坂本柊
とりあえず続けます。(てか、一応完結までは持っていきます。)
視点は主人公(陽汰)のままです。
「ひいらぎ…。」
目の前に現れた女子生徒、坂本柊は少し虫の居所が悪そうな雰囲気で俺に近づいてきた。
「その様子を見ると、私のことは覚えているようね?」
「あ、ああ。」
正直そこまで覚えてはいない。昔同じ小学校に通っていたという記憶が、少し蘇っただけ。大半が靄の中に埋もれている。だが、そんなことを言えば角が立つので、とりあえずは言わずそういうことにしておく。
「とりあえず久しぶりね。約3年半ぶりかしら?元気そうでよかった。」
…なるほど。約3年半ぶりらしい。
柊は最初こそ虫の居所が悪そうにしていたものの、本当は虫の居所が悪かったわけではないようなのか、次に綴った言葉からは至って普通の口調で話し始めた。
「ああ。小6ぶり。そっちこそ元気そうで良かった。」
計算で逆算し、嘘をついている分少しバツが悪いながらも、それを気取られぬように淡々とした口調で、さっきとは別の表現を用いて返す。
「ここじゃなんだし、近くのファミレスで話しましょ?」
…そっか。こっちにはファミレスがあるのか。
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俺は昔からフツメンだった。別に顔立ちが良いわけでも悪いわけでもない。それこそ、『顔面偏差値50』という平均なのかよくわからん数字は俺のためにできているとさえ思うほど。そんな俺は今、幼馴染みとファミレスに来ている。しかもその幼馴染みは、成熟し顔立ちも顔面偏差値80超えを彷彿とさせる、『これぞまさに!』という感じの美少女ときた。
ーこの時俺は、死期を悟った。
「なにしてしてんのよ?早く座りなさい。」
「はい。」
…別の意味で。
来る途中で行った会話を通して段々と思い出した。すごい変わり様だったので最初はわからなかったのだが、小6の冬に転校していったのが今目の前にいる美女だった。約3年半前とはいえ、前はこんな感じの美女ではなかったように思うのだが、たった約3年半でこんなに変わるのだろうか。もしかしたら俺が知らんだけで変わるのかもしれんな。ちなみにだが、こいつの性格はなんにも変わっていなかった。びっくりするくらいそのまま。昔のように、俺を尻に敷く態度が今も残っていたのだ。
こいつとは誕生日もそこまで遠くなかったので、唯一お姉さん面せず、対等な関係で扱ってくれていた。そのため、当時の俺にとって珍しい存在だったので、結構会話をするたびに容易に記憶を蘇らせることができた。まあ、それでも中学時代3年目や高1時代は忘れていたのだが…。
…。にしても、学校ではもう少しマシな態度をしてませんでしたかね?あなたのお友達とかに。
「しっかし、相変わらず汚い髪色ね。名前と髪色ですぐにあなたが昔近所に住んでいた子だってわかったわよ。どうやったらそんな髪色になるのかしら?」
「うるせえな。人を髪色で判断すんな。それに、こいつはドイツ人のひぃ爺ちゃんからの遺伝だ。金髪に茶髪に黒髪が混ざれば、自然と3色を足してそのまま3で割ったような感じの、色合い的には平均的な髪色になんだよ。」
「はいはい、そうですねー。前も聞いたわ。」
「んだてめ。ムカつく反応しやがって…。それこそお前の青髪はどうなんだよ!?いかにも日本人ぽくないような髪色しやがって。」
「っ!」
ここでこいつの容姿を1度説明しておくと、実際に、彼女はいかにも外国人っぽい髪色をしている。それは母に由来するもののようで、髪は美しい青色が綺麗で、周りがすごかった事も煩って、当時はそこまで良くも悪くも目立っていなかったものの、今では、顔立ちも美しく整っていて、昔よりもいっそう磨きがかかっている。ちゃんと手入れでもしているのだろうか。髪色と、そこそこの整った顔立ちから、小学生の頃から当然のようによくモテていた覚えがある。あの頃以上の容姿ということは今はそれ以上なのだろう。俺ら7人の親が同じ高校出身でかつ仲良くしていなかったら、一生縁なんてなかったと思う。向こうから関わって来ることもなければ、こっちから関わろうともしてなかったと思うしな。目立っていなかったとはいえ、そのくらいの人気が彼女のはあった。
「し、知らないわよ!どうせ先祖がスコットランド人かアイルランド人だったんじゃないの?」
「俺に聞くなよ。」
「ていうかさ!それよりも、私、このことコンプレックスにしてるんだから指摘しないでもらえるかしら!女の子の容姿を指摘する際には配慮しなさいよ!」
「そんなこと俺が知るかよ!つか、あんときお前あんま気にしてなかっただろ!それにお前の容姿をとやかく言ったつもりはねえ!」
「そうですか…。」
「あ?どした?」
「んーーー。…たしかにそれもそうよね…。」ボソッ
「急にブツブツどうしたよ…?」
「いやね、あなたの発言に引っかかって。」
「へ?」
「たしかに、昔は気にしてなかったなって。…まあいいわ。」
「そんなため息混じりに『いい』って言われても…。…まあ、俺も今後気をつけるわ。」
「そうしてくれると助かるわ。」
ここで会話が1度途切れる。が、俺には1つ先程からずっと気になっていることがある。それを質問しなければなるまい。
「…なあ、さっきどうして誰もいないところで話しかけて来たんだ?」
「どうしてって。なんかバレたらヤバそうじゃない?」
「あぁ?あぁ。まあ…、そうかもな。…そうか?」
「えぇ…。そこは違うって言いきりなさいよ。」
「…どんなツンデレだよ。」
「あなたにデレる人なんてこの世にいるのかしら?」
「悪かったな。デレられるほどのモテ男じゃなくて。」
「冗談よ。それに、こうして言い争えるのもあなたという存在がいてこそだもの。」
「ドリンクバー取ってくるわ。」
「…なんか言ってから行きなさいよ…。」
おお。なんかこいつの呆れツッコミ、すげえ落ち着くな。俺のサイドエフェクトがそう感じてる。やっぱ幼馴染みだからなのか?すげえな、幼馴染みって。
改めて席を向かいに、対面するようにして座ると、高校生になった目の前の彼女は確かに美人になっていた。俺の顔面偏差値を50とするなら、間違いなく彼女は80超えだろう。昔から綺麗とはいえども、拙くあたふたしている感じを放っていた青色の髪も、今は静寂として落ち着いた感じになっているし、肌も白く透き通っていて、いかにもハーフかクオーター(透き通り度だけで言えば、具体的には絢瀬◯里や小原◯莉のような某有名アイドルの感じをイメージして欲しい。)といった感じ日系外国人系美人となっている。髪色が違えば、今流行りのアニメのヒロイン、ア◯サ・ミハイロヴナ・九条のようである。まあ流石にそこまでの外国人感はないけれども。性格だってどちらかといったら、彼女のような孤高のお嬢様系ではなく、花◯辻空のような毒舌系陽キャだし。友達付き合いや髪色は、若干だが八奈◯杏奈感もある。若干だが。結局のところ、『何こいつ?お前は何を目指した結果このような平均になったの?』って感じだ。まあ本人に聞いたとして、『私に聞かれても。』としか返ってこねえだろうな。ラノベ読まなさそうだし。本を読むとしても、絶対三島由紀夫とか夏目漱石とか読んでそうだし。まあ柊は文学少女って感じでも柄でもねえけど。
…そういえば、柊の声って声優の花澤◯菜に似てんだよな。実は本人だったり…?…はしませんね。こいつ芸能界に入っても芸名とか作りそうにねえしな。あくまで俺の勘でしかねえけど。
ちなみに俺はその時、柊は終始「?」となっていた…らしい。俺はその事に気づかなかった。申し訳ない。
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「そういえば、あなたなんでこっちに引っ越してきたの?」
突然話を変えるかのように、柊がこちらへ質問してきた。
「親の仕事の都合でな。はるばる新潟市近郊に来たわけなのだよ。」
「ふーん。そうなんだ。」
「んだその反応。何だよ?文句でもあんのか?」
「ないわよ。何であると思ったのよ。」
「なんでもだよ。つか、お前の昔の態度がそんな感じだったしな。」
「なんでもって…。ていうか、昔の私でも、あなたにそんな喧嘩腰で話さないわ…よ。」
「なんでそんな自信なさげなんだよ。」
「さっきから少し不機嫌じゃないかしら?…まさか私の返事が乱雑だからって、不貞腐れたんじゃないでしょうね?」
「別に不機嫌ではねえけど。てか、なんで俺がお前相手に不貞腐にゃならんのだ。」
「へえ。そういう事を言うのね。」
「なんだ?逆に君は俺に不貞腐て欲しかったのか?」
「迷惑だから遠慮しておくわ。」
「…そうかい。」
一通りの会話を終え、俺達は会計をした。意外にも、ここの支払いは彼女が持ってくれるようで、なんか申し訳無さを感じた俺は「次回は俺が持つ。」と言って、今回は黙って外に出た。素直に奢られるのを受け入れた。「いやいや俺が。」っつっても、それが通用する相手ではなかったし。何時間もそれの応酬になるのは流石に周りに迷惑だし、俺自身も面倒だ。それよりも次回の話が出た際の柊の反応が少し引っ掛かったが、気にしないことにした。多分他意はないのだろうし。
柊も出てきたところで、ファミレスを出発する。しばらく家の方向が一緒ということで、途中まで帰路を共にした。まだ昼間、陽光も高い位置にあるということもあり、お互いに互いの家に送るなど、恩着せがましいことはせず、とある交差点で別れた。
「ただいま。」
家に帰り、挨拶をする。誰もいない家はやっぱり新鮮だ。人との関わりがないということがここまで楽だということを教えてくれる。もしかしたら俺は人付き合いには向いていないのかもしれんな。まあ友達がいることに越したことはないけどな。やっぱ勉強なんかを教えてもらえるのは、メリットとしてでかい。あと、セッターとしてスパイカーの体調を見るというのの練習にもなる。
俺は部屋に戻ると、制服を脱ぎ、私服に着替える。現在時刻は14:40。風呂に入るには、まだ早い。春休み中に配布された課題も終わっているので、別段やることもない。つまり自由だ。せや!この春休み、あまり触れることのできなかった去年の11月に発売されたシリーズ総計では約3年ぶりの新作、その中の世界シリーズでは約13年ぶりの新作、『ホモ太郎電鉄ワールド』でも遊ぶとしよう。最後に遊んだデータではまだ2年目までしか進められていなかったため、ブランクが空いていてもさほど影響はないはずだ。…うん、たくま社長が絶好調だった。影響〼。
しばらく遊んでいると、27年目に差し掛かった辺りで5時のチャイムがなった。俺は27年目の決算で2位と1000億円の差がついているのを確認すると、セーブしてゲーム機の電源を切る。そして風呂に入り、晩ごはんの準備に取り掛かった。
6人の幼馴染み。書籍化されたら泣いちゃうぜ。
ならんけどな。あと、今それなると普通に困るし。書籍化されるならせめて、あと半年後にしてくれ。
まあ、半年後になっても5話くらいまでしか更新されていないと思うがな。ハッハッハッ!
言ってて悲しくなってきた。
これからも読み続けてくださると嬉しいです。