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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第6章 真実
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4


「シズク!!」

後ろから強く体を引っ張られて、目の前に人影が現れる。


「ヤヨイ、なんで」

「喋らないで!止血するわ、救護隊のツララたちにも合図する」

振り返るとそこには目に涙を溜め、しかし泣くまいと耐える親友の姿があった。


「どうなってんだよ、ソウヤ!」

私とソウヤの間に入った人影はユサだった。

碧い火に包まれるソウヤを見て叫ぶ。


私の怪我の応急処置をしながら、ヤヨイが先ほどの質問に答える。

「私たちちょうど近くで任務だったの。でも碧い火が微かに見えて気になって。昔シズクが夢で見たって言ってたでしょ」

まさか二人だと思わなかったけど…と唇を噛む。


「くそ、俺の声聞こえないのかよ!」

ユサが叫びながら、ソウヤの動きを止めるため土属性の龍導で足元を崩す。


溝にはまる形になったソウヤの動きが止まる。その隙に震える手を伸ばし、水を放つ。しかし碧い火の威力は弱まらない。


「血は止まったけどむりしないで、シズク」

ヤヨイが心配そうに私を見る。


でもここで無理してでも、ソウヤを止めなければ一生後悔する。

ふるふると首を振り、ゆっくりと起き上がる。

その背を慌ててヤヨイが支えてくれる。


「ありがとう」

溝から出て、また近づいてくるソウヤを真っ直ぐ見つめる。


ユサとヤヨイが必死で動きを止める龍導を仕掛けてくれる。けれども碧い火によってすぐに障害物は燃え、近づいてくる。


「ソウヤ!戻ってよ、もう私は大丈夫だから!敵はいないから」

必死に呼びかけるが応答はない。


これが龍の加護なのだろうか。本人の意思に関係なく、敵だけじゃなく味方まで傷つけようとする。


涙が止まらない。炎越しに見える、なにも映さないソウヤの碧い瞳。


「お願い、止まって!!」

叫んだことで、ずっと肌身離さず首にさげている三本の首飾りが揺れる。


そういえばこれは父と母が亡くなった時も残ったんだよな。

ぐっと首飾りを握りしめる。


そして三本のうち私の分だった一本を外す。

「お父さん、お母さん、力を貸して」

祈りを捧げ、その首飾りを龍導の水で纏う。


「止まって、ソウヤ」

その首飾りをソウヤの首元に向かって放つ。

水の力でソウヤの首を首飾りで緩く囲う。


すぐに水が蒸発しそうになるので、必死で水を生み出し続ける。だが首飾りは全く燃えない。


前に進もうとしていたソウヤの動きが完全に止まった。首飾りで動きが制限されたのだ。


「止まった」

ヤヨイとユサもこの機を逃すまいと、碧い火の周りを龍導で囲う。


動かなくなったソウヤに近づく。

「これが二つの龍の加護て言うの。それならソウヤに二つもいらない!ソウヤを解放して!私に加護をよこしなさいよ!」


「シズク、危ないわよ!」

ヤヨイが目を見開き、叫ぶ。


碧い火に向かって手を伸ばす。


ソウヤ、たしかにこの火は憎い。父と母を奪った碧い火。ずっと探してた。見つけたら殺してやるて思ってた。


でもね、ずっと父と母が敵との戦いの最中、苦しみながら殺されたんだと思っていた。


けどきっとソウヤを助けようとしたんだね。


なら、私はその意思を継ぐ。


私がソウヤを絶対助けるよ。


なにより私がソウヤに苦しんでほしくない。



だって。


ソウヤのことが、好きだから。



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