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Shadow Shuriken  作者: 木挽
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影の終焉、そして約束



屋敷の中庭は、血と煙に包まれていた。イチの影の剣が男たちを次々と斬り伏せ、恐怖に駆られたキンゾウの手下たちは、我先にと逃げ出していった。宴の喧騒は消え、残されたのは静寂と、月の光だけだった。


そのとき、武道場の奥からキジマルが現れた。縄を切り、傷だらけの身体でふらつきながらも、イチの背中を見て笑った。


キンゾウはその姿を見て、すべてを悟った。


「お前…あの時の小僧だな。生きていたのか!」


声を震わせながら、キンゾウはツキを羽交い締めにした。刀の刃が、ツキの白い首筋に冷たく当てられる。


「この女を殺すぞ!近づくんじゃない!」


イチは一歩も動かず、ただ静かに見つめていた。


その足元に、黒い影が忍び寄る。小さな影ネズミが、音もなくキンゾウの足元へと近づいていく。


「な…なんだ…!」


キンゾウは後ずさる。だが、もう遅かった。


影ネズミはキンゾウの足元で形を変え、黒い太刀へと変化した。次の瞬間——


刃は地面から突き上げ、キンゾウの身体を貫いた。


肛門から入り、頭頂部から刀の先が突き出る。キンゾウの目が見開かれ、口から血が噴き出す。


「ぐ…あああああ!」


そのまま、キンゾウは崩れ落ちた。


ツキはその場に立ち尽くし、震える手で口元を押さえていた。イチがゆっくりと歩み寄ると、ツキは彼に飛びついた。


「よかった…本当に…よかった…!」


イチは何も言わず、ツキを強く抱きしめた。二人の影が、月の光の中でひとつになった。



——シップ内。


静かな機械音が響く船内。ツキはイチの隣に座り、窓の外に広がる星々を見つめていた。


「私は一度、国に帰らなければいけないの」


イチは彼女の横顔を見つめながら、静かに頷いた。


「待っててくれるよね?」


「…ああ。いつまでも待つよ」


ツキは微笑みながら、少しだけいたずらっぽく言った。


「ちなみに、どれくらいで帰ってくると思う?」


「ん?…まあ、1年くらいか?」


「そうね…300年ぐらいかな」


「……え?」


イチは目を見開いた。


「大丈夫。だいぶイチ、長生きになったから」


ツキは笑った。イチも、少しだけ呆れたように笑った。


そして、二人は静かに手を繋いだ。


時を超えても、影の絆は消えない。


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