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「シズク!!」
後ろから強く体を引っ張られて、目の前に人影が現れる。
「ヤヨイ、なんで」
「喋らないで!止血するわ、救護隊のツララたちにも合図する」
振り返るとそこには目に涙を溜め、しかし泣くまいと耐える親友の姿があった。
「どうなってんだよ、ソウヤ!」
私とソウヤの間に入った人影はユサだった。
碧い火に包まれるソウヤを見て叫ぶ。
私の怪我の応急処置をしながら、ヤヨイが先ほどの質問に答える。
「私たちちょうど近くで任務だったの。でも碧い火が微かに見えて気になって。昔シズクが夢で見たって言ってたでしょ」
まさか二人だと思わなかったけど…と唇を噛む。
「くそ、俺の声聞こえないのかよ!」
ユサが叫びながら、ソウヤの動きを止めるため土属性の龍導で足元を崩す。
溝にはまる形になったソウヤの動きが止まる。その隙に震える手を伸ばし、水を放つ。しかし碧い火の威力は弱まらない。
「血は止まったけどむりしないで、シズク」
ヤヨイが心配そうに私を見る。
でもここで無理してでも、ソウヤを止めなければ一生後悔する。
ふるふると首を振り、ゆっくりと起き上がる。
その背を慌ててヤヨイが支えてくれる。
「ありがとう」
溝から出て、また近づいてくるソウヤを真っ直ぐ見つめる。
ユサとヤヨイが必死で動きを止める龍導を仕掛けてくれる。けれども碧い火によってすぐに障害物は燃え、近づいてくる。
「ソウヤ!戻ってよ、もう私は大丈夫だから!敵はいないから」
必死に呼びかけるが応答はない。
これが龍の加護なのだろうか。本人の意思に関係なく、敵だけじゃなく味方まで傷つけようとする。
涙が止まらない。炎越しに見える、なにも映さないソウヤの碧い瞳。
「お願い、止まって!!」
叫んだことで、ずっと肌身離さず首にさげている三本の首飾りが揺れる。
そういえばこれは父と母が亡くなった時も残ったんだよな。
ぐっと首飾りを握りしめる。
そして三本のうち私の分だった一本を外す。
「お父さん、お母さん、力を貸して」
祈りを捧げ、その首飾りを龍導の水で纏う。
「止まって、ソウヤ」
その首飾りをソウヤの首元に向かって放つ。
水の力でソウヤの首を首飾りで緩く囲う。
すぐに水が蒸発しそうになるので、必死で水を生み出し続ける。だが首飾りは全く燃えない。
前に進もうとしていたソウヤの動きが完全に止まった。首飾りで動きが制限されたのだ。
「止まった」
ヤヨイとユサもこの機を逃すまいと、碧い火の周りを龍導で囲う。
動かなくなったソウヤに近づく。
「これが二つの龍の加護て言うの。それならソウヤに二つもいらない!ソウヤを解放して!私に加護をよこしなさいよ!」
「シズク、危ないわよ!」
ヤヨイが目を見開き、叫ぶ。
碧い火に向かって手を伸ばす。
ソウヤ、たしかにこの火は憎い。父と母を奪った碧い火。ずっと探してた。見つけたら殺してやるて思ってた。
でもね、ずっと父と母が敵との戦いの最中、苦しみながら殺されたんだと思っていた。
けどきっとソウヤを助けようとしたんだね。
なら、私はその意思を継ぐ。
私がソウヤを絶対助けるよ。
なにより私がソウヤに苦しんでほしくない。
だって。
ソウヤのことが、好きだから。




