していたとしても、まともな遠距離武器も無しでは勝負にならないハズだ。

レールガンを構えつつ、左手首から対大型重量二脚機用の電磁ロッドを伸ばして一気に接近する。【黒刃金】は電磁ロッドから距離を置くようにわずかに後退し、真っ黒な日本刀を右腕に装備してみせた。

「電磁ロッドを警戒するのは賢明な判断だよ。僕としても、出力を間違って中に居る佑奈を殺したくないしねぇ!」

食らえば内部機構に損害は免れないレベルの高電圧。出来る限りは出力を抑えているが正直言って元々対人用非殺傷能力を持った武器などないのだから避けて貰わないと困る。

「だからさ、ちょこまか動かないでくれないかなぁ!?」

レールガンで足元を狙い、爆発で機体のバランスが崩れたところを狙い背中のメインブースタを吹かして電磁ロッドで殴りかかる。

当たる、と志和が確信し口角を上げるが、【黒刃金】は逆に【蒼鬼】に掴み掛るように接近し電磁ロッドを振りかざす【蒼鬼】の左腕の下に剣を握りしめたままの右腕をすべり込ませて抑え込んだ。

「言われて止まる馬鹿が居るかよ!」

一真はそう叫び返すとシールドガンで【蒼鬼】の胴体に零距離射撃を決める。本来牽制用であり、強固な重量二脚機の装甲をぶち抜くほどの火力ではない。だがそれでも事前につけておいた傷を集中砲火すれば多少のダメージにはなる。

「やっぱな…最初の自動操縦の時のほうがずっと強かった!お前の操縦テクも言うほどじゃない!」

何発も当てられている現状を噛みしめるが、零距離なら外す危険は無いが装弾数の少ないシールドガンはすぐに弾切れを起こしてしまう。なら、別の新しい装備を使うまでだ。

「確か、こいつを押して…」

操縦桿の付近のスイッチを操作すると、【黒刃金】の右肘の部分から特殊なワイヤーが射出され【蒼鬼】の左腕に巻き付く。

「で、思いっきし操縦桿を引く!」

膝の上の佑奈が必死に抱き着き奥歯を噛みしめているのを確認してから左右の操縦桿を力任せに引けば、【黒刃金】の前面装甲の隙間と言う隙間からサブブースタが現れ一気に機体が後退していく。後ろから押しつぶされそうなGがかかり、今にもディスプレイに倒れ込みそうな佑奈を片手で支えながら操縦桿のスイッチを押し、後退しながら伸び続けていたワイヤーが止まる。当然【黒刃金】はまだ後退を続けているから思い切り左腕を引っ張られる形になった【蒼鬼】は構えていたレールガンをあらぬ方向に向けて撃ってしまった。

「ほんとは武器じゃねえけど、こんな風にも使えるんだよ!」

本来は地面や建物に巻き付けて機体を引き寄せるための装備だが、今は向こうの動きを妨害するための武器として使わせてもらう。

「僕を抑え込んだつもりか!?」

体勢を整えた【蒼鬼】は一気にブースタを吹かして追いかける。しかし【黒刃金】は迎え撃つどころか比較的被害の浅いビル街を逃げ回りだした。

「逃がす物か!お前がこれで僕たちを繋げたんだろ!」

ビルの角を曲がり視界から消えた【黒刃金】を全力で追いながら志和は声を張り上げる。僕から大事な大事な佑奈を奪い、顔をゆがませた憎い敵がすぐそこで逃げ回っている。その事実が志和の頭から冷静さを奪っていた。

フットペダルを力任せに踏み抜き、全速力で【蒼鬼】が角を曲がる。が、曲がり切れない。

「なぁに!?」

その時、志和は【蒼鬼】の左腕に巻き付いているワイヤーが巻き取られつつあることに気づいた。そのせいで機体のバランスが崩れて角を曲がり切れなかったのだ。

【蒼鬼】はなすすべもなくビルに接触し、コックピットの中の志和は激しい衝撃で全身を打ち付けられた。その衝撃で操縦桿を放した志和は、動きの鈍った【蒼鬼】を狙って突っ込んでくる【黒刃金】の黒い機体を視界に入れた。

「まずは左!」

引っ張られてまるで差し出すようにしている左腕に超高温のヒートソードが振り下ろされ、【蒼鬼】の左腕が肘のあたりから下を切り落とされる。

「そんで右!」

「させるか!」

咄嗟にレールガンを放ち、【黒刃金】のシールドガンが吹き飛ばされる。さらに二発目を今度は胴体に向けられたことで危機を感じた一真は舌打ちして距離を取った。

距離を取り、二発目のレールガンをビルを盾にして防ぐ。【HEAT UP】を解除して余分なエネルギー消費を抑えた一真は思わず知らず息を切らしていたことに気づいた。

「やっぱきついな…。大丈夫か、佑奈」

「私は大丈夫。それより、一真は大丈夫なの?」

佑奈は一真の額に流れる汗をぬぐい、じっと一真の目を見つめる。

「きついって言ったろ。でも、大丈夫だ。ありがとな」

一真も佑奈を片手で抱きしめ、ちょっとだけ笑って見せる。だけど、佑奈には一真が無理をしていることなど分かり切ったことだった。

でも、だからと言ってここで一緒に機体を捨てて逃げよう、と言うセリフは言えなかった。今ならもしかしたら志和が【黒刃金】に気を取られている内に逃げ切れるかもしれない。可能性が低いかもしれないが、これ以上一真だけに無理を押し付けて自分だけ守られるのは卑怯な気がしていた。だけど…。

「一真…!お願い、アイツに勝って!本当なら、私が決着を付けなきゃいけないことなのかもしれない。志和が私を狙ってこんなにもたくさんの人を傷つけたなら、アイツは私が止めなきゃいけないはず…。だけど…」

佑奈は思わず知らず涙が溢れる。一真の胸に逃げ込むようにしがみつき、絞り出すように口を継ぐ。

「一真しか、アイツを倒せる人が居ないの!私じゃ、みんなの仇を討てないの…!」

一真は静かに佑奈の頭を撫でる。顔を上げた佑奈は、今までで一番すっきりした笑顔の一真を見た。

「安心しろ。アイツを許せないのは、俺も同じだ!」

フットペダルを踏み込み、角を曲がって姿を見せようとしていた【蒼鬼】にタックルを決める。そしてそのまま体勢を整えた【蒼鬼】がレールガンを構えて追いすがり、【黒刃金】が剣を片手にバックしながら油断なく互いに一挙一動を見張りながらビル街を突き進んでいく。

「アイツ、素人の癖にバックだって?そのままビルに叩き付けてやるよ!」

レールガンを可能な限り連射し、【黒刃金】がそれを左右によけながら後退していく。ここに来て再び戦闘可能距離の差が出てきた。剣とレールガンではレールガンに軍配が上がる。まさか、一気に距離を止めて来ればレールガンであっさりと打ち抜かれて終わりなことくらい分かっているハズ。恐らくアイツは今コックピットの中でどうやって距離を詰めるか必死に考えている頃だろう。素人が戦闘中に考え事なんかするから、真後ろに迫るビルに気づくはずがない。

思わず知らず大声で笑いながら志和はフットペダルを全力で踏み込む。背後のメインブースタが火を噴き一気に距離を詰めてやる。予想通り【黒刃金】が剣を構えて高熱化させている。驚きながらもチャンスだとか思っているんだろう。だが、一秒先にはビルに叩き付けられて無様に気を失っている頃だろう。

「行くぞ!佑奈、ちょっとだけ我慢しろよ!」

「うん!」

しかし【黒刃金】はビルに当たる直前バックユニットの全ブースタと、全身の彼方此方にあるサブブースタ全てを一気に吹かしてジャンプし【蒼鬼】を飛び越えた。

「そんな…!?」

【黒刃金】が地面に着地すると同時に【蒼鬼】は派手な音を立ててビルに突っ込み、中に居る志和はあまりの衝撃に再び全身を打ち付ける。そして【黒刃金】はパイルアンカーで無理やり着地の衝撃を抑え込むとそのまま方向転換し高熱化したヒートソードを振りぬき、【蒼鬼】の胴体を斜めに溶断した。

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