表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第5章 碧い炎
40/48

7 (ソウヤ)


夜半、シズクが寝たことを確認してじいさんに声をかける。

「碧い火について何か知っているのか」


じいさんが真っ直ぐ俺の目を見つめる。

「お前にとってその子はどんな存在だ」

俺の問いには答えず、新たに問いを投げかけてくる。


思い出すのは昼間のやりとりだ。話しを聞いた後、シズクは俺の顔を覗き込んできた。

「むりに探さなくていいからね」

「何を」

何のことかわからず聞く。


シズクは少し迷う表情を見せた後、口を開いた。

「私とソウヤの家族を奪った碧い火の犯人」

「そのことか。別にむりとかじゃない、俺も気になるし」


「それならいいんだけど。何か考え込んでるみたいだったから」

心配そうに俺を見つめる。


「一人で抱え込まないでね。言いたくなかったら言わなくてもいいし、私じゃなくてもいいから」

気遣いの言葉にほんのり胸があたたかくなる。


自然と口角も上がる。

「ああ、ありがとう」

礼を言うと、シズクは少し驚いた顔をして、その後花が咲くように笑った。


その笑顔を

「守りたい。俺にとって大切な存在だ」

じいさんの問いに答える。


いつからだろうか。きっと相棒になった時からずっと真っ直ぐ俺と向き合ってくれる彼女を大切に思っていた。


俺の答えにじいさんはひとつ瞬きをすると

「そうか…」

うれしそうな、それでいて寂しそうな複雑な表情でうなずく。


「碧い火の正体はわしが実際に見たわけではないし、推測の域をでん。しかし…」

そこで言葉を切ると、軽くため息をつく。

「龍の加護ではないかと考えておる」


「龍の加護…」

聞いたことはあるがいまいちどのようなものなのか知らない。

「具体的にどんなものなんだ」


「一時的な力の増幅じゃ。龍が気に入ったものの手助けをする。一定のもともとの龍導の素質は必要じゃがな。過去にわしも木龍の加護を受けたことがあるし、ミカゲも金龍の加護を受けたことがある」

「それなら碧い火っていうのは火龍か?」


「問題はそこじゃ」

じいさんが俺の瞳を見つめる。

「おそらくじゃが、二匹の龍の加護がついたのではないかと思っておる」


「火龍だけじゃなく、もう一つ…」

「そうじゃ。ひとつの加護を受けるだけでも、本当に稀じゃ。しかし500年ほど前に二匹の龍の加護を受けたものがいると聞く」


「それが碧い火を出したのか?」

「いや違う。金龍と木龍の加護による金の樹木だ。お前の学校の奥に金の森があると聞いたことはないか?」


「行ったことはないけど、聞いたことはある」

じいさんがうなずく。

「あれは500年前、金龍と木龍に愛されたものが金の樹木を生み出す能力が発動した。しかし能力に飲み込まれ、自分自身と周りの人間が金の樹木のなかに取り込まれてできたものだと言われている」


じいさんの言葉に息を呑む。

「本人も周りの人間も…生きているのか、死んでいるのか?」

「おそらく木と一体化しているので、自我はないし、そういう意味では死んでると言ってよいだろう」

つらそうに眉根を寄せる。


「碧い火も同じようなものだと?」

「そうじゃ。おそらく火龍と水龍じゃろう」


でもそれが碧い火の正体ならば、俺やシズクの家族を奪ったのは

「この国の人、龍導によるものだってことか」

宝国の人間じゃなかったのか。


「龍の加護は本人の意思ではどうにもできんからな…龍に愛されすぎたが故に、龍がそのものを助けようとして発動する。しかしそれにより本人も周りも傷つくとは皮肉なもんじゃ」

俺の言葉にさらにじいさんは苦しそうに言う。


さらにじいさんがなにか言おうと口を開いた、その時、

「うぅぅ…」

後ろで寝ていたシズクの苦しそうな呻き声が聞こえた。


そちらを振り返るとシズクがうなされている。

「おい、大丈夫か?」

そっと肩を掴み、揺り起こす。


シズクは薄目をあけると

「ソウヤ…」

俺を認識し、ほっとしたようにささやいた。


「また夢だ。お父さんとお母さんが碧い火に包まれる夢」

胸が痛くなる。今なおこんなに彼女を苦しめる碧い火。


「ソウヤはどこにもいかないでね」

不安に揺らぐ瞳で俺をじっと見つめる。


寝ぼけているのかもしれない。それでも

「ああ、そばにいる」

そっと頭をなでた。


そうすると安心したように、シズクはもう一度眠りについた。


「幸せになれよ、ソウヤ。わしはお前の幸せを願っているし、これからもずっとお前の味方じゃ」

俺とシズクを見つめ、真剣にじいさんが言う。


「ありがとう。じいさんが拾ってくれてよかったよ」

急に言われて照れくささがあったが、礼を言う。


少し驚いた顔をしてから、じいさんが笑った。

「ずいぶん素直になりおって。その子のおかげか。無口で無愛想だったのに」


「うるせぇ」

そういう俺に、じいさんが優しい眼差しを向けた。


「そろそろ寝るか」

じいさんの言葉を合図に布団にもぐる。


そうして夜は静かに更けていった。



遅く、長くなりました。ここまで読んでくださっている方ありがとうございます!あと二章で完結予定です!もう少しお付き合いください(> <)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ