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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第6章 真実
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肩で息をする。汗も滴り落ちる。私たちを囲んでいる宝国の四人がそれぞれ刀を構えている。


背中合わせで後ろに立っているソウヤも肩で息をしている。正直不利な状況である。


人数の問題ももちろんある。そのうえ向こうは専門の戦術部隊のようだ。動きの連携がうまいし、場慣れしている。


しかしそれ以前の問題は私もソウヤも属性として、物理攻撃の盾の役割を果たすものがない。


そして最大の難点は私たちは殺さず捕えることが目的である。けれども向こうは殺しても構わないという考えだ。

どうしてもこちらの動きが制限される。


汗があごを伝って落ちる。

…でも負ける気はしないな。

思わず笑みがこぼれる。


後ろの温もりが自分に自信をくれる。

そして何よりソウヤの強さを信頼している。


ソウヤと相棒になってから2年半の月日が経った。

私たちは最高学年となり、これまで『松』の任務もいくつもこなしてきた。

そのたび強く頼もしくなっていくソウヤにおいていかれないように、自分自身も鍛えてきた。

その経験が自信となる。


優秀な補佐がついたことで現王の政権も安定し始めた。国内は落ち着き出したが、他国はそれでも隙あらばと侵略の機会をうかがっている。


他国からの刺客との闘いも何度かあった。しかし宝国との闘いは今回が初めてである。手に力が入る。


ソウヤの話を聞いて、碧い火の正体は自国の人間かもしれないと思っている。しかしどうしても父と母が亡くなった時に戦った相手の国となると、なにか関係しているのではという考えがよぎる。


向かってくる相手の攻撃をかわし、次々に水弾を放つ。かなりの力を込めれば大技も出せるが、自分の力が枯渇してしまう可能性がある。


しかしこのままだと埒があかない。

「はっ!!」

気合を込めて水を地面から湧き上がらせる。


自分の前の敵二人の足元が大きく、波打つ。

足元が揺らぎ体勢を崩した一人に瞬時に近寄り、水弾を放った。


狙い通りに弾は相手の眉間に当たり、脳震盪をおこして倒れる。

もう一人から短刀が飛んできて避ける。


避けた時にソウヤとソウヤと対峙してる敵が視界に入る。ソウヤもひとりはすでに倒しているようだ。


もう一人の敵の周辺でソウヤの炎が燃えている。その敵が自分の刀をソウヤの炎を利用して熱する。


余計なことかもしれない。でも危険な気がした。咄嗟にその刀に向かって水を飛ばす。


突然の横入りだったので、相手の不意をうち、水は刀に直撃した。

じゅっと音をたて、刀の熱がおさまる。

「邪魔をするな」

しかし相手の逆鱗に触れたようだ。


こちらに向かって走ってくる。

「させるか!」

それを見て慌ててソウヤがその敵の行く手を阻もうと、私と敵の間に回り込む。


その時だった。


右脇腹に痛みを感じた。

「え…?」

驚いてその部分を見ると、短刀が突き刺さっていた。


膝から崩れ落ちる。

「油断するからだ」

振り返ると自分がもともと対峙していた敵がいた。


その声でソウヤがこちらを向く。

「どうした…」

しゃがみこんでいる私を見て、戸惑う。


しかし赤く流れ出した血を確認して目を見開く。

「おい、シズク!!」


今が必要な時か。久しぶりに呼ばれた名前に少し口角を上げようとする。

けれども実際は余裕なく、さらに体も前に倒れ込んでしまう。


「きっ、さま!!!!」

ソウヤの叫びか聞こえた。

そして爆発音のような音がした。


むりやり地面から顔を上げて、音のした方を見る。

するといつのまにかソウヤの対峙していた敵は消えていた。


しかしソウヤの姿もない。

「どこ…」

不安になって視線を彷徨わせると、後ろに気配を感じた。


そちらに目を向けると、信じられないものがあった。


「碧い、火」


探し求めていた両親の仇がそこにはいたのである。


しかし、その碧い火を纏っているのは他でもないソウヤなのだ。


「ソウヤだったの…?」


私の瞳からひとつ、涙がこぼれ落ちた。



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