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15話4節


[4]


 時は過ぎて夕刻である。帰宅部のアトリは放課後速攻で家に帰ろうとしたが、そうは護衛組が許さない。朝から夕方までアトリをいずこかから見守っていた彼らはこれでもかと退屈を持て余しており、帰りのデートを要求してきた。それこそが彼らの目的にして報酬であるからだ。……そうしてアトリはいつかのように帰りの電車を途中下車し、ショッピングモールへと連れて来られていた。


 今はなぜか、翼に手を引かれ家具屋を訪れている――今日は俺の番だと朔と夷月、秀は置いてきてしまった――。なぜ家具屋……それもカーテンや照明器具のあるエリアなのか……アトリが内心首を傾げていると、翼はひらひらの多いパステルグリーンのカーテンサンプルを触りながらこうのたまった。


「このあいだ約束しただろう? あの家をもっと俺たちの城に相応しい華やかさに飾り立てると。もう忘れたのか?」

「あっ。あのときの……」


 そういえば先週くらいのアフタヌーンティーの席でそう勝手に約束を取り付けられた記憶がある。翼は本気で家を自分好みの内装にしてしまうつもりのようだ。


「うーん……あまり派手すぎないようにしてくださいね。本当に全然帰ってこないって言っても、一応あれ母の持ち家なので」

「ふん、お前は本当に遠慮しいだな。どうせ他の街で好きに暮らして帰って来もしない親なんだろう? ならば家具やインテリアくらい好きなのを選んで暮らしても罰は当たらん。……お前はもっと自由に羽を伸ばしていいんだ。今ここにはお前を傷つけ抑圧するものなどないのだから」

「もっと、自由に……?」


 そう言われてもアトリはどうしていいかわからない。なにせ、今まで自分の意志を持って動いて傷付いたり、責められたりするのを嫌い、〝良い子〟の型にはまる事でそれらから逃げてきたのだ。……翼も薄々感づいているのだろう。しょうがないやつだ、と言いたげにアトリの困惑に肩を竦めてみせる。


「むう……例えばだ。俺がこのがっつりロココ調シャンデリアをあの廊下の地味な照明と取り替えると言ったらどうする」

「え、さすがにそれはいやです……一般家庭の廊下には似合わないので……」

「ならお前はどんなものがいい」

「そうですね……華やかさが欲しいなら、この照明の方が家とマッチすると思うんですよね」


 問われるがまま花の形のシェードが四つつらなった照明を選べば、翼は「うむ。それも悪くない」と満足そうにカートに入れてしまう。自分の選んだものでないのに随分と嬉しそうだ。


「いいんですか?これで。翼さんの選んだものとだいぶ違いますけど……」

「これでいいんだ。これは俺たち二人で選んだもの、そしてお前が自分の意思で自由に選んだものだからな。――お前はこうやって一つずつ、自分の思いを表現していけばいいんだ。それを尊重し、守るのが俺たち花婿の役割なんだからな」


 ただただ甘えてくるばかりではなく、こちらにも自由という名の甘えを許してくれている……ようだ。もしかすると、これが翼なりの愛情表現なのだろう。しかし、アトリはそれにどんな顔をすればいいのかわからない。


 人間のふり。いい子のふり。普通の女の子のふり。従順な子供のふり。どんなもののふりでも出来るはずの空虚な顔は、愛し愛される人間のふりだけはできないようだ。


「どうしたんだ、そんなきょとんとして」

「あ、いえ……こういう時、どんな顔をすればいいかわからなくて」

「こういうときは笑っておけ。困り顔もいいが……お前はやはり笑顔が一番かわいい」


 そう言いながら翼はいとおしげにアトリの頬を撫でる。キザな言葉遊びでも戯れでもない、ド直球の甘い行動にアトリの顔には熱が集まるが、翼はそれに構わず「そろそろ時間だな。遅れると他の奴らがうるさい。行くぞ」と会計にカートを押して行ってしまった。



◇◇◇◇



 時刻は午後十七時半過ぎ。待ち合わせ場所であるベンチへ向かうと時間通りだなと朔が文庫本を閉じ、夷月が居眠りから目を覚まし、秀は遠くを見ていたのをやめる。


「待たせたな。次の番は秀だったか?」

「……俺はいい。それよりも用事は終わったのだろう? なら帰るぞ」


 そう言って立ち上がった秀は駅方面へとつかつか歩き出す。


「おい、いいのか? せっかくのお前の番なのに」

「それくらいなら安全な家中で茶会をしているほうがましだ。それに、家に帰ったらそれを取り付けるのだろう?」


 確かに、買った照明を取り付けるなら少しでも明るい方がいい。――気難しい物腰だが、こういう気遣いはやはり細やかな男なのである。




 ショッピングモールを抜けて駅までの道をゆく。ちょうど夕暮れ時という言葉がぴったりの茜色が辺りを一色に染めている。そんななか、アトリはちょうど秀と並び歩いていた。


「お前は本当に奇特な奴だ。こんな時分でも学校などに行ったり、あいつらの〝デートごっこ〟に付き合ったり」

「……そう、なのかもしれませんね。でも、たぶん、それが一番人並みな……〝ふつう〟な過ごし方なんです。化け物が襲ってきたり、花婿が十六人いる結婚だったり、そういう異常のなかで一番の。だから私はそれを維持していたいんです」

「〝普通〟、か。お前ほど賢い女がそんなものに囚われているのか。俺からすれば、人並みだなんだと有象無象の愚か者に同調されてしまうくらいなら、安全な籠の中で花嫁修行をさせたいものだがな。――やはりその方が俺には自然に思える」

「秀さんのそれこそ、大昔の〝ふつう〟に囚われ過ぎに見えますよ」


 顔をしかめる秀にそう言い返せば、眉間のしわが更に深まる。会話はどこまでも平行線。朝とまったく変わっていない。


(それもそうか。人間も魔物も価値観は人それぞれだし……)


 本当は〝ふつう〟なんて有って無いようなものなのではと、今まで見ようとしなかったことに目が向く。そもそもは、情操も何も有ったものじゃない空虚な自分を誤魔化して周囲と同化するのに、「世間で言う普通」などという漠然としたイメージを頑なになぞってきただけなのだ。そうすれば周囲と同じように幸せになれると信じてきたのだが、現実は何だか違う気がしてきている。ではいったい何が間違っているのか。そこがアトリにはわからない。


(これが人生の悩みってやつなのかな……っと、何だろう。この嫌な感じ……)


 背筋を這い登るひんやりとした嫌な感覚。ふと顔を上げれば、路地をまっすぐ行った先に黒い人影がゆらゆらと佇んでいる。生きている人間の気配のしない、黒い人影。……昔いつかにも見たことがあるそれ。今の今まで忘れていたし、それをいったいいつどこでというのも思い出せないが、あれは見たことがある。気味が、悪かった。


「みんな、待って」

「ん、どうした? そんなに顔を青くして……具合でも悪いのか?」

「違う、違うの。見えないかな、この先になにか、黒い影みたいなのがいるの。……このまま真っ直ぐ行かない方がいいと思う。回り道、しよう」


 翼たちには黒い人影は見えていないらしい。彼らは首を傾げながらも「お前に見えているのなら」と回り道を了承してくれた。


「お前は元々規格外の魔力持ちだからな。俺たちとの契約を重ねたり魔力を使ったりしたことで、なにか能力が発現しているのかもしれんな」


 そうして回り道へ曲がった時だった。まばらにいた雑踏の人々は消え、モノクロの世界が広がっていく。赤黒い裏世界とは違うが、これもまたいつもの世界と位相の違うなにかなのだろう――。


「ははっ、勘の良い人間だよ。罠をたっぷり仕掛けた本命の結界を避けるとは! こちらにも予備の結界を張っておいて正解だったな」


 どうやらここは敵の結界らしい。大勢の手下を連れた、全身に鎖をまとった豊満な姿の鬼女――シェイヌ――が避けた通りの方から姿を現した。どうやらアトリが見た黒い人影は凶兆のようなものだったようだ。


 敵の出現に黒騎士はすぐさま軍服姿へと変わり、各々の武器を取る。そしてアトリに皮膜結界を四重にかけると、彼女を護るように前へ並び立った。


「ふん。本命の罠を看破されて予備を持ち出すなど……間抜けな魔物もいたもんだな!」

「たかが予備と侮るなよ。本命ほど罠の数はないが……こちらでも十分にお前たちを狩ることはできるぞ?」


 売り言葉に買い言葉。翼の勝ち気な嫌味に、シェイヌは不敵に微笑んで手下たちを動かす。三十から五十くらいだろうか。統制の取れた鬼女たちは頭目の合図とともにオオォと鬨の声を上げて突撃を始める。


 対する黒騎士もそれぞれ戦闘態勢を取り、迫りくる敵勢をたった四人でせき止めた。奇しくも、この場にいるのは、いずれも黒騎士随一の血気盛んな戦士ばかり。多勢に無勢など臆するに値しない。


「ヒャッハア! そぉら掛かってきやがれェ!」


 夷月が先陣を切り、鬼女たちを次々となぎ倒す。実力は中級程度といったところか、有象無象の鬼女たちよりは耐久力が高いようだが、それでもあの戦鬼のような男の勢いを殺し切ることはできずにいるようだった。ある一人は斬り殺され、またある一人は氷漬けで粉砕され……と確実に数を減らされている。


「ちっ、夷月のやつ一番駆けを横取りしおって……まあいい。こっちはこっちで星を稼ぐだけだ!」


 続いて翼も、夷月とは反対方向から鬼女の群れを押し返してゆく。彼は夷月と違って行儀のいい剣技と光弾で敵を次々に仕留めてゆく。


 残る朔や秀も己の得物と能力を使い、先陣の二人が取りこぼした敵を押し返す。日々戦闘への適応を繰り返してきた黒騎士相手では、もはや中級程度の鬼女たちでは相手にならないのかもしれない。彼ら二人も冷酷に敵ひとりひとりを確実に片付けてゆく。


 そうして四人は獰猛・凶暴な一面を見せて敵に襲いかかり、ある者は嗜虐的に笑い、ある者は冷徹に表情一つ変えず獲物を斬り伏せていく。まるでアニメやゲームによくいる悪の組織の幹部のようだ。


 不意討ちに放たれた呪いの炎さえ、対抗式で減衰させて、秀が炎を巻き込み返してしまった。性質さえ分かってしまえばあんな芸当もできるのだ。これなら敵に勝ち目はないように思えるが……


(湧きつづける敵のせいで戦線が伸びてきて、四人バラバラになりはじめてる……このまま押し切ってあのボスを叩ければ問題なさそうだけれど……)


「フフ……そろそろ頃合いだな」


 嫌な予感ほどよく当たる、とはよく言ったもので。勢いに乗じて敵を押し込んでいた四人を突如、金色の光が四方八方から襲う。それは彼らの四肢に巻き付き動きを制限しているようだった。


「くっそ……なんだこりゃあ」

「鎖かっ。ちいっ、身動きが取れん……!」


 拘束された黒騎士はそれぞれの手段で鎖を破壊しようとするものの、それは生半可でない耐久力で夷月の凍風も朔の瘴気も、翼の光線も耐えてしまう。戦況は一転、動けないなかで迫りくる雑兵をどうにか能力で殺して防戦一方になるしかない状況になってしまった。


「やはり獣は獣。眼の前の獲物に食らいつくしか能がなかったようだね。手下も呪炎も、すべてはこれの為のブラフさ。……これだけ引き離されていれば、お得意の連携もできまい。さて、ここからは一匹ずつ狩っていこうじゃあないか」

「くっ……抜かったか……」

「ふふふ、油断したねえ。私は他の使い魔とは違う。お前たちをただの人間モドキとは思っちゃいない。――間違いなく、お前たちは凶獣だよ。私たち紅魔十傑をここまで殺し、コレール様の呪炎に耐性を持ち始めたんだからね。だからこそ準備は抜かりなく、確実に狩れるよう、泥臭い戦法を取ってまで罠に掛けたんだ」


 罠に掛かった獣など、あとはとどめを刺すだけ。まずはどいつから仕留めてやろうかとシェイヌは舌なめずりする。……その時だった。恐ろしい轟音とともに辺りを熱波が襲ったのは。


「くっ……なんだ? これは……!」


 それ……突如巻き起こった爆炎は天をも焦がす勢いで火柱を作り出し、辺りにいた使い魔を一瞬にして焼き尽くしてしまう。その中から現れた人影は、軍服の上に騎士服風の外套を纏い、十字剣を携え、頬に竜鱗を張り付かせた紅髪の男――今この状況においては魔王じみた姿と言える――。秀その人に間違いなかった。


「ふん……この鎖、本気を出せば簡単に焼ききれるようだな。貴様がわざわざ結界を用意していたお陰で、こちらも遠慮なく炎を使える。――本気を出せば街一区画など簡単に吹き飛ぶがゆえ加減していたが、位相の違うここなら気にせずいられそうだ」

「ちっ。耐火強度を見誤ったか……まあいい。それならそれで、正々堂々一騎打ちといこうじゃないか!」

「望むところだ……だがその前に」


 そう言った秀は左手を掲げ、複数の火炎弾をあちこちへと飛ばす。それは片割れたちを縛っていた鎖の出どころ。要するに罠の設置場所で、火炎弾の直撃を受けたそこはバキン、と砕け散っていった。


「一騎打ちとあらば、雑魚に横槍を入れられるのは我慢ならん。向こうは向こうで戦ってもらう」


 「ちっ」「貴様だけいいところを」などと雑音が聞こえるのは無視して、秀は十字剣に炎をまとわせてシェイヌへ斬り込む。シェイヌはそれを腕から触手のように伸ばした鎖で阻むが、あまりの熱と膂力で鎖はあっけなく溶け落ちてゆく。それが幾度も幾度も剣戟のように繰り返される。


「はっ……! たった一匹でここまでの力を出すというのか! 想定以上、想像以上の凶獣だよお前は! ――ああ、最高だ! 今まで勢力拡大のために身を投じてきた戦いは児戯でしかなかった。これが本当の戦い、本当の死闘だ!」

「貴様いったい何を言っている……ぐっ……!」


 狂喜のまま凄まじい速さと量で伸ばされた鎖の奔流は秀を捕らえ、ぎりぎりと絞め殺さんとする。あまりの物量に剣の爆炎だけでは追いつかない攻撃。もうこのまま絞め殺されるしかないのかと思われた時、グルグルと獣じみた唸り声が辺りに響いた。よく見れば秀に巻き付いた鎖の束は赤熱し溶け落ちだし、秀自身もより竜に近い容貌で喉の炎袋を燃えたぎらせている。


「貴様の送り火だ、受け取れ!」


 こんな状態でもまだ戦えるのか――そう思ったが早いか。眼の前の凶獣の(あぎと)から爆炎が放たれる。致命の一撃。神の所有物であったとされる原初の火を思わせる、純然たる憤怒の炎。それは感嘆の声を上げる間もなくシェイヌの身を焼き焦がし、灰へと変えてゆく。


 自分ではこの獣たちを狩ることはできなかった。しかし、生きてきたなかで最も充実した狩りだった。自分はこの戦いのために生まれたのだと、消えていく今ならはっきりと分かる。そうして酔狂な女戦士は「ああ、すべてはこの時のためにあった!」と炎の中で満足そうに吠え、砂になって消えていった。



◇◇◇◇



 ――主を失った結界は徐々に崩壊し、アトリたちはまた茜色の街へと戻ってきた。黒騎士たちは勝手に満足して討ち死にしていった敵の残滓を怪訝そうに眺めながら、戦闘態勢を解く。あれだけいた手下の使い魔もすべて始末したようで、辺りには不自然な砂の山が幾つも残されている。


「……なんだったんだ、あいつァ。勝手に挑んで、勝手に死んでいきやがった」

「そういう性癖のやつだったんじゃないのか。たまに妙なのがいるって郁が言ってたろう。……それよりもだ。あの呪いの炎、威力が上がってなかったか? 基本的な性質は変わってないようだから、対抗式は効くみたいだが」

「とりあえず復讐の目はあるが……警戒すべきだな」


 ああだこうだと議論しながら戻ってくる夷月、翼、朔。それに先んじて秀――きちんと人間の姿に戻っている――がアトリのもとへやってきた。


「大丈夫だったか。怪我はないか。先程の戦闘では少し本気を出したからな……」

「大丈夫ですよ。えーと、結界のおかげか、距離が遠かったからか熱波が少しきた程度で」

「……そうか。ならばいい」


 平気そうなアトリの様子に、心配そうな顔をいつものつんと澄ました顔に戻した秀は「やはりお前は俺たちの家で守られているべきだ」と言い帰宅を促す。その神経質な様子はまるで宝物を巣穴に戻す竜のようだ。西洋の竜はしばしば財宝を守るものだというが、竜の魔物である秀もまた、そういう習性を持つのかもしれない。


「……また今日も敵の襲撃がありましたね。秀さんの言う通り、やっぱり、ふつうに学校へ行ったり、出かけたりすることは諦めた方がいいんでしょうか……」

「……お前がそう望むなら、俺は止めん。だが、お前は〝普通に〟暮らしたいのだろう? ――俺は、お前が俺たちを救ってくれたことを忘れてはいない。俺は誠意や信義には報いる。お前が望むなら日常を維持することにも、取り戻すことにも力を振るってやる……何も心配するな」


 唯我独尊な物腰でその口振りは荒く刺々しいが、秀はアトリの憂いを拭うようにそう語る。彼は彼なりにアトリの意志を尊重してくれている……ようだ。


「……それよりもだ。お前、大事なことを忘れていないか」

「大事なこと?」

「刻印だ。俺達にも、これから一緒にやっていくにあたってのけじめが必要だろう」


 刻印。それは秀と出会って今までまったく触れてこなかった話題である。気難しいまでに高潔なところのある彼のことである。理想と違うアトリを気に入らないからその話題を避けていたと、少なくともアトリはそう思っていたのだが……


「いいんですか? こんなのに刻印をつけて。秀さんは大和撫子が好きで、私みたいな現代っ子はお気に召さないでしょう?」

「いつ俺が、お前を気に入らないと言った。思い違いも甚だしい。今まではただ機会を掴めなかっただけだ……お前は俺の花嫁だ。だから暮らしぶりにも口を出すし、花嫁修業のことも考える。勝手にすべてを無かったことにするな」


 不機嫌そうにドスの効いた声でそう告げた秀はアトリを抱き竦める。そして、左手を取ってそっと口づけする。また白い肌へ墨のように奇妙な紋様が書き加えられていく。これでとうとう十二個目。完成まであと四つだ。


「これでお前は俺のものだ。他の男になんぞ、骨の一片たりともくれてやるつもりはない」


 ――どうやら、ここでもアトリは選択を間違えたらしい。遠くで夷月がげらげらと笑っているのが聞こえる。





(以下、おまけのメモ)

・黒騎士という凶獣を確実に仕留めるため、シェイヌはあらゆる手立てを尽くさねばならないので、策を凝らして戦いに挑んだようです。それでも秀との相性の悪さが裏目に出てしまいましたが。


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